阿弖流為 公演情報 松竹「阿弖流為」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    七之助の熟成演技に陶酔
    私の物心ついてから、歴代一、嘘つきで、それでいながら、歴代一嘘が下手な首相が、戦後70年を数のマジックで、戦前元年にすり替えてしまった日、歌舞伎版の「阿弖流為」を観て来ました。

    中島さんの脚本には、政府批判が散りばめられていたように感じます。  

    七之助さんの熟成演技に、陶酔しました。「お染の七役」も楽しみになる演技力の躍進ぶりに目を見張ります。きっと、お父様が、喜んで観ていらっしゃりそう!

    勘九郎さんの田村麻呂も、とても良かった!萬次郎さんや、亀蔵さん、新悟さんなんどの脇役の配置もお見事。どなたも適役でした。

    だけど、ちょっと残念なのは、主役の染五郎さんに、初演時の熱量が感じられなかったこと。阿弖流為の心をもっとダイレクトに表現して頂けたら、最高だったのにと、やや不満が残りました。

    まあ、でも、この時代に観ると、改めて、戦争の不条理を感じるし、つくづくよくできたお芝居だと、感じます。

    歌舞伎と、新感線の融合ぶりにも、感服させられました。

    ネタバレBOX

    両花道を使った舞台は、華も躍動感もあり、久々に、歌舞伎の醍醐味を感じさせられました。

    殺陣が、素早い新感線流と、歌舞伎の、拍子木による緩やかな所作をうまく融合して、見事な新しい形の平成歌舞伎に仕上げている、いのうえさんの手腕に脱帽します。

    劇場に入る時に、リストバンドを渡され、ラストシーンで、一斉に、観客の腕が光るのも、壮観でした。

    義に大がついて大義になると、途端に胡散臭いとか、数はやがて致命傷になるとか、田村麻呂の台詞には、脚本の中島さんの政府批判が投影されているようでした。

    帝の実態がないのは、まるで、新国立競技場の迷走みたい。誰が、責任者なのか、統率者は誰なのかを揶揄しているかのようでした。
    初演を観た時は、単に、エンタメ娯楽作としか観ていませんでしたが、改めて、この作品が投げかけている、社会の不条理を痛感します。

    戦争の大義なんて、どこにもないし、結局は、民が傷つくだけなのです。

    戦争の芝居が、いつまでも絵空事として、楽しめるエンタメである世界が続くことを輝く、リストバンドを見つめながら、祈りました。

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    2015/07/17 00:17

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