KAEの観てきた!クチコミ一覧

501-520件 / 855件中
わが町

わが町

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2011/01/13 (木) ~ 2011/01/29 (土)公演終了

満足度★★★★

これは素敵な「わが町」でした
私の「わが町」初見は、某老舗新劇の舞台でした。

それは、最初から最後まで、まるで、面白くなくて、評判の「わが町」って、こんなつまらない作品なの?とビックリしたのですが、こちらの「わが町」は、とても、素敵な町でした。

何より、若い主役二人の演技が、実に瑞々しく、観ていて、心が清らかになって行きます。特に、ジョージ役の中村さんの演技が最高でした。
エミリーの佃井さんは、常盤隆子さんを若くしたような、美少女で、この二人の心の通い合いを観ていると、自分までが、この町の住人の一人になったような気持ちになるから、不思議。

小堺さんが、たとえつっかえても、誠心誠意、この町を観客にわかりやすく紹介しようと努める姿に、自然と、涙が頬を伝う瞬間が幾度もありました。

稲本さんの生演奏のピアノの音色が、まるで、この町に、毎日照らす陽の光のように、円やかで、まるで、照明まで兼ねているような視覚効果すら感じました。

普通のよくある演劇には不可欠の葛藤場面なんて、全然皆無の、言わば夢物語のようなお話ですが、こういう芝居をこそ、珠玉の佳品と呼んでいいのでしょうね。

ネタバレBOX

エミリーとジョージの近所の幼馴染が、だんだん成長し、異性として意識し始める心の内の描写が、とにかく心憎い演出でした。
「赤毛のアン」のアンとギルバードの恋愛に憧れた少女時代を思い出し、もう還暦間もないおばさんが、顔を赤らめてしまいそうになりました。

二人の両親の配役も素敵!特に、鷲尾さん、何度も、心でブラボー叫んでしまいました。

結婚式大好きあばさんの増子さんも、相変わらず、いい女優さん!

3幕の墓場のシーンの会話が、少し聞き取りにくいのを別にすれば、これは、私の理想に近い「わが町」の上演形態だったと思います。
リチャードⅡ 【ご来場ありがとうございました】

リチャードⅡ 【ご来場ありがとうございました】

演劇集団 砂地

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2011/01/14 (金) ~ 2011/01/26 (水)公演終了

満足度★★★★

これは面白い!
全く観るつもりがなかったのですが、家族が、「演劇好きなら観るべし」と言うので、急遽行って来ました。

まあ!これは、家族の言葉を信じて良かった!

シェークスピアの台詞が、何度、今の日常の言葉として、心に跳ね返って来たことでしょう!!

演出がガジラ風と思ったら、船岩さんは、鐘下門下だったのですね。

凄く、私好み!次回公演も既に楽しみになりました。

ネタバレBOX

舞台上に散乱する服を黙々と畳む女性二人。
これは、また、某劇団風かと思ったら、この二人は、台詞なしに既に演技に入っていました。(これならOK!某劇団風は、開幕前にウロウロする人物の動作が芝居と関係ないから、嫌いですが)

で、この二人の会話が、とにかく、一言一句、面白いのです。
とってもリアル。私が好きな「そうそう、あるある!」の世界。
そして、この二人の日常会話と、シェークスピア劇の台詞が、不思議なことに、同じ土俵の上で語られている感がヒシヒシと、胸に迫ります。

今現在の日本の政界を彷彿とさせる台詞や演出とは言え、こんなに、シェークスピアの台詞を、今の言語として、咀嚼できる芝居は初めて観た気がしました。

稲葉さん、中村さん、藤波さん、福島さん、小瀧さん、守さんが、特に、それぞれの与えられた役をご自分のものとして体現されていたのが印象的でした。

いつも、如何なる時代、場所でも、権力者が必ず陥る現実、権力者に群がる群集心理、そして、演劇をすることの意味、政治の矛盾と混沌…
たくさんのキーワードが、クロスワードパズルのように入り組み、その様々な要素の見せ方がとてもおしゃれで、工夫に溢れ、終始、ワクワクして見入ってしまいました。
水飲み鳥+溺愛

水飲み鳥+溺愛

ユニークポイント

「劇」小劇場(東京都)

2011/01/18 (火) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★

初ユニークポイント
劇団名を体現している劇団だなというのが、第一印象でした。

作風の異なる2作品に、共通のテーマを取り入れ、面白い試みだとは思いましたが、たった2作上演の場合、これが、効果的かどうかは、半信半疑でした。

「溺愛」は、衣装とか、舞台セット等は、好感触でしたが、やや焦点がボケた印象がある演出のように思います。

「水飲み鳥」は、よくある題材で、役者さん達の演技に無理がなく、」楽しめましたが、猛一声、この劇作家さんならではの、特性みたいなものが感じられたらなあと、その点がやや不満でした。

ネタバレBOX

「溺愛」の導入、まさかの観劇のご注意から始まって、意外でしたが、どうも、この作品の質とはあまりにも、落差があり、奇をてらった感が残りました。
女優さんは、概ね好演されていましたが、進行役と言う、安木さんが、滑舌悪く、何度もトチられ、せっかくのアングラ風な作品の世界の誘いの邪魔をしたように感じます。
裸体から、徐々に、布を衣装にして行く様は、お見事!文字通り、絵になる世界で、舞台制作面では、この作品にピッタリなシュールさをうまく表現していました。

「水飲み鳥」は、音楽の挿入が、劇的効果を生み、これも、ワクワク!
女性陣が、好演でした。
開幕前のスタッフの準備も、興味深く見られました。

最後は、あれは、彼の夢?それとも、皆、黙って帰ったの?変なことが気になってしまって、どうもスッキリしません。(笑)
SWEETS

SWEETS

ehon

座・高円寺1(東京都)

2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★

ヒリヒリ度がやや度を越した感あり
役者さん、大熱演!脚本秀逸!舞台セット、名アイデア!音楽、耳に残る!
で、良い事尽くめなんですが、どうも、こういう題材、個人的に好みでないので、最初の内は、程好いヒリヒリ感が、演劇好きの脳を刺激して下さって、心地良かったものの、後半になって、どうも、そこまで、行かなくてもいいのにと、気持ちがそがれてしまいました。

でも、観て損をしたとは全く思いません。

福山さん、佐藤みゆきさん、佐々木さん、幸田さん、この4人の役者さんの熱演を見られただけでも、満足感いっぱいでした。

ネタバレBOX

クロムモリブデンの幸田さん、今回も、素敵です。
益々ファンになりました。同性の私でも、ドキドキですから、きっと男性客はメロメロになる方多いのでは?

大好きなみゆきさんは、今回も、またやって下さいました。どうして、この方はこんなに、何でもお上手なんでしょう!
彼女が演じた役を、一度として、これはあの時のあの役風と思ったことがありません。
いつも、その役その役の人生を、その舞台上できっちり演じて下さるので、観る度、ファン度が増して行くばかりです。

みゆきさん扮する千華が、聾の障害のある恋人に、手話で、自分の心情を懸命に吐露するシーンは、彼女の思いに共感して、ずっと、息を呑んで見入ってしまいました。

あまり、観終わって、心地良い舞台ではないものの、幸田さんやみゆきさんファンの方には見逃して頂きたくない気がする作品でした。
大人は、かく戦えり

大人は、かく戦えり

シス・カンパニー

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2011/01/06 (木) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

久しぶりに泣き笑いしました
「アート」で、大ファンになった、ヤスミナ・レザの脚本は、やはり期待通り、自分好みでした。

題材が題材なだけに、もっと深刻なストーリーになるのかと思いきや、これは、本当に、コメディ色の強い、娯楽作品でした。

日頃、苦手なタイプの女優さんである大竹さんの演技を楽しめるだろうかと、観る前は心配でしたが、今回は、それは杞憂で、これは、ベストキャスティングではと思う程。

4人の登場人物の、関係や、日頃の鬱憤が、リアルに提示され、まるで、隣の家の喧嘩を聞いているような臨場感!

深刻になり得る要素を盛り込みながら、それを突き詰めず、さらっと流す作劇が、芝居じみていないので、「そうそう、あるある」と単純に笑って観ていられて、最高のストレス解消にもってこいの傑作コメディでした。

ネタバレBOX

製薬会社の事なかれ主義や、夫婦間の心のすれ違い、子供の喧嘩に親が介入することの難しさ等、シリアスにしようと思えば幾らでも深刻に持って行ける芝居を、普遍性ある人間芝居に仕立て上げる、ヤスミナ・レザという劇作家の手腕に、心底恐れ入りました。

彼女の芝居は、以前、ある新劇の劇団でも上演しましたが、この時はちっとも面白くありませんでした。

この脚本も、演出方法を誤れば、コメディと、シリアスのどっちつかずのつまらない作品になった可能性も大で、これは、キャスティングと、演出の勝利を感じる作品でした。

論議や、会話に従って、攻守所を替え、夫婦関係や、対人関係が、激変する様を、舞台上の人物配置まで、綿密に計算した演出のお見事なこと!!

友人と二人、素晴らしい舞台作りに感激してそれぞれ、現実の家路につきました。
ろくでなし啄木

ろくでなし啄木

ホリプロ

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2011/01/05 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

これは大傑作!三谷さんは、やはり凄い
ここしばらく、映像、舞台共に、三谷作品に、万感の感銘を受けることなく、過ごし、大変残念な気持ちでいましたが、これは、久々の大傑作舞台です。

やはり、三谷さん、類稀なる名劇作家にして演出家だと唸り声を上げそうでした。

何もかも、お見事です。

これは、私にとっては、既に今年のベスト1になりそうな名舞台。
三谷ファンならずとも、演劇ファンには必見舞台だと感じます。

そして、勘太郎さん、私的には、演劇賞ものの好演でした。

何を書いても、ネタバレになりそうなので、後は、ネタバレにて。

ネタバレBOX

まず、冒頭の勘太郎さんの台詞、お父さんそっくりで、驚きました。

大河ドラマで、息の合った3人芝居だけに、本当に、全てにチームワークの見事さを感じる舞台。

これは、言わば、三谷版「藪の中」の構成。

一つの出来事を、登場人物それぞれが、語り、最後には、見事に、この作品の主人公として、啄木の作家としての生き様を浮かび上がらせる巧みな手法に舌を巻きました。

一幕終わりの勘太郎さんの意味ありげな台詞に、たぶん、観客全てが、興味津々、2幕の開幕を待ったことでしょう!
まるで、連続ドラマの次回を期待させるような、三谷さんの秀逸戯曲に感嘆しました。

そして、ニ幕の始まりは、今度は、タイトルの文字が逆さま。1幕で語られた、啄木の愛人の証言と食い違う、今度は、友人の告白。舞台は、今度は、友人側の部屋が、手前になります。
障子をうまく機能させて、一つの出来事を、両面から客に提示して行く技法も巧みなら、それを演じる3人のまた芸達者なこと!

ありとあらゆる職人芸のオンパレードで、演劇愛好者にはたまらないプレゼントの山でした。

二人の話で、食い違う記憶の林檎とみかん。そこに、啄木の作家として、人間としての苦悩をうまく表現させる小道具にした、三谷さんの劇作家としてのアイデアに、息を呑むほど、感激してしまいました。

歌舞伎や文楽等の舞台転換手法も使い、随所に遊び心もある演出にも感動します。
化粧

化粧

こまつ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2011/01/08 (土) ~ 2011/01/16 (日)公演終了

満足度★★★

どうなんだろう?
良かったのか、そうでもないのか、判断がつきかねる舞台でした。

確かに、わかりやすくなっています。
平さん、健闘されています。

でも、まだ、旅一座の座長、五月洋子のではなく、平さんの言う台詞に聞こえます。
特に、冒頭部分は、これは付いて行けないかもと感じました。

平さんは、先輩が長く登板した舞台を引き継がれることが多く、私も、昔、長く愛されたラジオ番組のパーソナリテイを引き継いだ経験があるので、稽古の時から、どんなにか、重責を感じていらっしゃるだろうかとお気持ちが察せられ、そういう視点に立てば、本当に、熱演されているのですが、残念ながら、まだご自分の役にはし切れていない印象がありました。

ネタバレBOX

本当に一人芝居で、他の登場人物は、全く、心にも見えません。

でも、これは、演出上、あえて、そういう風に見せたのかも。

そうだとしたら、大成功です。
木村演出より、早くから、この舞台には一人しかいない雰囲気が何度も提示され、最後は、洋子のフライイングで終わる。これは、洋子の見た悲しい夢だという解釈が明確に出ている舞台なんでしょう!

良いか悪いかは、お客さんの好みに委ねられる気がします。
蜘蛛女のキス 【グリーンフェスタ参加】

蜘蛛女のキス 【グリーンフェスタ参加】

International Stage Project

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/01/10 (月) ~ 2011/01/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

息子に感謝!!
この公演、二人の息子の関係者が多数関わっている公演ですが、もし、自分の息子がスタッフとして関わっていなければ、躊躇の末、見逃していたかもしれません。

だって、これ程のレベルのミュージカルになるなんて、全く期待していなかったので…。

御見逸れしました。本当に、身贔屓でも何でもなく、これは素晴らしいステージでした。

荻田演出の覇気のない再演舞台には比べるべくもなく、賞を取った初演舞台よりも、遥かに舞台構成において、勝っていました。

舞台装置、演出、振付、生演奏等、スタッフ技術も確かなら、キャスト陣のレベルも高く、これは、もしかしたら、今年度の私のミュージカルベスト5には必ず入りそうな気さえします。

何度も観ている作品なのに、終始、舞台に目も心も釘付けで、何度も感涙してしまいました。

長男のカンパニーがお世話になっている、奥山さんの実力を思い知りました。

いやあ、これは見逃さずに済んで、ラッキーです。

ネタバレBOX

舞台セットの監房が、蜘蛛の糸のようにも見え、秀逸な上、これを動かして、舞台転換する、技術と工夫が素晴らしく、まず感動!!

狭い舞台を目いっぱい、効果的に使っていました。
荻田演出では、大変わかり辛かったストーリーや人間関係が、巧みな演出によって、大変わかりやすく、同じ台本を使用してよくぞここまで、奥山色を出せたものだと感心します。

アンサンブルの、ダンスの巧みさにも感服。
特に、学生時代のミュージカルカンパニーの時から、切れの良いダンスで目を引いた荻原謙太郎さんが、演技面でも、上達され、この方は近い将来、必ず第一線で活躍されるに違いないと予感しました。

オーロラと蜘蛛女の、飯野さんも確か、10代の頃から、注目した女優さんですが、上背はないものの、ただ歌うだけでなく、モリーナを不安に陥れていく蜘蛛女の魔性までも、表出され、この舞台に、蜘蛛女とオーロラがいる意味を明確にして下さいました。

ウ゛ァテレンティンの麻田さんは、歌に安定感はややないものの特筆すべき美声で、歌に表情があるので、彼が歌う度に、聞き惚れてしまいました。
一方、モリーナの土倉さんは、演技面で、気持ちを持っていって下さり、このキャスティングは、大変成功だったと思います。

息子の養成所先輩の梶さん、鎌田さんは、さすが演技派。
他に、モリーナの母役の藤咲さん、アンサンブルの溝渕さんが印象に残りました。

本当に、素晴らしい舞台で、空席があるのがもったいなく感じました。
このカンパニーは、次回も必ず拝見したいと思います。
時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ

ホリプロ

赤坂ACTシアター(東京都)

2011/01/02 (日) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

豪華なキャストで手堅い舞台に
私は、映画も原作も知りません。
暴力的な映画は大の苦手だったので、どんなに話題になっても観ませんでした。
ですから、そういう思い入れがない分、この舞台はかなり楽しめました。

何しろ、キャスト陣が贅沢!!
脇役が皆上手いので、3時間近い舞台に全く飽きを感じる暇がありませんでした。

河原さんは、こういう系統の芝居の演出って、本当にいいですね。

内橋さんの音楽も、大変刺激的!!

ベテランのキャスト陣が、総じて楽しげに演じている様を観るのも、また楽しく、姪のお友達なので、デビュー前から噂に聞いていた高良さんが、舞台俳優としても、申し分ない容姿、眼力、声質の持ち主で、これは、引く手数多なのも、納得。また、楽しみな役者さんに出会いました。

ネタバレBOX

冒頭の歌が、歌詞が不明瞭なのは残念でしたが、ポップな演出で、暴力シーンの陰惨さなどはなく、芝居と言うより、一つのショーとして、大成功の舞台だったと思います。

老作家役の武田真治さんを、1幕最後の合唱場面まで認識できず、これは、なかなかの芸達者だと、感心しました。

老婆として殺されるだけのキムラ緑子さんの演技のお上手なこと!
部屋の彫像の吉田鋼太郎さんの表情の可笑しさ!
弾けた演技の禅さん!
お茶目な演技の橋本さとしさんの愛嬌!
下宿人の武田さんのユーモアたっぷりな演技!

ベテランの脇役陣が、本役でない部分も、実に楽しげに演じていて、内容と相反した楽しさ満載ステージでした。

小栗さんも、蜷川さんの「ハムレット」の頃は、硬直した演技だったのが、伸び伸びと演じていて、余裕が見えました。

原作や映画の印象がないので、これは、自分にとっては、かなり好感度の高い舞台となりました。
蠅の王

蠅の王

ワンツーワークス

吉祥寺シアター(東京都)

2011/01/07 (金) ~ 2011/01/12 (水)公演終了

満足度★★★★★

古城さんの描く企業社会はリアルでした
ついこの間も、同じような題材の芝居を観たばかりですが、こちらは、さすが、マスコミ企業に長く働いた経験のある古城さんの放つ作品だけあり、すこぶるリアルな展開でした。

「蠅の王」の原作は読んだことはないのですが、見事に、古城さんのオリジナル作品として完成を見たのではないでしょうか。

この劇団は、前身の一跡二跳の頃から、何回か拝見していますが、観る度、役者さんの技量がアップし、驚嘆します。

以前は、芝居の流れにそぐわず、浮いて見えることがあったムーブも、今回の作品では、うまく機能していたし、各人の動きも、以前とは見違える程、上達していてお見事でした。

パワハラの台詞など、あまりにもリアルで、観る側の胸に痛く、決して楽しい類のストーリーではないにも関わらず、脚本、演出、演技、セット、音楽、…どれを採っても、プロの仕事ぶりの結集で、そのため、観劇後の気持ちは、何故かとても高揚し、満足感のあるものになりました。

ネタバレBOX

最初、主役の氷室を、豚が冷ややかに取り囲むところから始まり、これは、またお定まりの、過去に遡る構成の芝居かと思いきや、その後、もう一度、氷室が、天下晴れて職場復帰するところから、始まり、新規に顔を合わせた同僚達と、和気藹々と、椅子取りゲームに興じて、観客の笑いを誘う導入から、徐々に、現実社会の悲惨な企業社会の照射に、移行して行く、演出構成が、本当に秀逸でした。

粗筋は、みささんが詳細に書いて下さっているので、割愛しますが、時間の経過を、この劇団独自の見せ方で、瞬時に理解させる、演出や、ムーブが、大変スタイリッシュで、尚且つ、それが余計に、この会社の人間関係をリアルに感じさせて、効果的でした。

気持ちが萎えて、闘争心を失った社員は、皆豚のお面で再登場し、遂には、リーダーとして心機一転の筈だった氷室までが、豚になるラスト。

アフタートークで、原作との相違点等、詳しく伺って、益々、古城さんの翻案能力の確かさを思い知ったことでした。

キャストの演技は、皆さん、迫真のレベルで、特に、同僚に意地悪の限りを尽す、目梶役の重藤さんのことは、本当に、憎らしくなるくらい、真に迫った演技でした。

本当に、小劇場の演出家、劇作家、役者さん達に、是非ご覧頂きたい舞台。みささんに全く同感です。
空中回転ブレンド ご来場ありがとうございました。次回は8月!!

空中回転ブレンド ご来場ありがとうございました。次回は8月!!

みきかせworks

ワーサルシアター(東京都)

2011/01/06 (木) ~ 2011/01/10 (月)公演終了

満足度★★★

モカのみ観ました
迷いましたが、やはりエリザベスは、おばさんには理解不能だろうと思い、モカブレンドのみ、観て来ました。

私の個人的好みから言えば、圧倒的に、フルフルの方が好きでした。
ただ、もう少し、両劇団とも、見せるリーディングの形式に配慮し、工夫があればと感じました。

次回公演は、またガラリと雰囲気が違う劇団になりそうで、これも今から楽しみです。

ネタバレBOX

今夜はパーテイの「さしのべられたくない手」は、私の大好きな童話「泣いた赤鬼」をモチーフにした芝居でした。
読み手と演じ手を全く別にした工夫は買いますが、この工夫が成功したようには思えませんでした。
読み手は、特に下手側に座った男性は滑舌もよく、ナレーションがお上手で、話が素直に頭に入って来ましたが、演者の方の動きが、演じるというレベルではなく、単なるジャエスチャーどまりで、残念でした。
また、ナレーションの方も、一々、読む前に役名を言うため、ストーリーの流れがその都度遮られ、物語の中に入り込めないように感じました。
「赤鬼と青鬼がいました」というような、同じフレーズのナレーションが何度も繰り返され、まるで、「100万回生きた猫」みたいな雰囲気でしたが、それも、同じフレーズの繰り返しが、効果的でなく、逆にしつこく感じた箇所もずいぶんありました。
最後の数分までは、ストーリー展開が「泣いた赤鬼」通りになぞっているので、もう少し、早くから少しづづ、そこから、変容して行くストーリーに仕上げた方が、観客の興味を引いたのではと思います。

fullfullの「ゴミと陰膳」は、以前公演した「ユンポーさんが来る」の繋がりの作品らしいのですが、私はこれを拝見していないので、この作品のみで判断するしかないのですが、とても、気持ちの良い佳品といった趣で、私は、ヒロセさんの紡ぎ出す世界が、個人的に好みなんだろうと感じました。
ヒロセさんの書くト書きが、まるで、小説のようで、情景が自然に頭の中に浮かび上がって来ました。
最近、身内を亡くした身には、特に涙を誘われる箇所も台詞もたくさんありました。
ただ、ストーリーにあまり、盛り上がりがないので、もう少し、作為的な葛藤場面があった方が、演劇的だったのではとは感じました。
サウンド・オブ・ミュージック

サウンド・オブ・ミュージック

劇団四季

四季劇場 [秋](東京都)

2010/04/11 (日) ~ 2011/03/12 (土)公演終了

満足度★★★★★

日本一のマリア誕生!
友人から、「土居さんがマリアやってるの、知ってる?」と、夢のような吉報が舞い込み、これは見逃したら、一生の後悔と、慌てて、四季版ニ度目の観劇。

予想通りの素晴らしいマリアでした。

昔から、日本での最適キャストは土居さんだと思いながら、四季が版権を取った以上、夢で終わると諦めていたのですが、まさかの初夢が、現実になりました。

ただ、残念なのは、大佐。もう少し、大佐らしいキャスティングはできなかったのかなあと、惜しまれます。

子役さん達は、初見時以上に、文句ない、演技レベルの高さで、これは、本当に嬉しくなる出来栄えです。
今日は違ったけれど、フリードリッヒ役で、あのライオンキング初演の名ヤングシンバ役だった海宝さんの弟さんも御出演の様子。
是非、そちらも拝見したかったと思います。

ネタバレBOX

前回は気にならなかったのですが、子ども達が、男爵夫人を迎えるために、「サウンド・オブ・ミュージック」を歌いながら、登場するシーン。陰コーラスにはせず、実際の子ども達のみの歌にした方が、あの場面の観客への訴えが強くなるように感じました。
「誰が歌っているの?」と夫人が聞いて、「子ども達」と答えるのに、出て来た子供達がまだ歌っていないのは、白けます。
冬に舞う蚊

冬に舞う蚊

JACROW

サンモールスタジオ(東京都)

2011/01/05 (水) ~ 2011/01/10 (月)公演終了

満足度★★★

濃密な舞台ではありましたが…
もう一声、この作品ならではの独自性がほしかったように思います。
冒頭すぐに結末がわかっているのに、最後まで観て、観客の立場としての意外性に欠けていました。

役者さんは、皆さん、達者で、大熱演!!
良いお仕事をされているばかりで、観ていて不快に思うような部分はないのですが、少し、細部に拘りがもう少しあってほしい気がしました。

ネタバレBOX

建築会社の不正と、そこに働く社員の悲哀を描いた作品ですが、全て、どこかで聞いたような内容で、この芝居ならではの、独自性がなかったのが、とても残念でした。

観客として、芝居の進行に連れて、新たに判明する事実がないのが、もうひとつ舞台にのめり込めない原因だったように思います。

脚本構成はなかなかお上手なので、もう一声、この作者ならではの工夫が観たかったと思います。

女子社員の服装が毎度同じなのも気になりました。三橋さんは、日が替わっても、着たきりすずめ。野村さんは、最後だけ上着を着ていましたが、これは、セクハラよけの対策とも取れますし…。

また、主人公の富島が、不正に加担しないと決めて、退社する時に、ホワイトボードに書いた文字が、私の席からは読めず、後で、その文字を見た登場人物が動揺したり、憤慨したりする度、何て書いてあるの??と気になりました。ひとりぐらい、悔しがるついでに、暗誦してほしかったと思います。

最後の場面、妻が夫の苦悩を知らずにいたことを後悔し、「ごめんね」と言うところで、終幕となるのも、予想がつき、やや肩透かしを食いました。

志賀が、事実の告白をして、それを裁判でも述べると約束するのも、やや安易な展開に思います。
告白すると約束しても、そうはしないのではと、観客に感じさせるラストの方が、真実味がありそうに思ってしまいました。
現実社会って、そんなに甘くありませんから…。
ボーナストーク

ボーナストーク

ホチキス

王子小劇場(東京都)

2010/12/24 (金) ~ 2010/12/31 (金)公演終了

満足度★★★★

何か、ホコホコと楽しめました
たぶん、これが今年の観劇収め。

ここでの大評判に釣られて観に行ってがっかりした経験も、2度や3度でなかったので、このホチキス初見も、恐る恐る王子に向かいました。
小玉さんをホームで観たいというただその一念で…。

結果はオーライ!とても楽しい芝居でした。

楽曲のセンスも良いし、小道具のレベルもなかなかで、感心!!

ただ、小玉さんて、いつもこういうキャラばかりなんでしょうか?
たまには、彼女のシリアス系演技も観てみたいなと思いました。

日替わりゲストの必要性をあまり感じなかったので、☆は、4つにしておきます。

ネタバレBOX

最後の、ハートウオーミングな終わり方が、単純に、自分好みで、ホッコリしました。
どこかの劇団主宰のように、人情劇と見せかけて、最後に、観客の足元を掬うようなあざとさがなくて、ほっとしました。

悪魔が、ビジュアル系バンドにも見えてしまうような衣装センスもなかなか。
この脚本、演出は、一見、あまり考えてないような雰囲気だけれど、実は、綿密に計算されているなあと、えらく感嘆してしまいました。

欲を言えば、最初の方の、祐三の台詞のトーンをもう少し、抑え気味にしてほしいなと感じました。ちょっと生理的に耳障りに感じたし、後半の彼の叫びが生きない気がしますので。

細野さんの天使が愛くるしくて、同性ながら、ときめきを感じました。
須貝さんの神父もとてもいい!

今年の見納めには、もってこいの舞台で、大満足。

終わりよければ、全て良しで、意気揚々と王子を後にできました。
ホチキスに感謝!!
GODSPELL ゴッドスペル

GODSPELL ゴッドスペル

サンライズプロモーション東京

シアタートラム(東京都)

2010/12/05 (日) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★

初演出は、及第点だと思う
演出が主演もする形態の舞台は、どうも、ハズレが多いという経験があり、彼が幼少の頃からの、古参ファンとしては、非常に恐る恐る観劇に出向きましたが、よくやっている、これは及第点ではと安堵しました。

記憶にある「ゴッドスペル」とは、歌詞も演出もずいぶん変化していましたが、キリスト教に詳しくないヒトにも、以前よりわかりやすくなっていたように思います。

ミュージカル畑の役者さんと、日頃から、立場を異にしている山本さんが、果してどんなメンバーをカンパニーの仲間に選ぶのか、大変興味がありましたが、予想以上に、皆さん歌もダンスもレベルが高く、安心して、観劇することができました。

冒頭曲の不協和音には些か不安を覚えましたが、徐々に、声も合い、アンサンブルの良さが観ていて、心地良く感じました。

ネタバレBOX

やや小ネタが余計な感じを受けたのと、ユダ役は、ベテランの舞台役者さんで観たかったと思った以外は、だいたい、楽しめた公演でした。

ユダとジーザスの関係性が、以前より、割愛されたのか、ユダの裏切りが唐突に感じたのが、やや残念な部分ではありましたが、逆に、誰にでも理解しやすくはなったと言える気もします。

ジーザスの山本さんは、2001年の主演舞台の方が、ジーザスの苦悩など、精神の内面描写が優れていて、強く胸に残った記憶があるのですが、今回の方は、演出に力を入れたせいか、ご自身のジーザス造形には、もう少し、更なる工夫があってほしかったようにも思います。

舞台上には、ジーザスになりきった役者さんがいたのではなく、常に、山本耕史さんそのヒトがいるような感覚がありました。
でも、ショーとして観た場合は、これで、大満足の部類です。
何しろ、ミュージカルスター、山本耕史を久々に満喫できましたから…。

最後の歌をかき消すのは、9・11の飛行機の爆音でしょうか?

原田夏希さんの素直な演技の仕方が、実に清々しく、胸を打たれました。

もう一度、更に練り直して、再演してほしい作品でした。

耕史さんの舞台で、立ち見のお客さんが大勢いたのは久しぶりに見たので、ファンとして、単純に、物凄く嬉しくなりました。
アベニューQ

アベニューQ

キョードー東京

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2010/12/15 (水) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★★

パペットならではの程の良さ
予想していたより、ずっと面白く、舞台に吸引力のある作品でした。

何しろ、楽曲がとてもいい!!

メロデイも、歌詞も、共に、記憶に残る楽曲がたくさんありました。

人種差別や、性描写等、かなり際どい表現がたくさんあっても、そこは、生身の人間ではなく、パペットなので、インパクトが程好く緩和されて、心への刺さり方が強烈でないのが、救われます。

キャストの皆さん、とても上手だし、久しぶりに、来日ミュージカルで、自分にとっての、及第点ステージでした。

ネタバレBOX

「大学は出たけれど…」という、言い方は、ずいぶん昔から言い古された表現ですが、これって、今も昔も、古今東西、経済大国では、普遍のテーマなのかもしれません。

何となく、「RENT]や、「コーラス・ライン」とかの既存ミュージカルも思い出します。

誰にでもある、人間の性や業とかを、パペットを通して、フィルター越しに描写して見せた演出の発想が成功していると感じました。

いろいろ思い悩む登場人物達の、若者の特有さも、うまく表出された作品。
最後は、人生達観ミュージカルで、幕となる、一種のハッピーエンドなのかな?
そこが、何となく、救われました。

ただ、アメリカの人種差別のランク付け等、外国故の、社会通念への知識のなさが禍し、今ひとつ、理解や共感のできにくい部分が、残念でした。
周りの外国人観客だけが大ウケしていると、何だか取り残された気分で、気持ち、淋しくなってしまったので…。
サンタクロースが歌ってくれた

サンタクロースが歌ってくれた

演劇集団キャラメルボックス

サンシャイン劇場(東京都)

2010/11/30 (火) ~ 2010/12/25 (土)公演終了

満足度★★★★★

有り得ないことを信じさせる力
久々に観るキャラメル。やはり、生で観るこの劇団には、独特の力があると感じました。

大方が、SFファンタジー的作品が多く、ストーリーだけを語ろうとすると、正直バカバカしいような印象すらあるのに、それを、観客に、まるで、有り得ることのように錯覚させて行く、劇団の天分のようなものを感じてしまうのです。

かつて、この劇団のファンだった時、やや生理的に耐えられないと感じた、女優さんのキンキン声も、今回の芝居では感じませんでした。

以前は、苦手な女優さんだった、岡田さつきさんや、大森美紀子さんの好演は、観ている内に、頬っぺたが緩む程、嬉しい発見でした。
三浦剛さんは、たぶん初舞台を拝見しています。「容疑者Xの献身」の時にも、良い役者さんに成長されたなあと感慨深くなりましたが、今回は、更に、役者としての器の広さを感じ、とても頼もしく思いました。

西川さん、上川さん、近江谷さんのトリオが揃う舞台は、何年振りでしょう?
3人が、同じ舞台上にいるだけで、涙モノでした。

やっぱり、キャラメルって凄い!!そう感じさせられた、25周年記念公演でした。観られた幸運に感謝します。

ネタバレBOX

先日、てがみ座で、「乱歩の恋文」を観たこともあり、余計、私には感慨深い作品でした。

初演は、テレビで観て、あまり面白くなかった印象が残っていたのですが、こういう、ストーリーの芝居は、やはり、劇場で体感すべきものだという気がします。

上川さんと、近江谷さんの掛け合いが、大変息が合って、観ているだけで、ニコニコしてしまう自分がいました。

パンフで知った、成井さんの、鈴木聡さんに対する思い、そういう同業の先輩に対する作家としての想いが、投影された作品だったのですね。そうして見ると、かなり奥が深い作品だなあと、改めて感じます。

テレビ明後日にいる役者上川隆也が言う台詞、「太郎は、僕じゃないけど、僕は太郎だ!」、聞いていて、涙が出そうになりました。
私の大好きな役者さんである上川さんは、きっと実際も、常に、そういう意識で役を演じて、その役を生きている役者さんなのだろうと、思います。

芥川の熱烈な読者である、すずこが、芥川の生涯を知っているが故に、想いを込めて吐く台詞にも、胸熱くなるものがありました。

ストーリー的には、大したドラマはないかもしれないけれど、この作品、改めて、大好きだと、認識しました。

うん、また時々は、キャラメルも観に行こうっと。
鳥賊ホテル

鳥賊ホテル

プリエール

座・高円寺1(東京都)

2010/12/10 (金) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★

「母」ではなく、「父」を語る芝居
結果論かもしれませんが、今回3度目の観劇となるこの作品に、私はそういう印象を待ちました。

実際は、ありえない設定の芝居なのに、私がこの作品に惹かれる理由はそこにあったのだと、今日改めて感じました。

自分の嫌いなタイプの筋立てなのにも関わらず、私がこの作品を愛してやまないのは、私も子供のように純粋無垢な父をずっと愛していたからではないかと思いました。

ですから、この作品を、母を描いた作品と捉えると、評価が下がる理由もよく理解できます。

ただ、今回痛切に感じたのは、この芝居、四男の演技如何に掛かっているという点。
私は、自分の初見だった2回目の上演時の花組芝居の役者さんが演じた四男の演技スタイルが一番好きだったので、その視点で判断すると、今回の芝居のおススメ度は、☆3になりました。

ネタバレBOX

2回目、3回目、今回と、今まで3回この芝居を観ています。
その自分の感覚として、フライヤーに、この登場人物の関係性をばらさない方がいいのではと思っていました。

でも、作者の岡本さんは、それで構わないという意見でした。

今回、先にも述べたように、これは4人の息子の父への思いを描いた作品ではないかと感じられました。
作者が意図したのかどうかは不明です。
でも、そう解釈すれば、4人の共通の母、小泉とわの実像が浮かび上がって来ないことが逆に納得できるのです。むしろ、母とわは、一緒にずっと暮らしている四男以外の兄弟にとっては、実体のない存在なので、だから、母の実像が浮き彫りにならないことが、逆に正当な気がするのです。

息子って、ある年齢になるまでは、父親に対して嫌悪感を持ちやすく、反発したりしますが、大人になって来ると、同性である父を理解できるようになるように思います。

長男が木馬に固執したのは、それが、自分の父との唯一の繋がりだったから。次男が、妻の父親に殴られて、父性愛に感情を揺さぶられたというエピソード。三男が、自分の父を騙した四男の父を憎む気持ち。
四男以外の兄弟は、父に対しての強い思いがあるということが、この脚本には実に秀逸に表現されているように、思うのです。

そういう視点で、この舞台を見ると、やはり、よく練られた脚本だなあと改めて感心します。

ですが、今回違和感を感じたのは、海の書割り。きゃるさんも書いていらっしゃいますが、あまりにも陳腐で、まるで、旅芝居の趣でした。
あれは、海は出さずに、観客に想像させるべきシロモノだという気がします。

黴菌(ばいきん)

黴菌(ばいきん)

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/12/04 (土) ~ 2010/12/26 (日)公演終了

満足度★★★

ケラさんにしては普通過ぎて、やや物足りない
女優陣の奮闘の目立つ公演でした。

同世代なのに、年々より魅力的になる高橋恵子さんの魅惑には、同性ながら、うっとり!
可愛く健気な妻のイヌコさん、ケラさんの奥様になって、益々魅力的なたまきさん、相変わらずの間での笑わせ方が絶妙の池谷さん、ともさかさんも、以前より素敵な女優さんに成長していて、この5人の女優さんの共演が饗宴の光を放っていました。

ただ、ストーリーの方は、小ネタや、台詞回し、独特の所作などで、瞬間的な笑いを取りはするものの、内容自体には、普段のケラさん流の毒も深みもなく、薄味で、わかりやすい反面、やや、噛みごたえに欠ける作品でした。

説明台詞に逃げてしまうことも多く、ちょっと、肩透かしを食った気もします。

音楽がやけに印象に残ると思っていたら、いつも主人が大絶賛している、斉藤ネコさんでした。

セットは、相変わらず、自分好みで、堪能させて頂きました。

ネタバレBOX

高橋恵子さんの存在が、とにかくいつものケラ芝居にない、異彩を放ち、そのため、良くも悪くも、ケラさんカラーが薄れ、万人受けする舞台になっていました。

ストーリーにも、あまりおどろおどろしさがなく、戦争の空気感もあまりなく、登場人物にも、やや、作為的な色を感じました。

特に、仲村トオルさん演じた、当主の情婦の兄が、何故、あの家にあんなに頻繁に顔を出す必要があるのかが全く説明がなく、単に、仲村さんに演じさせるための登場人物に見えて、残念でした。
大変、デフォルメされた人物で、観ていて面白くはあるのですが、役の説得力が希薄と言うか…

人体実験のために、クスリを飲まされ、人格の変わった、岡田さん扮する男が、何故回復したかの説明もなく、兄弟間や、父子の確執描写も、通り一遍でした。

もちろん、ケラさんも、キャストも、プロとしての腕は確かなヒトばかりなので、3時間25分、退屈は決してしないけれど、やや、その点が、物足りなく感じました。
ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルク

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2010/11/30 (火) ~ 2010/12/09 (木)公演終了

満足度★★★★

結果的に大満足しました
冒頭の、伊藤さんのシャルル7世の演技は、ちょっとひっくり返りたくなる程、学芸会レベルに見えて、正直どうしましょう?と不安を感じたのですが、それ以降どんどん良くなって、結果的に非常に満足して、客席を立つ事ができました。

何しろ、わかりやすい脚本と、拙い所作をそれらしく見せてしまう、演出の業の勝利という気がします。

ジャンヌ・ダルクモノって、幼い頃からずいぶん観ていますが、こんなに腑に落ちやすいジャンヌ・ダルクは初めて観た気がします。
ヨーロッパの歴史や、プロテスタントとカトリックの壮絶な争いや教義の違いをよく知らない観客でも、この作品なら、理解しやすかったのではないでしょうか?

また、白井さんの演出も、自分の肌に合うと言ってしまえばそれまでですが、たとえば、大勢の兵隊の殺陣など、出自も経験も様々なアンサンブルの力量は、確かに、一人一人の所作は素人レベルだったりするものの、演出の工夫が利いて、全体の群集として目に入ると、それなりに舞台世界に違和感なく連れて行ってもらえて、この点では、蜷川演出や、栗山演出の戦闘シーンな
どよりも、よっぽど、当時の様相を再構築しているように思えました。
群集や兵隊役の役者を個々に見せて、アラに気付かせてしまうことなく、一個の固まりとして、うまく機能させる演出方法に感嘆しました。

テレビの学園ドラマで、大ファンになった堀北さんは、予想通りの凛とした風情と、驚く程の口跡の良さで、見事に、ジャンヌ・ダルクを体現していたと思いました。男優陣が、押しなべて、何を言っているのか台詞の不明瞭なヒトが多い中、彼女の立ち姿には、大女優になる片鱗が見え、益々、今後に期待が持てました。
他には、馬木也さん、石黒さん、柴本さんの演技に強く惹かれるところがありました。

浅野さんは、いつでもどこでも、特有の演技で、浅野さんらしいなと思いましたが、それ程、出番がなかったので、良いアクセントになっていたように思います。

一番意外なのは、上杉さん。もう相当ベテランの舞台俳優さんなのに、ほとんど台詞が聞き取れませんでした。声は相変わらず良かったけれど。

ネタバレBOX

シャルル7世とジャンヌが兄妹だったという設定の芝居は初めて観ました。
そういうことは、私の良く知る梨園の世界でもよくあることで、この設定自体には、不満はないし、むしろ、肉親の普遍的な感情に繋げて、わかりやすくなっていたので、決して反対ではないのですが、ただちょっと、その情報の出し方が、突然過ぎないかと思いました。
もう少し、伏線を張ってくれていたら、もっと感動的になったように思うのですが。

このページのQRコードです。

拡大