公演情報
TRASHMASTERS「vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★
三好十郎『廃墟』。戦後の混沌を描いたはずの芝居なのに、私の心が揺さぶられたのは何故だろう。
明日食べる物もない中、色恋も絡み、家族が「負け戦」をめぐって互いを罵り合う。誰の言葉にも「そうかも」と思ってしまう私は、まるで正しさを見失っていくようだった。
パン泥棒が、疲れ果てた家族と客席に向けて静かに頭を下げる。その姿に怒りも反感も感じない自分はいったい何なのだろう。
三好十郎の芝居は、もっと観念的で、非現実 的な台詞劇だろうと身構えていた。目の前で繰り広げられたのは〈感情のぶつかり合い〉だった。思想を武器に家族とぶつかる姿に、自分がどこかで避けてきた“古い情熱”の膿が引き出されたようで、終演後は付き物が落ちたような気がした。
俳優陣も鮮烈だった。 長男・誠(長谷川景)は、生真面目すぎて怖い。共産党的な理想論が、なぜか目の前の現実よりも切実に感じられた。
次男・欣二(倉貫匡弘)は、舞台でもロビーでも昭和のイケメンそのまま。
せい子(川崎初夏)は、DV男と甲斐性なしの間で揺れる哀しみが胸を打つ。
「理想なんて捨てて生きろ」と言われても、簡単には捨てられない人がいる。
そんな人こそ、いま、時代に一番必要なのかもと思った。
—終演後の私は肺の中のモヤモヤが晴れたようで、「明日からのことを考えよう」と思った。
観に来てよかったと思う。