アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】 公演情報 新国立劇場「アンチポデス【4月3日、4日のプレビュー、4月8日~13日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★

    「物語というものの本質とは?」というテーマと、フェミニズム的な要素とが劇の中で
    主導権を争った結果、どっちつかずの(作中でいわれる)「キメラ」的作品に着地して
    しまったような気がする。

    皆が語ることができ、聞くことができるとされている「物語」も、性差や人種などで
    見えない制限がかけられてしまう…っていう話に落ち着けた方が安易だけど良かった
    ような。

    ネタバレBOX

    あるビルの一室と思わしき場所に8人の男女。というか、男性7人に女性1人。
    彼らの目的は「クリエイティブの手で誰も知らないような偉大な物語を
    作ること」。

    といいつつ、場を取りまとめるリーダー・サンディの上には、「マックス」と
    いう“偉い人”がいる他、「ジェフ」や「ヴィクター」というプロジェクトでは
    同格と思われる人間との暗闘もあったりで、崇高なはずのクリエイティブは既に
    マウンティングと足の引っ張り合いなど、どこかの会社でまんま見られる風景が
    展開されてしまっている。

    サンディを筆頭に、各人が物語作りのたたき台となる「個人的な話」を披露する形で、
    プロジェクトは幕開けするものの、どこかで聞いたような下ネタトークに続いて、
    散漫な話が続き、「偉大な物語」が立ち上がる気配は一向にない。

    「個人的な話は個人的な話だからこそ誰にも聞かせたくない」と振り絞るように
    言い放ったダニーM2はサンディに呼び出され、翌日以降は姿を見せなくなり、
    外国籍と思しき参加者の1人は(おそらく)産業スパイを疑われて、IDを3か月も
    発行されず困窮、

    あげくの果てにはサンディのミソジニー、ゼノフォビア、ハラスメント気質が徐々に
    明らかとなっていき、自由で闊達なはずの現場は完全に停滞しきってよどんだ空気が
    ぷんぷんとなっていく。

    …多分だけど、後半で言われてたように、「サンディを喜ばせるため」が参加者全員の
    隠れた目的になっちゃってるから、プロジェクトが死産してしまったように思える。
    個人的なはずの話が誰かのための話になってるというか。

    サンディもプロジェクトより、外部や家族など個人的な折衝に忙殺されるようになり、
    残された(というか完全に遺棄された形の)メンバーたちは帰ることもできずに、
    ただただイミフな呪文を物語として発明したり、朦朧とした意識の中で1人がテキトーに
    口ずさみはずめた物語を絶賛したりする。

    書記係のブライアンが体調不良で部屋を去った後は、世話係のサラを代役に立てて、
    物語作りは紆余曲折を経て進むも、久しぶりにやってきたサンディは「現代は物語を
    新しく作り出せるような時代じゃない」という理由からプロジェクトの無期限凍結を
    宣言する(というか権力争いに負けた果ての帰結な気がするけど)。

    夢破れて呆然とする皆の中で、紅一点のエレノアが子供の頃に作った、分量にして
    ノート販ページほどの“物語”を慰みに披露し、「みんなこういう話好きだったでしょ?」と
    呼びかける形でいきなり幕を下ろす…といった話。

    これ、劇中では議論も対話もないんですよね。それっぽい形をしたものはあるけど。でも、
    プロジェクトが終わるまでにいい感じにまとまった物語っぽいものは萌芽してた。という
    ことは、物語は「議論」や「対話」を通じて効率よく生み出されるものではない、あくまで
    個人的なところを出発点にしないといけない、って感じ?

    でも、ダニーM2が言ったように、本当に「個人的なもの」は物語として物語られないんだよな。
    あくまで個人っぽいものが物語として扱われるわけで。エレノアの個人的な感性全開で書かれた
    幼少期の物語は物語の体を成してなかったしね…。

    そしてサンディがいなくてもプロジェクトは(ある意味ではかえって円滑に)回ったし、
    ブライアンがいなくてもサラが役割を埋めたし、物語の中では個人が誰かというのは
    究極的には関係ないのかも。個人がある、それだけで自然と物語は生まれてくる、そして
    それは資本主義的なもの、そして芸術的なものとも離れたものな気がする…。

    と感じたんだけど、そこまで考えないといけないのもなんかなって感じたりした。あと、
    閉鎖空間での同調圧力とか排除って、日本だけでなく世界的にみて普遍なんだなって何か
    おかしい気持ちにもなった。舞台や映画見るのってそういうの確認する作業の意味合いも
    あるよね。

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    2022/04/22 09:29

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