KAEの観てきた!クチコミ一覧

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ミュージカル 「TOP HAT トップ・ハット」

ミュージカル 「TOP HAT トップ・ハット」

梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2015/09/30 (水) ~ 2015/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★

レベル高いキャスト陣で、ワクワクの舞台
ストーリーは、お定まりの、単純なたった一つの勘違いを延々引き摺る話で、何ということはないのですが、何と言っても、美しく揃ったダンスシーンの見せ場の連続に、心躍りました。

キャスト陣は、演技力も確かな方ばかりで、役柄に合った、容姿端麗な出演者の舞台表現力は、誰一人存じ上げなくても、終始、観る者を惹きつける魅力に満ち溢れていました。

やはり、シアターオーブの来日ミュージカルは、どれも、クオリティが高くて、嬉しくなりますね。

今日は、友人の恩師のノーベル賞受賞の朗報もあったし、久々に、心躍る一日になりました。

ネタバレBOX

往年のハリウッド映画の舞台ミュージカル化作品だから、シチュエーションコメディのネタも、いとも単純明快で、ストーリー展開に、ハラハラドキドキということはありませんが、本当に、魅惑的なダンスシーンの連続に、心和む観劇タイムでした。

主要人物達の、オーバーアクションにも、笑みが零れる瞬間が何度もありました。

舞台構成も洒落ていて、ベニスに着陸する飛行機には、思わず、笑いが起こりました。

最後は、スペシャルカーテンコールもあり、写真撮影もオーケーなので、客席の一体感も加速し、嫌なニュースを忘れて、素敵な舞台芸術に、元気を頂きました。
第十七捕虜収容所

第十七捕虜収容所

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/09/29 (火) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

客演陣との違和感もなく、全て秀逸
内容は、以前、鈴木裕美さんの演出舞台を観ていたので、知っていました。

だから、スパイが誰か、最初から知っているのですが、それでも、展開に、終始目が離せないインパクトのある舞台でした。

主役のセフトンを演じた土田さんは、初見の俳優さんでしたが、一目で、その魅力に取りつかれました。小劇場で、こんなに華がある俳優さんを観るのは、久しぶりでした。

鈴木演出の舞台とは、スパイが誰かがわかる場面の設定がちょっと違うように記憶していますが、今回の舞台の方が、舞台ならではの緊迫感があり、演劇の醍醐味を感じさせて頂けました。

青年座初見の友人が、すっかり、劇団の虜になって、帰って行ったのが、創立以来応援していた父の娘として、大変嬉しい出来事でした。

期待に応えて下さった青年座に感謝!

ネタバレBOX

青年座の役者さんの力量は知っているので、客演陣との力量の差を心配していたのですが、全くの杞憂でした。

誰が、客演かわからないくらい、全員の演技が噛み合って、素晴らしい演劇芸術を堪能させて頂けました。

初見の演出、斎藤さんのお手並みも素晴らしく、阿部さんの舞台美術も、素敵でした。

養成所時代から、存じ上げている嶋田さんの裸体には、ちょっと驚かされましたが、引き締まったお体に、役者根性を観て、感激しました。今更ながら、息子が入団できなかったわけが、納得できると言うか…。(笑い)

いつもながら、豊田さんの真摯な演じ方には、感動します。

観客に、誰がスパイなのか、わかる瞬間の演出が、沈黙の中で、表現されて、秀逸の極みでした。もし、失敗したら、全てが水の泡になるだろうに、勇気ある演出と、役者陣の力量に感嘆しました。
NINAGAWAマクベス

NINAGAWAマクベス

ホリプロ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2015/09/07 (月) ~ 2015/10/03 (土)公演終了

満足度★★★

再演なら仕方ないか
きっと、初演当時は、斬新この上ない演出だったろうと思います。

でも、さんざん蜷川さんの舞台を観ているせいか、え、またこういう手法?と思う部分も、多々ありました。

さいたまネクストシアターの若い俳優さん達、健闘していますが、やはり、台詞が明瞭でない難点がかなり見受けられました。

吉田さんも、最初から、叫び過ぎな感じが…。

とにもかくにも、市村さんが、お元気に、楽日を迎えられたことを、拍手喝采したい心境でした。

照明と、美術は、大変幻想的で、美しく、この舞台が、外国で、賞賛された理由はよくわかります。

でも、何故、舞台が日本に置き換えられているのに、役名が原作どおりなのか、演出意図がわかりませんでした。これなら、「蜘蛛の巣城」の舞台化で良かったような気もするのですが…。

ネタバレBOX

一番驚いたのは、市村マクベスの首。市村さんに瓜二つでした。
こういう技術の進歩には、驚愕します。

老女お二人が、ずっと、仏壇の前に正座して、食事をしたり、布を畳んだり、2時間45分、座りっぱなしで、膝を痛められないかと、心配になりました。
趣向としては面白いけれど、俳優さんも、人間なので、あまり、老優さんに過酷な演出は控えてほしいと思ってしまいます。

橋本さんのバンクォーが、殺される場面の殺陣は、視的に美しくて感心しました。もっと、時代劇にも出て頂きたい気がしました。
カタルシツ『語る室』

カタルシツ『語る室』

イキウメ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/09/19 (土) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

心が洗われるファンタジー仕立て
たぶん、現実社会があまりにも、不条理の連続だから、今回の前川作品には、救いが用意されていたのかもしれないと、観ながら、作者の姿勢に感銘を受けました。

いつもの得体の知れない、不気味さはなく、久々に、誰にも、悪意のない、爽やかな劇後感の残るファンタジーでした。

不条理な運命に抗うことはできなくても、与えられた運命の中で、人間同士、できる限り、お互いに傷つけ合わずに、相手の気持ちに想いを馳せ、支え合いながら、生きて行こうよと、作者の前川さんが、今の世に、そっとメッセージを込めた作品なのではないかと感じました。

安倍政権のせいで、最近、心労が絶えず、体調不良でしたが、前川さんの静かなメッセージに、久しぶりに、舞台のマジックに、癒された帰路でした。

同じ国に生まれた、人間同士、できる限り、相手の想いを尊重して、他者の心に、土足で踏み込む生き方はしないで済むようにと、この芝居に癒されながら、痛切に願った観劇タイムでした。

ネタバレBOX

後半、全ての登場人物の関係性が見えて来ると、、この芝居の、人間愛に、何度も涙が込み上げて来ました。

警察官が、取り調べの最中に、相手を逃がしてしまう失態には、最近の警察の不祥事と重なり、作者の予見性に、驚いてしまいました。

戸籍のない人間は、、DV被害者の妻が、元夫の戸籍に子供が入ることを恐れて、かなり、実在すると聞いています。

そういう、現実の不条理を、巧みに織り込みながら、むしろ、現実社会が悲惨だからか前川さんは、今回の登場人物には、全ての人間に、相手を思いやる優しさを、加味しました。

だから、たとえ、やむにやまれず、犯罪を犯しても、全ての人物が愛おしく思えます。

真実を知っても、相手に言わない配慮も、ある種の優しさかもしれません。

人間誰しも、未来も過去も、どこかで、繋がっている。聖人君子なんていないけれど、お互い、同時期に生まれた人間同士、一人一人は微力でも、支え合って励まし合って、生きて行こうよと、作者が、そっと訴えている作品だったのだと、勝手に理解しました。

最後バーベキューのシーン、本当に、胸を打たれました。

不条理な世の中に、愛の詰まった芝居を、観て、心が浄化された思いです。
イキウメに、感謝!!
RED レッド

RED レッド

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2015/08/21 (金) ~ 2015/10/04 (日)公演終了

満足度★★★

セリフ劇としては致命傷
ひょっとしたら、難解な芝居ではないのかもしれません。
台詞がきちんと聞こえてさえいれば…。
むしろ、単純明快な、人間関係を描いた芝居なのかもしれません。
台詞が、聞き取れてさえいれば…。
語られる、様々な人物について、知識がなくても、たぶん、語られるセリフが耳に届けば、それほど、理解不能な芝居ではないと思えました。

小栗さんの舞台は、たぶんほとんどを観劇しています。
初舞台から、ずっと拝見しているので、舞台俳優としての進化を目の当たりにして、いたく感激もしました。

でも、残念ながら、彼が、自身の過去を語るシーンで、その呟くような台詞が、全くと言っていいほど、聞き取れないのです。
舞台役者としての経験豊富な田中さんでさえ、時々、聞き取れない語りをされていました。

これは、役者側の責任と言うよりは、演出側の不備だと感じます。
お二人が、せっかく、濃密な芝居を展開しているのに、会話劇としての、この実情には、致命傷的な欠陥を感じて、大変残念でした。

ネタバレBOX

高名な画家と、その助手を務める若い画家の、二人芝居。

ケンが、高名な画家、マーク・ロスコのアトリエを訪れ、彼の助手として、働き、辞めさせられるまでの、二年間の二人の関係性の変遷を描いた芝居だと、理解しました。

二人が、実際のキャンパスに、赤い絵の具を、塗りしきるシーンは、圧巻です。役者さんて、凄いなあと、心で、喝采を叫びました。

小栗さんは、忙しい俳優生活を営みながら、舞台の度に、確実に、成長されて、舞台役者としての、佇まいにも、実在感が増し、本当に、素敵な役者さんになられたなあと、ため息が出る程。
でも、残念なのは、ケンの隠された過去を、ロスコに誘導されて語り出す、呟き台詞が、私の席には、ほとんど届きませんでした。
7歳の時に、両親が殺されたことだけは、わかりましたが、幼い彼が、その死をどう受け止め、どう解釈し、生きて来たかが、台詞が聞こえないせいで、全く理解不能でした。

きっと、素晴らしい脚本なのだろうと思います。
もし再演があるのなら、今度は、万全を配して、この芝居をダイレクトに感じられる舞台環境で、上演して頂きたいと、切に願ってやみません。
二人だけのお葬式

二人だけのお葬式

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/09/17 (木) ~ 2015/09/23 (水)公演終了

満足度★★★★★

山路さんの魅力炸裂
青年座の舞台に、もっと頻繁に山路さんにご出演頂きたい、ホーム山路ファンとしては、この上なく、嬉しくなる演目でした。

岡本家の実情は、常人には、理解し難い部分もあるのですが、この作品の描岡本家の家族の在り方には、大いに共感できる部分がたくさんありました。

かの子の不思議な魅力に翻弄されながら、その生き方を喜びに変えて暮らす男達の在り方に、たくさんの男性の魅力が詰まっていた気がします。

かの子役の、津田さんは、佇まいの表現は絶品でしたが、何度か、大事な台詞を噛まれたのは、やはり残念でした。

新劇嫌いで有名だった、亡き父が、青年座だけは、旗揚げからずっと応援していました。私と同い年の青年座は、常に、時代と共に変化しながらも、成長と進化を確実に成し遂げて、本当に、頼もしい劇団だと、改めて、認識しました。

これからも、どんなジャンルの芝居でも、超一流で、あり続けていただけるものと確信しています。


ネタバレBOX

山路さんは、私の観るところ、役に自分を近づけるのではなく、役を自分に近づけて演じられる役者さんではないかとお見受けします。

ですから、この舞台の一平が、実際の岡本一平その人かと言えば、甚だ疑問はあるのですが、でも、この作品の一平さんは、とにかく素敵でした。

才能ある妻の協力者として、この夫像は、本当に、理想的で、羨ましくてなりませんでした。

妻と契約して以来、彼は、女を絶ったというのは、本当なのでしょうか?
岡本家の事情には、詳しくないので、わかりませんが、もし本当なら、後妻の八重子とは、男性として、癒される余生を送られたことを祈らずにはいられません。
赤坂大歌舞伎

赤坂大歌舞伎

松竹

赤坂ACTシアター(東京都)

2015/09/07 (月) ~ 2015/09/25 (金)公演終了

満足度★★★★

見事な七之助七変化!
初演の時には、老女役の演技が発展途上でしたが、今回の舞台では、七之助の七役の演じ分けは、お見事な成長ぶりを遂げていました。

台詞回し、声音、物腰、どの役も、きちんと、その人物の人となりを、表現できる才気を、この数年で体得された努力に、敬意を表します。

玉三郎さんの御指南の賜物と思うと同時に、七之助さんの歌舞伎役者としての覚悟を観た気がして、心底嬉しくなりました。

国生さん、新伍さん、鶴松さんの成長にも、目を見張りました。

中堅役者さんを次々失って、今後の歌舞伎の行く末が心配になりますが、こうして、若手が力をつけているのを観ると、将来への希望を感じます。

デモも、歌舞伎も、若い力が育っていることに、心から、期待します。

ネタバレBOX

勘九郎さんの「繰り三番そう」は、所作では申し分ない出来映えながら、表情が、まだ人間のそれで、繰り人形に見えないところが、残念でした。

あんなに、踊りで、成長ぶりを見せて下さっていた勘九郎さん、踊りの師匠が身近にいなくなってしまったせいではと、心配になりました。女形の踊りでは、その心配はないと思うのですが…。

どうか、三津五郎さんのビデオなどを観て、更に精進して頂きたいと、切望します。

一方の七之助さんは、初演では、早替りに重点が置かれ、それぞれの役の演じ分けまでには、まだ及第点はつけられない思いでしたが、今回は、七人の人物の出自や人物像まで、的確に演技表現されていて、お見事な進化を遂げていらっしゃいました。
ただ、欲を言えば、お光の情念をもう少し、踊りで、表現して頂きたかったような気はします。
後半の踊りの場面では、国生さんの、見目麗しい役者ぶりに息を呑みました。

出演役者の名前を、台詞に織り込む遊びは、昔から、歌舞伎の常套手段とは言え、実に巧みな織り込みぶりで、感心してしまいました。

ACTシアター前も、平成中村座さながらに、歌舞伎小屋の雰囲気が設えられ、楽しいお膳立てがなされていました。

赤坂歌舞伎も、ずっと定着してほしいと、思います。
ブロードウェイミュージカル「PIPIN ピピン」

ブロードウェイミュージカル「PIPIN ピピン」

キョードー東京

東急シアターオーブ(東京都)

2015/09/04 (金) ~ 2015/09/20 (日)公演終了

満足度★★★★

とても哲学的でした
若い頃に、日本人キャストで観た時には、あまり理解できない内容でしたが、還暦を過ぎた今観ると、とても哲学的なストーリー展開だったことに気づかされました。

キャストが、皆さん、実力派で、アクロバットとストーリーが、見事に融合して、素敵なエンタメステージを堪能しました。

デモに行かずに、劇場で、観劇している後ろめたさを感じながら、どうか、こういう素晴らしいステージを心から楽しめる平和な時代が続いてほしいと念じて観ていました。

ネタバレBOX

冒頭から何度も予告されるフイナーレのストーリーが、ピピンの意思で、刺激的でない普通の終わり方になるところが、示唆的で、胸に迫ります。

常に、人生に刺激を求めていたピピンは、平穏で、細やかな幸せを選び、普通人の人生を歩み始め、代わりに、少年のテオに、またサーカス集団が、魔法を掛けるラストには、人は誰でも、若い内は、果てしない夢を見て、大人になると、自分の限界と折り合いをつけて、余生を送るようになるという、普遍性を再認識させられました。

どんなに、崇高な精神を持っていても、人間は、生きるために、罪も犯さざるを得ないという、ピピンの挫折感は、痛く共感できて、辛い気持ちになりました。特に、民主主義がないがしろにされたこの日に観たから、余計に…。

でも、でも、少しでも理想に近づけるように、生きて行きたいと、切に感じた、劇後感でした。
オールスターチャンピオンまつり『五右衛門vs轟天』

オールスターチャンピオンまつり『五右衛門vs轟天』

劇団☆新感線

赤坂ACTシアター(東京都)

2015/07/29 (水) ~ 2015/09/03 (木)公演終了

満足度★★★

イベントとしては大成功
芝居としての評価は、全く不能ですが、お祭り、ファンイベントとしては、大成功!

客席で、新感線ファンとして、見守っていると、何故か幸せな気分に満ちて来ます。

とにかく、35年間も、これだけ、力技を貫いて、観客を楽しませてくれる劇団の力に、ただただ感謝したくなりました。

とうとう、30代の役者さんが皆無になったのだとか。

皆さん、体を張って、演劇を続けて下さっているパワーに、脱帽します。

閣下の特別出演も、嬉しかった!

まだまだ、活力を漲らせて、観客を楽しませて下さることを期待しています。

ネタバレBOX

賀来さんは、見栄えはいいのですが、若い割には、動きがシャープでないのが、残念!

ウマシカの中谷さん、とても40歳には見えません。

皆さん、心も体も全開だから、若くて生き生きとされているのだなあと、羨ましく拝見しました。

個人的には、粟根さんの活躍場面が多くて、嬉しく思いました。
外交官〈前売券完売/当日券若干枚あり〉

外交官〈前売券完売/当日券若干枚あり〉

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/07/31 (金) ~ 2015/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

骨太の歴史フイクション劇を堪能
やはり期待通りのコラボレーション舞台でした。

「東京裁判」同様、野木さんの創造する歴史フイクションドラマの、史実と見紛うまでの緻密な構成劇に、心底脱帽しました。

パラドックス定数の役者さんも、演技力には劣るところはないものの、年齢的に幅がないので、今回の青年座書下ろしの芝居には、早くから期待感を持っていました。

重厚な脚本、ぶれない演技力の結集、シンプルな舞台に、時代の流れを見事に投射した、演出力、三位一体のプロの演劇人の描く舞台の力に圧倒されながら、最後まで、目の離せない芝居でした。

今の時代に、多くの人に観て考えて頂きたい作品だと思います。

ネタバレBOX

内容は、多くの方が、詳細に書いて下さっているので、割愛しますが、サザンの「ピースとハイライト」にもあるように、我々戦後世代の国民の多くは、戦争への行程をほとんど習うこともなく、大人になります。そういう我々世代にとって、ドラマや映画や芝居で、戦争への道のりを追体験できる機会は大変貴重だと思います。

でも、野木さんの作品は、決して、ただ単に史実をなぞるのではなく、史実を踏まえた上で、作品に、豊かな想像力を加味して、圧倒的な構成力で、観る者を引き込む作劇者としてのコツを心得ていらっしゃるので、まるで、オリジナルサスペンスドラマのような、魅力に溢れているのだと思います。

青年座の熟練の役者力は、老いも若きも、皆さん、卓越していて、誰一人、嘘くさい人物がいなかったのは、さすがでした。

この作品の描いているように、外交官達が、心底、国を憂いて行動していたかは、やや疑問ですが、自ら学ぼうとしない限り、戦争前夜からの歴史に疎い私たちにとっては、これからの世の中をまた、戦争への道のりにしないためにも、時機を得た、素晴らしい上演演目だったと思います。

自らが最高責任者だと言うくせに、いつも全く責任を取ろうとしない、わが国の首相に、是非ご覧頂きたくなりますが、馬の耳に念仏かもしれませんね。
トロイラスとクレシダ

トロイラスとクレシダ

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2015/07/15 (水) ~ 2015/08/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

戦争の愚かしさ
蜷川演出で以前観た作品ですが、鵜山さんの演出には、人間と、戦争の愚かしさと、それによって起こる悲劇が、より鮮明に描かれていたように思います。

個性的な文学座の役者さんと、商業演劇畑の役者さんのコラボが、成功していました。

小田島さんの訳は、歌舞伎の隠語のように、耳を欹てて、聞くと、かなり意味深な台詞が多く、卑猥な言葉が、うまく修飾されて、さすが、プロのお仕事だなと感心しました。

戦争は、いつの世も、実に愚かしい理由から始まり、それに翻弄された人達は、勝っても負けても、多くの痛みと犠牲を伴うものだという事実が、いつになく、胸に迫る舞台でした。

どんな戦争にも、正義などないし、結局は、意に沿わない相手を抹殺するために行われる殺人行為でしかないということを、わが国の愚かな為政者達に、思い知らせたくなります。

ネタバレBOX

昔、トロイの王妃へカベを演じたことがあるので、登場人物の名前には、一応聞き覚えがあるものの、やはり、人物関係がわかり辛いので、チラシに、相関図が載っていたのは、観客に親切で、ありがたく思いました。

登場人物が、わざと、現代の服装なのは、この愚かな戦争が、現代にも通じるという暗喩でしょうか?そこまでしなくても、演出の意図は伝わるので、やはり衣装は、当時のままで良かったように、個人的には感じました。

クレシダを寝取られて、怒りに震えるトロイラスとダイアミディーズの一騎打ち場面は、3階で観ていてもハラハラするほどの迫真シーンで、よくお怪我もなく、これだけリアルに演じられるものだと、浦井さんと岡本さんの役者力にただただ感服してしまいました。

自分のせいで戦争が起こったのに、常に能天気な浅野さん演じるパリスと、その兄弟の横恋慕のせいで、悲劇的な最期を迎えるヘクターとトロイラスの、対比が、演劇として観ると、喜劇でもあり、また歴史として深く考えると、実に不条理な現実で、つくづく、戦争は、物語世界の中だけにしてほしいと、痛切に感じます。

ヘクター役の吉田さんにも、舞台俳優としての、進化があり、嬉しく拝見しました。

幕を使った簡易な装置が大変効果的で、スタッフ力も、相当レベルの高い舞台作品だったと思います。
エリザベート

エリザベート

東宝

帝国劇場(東京都)

2015/06/11 (木) ~ 2015/08/26 (水)公演終了

満足度★★★★

更に深みの増した花總エリザベート
今日は、井上トート、田代フランツ、京本ルドルフ、剣ゾフィー、山崎ルキーニ初見。

想像通り、井上トートは、見た目は美しいものの、エロティシズムが、かなり不足して、エリザベートとの関係性の変化に、ドキドキしない欠点が。死という、人間ではない存在の摩訶不思議な威圧感もないので、トートダンサーに埋没してしまう箇所もあり、存在感が希薄でした。コンサートで歌っている域を出ないトートでした。

山崎ルキーニには、猥雑さや凄味が不足。ただの狂言回しの域を出ず、終始、殺人犯ルキーニとしての、立居振舞が観られないのは残念でした。

京本ルドルフは、容姿端麗で、初々しくはあったものの、自殺前のダンスに、まだ型通り踊ることに気を取られているふしが見うけられました。将来が楽しみな俳優さんだと思いました。

片や、花總エリザベートは、各シーンでの演技が、より深まり、特に、「私だけに」のソロで、エリザベートの決意表明までの、心の軌跡が、手に取るようにわかる歌唱描写力に、感動を余儀なくさせられました。気品があるエリザベートで、本当に、長年待っていた甲斐があるなと嬉しくなりました。

花總、城田、佐藤、古川、香寿、尾上の組み合わせの日がもしあれば、是非もう一度拝見したいなと思います。

ネタバレBOX

新演出は、スピーディな展開を助けているのですが、その分、各人物の心象風景を濃密に描く場面が減って、舞台を淡白にした印象を受けます。

どちらかと言えば、コンサートを観ているような、観劇感でした。

従来の「闇が広がる」や、エリザベートとトートの、迫真の関係性が希薄になり、様々なデュエットで、感じた緊迫感や陶酔感を、あまり感じず、舞台に酔えないのが、少し残念だった気がします。

フランツは、やはり、禅さんが最高でした。今回のキャストは、フランツに限り、若過ぎたように思います。
天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)

天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)

Bunkamura

東急シアターオーブ(東京都)

2015/07/15 (水) ~ 2015/08/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

楽しくて、ノリノリになれる舞台
森くみさん主演での日本人キャストの公演がとても楽しかったので、期待して、来日公演に伺いました。

キャストの歌唱力は、どなたも素晴らしく、歌を聴いているだけで、ワクワクしました。

シスター達のノリノリのダンスにも、大いに元気を頂きました。

でも、演出や、場面転換の鮮やかさは、日本版の、山田演出舞台の方が勝っていたようにも感じます。

今度は、蘭寿とむさんや、石川禅さんなど、新たなキャストも加わっての再演があるようですので、こちらも、また楽しみです。

ネタバレBOX

主役のデロリス役の女優さんを始め、シスター役のキャストの歌唱力が抜群で、客席から、何度も喝采が聞こえました。

映画でも、舞台でも、シスター達のパフォーマンスの素晴らしさは、圧巻です。

最近、ニュースを観る度、虫唾が走る思いでいるので、本当に、精神を浄化されたように感じて、一瞬ですが、現実の憂さ晴らしができました。

叶うことなら、毎日でも観に行きたい素晴らしいエンタメ作品です。
ミュージカル『サンセット大通り』

ミュージカル『サンセット大通り』

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2015/07/04 (土) ~ 2015/07/20 (月)公演終了

満足度★★★★

5年後あたりに再演を!
初演を安蘭さんで観たので、今回は、濱田さんのノーマを観たくて、伺いました。

宝塚時代から、美しいコンビの娘役さんとして、注目していた夢咲さんが、素敵な佇まいで、ベティ役を好演され、退団後初の役柄を魅力的に勤めれて、今後のご活躍が楽しみになりました。

柿澤さんのジョーは、屈折した売れない脚本家の心情吐露は、お見事でしたが、ノーマを虜にする、セックスアピールは、やや乏しかったような気もします。

歌唱力の点では、皆さんに、文句なし!

濱田さんは、カテコのご挨拶で、ご自身が語られていたように、第一線から退いた大女優の、長年の淋しさや情念を表出するには、まだ引き出しが少し足りなかったようにも感じます。

安蘭さん共々、後5年後ぐらいに、また再演して頂けたら、お二人とも、ノーマの境地を更に色濃く演じられるのではと、楽しみです。

ネタバレBOX

初演時より、ジョーが、ノーマと出会うまでが、スピードアップされていたように、感じました。
その分、ノーマとジョーの関係性に重点が置かれた舞台になっていたような印象を受けました。

柿澤さんの、ジョーの心の葛藤表現をもう少し、丁寧に演じて頂けたら、更に深みが増すストーリー展開になるのではと思います。

初見のノーマとジョーの組み合わせを拝見して、むしろ、初演時に拝見した、安蘭さんと田代さんの演技が、優れていたことを思い知った観劇となりました。

でも、鈴木裕美さんの演出は、更に緻密になり、ジョーの死体が、プールに浮いていた様子や、ジョーを殺したノーマの逮捕に至るまでの、女優魂を見せるラストシーンの、恍惚とした、美しさや哀しみは、大変印象深い余韻を残して、秀逸でした。ノーマの最初の夫だったマックスの彼女への愛の深さが、如実に示されるラストに胸熱くなりました。
阿弖流為

阿弖流為

松竹

新橋演舞場(東京都)

2015/07/05 (日) ~ 2015/07/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

七之助の熟成演技に陶酔
私の物心ついてから、歴代一、嘘つきで、それでいながら、歴代一嘘が下手な首相が、戦後70年を数のマジックで、戦前元年にすり替えてしまった日、歌舞伎版の「阿弖流為」を観て来ました。

中島さんの脚本には、政府批判が散りばめられていたように感じます。  

七之助さんの熟成演技に、陶酔しました。「お染の七役」も楽しみになる演技力の躍進ぶりに目を見張ります。きっと、お父様が、喜んで観ていらっしゃりそう!

勘九郎さんの田村麻呂も、とても良かった!萬次郎さんや、亀蔵さん、新悟さんなんどの脇役の配置もお見事。どなたも適役でした。

だけど、ちょっと残念なのは、主役の染五郎さんに、初演時の熱量が感じられなかったこと。阿弖流為の心をもっとダイレクトに表現して頂けたら、最高だったのにと、やや不満が残りました。

まあ、でも、この時代に観ると、改めて、戦争の不条理を感じるし、つくづくよくできたお芝居だと、感じます。

歌舞伎と、新感線の融合ぶりにも、感服させられました。

ネタバレBOX

両花道を使った舞台は、華も躍動感もあり、久々に、歌舞伎の醍醐味を感じさせられました。

殺陣が、素早い新感線流と、歌舞伎の、拍子木による緩やかな所作をうまく融合して、見事な新しい形の平成歌舞伎に仕上げている、いのうえさんの手腕に脱帽します。

劇場に入る時に、リストバンドを渡され、ラストシーンで、一斉に、観客の腕が光るのも、壮観でした。

義に大がついて大義になると、途端に胡散臭いとか、数はやがて致命傷になるとか、田村麻呂の台詞には、脚本の中島さんの政府批判が投影されているようでした。

帝の実態がないのは、まるで、新国立競技場の迷走みたい。誰が、責任者なのか、統率者は誰なのかを揶揄しているかのようでした。
初演を観た時は、単に、エンタメ娯楽作としか観ていませんでしたが、改めて、この作品が投げかけている、社会の不条理を痛感します。

戦争の大義なんて、どこにもないし、結局は、民が傷つくだけなのです。

戦争の芝居が、いつまでも絵空事として、楽しめるエンタメである世界が続くことを輝く、リストバンドを見つめながら、祈りました。
七月大歌舞伎

七月大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2015/07/03 (金) ~ 2015/07/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

中車さん、お幸せ!!
10代の頃から、何度となく観ている「牡丹燈篭」、今回は、何と、玉三郎さんにお付き合い頂いて、歌舞伎役者としては新参者の中車さんが、伴蔵をやると言うので、これは何としても目撃せねばと、前日の戻り券を買って、歌舞伎座に馳せ参じました。

想像以上に、ドンぴしゃりの役を得て、歌舞伎役者としての所作も板につき始めた中車さんの熱演に、涙が出てしまいました。

それにしても、玉三郎さんの熟練のお峰という最強の共演者を得て、また玉三郎さんの手取り足取りの演出も受けつつ、この大役を、歌舞伎座で演じられる中車さん、本当にお幸せだと思いました。

吉弥さんのお米の幽霊っぷりも、傑作!

杉村さんが、松緑さんと演じた、大西信行版の脚本なので、いつもの歌舞伎の「牡丹燈篭」より、より現代にも通じる悲喜劇となっていて、胸に沁みる演目となっていました。

「熊谷陣屋」の方は、海老蔵の時代物に、進化が観られましたが、まだ特に言及するほどの出来映えではなく、途中、眠くなりました。

ネタバレBOX

円朝と、馬子久蔵の二役の演じ分けが見事だった、勘三郎さんの姿を偲びつつ、新配役の「牡丹燈篭」を心から楽しませて頂きました。

たぶん、適役だろうと予想した、中車さんの伴蔵は、所作も台詞も、合格点に近く、この先も、こういう世話物を中心にして、歌舞伎役者としても、精進されたいと、心底期待感が膨らみました。

大西脚本は、歌舞伎の演目で、ともすると冗長になる場面や、登場人物をカットして、枝葉末節を切り捨てて、より、伴蔵とお峰の、夫婦関係の変遷を、濃密に、見せて、人間ドラマとして、秀逸でした。

特に、いつも、伴蔵の豹変ぶりが、どこか腑に落ちないと感じる、殺し場が、土手の殺人ではなく、お六の夢遊病者のような風体に誘発されての殺しにしたことで、人間の心に住み着く、一瞬の魔がさした殺人として描かれて、ストーリーに真実味が増し、余計、幽霊に翻弄された仲良し夫婦の悲劇が、胸に迫りました。
海上自衛隊の父親による、子供4人の焼死事件があったばかりですが、彼も、この伴蔵のように、魔がさしたのではと、人間の業のようなものは、いつの時代にも、共通するなあと、感慨深くなってしまいました。

玉三郎さんの声が、3階席までは届きにくいのだけが、ちょっと残念でした。
cube三銃士 Mon STARS Concert

cube三銃士 Mon STARS Concert

キューブ

草月ホール(東京都)

2015/07/04 (土) ~ 2015/07/06 (月)公演終了

満足度★★★★★

超楽しかった!
最前列かぶりつきの席で、3人の銃士の手作り感溢れる、饗宴を堪能しました。

タイトルの意味に気付かなかったのですが、「三銃士」で、ダルタニアンを演じた井上芳雄さんが参加しているスターズを意識したものだったのですね。(笑い)

選曲から、構成まで、出演者3人が、知恵を絞って、ファンのために、心を籠めて、用意してくださったことが、如実に感じ取れるコンサートで、本当に、幸せな一夜でした。

この日のゲストの和音さんの澄み渡る歌声も加わり、至福の時間でした。

ネタバレBOX

橋本さんの登場で、会場に、騒めきと、笑いが巻き起こりました。

別に、笑いが起こる内容ではないのですが、思いもよらない、短髪姿に、ファンは、一様に、度胆を抜かれたようでした。

「三銃士」で、共演されて、今は、全員が、同じ事務所で、大の仲良しのようで、舞台からは終始、和やかムードが、醸し出されていました。

三人だけの、レミゼナンバーとか、アイドルトリオの歌のメドレーで、息荒くなって、懸命にステージングされているお三方に、ステージファンとして、何よりの喜びを頂けて、本当に、さとしさんファンでいて、良かったと思いました。

是非、恒例化してほしい企画です。
エリザベート

エリザベート

東宝

帝国劇場(東京都)

2015/06/11 (木) ~ 2015/08/26 (水)公演終了

満足度★★★★★

陶酔しました
花總さんが、宝塚を退団したその日から、いつかこの日が来るのを待ち侘びていたので、感無量でした。しかも、トートは、見目麗しい城田さんだし、ルドルフは、前回評判が良かった古川さん。門外漢の松也ルキーニには、不安を感じていましたが、意外にも、かなり満足の行く及第点。
香寿ゾフィーは、申し分ないし、個人的には、今までで、最高の理想的なキャスティングでした。

周囲の観客の存在を忘れて、陶酔できた観劇は、何年振りでしょう!

個人的ベストキャスティングの日は、全部観たくなりました。

ネタバレBOX

一路さんがこの作品を引退して以来、気に入った配役ではないので、しばらくご無沙汰していました。

今回は、待望の花總シシイと城田トートの組み合わせを観たくて、ずっと以前から、この日の到来を待ち侘びていました。予想通りの素敵なコンビでした。

松也さんは、声が良いのは知っていましたが、これほど、きちんと歌える方だとはおもいもせず、心底驚きました。
これまで、歌舞伎役者で、ちゃんと歌える人は少なかったので、これからは、ミュージカルにも、お声が掛かりそうに思いました。

エリザベートが、精神病院を訪ねるシーン、息子のルドルフの苦悩に力を貸せず、自死されてしまった時の母としての後悔。花總さんのエリザベートは、女心の矛盾と、皇后としてのプライドを繊細に表現されて、涙を誘われました。

舞台機構が、以前とかなり変わり、セットは、「ダンスオブバンパイア」風でしたが、主要人物が、1階の観客目線より、かなり高い位置で、芝居を展開することが多く、2階席の方が観やすいのではと感じました。
東海道四谷怪談

東海道四谷怪談

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2015/06/10 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了

満足度★★

演出意図が不明
南北大好き人間として、とても不満だらけの「四谷怪談」でした。

何もかも、中途半端な印象。

演出家が、この舞台で何を見せたいのかが、不明でした。

コクーン歌舞伎の真似したかったのかしら?と、ちょっと思ったり…。

お岩の悲哀と、伊右衛門の、人間の弱さが、表出されない「四谷怪談」は、私にとっては、フェイクでしかないと感じられました。

ネタバレBOX

まず最初に驚いたのが、有薗さん演じるお梅の見せ方でした。

わざと、男声で、下手な演技を装わせ、登場の時には、笑いが起こりますが、それがずっと続く程、面白いわけでもない。

この仕掛けは、この舞台で、どういう効果があるのかが、謎でした。

秋山さんのお岩は、最初から、迫力満点で、怖いし、内野さんの伊右衛門は、あまりにも能天気な雰囲気に終始します。

南北作品て、現代にも通じる、人間社会の闇を活写しているからこそ、面白いのに、お岩にも、伊右衛門にも、気持ちが引き寄せられない、似非「四谷怪談」には、正直、閉口してしまいました。

南北の描いた世界を切り捨て、新たな切り口で、斬新な演出をするなら、それはそれで一興ですが、ほぼ内容は、歌舞伎狂言を踏襲しているから、余計意図が読めませんでした。

戸板返しにしても、仏壇抜けにしても、本家の方が、どんなに迫真的か!
歌舞伎を中途半端になぞるなら、むしろ、全てが、オリジナルな演出で、森さんが描きたい「四谷怪談」をお披露目して頂きたかった気がします。

ただ、伊右衛門の母親の描き方は、ちょっと斬新で、面白く拝見しましたが。
ホテル・スイート

ホテル・スイート

劇団昴

俳優座劇場(東京都)

2015/06/20 (土) ~ 2015/06/27 (土)公演終了

満足度★★★★

人情の機微に心震えた
やはり、人間関係の微細な描写力に掛けては、ニール・サイモンの右に出る作家はいないなと思いました。

一柳さんと宮本さんの、ニコルズ夫妻の関係は、一般的にはあまりない事例ですが、お二人の演技が素晴らしくて、まるで、ドキュメンタリーを観ているかのように、感情移入して、何度も涙腺が緩みました。

片や、もう一方のマイケルズ夫妻の方は、シチュエーションコメディ担当で、こちらには、大いに笑わせて頂きました。

酒井さんの演出が、素敵な塩梅で、この二組のカップルに、命を与え、観ていて、とても心地よいお芝居でした。

現実社会が、何もかも不安でいっぱいな昨今、せめて、芝居でぐらい、こういう素敵な人情に触れて、心を潤したくなります。

ネタバレBOX

二組の夫婦の、歯車が噛みあわない、一つのエピソードから、物語が始まり、二幕は、それぞれの14年後という、洒落た二部構成の芝居でした。

ニコルズ夫妻は、夫が、両性愛の嗜好の持ち主で、妻のダイアナは、夫の気持ちが、男性にも向いてしまうジレンマで、愛情があるのに、離婚します。

14年後、再会したシドニーには、同棲中の男性の恋人がいますが、他にも、隠された真実があり、それを知った時のダイアナの苦悩の末の決断に、胸が締め付けられながらも、一方で、静謐な感動を味わいました。一柳さんが、難しい女性心理を見事に表現されて、感服しました。

ただ、マイケルズ夫妻の方は、完全にお笑い担当といった感じで、二組の夫婦の描き方があまりにも違うので、二組の夫婦事情を交互に描かれる構成には、少し、心が付いて行けない部分もありました。

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