公演情報
タカハ劇団「帰還の虹」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★
高羽彩の旧作である。最初は旧作とは知らなかったが、10年も前にこれだけのものを書いているのに、去年だかに見たヒトラーの出てくる作品は、まぁもう二度と見たくない作品だった。波があるのは仕方がないが、これは人物設定も、時代設定も面白く出来ていて二時間あまり面白く見られた。
物語は太平洋戦争の末期。芸術家として、徴兵を免れた画家が四人、満州開拓で空き家になった農村の空き家に憲兵大佐の見張りのもと住んでいる この四人の組合わせが、図式的といえばその通りなのだがドラマ設定としては上手い.まずフランス帰りの戦争画の大家。絵に関しては何を書かせても上手い、今は時局便乗。次ぎに共産党崩れ。さらに自らの限界を知っている現実派。大家のモデルだった時局達観型の女(護あさな)。家に付いている家政婦とその家族。
戦争時の芸術家の生き方をそれぞれに託している。
幕開きから、メインの場面になる大家のアトリエに白布をかぶったおおきなカンバスが置かれていて、何かというと、そこへ観客の目が向くように作ってある。その謎を最後までひっぱっていく。これが、戦争と芸術家の葛藤というところに落としていくのはいいとしても、結局は個人の思いになっているところが弱い。(まぁこれでもいいのだが、これでは娯楽作になってしまう。そこがこの作品の焦点だろう。折角冒頭から画家たちや地元農民・市民、憲兵など、戦後生まれの本の知識だけで書いているにしてはかなりうまく出来ているのに、もっと、戦争と芸術というテーマに直面した芸術家、市民というものに迫らなければ、三好十郎に勝てない。これからは知らないものの強みで戦わなければならないが、アフタートークで出てきた戦争記録の映像作家の作品共々、これではまるで実感が出ていない。色つき立体映像と復元再生音声だけで再現が可能で、演劇に勝てると思っているところも同じで、人間のない面を舞台で見せなければただの面白いお話の絵解き絵本で風化していくだけだ。そこは前に見たヒトラーの話と同じ安易さである。)
と悪口に落ちていくが、いいところは、小劇場でよく見る役者たちがガラも生かして、画家四人など、小劇場らしい面白さも出している。高羽の演出については、そのつもりで見ていなかったが、演出の方がいいのかもしれない。女優も始めて見る人だが、男どもを押さえてタカラヅカばりにちゃんと演じきっている。