はじめ ゆうの観てきた!クチコミ一覧

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千に砕け散る空の星

千に砕け散る空の星

ゴーチ・ブラザーズ

シアタートラム(東京都)

2012/07/19 (木) ~ 2012/07/30 (月)公演終了

満足度★★

あらゆる全てが少しずつ
かみ合っていない印象。素材はすごく良さそうな感じは
するんですけど、台本、演出、役者、その全ての要素が
少しずつズレていて、不協和音を発し、最後、う~ん、って
感じで終わっちゃった印象ですね。勿体ないです。

ネタバレBOX

すぐ下の方が書いていますが、ゲイのネタが本当に多い。
写真家の森山大道が欧米の写真について「ゲイっぽい
写真を見せとけば意味深に見えると思ってる。退嬰だ」と
言っていましたが、演劇にも言えるかもしれないですね。

全体的に演出の拙さが目立つ気がしました。
他の方が指摘しているように、設定と演出がかみ合ってなかったり
そもそも、あの舞台装置は何だろう… 隕石を舞台のあちこちに
散りばめていたけど、あまりセンスを感じるものでは無かったです。

物語は…『ハーパー・リーガン』のサイモン・スティーヴンズっぽさは
あったんだけど、いい加減、子供に理解されないで苦しみ、それを
ぶちまける親や、親とのディスコミュニケーションがトラウマになっている
ネタとか、現代演劇で取り上げられ過ぎているテーマで、正直食傷気味。
他の視点で掘り下げて欲しかった。

皆が生を、死をどう思うのか、時間の経過と共にその変化を追っていく…
とかだったら結構面白そうだったのだけど。家族の話に収斂したせいか、
あまり広がりを感じなかったです。

役者も何人か舌がもつれ気味だったり。準備期間が足りなかった?
舞台上で演じる、以上のものをあまり感じなかったかも。

ミルファームに向かう途中、自分の娘の息子ロイとジェイクが交わす
会話が良かったな。お互いを想う心が不器用な台詞からでも伝わってきて
少し涙腺が熱くなった。そのシーンが個人的には白眉です。

オープニングが轟音と共に始まって、ラストが静寂の中で終わるのは
多分狙っていたんだろうな、と思っています。
四つ子の宇宙

四つ子の宇宙

四つ子

アトリエヘリコプター(東京都)

2011/10/01 (土) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★

意外な事にコメディ
この四人が集結してどういう話をするのかと思ってみたら
かなりゆるゆるのノリの宇宙SFコメディでしたね。

四人全員の劇団作品を以前に拝見していますが、ゆるいのり、
かみ合っているのかどうか分からないけど、半ば強引に力技で
押し進めていく会話から「五反田団」「劇団・江本純子」の作風に
近いかな、と思いました。ただ、微妙に変態的な部分が「サンプル」?

ネタバレBOX

俳優としての松井氏は今回初めて拝見しましたが、かなり演技
上手かったですね。間の取り方とか、空気の読み方とか、異様に
手慣れてて自然な印象を受けました。しかも突っ込みがかなり
面白かった。

あらすじはあって無いに等しく、宇宙船での話と、まだ乗組員たちが
地球にいた時のエピソードとが時間軸をシャッフルしてちりばめられて
いるのですが、前田氏演じる林が皆が冷凍睡眠する中一人で
取り残される辺りからコメディなのかシリアスなのか、それとも
シュール系なのか、よく分からなくなってきてて、正直取り残された感じ。

でも、俳優陣は本当に楽しそう、というか、稽古の時のノリがそのまま
本番の舞台にも移植されているかのような、打ち解けまくった雰囲気の
応酬で、その楽しげな雰囲気が客席にまで伝わってきて、二時間弱の
舞台をあまりダレずに楽しめたのは良かったかな。
アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/04/03 (日) ~ 2022/04/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

「物語というものの本質とは?」というテーマと、フェミニズム的な要素とが劇の中で
主導権を争った結果、どっちつかずの(作中でいわれる)「キメラ」的作品に着地して
しまったような気がする。

皆が語ることができ、聞くことができるとされている「物語」も、性差や人種などで
見えない制限がかけられてしまう…っていう話に落ち着けた方が安易だけど良かった
ような。

ネタバレBOX

あるビルの一室と思わしき場所に8人の男女。というか、男性7人に女性1人。
彼らの目的は「クリエイティブの手で誰も知らないような偉大な物語を
作ること」。

といいつつ、場を取りまとめるリーダー・サンディの上には、「マックス」と
いう“偉い人”がいる他、「ジェフ」や「ヴィクター」というプロジェクトでは
同格と思われる人間との暗闘もあったりで、崇高なはずのクリエイティブは既に
マウンティングと足の引っ張り合いなど、どこかの会社でまんま見られる風景が
展開されてしまっている。

サンディを筆頭に、各人が物語作りのたたき台となる「個人的な話」を披露する形で、
プロジェクトは幕開けするものの、どこかで聞いたような下ネタトークに続いて、
散漫な話が続き、「偉大な物語」が立ち上がる気配は一向にない。

「個人的な話は個人的な話だからこそ誰にも聞かせたくない」と振り絞るように
言い放ったダニーM2はサンディに呼び出され、翌日以降は姿を見せなくなり、
外国籍と思しき参加者の1人は(おそらく)産業スパイを疑われて、IDを3か月も
発行されず困窮、

あげくの果てにはサンディのミソジニー、ゼノフォビア、ハラスメント気質が徐々に
明らかとなっていき、自由で闊達なはずの現場は完全に停滞しきってよどんだ空気が
ぷんぷんとなっていく。

…多分だけど、後半で言われてたように、「サンディを喜ばせるため」が参加者全員の
隠れた目的になっちゃってるから、プロジェクトが死産してしまったように思える。
個人的なはずの話が誰かのための話になってるというか。

サンディもプロジェクトより、外部や家族など個人的な折衝に忙殺されるようになり、
残された(というか完全に遺棄された形の)メンバーたちは帰ることもできずに、
ただただイミフな呪文を物語として発明したり、朦朧とした意識の中で1人がテキトーに
口ずさみはずめた物語を絶賛したりする。

書記係のブライアンが体調不良で部屋を去った後は、世話係のサラを代役に立てて、
物語作りは紆余曲折を経て進むも、久しぶりにやってきたサンディは「現代は物語を
新しく作り出せるような時代じゃない」という理由からプロジェクトの無期限凍結を
宣言する(というか権力争いに負けた果ての帰結な気がするけど)。

夢破れて呆然とする皆の中で、紅一点のエレノアが子供の頃に作った、分量にして
ノート販ページほどの“物語”を慰みに披露し、「みんなこういう話好きだったでしょ?」と
呼びかける形でいきなり幕を下ろす…といった話。

これ、劇中では議論も対話もないんですよね。それっぽい形をしたものはあるけど。でも、
プロジェクトが終わるまでにいい感じにまとまった物語っぽいものは萌芽してた。という
ことは、物語は「議論」や「対話」を通じて効率よく生み出されるものではない、あくまで
個人的なところを出発点にしないといけない、って感じ?

でも、ダニーM2が言ったように、本当に「個人的なもの」は物語として物語られないんだよな。
あくまで個人っぽいものが物語として扱われるわけで。エレノアの個人的な感性全開で書かれた
幼少期の物語は物語の体を成してなかったしね…。

そしてサンディがいなくてもプロジェクトは(ある意味ではかえって円滑に)回ったし、
ブライアンがいなくてもサラが役割を埋めたし、物語の中では個人が誰かというのは
究極的には関係ないのかも。個人がある、それだけで自然と物語は生まれてくる、そして
それは資本主義的なもの、そして芸術的なものとも離れたものな気がする…。

と感じたんだけど、そこまで考えないといけないのもなんかなって感じたりした。あと、
閉鎖空間での同調圧力とか排除って、日本だけでなく世界的にみて普遍なんだなって何か
おかしい気持ちにもなった。舞台や映画見るのってそういうの確認する作業の意味合いも
あるよね。
家の内臓【作・演出 前田司郎】

家の内臓【作・演出 前田司郎】

アル☆カンパニー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2010/05/21 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★

本気でやるユルさ
前作「罪」では蓬莱竜太を迎えたアル☆カンパニーが、今度は
五反田団の前田司郎を迎えての新作。

前回の、恐ろしいほど簡素なステージと比べ、今回は畳張りに
所狭しと置かれた荷物や布団と雑多でユルい独特の旅館の
雰囲気がまんまそこに切り張りされてました。

1時間15分のほとんどが、動きなしのほぼ山なし・オチなし・意味なしの
ユルくてありそうな雑談で埋め尽くされて、小ネタとしては面白いのも
あったけど、ちょっと長く感じられたのが正直なところ。

ネタバレBOX

「桶狭間、って何よ?」
「だからー、アレでしょ、桶と狭間のことなんでしょ」
「何だよ、その桶と狭間ってのは」
「だから、こうでしょ、(役者、手で二つの桶状の円を描く)こんな
形してるやつでしょ」

大体↑みたいな、言葉尻をとらえての突っつき返し、混ぜっ返しの
オンパレードで、正直このネタで一時間突っ切られるとキツい。

平田満の、どこの会社にもいそうな、やったら馴れ馴れしげで
追求好きな上司役はハマってたけど、「ある人たちの旅館の風景」を
抜け出てなかったような気がします。

良く知ってると思ってた他人の事を、実は自分は何一つ知らない、
他の人のことは家族でさえ不明瞭だ、というのが最後の最後で
出てきたけど、取ってつけたようなもので、基本あのドツキ漫才
みたいな雑談のノリについていけるかどうかだと思います。
14歳の国

14歳の国

早稲田小劇場どらま館×遊園地再生事業団

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2018/09/14 (金) ~ 2018/10/01 (月)公演終了

満足度★★

1998年初演の本作を再演するにあたり、作・演出の宮沢章夫さん自身があいさつで
「1997年の、神戸のニュータウンで14歳の少年が犯した凄惨な事件や、その翌年、
社会問題になったバタフライナイフを使った殺傷事件の生々しさがこの20年でよく
わからなくなっていることだ」と、不安点を語っていましたが、ドンピシャになった
感じがあります。「らしさ」はあるけど、さすがに古い感じがしました。

ネタバレBOX

舞台は1998年のある中学校。あるクラスが体育の授業中、教師5人が密かに持ち物
検査をすべく、空っぽの教室に侵入。他の先生はどうやら黙認しているものの、
音楽の先生だけ融通の利かない性格を敬遠されてか、ただ独り計画を知らないらしい。

教師たちはダベりながら持ち物検査をするが、会話はかみ合わないまま至るところで
衝突が起こる。あまりにかみ合わないため、「こいつら一体何なんだ?」と思うほど。
もちろん、肝心の持ち物検査は終わらず、1回目は時間切れで立ち去る羽目に。その
1週間後、今度は綿密な計画を立て、役割分担したはずなのに、検査はやっぱりうまく
いかない。

しかし、そんなこんなである生徒のバッグの中からバタフライナイフを見つけるも、
ナイフを預かった一人の教師がなぜか勢いあまって同僚教師を刺し殺してしまい、
皆が呆然とする中、突然の幕切れ…といった感じです。当時の不穏な空気を吸い込んだ
不条理演劇といった趣なのかな。

https://www.amazon.co.jp/14%E6%AD%B3%E3%81%AE%E5%9B%BD-%E5%AE%AE%E6%B2%A2-%E7%AB%A0%E5%A4%AB/dp/4560035237

筋がほとんどないような作品なので、やり取りを知りたかったら↑の単行本が参考に
なるかも。

ひとつ印象的だったのは、教師のモリシマさんが何度も自分に言い聞かせるように
「わたしたち、何もおかしなことはしてないですよ!」と言ってるのに、誰か教室に
来たと錯覚するや、みんなして机の陰に隠れるし、学校の秩序を守ろうとしてやってる
はずのことなのに、自分たちの方がやましい存在に反転しているその構図ですかね。
つく、きえる

つく、きえる

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2013/06/04 (火) ~ 2013/06/23 (日)公演終了

満足度★★

「あの日」以来、気が付いたもの
作者、シンメルプフェニヒの作品は、倉持裕氏が演出した
『昔の女』を観ていますが、あの時のホラーっぽい内容とは
一転、本作『つく、きえる』は寓意に満ちた、結構難解な
作品になっています。

一応、「3.11」をふまえた作品だということになっていますが、
注意深く観ていくと、そこを超えたメッセージが見えてくる。
そのメッセージをどう思うかで、この作品の印象は大きく
変わってくるでしょう。

ネタバレBOX

あらすじは、ある月曜日、三組のカップルが不倫の逢瀬を
重ねる、港沿いのホテル。

滑稽なことに、三人のカップルは同じホテルを使っているのに
来る時間帯が異なってたり、偶然が一致していたりと、お互いの
存在に気が付かない。

そして、ホテルの若いオーナーは、少し離れた先の灯台守の
女の子、「ミツバチ」とお互いの仕事があり、会うことが出来ない
ために、もっぱらメールのやり取りだけでを繰り返している。
「会いたい」「いつ会えるのか」 言葉は繰り返されるけど、一向に
会えそうにない、そんな時間がずっと繰り返されるような、日常。

そこに、「3.11」を思わせるような、ホテルを海の底に一瞬にして
変えるような、そんな大きな津波が襲いかかってくる。津波が
本筋ではないので、最初、何があったのかよく分からない位に
幻想的な台詞と演出で描かれていて、スクリーンに波の映像が
使われていなかったら、津波とも気が付かなかったと思う。

一瞬の津波に飲まれ、命を失い、しかしそのことに気が付かず
家に帰る人々。大きな波によって余計なものが洗い流された
かのように、三組のカップルの間にも、元の相手に対する
別の感情、初めて相手に抱く関心、理解、温かい感情が
まるで火を点したかのように浮かび上がってきます。

それは暗く、鈍色をした、生命が全て死に絶えたような
舞台の中でほんのりと存在感を放っています。でも、
これって「津波」があったからのことで、もしその存在が
なかったら…? そう考えると皮肉な気がします。

ホテルの若いオーナー、「クジラ」のもとを、「ミツバチ」が
訪れるきっかけとなったのも、「津波」あったのことだし、
まるで当たり前のように繰り返されてきた日常は、脆い
ものであるが、私たちを取り巻く日常という枷が外れたとき、
真に自分が欲していたものが見える、だから、全くの悲劇と
いうものは、厳密には存在しない。そういわれているような
気がしましたね。

台詞は難解で、意図的に似た場面が繰り返されるため、
全貌はよく理解できなかったのですが、後半、一気に
シンプルになった展開を見て、そう感じました。
グッドバイ

グッドバイ

バストリオ

SNAC(東京都)

2013/07/03 (水) ~ 2013/07/06 (土)公演終了

満足度★★

舞台芸術の新潮流の一つを観る
バストリオは、メンバーが遊園地再生事業団(宮沢章夫氏の
演劇ユニット)に客演したり、参加していて気になってました。

この間の『ユリイカ』の特集で、佐々木敦氏がナカゴーや
ブルーノプロデュースらと一緒に注目の劇団としていたのが
今回の鑑賞に直接つながった形です。そうか、こういうのが
最先端を行く「演劇」「舞台芸術」の一つなんだ、と、腑に落ちる
部分がありました。

ネタバレBOX

本作の元となった太宰治『グッドバイ』(新潮社)は、不勉強
ながら未読なのでハッキリとはいえないですが、そこから
台詞を拾って、自分たちの言葉と有機的に結び付けることで
多分、太宰の時代から私たちが生きる時代まで変わることの
ない「グッドバイ」の持つ意味を一本にまとめ上げようと
試みたんだと思います。

時折挟み込まれる劇団側で作った台詞は少し壮大で、感傷的で、
そしてロマンチックだと思いました。多分、書いた人は
純粋な人なんだと思う。「人は死んだら、重量だけがそこに
残る」という台詞は、真実を衝いていて面白い、と感じました。

SNACの、内部だけでなく、外まで縦横無尽に使って行われる
舞台は、ただただすごいな、と。SNACの前って、普通に人が
通っているし、現にじろじろ見られていたし。役者にとっても
負担にならなかったのかな。

人の動かし方や小道具の扱い方に、遊園地再生事業団、もっと
いうと、宮沢章夫氏の影響は見て取れますが、かなりの部分、
物語性を排除しているため、演出の自由度は飛躍的に高まった
反面、なかなか観ている側の感情を揺り動かして、引き込むのは
難しいのでは、と感じました。

時間が約70分ということでしたが、そういうこともあって、実際には
2時間の舞台を見せられたような気がしました。そこが何とかなれば。。

本作を評価する、ある一つの指標となっている佐々木氏の
『批評時空間』(新潮社)もまだ未読なので、それを読んだ後、
再度、この作品を考え直していきたいと思います。
男の一生

男の一生

三田村組

ザ・ポケット(東京都)

2010/11/26 (金) ~ 2010/12/05 (日)公演終了

満足度★★

お疲れ様でした
今回が最終公演とのこと。
まだ、「第18回」公演と案内されていた時は、まさかこんなことに
なるとはつゆ知らず。 本当に長い間お疲れ様でした。

舞台の上で観る三田村さんは、時に渋く、時にやんちゃで、熱くて
哀しみを存分にたたえた、「頭から足先まで全身で語れる」役者だったと
感じていました。 次の動きに期待してます。

ネタバレBOX

サスペンデッズから客演していた佐藤 銀平は良い役者だと思いました。
表情から、細かい動き、発声の加減まで役に溶け込んでいて、
しなやかでどんな役でも出来そうな。

前にも書いた気がしますが、蓬莱氏は「雨」が好きなんでしょうか?
「罪」「凡骨タウン」「サイコ」と立て続けに、降りしきる雨、そこに
浮かび上がるように現れ出る人物…という構図が毎回なので、
流石に読めてしまったというか。 巧妙に「過去」と絡み出すのも定石。

母親が「親不孝者…」と呟きながら登場してくる場面。
思わず「凡骨タウン」を思い起こす程デジャヴ感が凄かった。

最後のどんでん返しは上手かったけど、ネタ切れを起こしてるのか、
劇団最終公演ということで抑えたのか。以前の、観ている観客の
身まで削り取っていくような、焦燥感が正直最近は感じられない。
「314」で衝撃を受けて蓬莱作品をチェックするようになった身としては
何か煮え切れない気分。 どこかで観た感がそれだけ強い。

それにしても・・・「正当に扱え!」はひどかったなぁ。 あの一言で台無し。
後半の要になる発言かと思いきや、場面ごと軽く流されたし、
あの台詞で、とどのつまり自分で何も選択してこなかった老人の
ただの我儘、それにつきあった揚句を最後慰めてやる青年、という、
危うく甘えになりそうなところにまでこの作品全体が落ちかかったでしょう。

でも、「父親の後を追いかける人生だったなぁ… いつも帰ってくるのが
俺で、ごめんな」って死んだ母親に語りかける場面は思わず泣きそうに。

蓬莱氏は弾丸のように場面ごとの決め台詞が飛び出してくるのは
分かるけど、自重しないと逆効果になりそうな気がします。

最後に、葬式の白黒幕を模した、町工場の舞台セットは巧みで
印象深いものでしたね。 面白いと思った。
国民傘

国民傘

森崎事務所M&Oplays

ザ・スズナリ(東京都)

2011/01/21 (金) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★

「戦争」は至るところに転がっている
試みは凄く面白いと思いました。 台詞も恐ろしく良いものが
ぽんぽんと飛び出してきたし、それだけなら凄かった。

それだけに、ここまで構成を捻ってしまうのはどうだろう、という気も
しなくはないです。 これだったら、それぞれがゆるく繋がっている
感じの連作オムニバス集でも良かったと思う。

ネタバレBOX

「戦争は少女が寡黙になる時期」
「どこにも帰れない者たちが、戦争という場所へ帰っていくんだ」

上の台詞には痺れた。 なんて、詩的で格好良い台詞…。

本の中に出てくる母娘が、別の場面では物語の中の人物に、
さらにそこの場面の登場人物達は、最初の母娘が国民傘を
動かした罪で収容されている牢の看守が読んでいる物語の中の
人物達へと変わっている。 

それが繰り返されていくうち、誰が「実際の人物なのか」「誰が
物語の中の人物」なのか、どんどん曖昧に、分からなくなっていく。

存在すらあやふやになっていく中で、唯一実感出来るのは何だ?
ていうのがこの「国民傘」の主題な気がする。

思えば、「戦争」という極限状態だと、自分が誰で、何をやっているのか
だんだん分からなくなってくるのは当たり前に思えるし。

それを、この形式で表現しようとしたのかな?

ただ、二幕目は言葉に、完全に舞台が負けていたような…。
話の筋は何とか追っていけるけど半ば言葉に頼り過ぎて、
少し退屈だったかな。 幕切れもアレじゃちょっと投げっぱなしな気が。

舞台装置や言葉のリズムは最高に切れていたのに、思弁的に
過ぎたような印象を受けました。
終わりのない

終わりのない

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2019/10/29 (火) ~ 2019/11/17 (日)公演終了

満足度★★

2020年から、1000年以上経った未来へ、宇宙や空間をまたいで旅をしていく
ハードSF、という紹介でいいのかな? 後述の理由でなんかちょっと無理
だった…。メッセージが前に出過ぎて、もっと足元の大事な問題を流して
しまっているように思えて、気になって仕方なかった。

ネタバレBOX

舞台は2020年8月の湖のほとりにあるキャンプ場。18歳の悠理は幼なじみ2人と、高名なダイバーと
物理学者の父母とともに避暑に来ている。

悠理には高校受験前、親密だった杏を妊娠させ、流産という結果に至らせた過去があり、その体験を
きっかけに進学に失敗。フリースクールに通うも、自分がどうしたいのか、どうすべきなのか
分からないまま、学校にも通わないニート状態になっている。

もちろん、キャンプ場には杏の姿は、ない。私立の進学校に合格後、先述の一件もあって
完全に交流が途切れているからだ。

そんな悠理に突然両親の離婚の話が。なんでも父親は現在危機的状況にある地球温暖化を解決すべく
政治家を志す一方、母親も政府系機関の量子コンピューター研究者の筆頭となり、互いに立場を
考えた上での決断だという。「地球環境を真に解決しようとしている国はどこにもない」「自分たちの
利潤のためなら未来なんてどうなってもいいと考えている」「資本主義を修正しないといけない」、
演説じみたコメントを続ける父親を尻目に進むキャンプの準備。

その最中、悠理は湖で泳いで溺れてしまう。そして、目が覚めたのは宇宙船の上、1000年以上経った
3585年。地球は21世紀後半に起きた、地球温暖化に端を発する環境の激変による紛争で人類は3000年頃
ほぼ滅亡し、ほんの少し残った金持ちたちの子孫が人類の住める星を探して宇宙探査を続けているという…。

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なんだろう、上手くハマれなかった…。ちょっと前からのイキウメ/前川作品から漂っていた
メッセージ性強めかつ自然中心的な傾向がここに来てグッと出たことにも違和感を覚えは
したんだけど、それ以上に、杏の扱いはアレでいいのかな、って。

杏って当時は女子中学生だったから、妊娠流産ってこちらが考えているより、ずっと心の傷に
なったと思うんですよね。それをなんか「これでよかったんだよ」みたいな言葉しかかけて
やれず、あげくに「俺はクズだ」って自己憐憫的に言う悠理が正直好きじゃなかった。

でもまあ、それはまだいいんですよね。悠理も当時中学生だったって思えば、まだ飲み込める。

だけど、いろいろと時を超えた体験をしてきて、人類一人ひとりが何とかすれば確定しない
未来から最高のものを選べる、そして自分もその一人であり、「自分の面倒は自分で
みられる」「ひとりでもう歩いていける」と宣言した成長後の悠理が、

「杏に連絡してみたら?」って言われて、「ううん」って答えるのはなんか違うよ。
そこをちゃんとケリつけてほしかった。だって、悠理は杏とのこと何も清算して
ないから。思春期の多感な時期に自分が追い込んだ大事な子の関係を何も意味付け
してないんだよね。

なんかな、と感じた。こちらの目には、勝手に逃げて、勝手に成長して、勝手に
清算した気になっているとしか映らなかった。杏が悠理の成長の踏み台の役割
みたいになっててあんまりいい気はしなかったな。

杏の妊娠流産設定ってこの内容だったら要らないよね。後半全然話に絡ま
なかったし(というか、現実の杏自体、後半全然出てこなかったけど)、
これだったらすれ違いで別れたでよくないか? って。

なんかその後に地球環境のこと持ってこられちゃったから、大きいことを
理由に、自分の向き合うべき問題からきれいに目をそらしたみたいな人に
なっちゃったのが残念…。

来年のイキウメもこの路線なのかな? 個人的には、過去の、人間そのものの
どうしようもなさを描いた感じにしてほしいんだけど。
真夏の迷光とサイコ

真夏の迷光とサイコ

モダンスイマーズ

青山円形劇場(東京都)

2010/07/08 (木) ~ 2010/07/18 (日)公演終了

満足度★★

いつも通り
事前では、「今までとは違ったモダンスイマーズを~」云々という話でしたが
ふたを開けてみれば、いつも通りのモダンスイマーズでした。

ただ…蓬莱さん、ひいては劇団自体が「今までとは違う」に捉われ
過ぎてるのか、演出はものすごく力が入ってたし、構成もおー、っと
驚かされたけど、なんかそれだけだった気が。。 散漫だったかも。。

詳細、ネタバレに書きますが最後の展開は正直えー、そりゃ無いよ、と
思いました。

ネタバレBOX

女主人たる姉は、自身の夫が交通事故で死んでからというもの
その過去を乗り越えられず、赤の他人を雇い、それぞれに架空の
名前を付けるに飽き足らず、その一人には自身の夫の名前を付け、
時の止まったような屋敷で心は一人孤独に暮らしている。

その弟であるところの作家はありがちな、「良くてそこそこ、悪くて稚拙の
アマチュアに毛が生えたレベル」を出ない。 出版社から一応数冊本を
出して貰えてるが、目をかけてくれていた編集者が亡くなって以来、
その活動は徐々に先細り、本人もそれに焦る様子。

…と、この二人の空間があらゆる局面で交差する、ここ数作の蓬莱
作品の構成を踏襲している作風。 「雨」が急激に作品展開を加速させる
点も含めてアル☆カンパニー「罪」を彷彿とさせます。

というか、蓬莱さんは「雨」のモチーフが好きなんでしょうか?
「凡骨タウン」でも、雨の場面が重要な展開ポイントだった記憶が…。

ただ、今回は何の前触れもなく、片方の視点がいきなり宙に浮いて
片方の数日前の行動を眺めていく、という構成になっているので
結構お客さん放り投げちゃう感があるのは否めない。

「凡骨タウン」には千葉・萩原としっかり作品の引き締め役がいたのに比べ、
今作は中心となるキーマンが不在だったのも相当痛い。 
YOUさん…演技はともかく(というか、車椅子なのでほとんどその余地が
無かった)、最後の場面の一番重要な台詞全部棒読みはちょっと。。
ハッと全部が腑に落ちる場面なのに、なんか白々しくなっちゃった、かな。

それと、最後。

姉が弟に水をぶっかけて「ここは現実の世界なんだから」と喝破した場面。
でも、自分も架空の自分の世界に逃げて、そこで空虚な生活を弟が来るまで
送ってきたわけだから、全然説得力無いし。

その後、屋敷の造り物の世界をかなぐり捨てて「本当の自分を探る旅」に
出る伏線だったとしても、それだったら弟について来い、じゃなくてこの
車椅子を押すのはおまえにしか出来ない役目、と言って欲しかった。

「架空のコウジロウ」さんは、二人の過去にも現在にも全然
関係ないんだから、「現実の自分が分かって無い」のは姉妹なんだから。
これから自分を知っていく必要があるのは、この二人だけなんだから。

あそこで、自分の虚像に車椅子を押させても意味が無いと思う。
二人の問題に他の人を、自分の捨てなきゃいけない過去をもうこれ以上
介在させるべきじゃない、と感じたので強く違和感を覚えました。

蓬莱作品は「罪と許し」「現実を見つめられない人たち」が重要なテーマに
なっていると思うのですが、今作はそれも含めて全体的に弱く、
ぼんやりとした作品になってしまったのが、辛く残念です。

演出は照明の絞りに加え、実際の生演奏を導入したのが非常に功を奏し、
その時々の人物の焦り、興奮、孤独等の隠された心情を分かり易く表現
していたと思います。 本当に演出は素晴らしいです。
切り裂かないけど攫いはするジャック

切り裂かないけど攫いはするジャック

ヨーロッパ企画

本多劇場(東京都)

2023/09/20 (水) ~ 2023/10/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

時代設定として「切り裂きジャック」がロンドンを恐怖に陥れる少し前にし、都市の一角で「人攫いジャック」なる
人物が街の人々を、そして警察や探偵たちを大いに騒がせる……といった話になっています。

おそらく劇団初の“ミステリーコメディ”という野心的な内容になっているのですが、笑いの部分は巧みなものの
ちょっとハンドル操作を間違った感がして、最後に無理やり風呂敷をまとめたような雰囲気が、う~んという
評価になりますね。

ネタバレBOX

”ミステリー”部分は中盤にサラッとギャグ展開込みでタネ明かしされてしまうので、あとは“コメディ”部分を
楽しむべきなんですけど、コロナ禍が明けた後に後半の展開はちょっと鬼門じゃないかなぁと。

ネタバレすると、“ジャック”というのはあらゆる才能を持った人々の結社であり、その構成員1人1人であり、
地球の中心にあるという「ジャックランド」を拠点に各政府機関などで暗躍しており、今作の登場人物が
その「ジャック」だったというオチなんですけど。

ただ、コロナ禍で散々シャレにならないレベルの陰謀論がまことしやかに語られるようになり、一定程度
受け入れられるようになっちゃうと、今作みたいなノリってどう受け止めていいのか分かんないんですよね。

登場人物の1人が割とガチで陰謀論を吹聴するタイプのキャラで、見ようによっては現代の風潮ともかこつけて
一種の風刺として機能させてるのかもしれないんですけど、上田さんまさか……じゃないですよね? って
正直感じちゃったんですよね。この手の話でよく出てくるキーワードの「フリーメイソン」飛び出してきたし。

もっと言っちゃうと、地球の地下深くに国とか大陸があるというのもちょっとソッチ系の匂いがそこはかとなく
するというか。

キャラは相変わらず立ってるんですけど、上記に加えて「俺たちの戦いはこれからだ」エンドにしたのもなぁ。
終わらせ方分からなくなって、秘密組織っぽいのも絡めて幕閉じるとしたらコレしかない!みたいな感じ
かもだけど、終わった時ちょっと虚無になった(苦笑
範宙遊泳展

範宙遊泳展

範宙遊泳

新宿眼科画廊(東京都)

2013/02/16 (土) ~ 2013/02/27 (水)公演終了

満足度

一つにした方が良かったのでは…。
山本卓卓の一人芝居「楽しい時間」、残りのメンバー二人での
「幼女X」の二本立てで行われた本作。

少しだけSF設定入っているような「楽しい時間」も、男の鬼気迫る
独白がなかなか面白く、幻想的なラストの「幼女X」も、主に時間の
問題で、まさに「帯に短し、たすきに長し」の状態で、なんか
食い足りない、物足りない印象でした。

ネタバレBOX

「楽しい時間」の方は、明らかに「3.11」以降の状況を意識した、と
みられる、放射能の雨が降り続き、外出警戒令が発動されるような
近未来を舞台にした話。

舞台が始まる直前に、観客から、「雨の日は何をして過ごすのが
一番楽しいですか」のような内容のアンケートが配られてそれに
回答するのだけど、そこで書かれた内容が舞台での一小道具に
過ぎなかった、というのはちょっと肩すかしだった。

せっかく、雨の日でも、外にわざと出ていく人たち(一種の愚連隊?)
「雨歩(あまふ)」の存在もあったのに、活かされていないのが残念。
絡めれば、もっと面白かった気がする。

「幼女X」は、テーマは「コンプレックス」なのかな?
大橋一輝のテンション高めの若干一人コント入ったような演技は、
静かな空間に笑いの効果を生んでいて。

そして、背景の映像や文字とリンクさせた演出もスタイリッシュで
驚きだったけど。

実験性に重きを置きすぎて、お話の方は…だった。
ラスト、幼女暴行犯を襲撃した男が自殺し、その血が海になっていく、
という幻想的なくだりは小説っぽくて綺麗だな、と少し思ったけど。
次回作に今回の作品の試みはぜひ活かして欲しい。特に映像回りは。
雑音

雑音

オイスターズ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/09/24 (土) ~ 2011/09/27 (火)公演終了

満足度

不条理ナンセンスコメディ
結構地元ネタが多かったような気がしたけど、特に知らなくても
全然問題ないと思います。逆に、へえ、名古屋ってそうなんだ、
みたいな感じで面白がれるかな。

笑いのタイプが結構同じネタを少しずつ変えながら繰り返していく
感じなので、そこが合わなかったらキツいかもしれないです。
現に、私は正直中盤までずっと続く長い会話の応酬に、何度も
眠気が襲ってきました。

ネタバレBOX

主人公の妹がバイトしているパン屋の子が出てきた辺りから
かなり面白くなってきた感じですね。主人公達が入った中華
料理屋の、やたら血の気の多い感じの店員二人を交えて
かなりのカオスぶりで。そこに、上手い感じで茶々を入れる
タクシーの女運転手の扱いも良かったです。

妹に告白する羽目に陥ったパン屋が、「今は指輪も花束も無いけど
ココから造り出せるから!!」とか言い出して、握りしめてこねくり回していた
パン生地を指輪代わりに嵌めさせて、妹からあっさり拒否されていたのが
この劇の笑いのハイライトじゃないでしょうか。

その後の、妹との駆け落ち相手(?)を前にしての、「僕の告白
断っておいて、あんなオッサンと駆け落ちだなんてー」とか
言い出すシーンも笑えたし、パン屋は本当に笑いのMVPですね。

ただ、そこに至るまでのネタがちょっと冗長過ぎて、時間が長く
感じられたので、この評価です。
震災タクシー

震災タクシー

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2012/11/09 (金) ~ 2012/11/11 (日)公演終了

満足度

う~ん、これはちょっと…。
震災当日に演出家が遭遇した出来事を(ほとんど)そのまま
作品化したもので、そのため、事件らしい事件も起こらず、
淡々と進む。それを興味深く観られるかで、この作品の
評価は決まって来るかと思います。自分には無理でしたね。

ネタバレBOX

震災後、仕事の関係でいわきに向かわなければいけない主人公は
うまく人を集めてタクシー相乗りで料金を安くしつつ、いわきに向かう
事に成功。

この話は、ほとんどがそのタクシーの中での主人公とタクシー運転手を
含む、大人5人と少女1人の会話で進行していきます。いくのですが。

直接的に震災の悲惨さや大変さに言及する事は無く、やれ、道が
凸凹で大変だ、通行止めで迂回を余儀なくされた、という、かなり
普通の話になっています。

作家や演出家の話によると、あの日震災に遭遇した人も、どこで
会ったか、どんな体験をしたかで、その受け取り方は違う、という事で
敢えて普通にしているのでしょうが、いかんせん平坦過ぎて
ちょっとつまんなかったです。

途中、休憩中に寄った高台から見える福島第一原発について、
「絶対安全って言われているんだから~」という、当時の実感なのか、
それとも若干の皮肉も入っているのか、判断に困るやり取りも
ありましたが、結構流されていった感じでしたね。

それにしても、途中の「走れメロス」ネタは何なんだろう。劇団の
過去作からの引用っぽいけど、正直、一見さんにはどういう意味を
持っているのか、全く分からないので、別のネタにして欲しかったです。

全体的に、いつの間にか始まって残尿感を残したまま終わる感じで
何だかな、っていうのが感想です。皮肉っぽいコメントを同乗の
客たちに鋭く投げかけいく女の子だけ面白かったな。
ヴィラ・グランデ 青山 ~返り討ちの日曜日~

ヴィラ・グランデ 青山 ~返り討ちの日曜日~

東宝

シアタークリエ(東京都)

2011/11/11 (金) ~ 2011/11/27 (日)公演終了

満足度

中途半端
竹中直人をはじめ、注目を十二分に集めそうな俳優陣。
一見面白く感じられそうな事前の内容。

これだけの要素を集めて、終幕後の釈然としない感は何故生まれて
しまうのか、自分でもよく分からないです。ただ一ついえるのは、相当
寝そうになった個所が数限りなくあった、ということです。

ネタバレBOX

倉持氏はコメディにただならぬセンスがあると思っていたのですが、
「審判員」「放り投げる」「グランデ」と、面白さが減退してきている
気がしてならないです。自身の劇団の活動休止もそうだけど、迷走
しているとしか思えない。

ホンのつまらなさ。この作品の限りない程の中途半端さは全て
ここに尽きると思う。

手癖のついた台詞回しに、必要があるのかどうか分からない場面多数。
居間の絵の話、もう少し引っ張るのかと思ったら、放り出されてるし
おかげでだらだら感、引きのばし感がものすごい事になっています。

本作品、圧倒的に俳優陣に助けられていると思います。

生瀬・竹中両陣の身のこなし、身体能力、息の合い方、間の取り方
全てが絶妙過ぎて、それだけでかなり笑いを取れてます。

それだけでなく、山田優は凄いね。あっさりとY字開脚を決めて
みせるのだから、どれだけ全身が柔らかいのだろうと思いました。

キャスティングに助けられている作品、としかいえないです。
本作に関しては。
前向き!タイモン

前向き!タイモン

ミクニヤナイハラプロジェクト

こまばアゴラ劇場(東京都)

2013/08/22 (木) ~ 2013/09/02 (月)公演終了

満足度

役者熱演も演出に難ありか
決して広いといえない舞台の上を、三人の役者が駆け回り、
走り回り、装置の移動やらとあちらこちらを移動しながら、
早口になったり、通常の喋りになったり。

まともに見せられるまで磨き上げるのに、なかなかの苦労が
あったのではないかと想像たくましくしてしまうような、そんな
舞台でした。役者各位、本当にお疲れ様でした!

ネタバレBOX

タイモン演じる鈴木将一朗は、激しすぎる動きに加え、
「良いタイモン」「普通のタイモン」「悪いタイモン」の
三人格を顔の表情で演じ分けなくてはいけなかったので
もう本当に大変でしたね・・・としか。

役者の頑張りに反比例して、演出の方はもう少し頑張れた
のではと思うところがちらほら。身のこなし方とか、腕の
振り方とか、少し単調すぎて、多すぎる台詞も相まって
途中かなり眠くなりました(苦笑

nibrollと比べてはいけないと思うのですが、もう少し変化が
欲しかったです。役者サイドはあれだけの台詞と動きを
破綻なく行うのに精一杯だと感じるので、その辺は演出側の
役目じゃないかと。
破産した男

破産した男

東京タンバリン

あうるすぽっと(東京都)

2011/10/06 (木) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度

非常に難解な現代劇
まずいいたいのが、開演前にかかっていた大谷能生の曲が
最高に良いです。洗練された舞台美術と相まって、雰囲気
作りに相当部分で貢献していたと思います。あのBGM、また
聴きたい。

内容に関しては、役者・演出がかなり健闘していた代わりに
肝心要のホンの方があまり面白くなかった、かな。

ネタバレBOX

今井氏の、時にコミカルさも織り交ぜた演技は非常に安定していて
本当に面白いな、と感じました。内田氏との絡みも見事で、移動式
扉に向かい合っての掛け合いの演技はこの作品中の笑いどころ。

また、演出も舞台背面、上部にスクリーンを設けての画像も含んだ
洗練されたもので、非常に上手いな、と。

ただ、台本は正直難解すぎて分からなかったです。
自分なりに噛み砕いて理解したところでは、自分の性格、性質は
実は自分が選んでいるはずの「モノ」によって規定されていて、
「モノ」を減らす、あるいは無くす事によって皮肉な事に、どんどん
本来の自分を見失っていってしまう、という話だったのかな。

それにしても、ラストはもう少しオチを効かせられる内容だし、
「縮む男」に関するモノローグが余りに多過ぎて、というか、
ほとんど今井氏の独白に終わってしまい、自分が興味深く感じた
内田氏演じる妻との会話部分が十分でなかったのが残念。
難しめの一人がたりを延々やられてもな、という感じです。
地域演劇の人々

地域演劇の人々

弘前劇場

アサヒ・アートスクエア(東京都)

2010/10/22 (金) ~ 2010/10/24 (日)公演終了

満足度

んー、印象に薄い
ずーっと観てて、あれっ!? もう終わったの? っていうのが正直なところ。

台詞の端々に「らしさ」は見え隠れしているのだけど、今回それが
発揮される前に打ち切られちゃった感じで、結局「ん、こういうのも
アリなのよね」で感想が終わっちゃうんです。 残念。

ネタバレBOX

「夜のプラナタス」大好きで劇中劇に使われたのは嬉しかったけど、
いかんせん長過ぎると感じた。 本編の半分以上を占める劇中劇って。。
「夜のプラナタス」の、台詞の妙を再確認する機会に終わっちゃって。
これだったら、再演にした方がよいかな、と。

自身を題材にした疑似ドキュメンタリー的な内容といい、メタ演劇
手法といい、やっている本人達は何がしかあるのだろうけど、大半の
観客にとっては、そこに意味を感じられなかったら「へー、それで?」で
終わってしまう危険があるから難しいのです。

結局、劇中劇に食われて本編の内容が薄くなり、つられて台詞(私は
弘前劇場の、軽妙だけどいきなり重みを醸し出す台詞に魅力を覚える)の
比重もぐっと減ってしまったのが、とどのつまり敗因なのかな、と。
ヌード・マウス

ヌード・マウス

Théâtre des Annales

赤坂RED/THEATER(東京都)

2012/01/24 (火) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

満足度

匂わせ過ぎている感じ
タイトル通りの感想につきます。

事故で前頭葉に損傷を負い、恐怖の感情を失うと人はどうなるか、という
テーマは面白かったんですが、色々貼り付け過ぎて頭だけ使う作品に
なってしまった感が否めないです。

会話も、特に序盤、余りに議論が衒学的で、でも余り本筋に関係
無かったので、作品に入り込みにくいだけに終わってました。

ネタバレBOX

沙智の見せ方をどうしたいのか、最後までよく分からなかったです。
「家族」としての愛なのか、「男女同士」の愛なのか、そこがイマイチ
ハッキリしなかったし、多分作者も敢えてハッキリさせないようにして
いたのだと思うのですが、想像通りで面白みに欠けました。

中盤、沙智が家に引き取られてきてから、彼女の隠された心情、
時折見せる危うさが表出されてきて、かなり面白くなってきたのに
綺麗に〆てしまってガッカリ。

個人的には、家族関係より男女関係をもっと強く打ち出した方が
この作品では緊張感が増して良かったんじゃないかと思います。
あとは…しのぶさんのレビューと大筋では雑感は一緒ですね。

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