わが町
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2011/01/13 (木) ~ 2011/01/29 (土)公演終了
満足度★★★★
これは素敵な「わが町」でした
私の「わが町」初見は、某老舗新劇の舞台でした。
それは、最初から最後まで、まるで、面白くなくて、評判の「わが町」って、こんなつまらない作品なの?とビックリしたのですが、こちらの「わが町」は、とても、素敵な町でした。
何より、若い主役二人の演技が、実に瑞々しく、観ていて、心が清らかになって行きます。特に、ジョージ役の中村さんの演技が最高でした。
エミリーの佃井さんは、常盤隆子さんを若くしたような、美少女で、この二人の心の通い合いを観ていると、自分までが、この町の住人の一人になったような気持ちになるから、不思議。
小堺さんが、たとえつっかえても、誠心誠意、この町を観客にわかりやすく紹介しようと努める姿に、自然と、涙が頬を伝う瞬間が幾度もありました。
稲本さんの生演奏のピアノの音色が、まるで、この町に、毎日照らす陽の光のように、円やかで、まるで、照明まで兼ねているような視覚効果すら感じました。
普通のよくある演劇には不可欠の葛藤場面なんて、全然皆無の、言わば夢物語のようなお話ですが、こういう芝居をこそ、珠玉の佳品と呼んでいいのでしょうね。
リチャードⅡ 【ご来場ありがとうございました】
演劇集団 砂地
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2011/01/14 (金) ~ 2011/01/26 (水)公演終了
満足度★★★★
これは面白い!
全く観るつもりがなかったのですが、家族が、「演劇好きなら観るべし」と言うので、急遽行って来ました。
まあ!これは、家族の言葉を信じて良かった!
シェークスピアの台詞が、何度、今の日常の言葉として、心に跳ね返って来たことでしょう!!
演出がガジラ風と思ったら、船岩さんは、鐘下門下だったのですね。
凄く、私好み!次回公演も既に楽しみになりました。
水飲み鳥+溺愛
ユニークポイント
「劇」小劇場(東京都)
2011/01/18 (火) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★
初ユニークポイント
劇団名を体現している劇団だなというのが、第一印象でした。
作風の異なる2作品に、共通のテーマを取り入れ、面白い試みだとは思いましたが、たった2作上演の場合、これが、効果的かどうかは、半信半疑でした。
「溺愛」は、衣装とか、舞台セット等は、好感触でしたが、やや焦点がボケた印象がある演出のように思います。
「水飲み鳥」は、よくある題材で、役者さん達の演技に無理がなく、」楽しめましたが、猛一声、この劇作家さんならではの、特性みたいなものが感じられたらなあと、その点がやや不満でした。
SWEETS
ehon
座・高円寺1(東京都)
2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★
ヒリヒリ度がやや度を越した感あり
役者さん、大熱演!脚本秀逸!舞台セット、名アイデア!音楽、耳に残る!
で、良い事尽くめなんですが、どうも、こういう題材、個人的に好みでないので、最初の内は、程好いヒリヒリ感が、演劇好きの脳を刺激して下さって、心地良かったものの、後半になって、どうも、そこまで、行かなくてもいいのにと、気持ちがそがれてしまいました。
でも、観て損をしたとは全く思いません。
福山さん、佐藤みゆきさん、佐々木さん、幸田さん、この4人の役者さんの熱演を見られただけでも、満足感いっぱいでした。
大人は、かく戦えり
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2011/01/06 (木) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
久しぶりに泣き笑いしました
「アート」で、大ファンになった、ヤスミナ・レザの脚本は、やはり期待通り、自分好みでした。
題材が題材なだけに、もっと深刻なストーリーになるのかと思いきや、これは、本当に、コメディ色の強い、娯楽作品でした。
日頃、苦手なタイプの女優さんである大竹さんの演技を楽しめるだろうかと、観る前は心配でしたが、今回は、それは杞憂で、これは、ベストキャスティングではと思う程。
4人の登場人物の、関係や、日頃の鬱憤が、リアルに提示され、まるで、隣の家の喧嘩を聞いているような臨場感!
深刻になり得る要素を盛り込みながら、それを突き詰めず、さらっと流す作劇が、芝居じみていないので、「そうそう、あるある」と単純に笑って観ていられて、最高のストレス解消にもってこいの傑作コメディでした。
ろくでなし啄木
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2011/01/05 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは大傑作!三谷さんは、やはり凄い
ここしばらく、映像、舞台共に、三谷作品に、万感の感銘を受けることなく、過ごし、大変残念な気持ちでいましたが、これは、久々の大傑作舞台です。
やはり、三谷さん、類稀なる名劇作家にして演出家だと唸り声を上げそうでした。
何もかも、お見事です。
これは、私にとっては、既に今年のベスト1になりそうな名舞台。
三谷ファンならずとも、演劇ファンには必見舞台だと感じます。
そして、勘太郎さん、私的には、演劇賞ものの好演でした。
何を書いても、ネタバレになりそうなので、後は、ネタバレにて。
化粧
こまつ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2011/01/08 (土) ~ 2011/01/16 (日)公演終了
満足度★★★
どうなんだろう?
良かったのか、そうでもないのか、判断がつきかねる舞台でした。
確かに、わかりやすくなっています。
平さん、健闘されています。
でも、まだ、旅一座の座長、五月洋子のではなく、平さんの言う台詞に聞こえます。
特に、冒頭部分は、これは付いて行けないかもと感じました。
平さんは、先輩が長く登板した舞台を引き継がれることが多く、私も、昔、長く愛されたラジオ番組のパーソナリテイを引き継いだ経験があるので、稽古の時から、どんなにか、重責を感じていらっしゃるだろうかとお気持ちが察せられ、そういう視点に立てば、本当に、熱演されているのですが、残念ながら、まだご自分の役にはし切れていない印象がありました。
蜘蛛女のキス 【グリーンフェスタ参加】
International Stage Project
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2011/01/10 (月) ~ 2011/01/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
息子に感謝!!
この公演、二人の息子の関係者が多数関わっている公演ですが、もし、自分の息子がスタッフとして関わっていなければ、躊躇の末、見逃していたかもしれません。
だって、これ程のレベルのミュージカルになるなんて、全く期待していなかったので…。
御見逸れしました。本当に、身贔屓でも何でもなく、これは素晴らしいステージでした。
荻田演出の覇気のない再演舞台には比べるべくもなく、賞を取った初演舞台よりも、遥かに舞台構成において、勝っていました。
舞台装置、演出、振付、生演奏等、スタッフ技術も確かなら、キャスト陣のレベルも高く、これは、もしかしたら、今年度の私のミュージカルベスト5には必ず入りそうな気さえします。
何度も観ている作品なのに、終始、舞台に目も心も釘付けで、何度も感涙してしまいました。
長男のカンパニーがお世話になっている、奥山さんの実力を思い知りました。
いやあ、これは見逃さずに済んで、ラッキーです。
時計じかけのオレンジ
ホリプロ
赤坂ACTシアター(東京都)
2011/01/02 (日) ~ 2011/01/30 (日)公演終了
満足度★★★★
豪華なキャストで手堅い舞台に
私は、映画も原作も知りません。
暴力的な映画は大の苦手だったので、どんなに話題になっても観ませんでした。
ですから、そういう思い入れがない分、この舞台はかなり楽しめました。
何しろ、キャスト陣が贅沢!!
脇役が皆上手いので、3時間近い舞台に全く飽きを感じる暇がありませんでした。
河原さんは、こういう系統の芝居の演出って、本当にいいですね。
内橋さんの音楽も、大変刺激的!!
ベテランのキャスト陣が、総じて楽しげに演じている様を観るのも、また楽しく、姪のお友達なので、デビュー前から噂に聞いていた高良さんが、舞台俳優としても、申し分ない容姿、眼力、声質の持ち主で、これは、引く手数多なのも、納得。また、楽しみな役者さんに出会いました。
蠅の王
ワンツーワークス
吉祥寺シアター(東京都)
2011/01/07 (金) ~ 2011/01/12 (水)公演終了
満足度★★★★★
古城さんの描く企業社会はリアルでした
ついこの間も、同じような題材の芝居を観たばかりですが、こちらは、さすが、マスコミ企業に長く働いた経験のある古城さんの放つ作品だけあり、すこぶるリアルな展開でした。
「蠅の王」の原作は読んだことはないのですが、見事に、古城さんのオリジナル作品として完成を見たのではないでしょうか。
この劇団は、前身の一跡二跳の頃から、何回か拝見していますが、観る度、役者さんの技量がアップし、驚嘆します。
以前は、芝居の流れにそぐわず、浮いて見えることがあったムーブも、今回の作品では、うまく機能していたし、各人の動きも、以前とは見違える程、上達していてお見事でした。
パワハラの台詞など、あまりにもリアルで、観る側の胸に痛く、決して楽しい類のストーリーではないにも関わらず、脚本、演出、演技、セット、音楽、…どれを採っても、プロの仕事ぶりの結集で、そのため、観劇後の気持ちは、何故かとても高揚し、満足感のあるものになりました。
空中回転ブレンド ご来場ありがとうございました。次回は8月!!
みきかせworks
ワーサルシアター(東京都)
2011/01/06 (木) ~ 2011/01/10 (月)公演終了
満足度★★★
モカのみ観ました
迷いましたが、やはりエリザベスは、おばさんには理解不能だろうと思い、モカブレンドのみ、観て来ました。
私の個人的好みから言えば、圧倒的に、フルフルの方が好きでした。
ただ、もう少し、両劇団とも、見せるリーディングの形式に配慮し、工夫があればと感じました。
次回公演は、またガラリと雰囲気が違う劇団になりそうで、これも今から楽しみです。
サウンド・オブ・ミュージック
劇団四季
四季劇場 [秋](東京都)
2010/04/11 (日) ~ 2011/03/12 (土)公演終了
満足度★★★★★
日本一のマリア誕生!
友人から、「土居さんがマリアやってるの、知ってる?」と、夢のような吉報が舞い込み、これは見逃したら、一生の後悔と、慌てて、四季版ニ度目の観劇。
予想通りの素晴らしいマリアでした。
昔から、日本での最適キャストは土居さんだと思いながら、四季が版権を取った以上、夢で終わると諦めていたのですが、まさかの初夢が、現実になりました。
ただ、残念なのは、大佐。もう少し、大佐らしいキャスティングはできなかったのかなあと、惜しまれます。
子役さん達は、初見時以上に、文句ない、演技レベルの高さで、これは、本当に嬉しくなる出来栄えです。
今日は違ったけれど、フリードリッヒ役で、あのライオンキング初演の名ヤングシンバ役だった海宝さんの弟さんも御出演の様子。
是非、そちらも拝見したかったと思います。
冬に舞う蚊
JACROW
サンモールスタジオ(東京都)
2011/01/05 (水) ~ 2011/01/10 (月)公演終了
満足度★★★
濃密な舞台ではありましたが…
もう一声、この作品ならではの独自性がほしかったように思います。
冒頭すぐに結末がわかっているのに、最後まで観て、観客の立場としての意外性に欠けていました。
役者さんは、皆さん、達者で、大熱演!!
良いお仕事をされているばかりで、観ていて不快に思うような部分はないのですが、少し、細部に拘りがもう少しあってほしい気がしました。
ボーナストーク
ホチキス
王子小劇場(東京都)
2010/12/24 (金) ~ 2010/12/31 (金)公演終了
満足度★★★★
何か、ホコホコと楽しめました
たぶん、これが今年の観劇収め。
ここでの大評判に釣られて観に行ってがっかりした経験も、2度や3度でなかったので、このホチキス初見も、恐る恐る王子に向かいました。
小玉さんをホームで観たいというただその一念で…。
結果はオーライ!とても楽しい芝居でした。
楽曲のセンスも良いし、小道具のレベルもなかなかで、感心!!
ただ、小玉さんて、いつもこういうキャラばかりなんでしょうか?
たまには、彼女のシリアス系演技も観てみたいなと思いました。
日替わりゲストの必要性をあまり感じなかったので、☆は、4つにしておきます。
GODSPELL ゴッドスペル
サンライズプロモーション東京
シアタートラム(東京都)
2010/12/05 (日) ~ 2010/12/26 (日)公演終了
満足度★★★★
初演出は、及第点だと思う
演出が主演もする形態の舞台は、どうも、ハズレが多いという経験があり、彼が幼少の頃からの、古参ファンとしては、非常に恐る恐る観劇に出向きましたが、よくやっている、これは及第点ではと安堵しました。
記憶にある「ゴッドスペル」とは、歌詞も演出もずいぶん変化していましたが、キリスト教に詳しくないヒトにも、以前よりわかりやすくなっていたように思います。
ミュージカル畑の役者さんと、日頃から、立場を異にしている山本さんが、果してどんなメンバーをカンパニーの仲間に選ぶのか、大変興味がありましたが、予想以上に、皆さん歌もダンスもレベルが高く、安心して、観劇することができました。
冒頭曲の不協和音には些か不安を覚えましたが、徐々に、声も合い、アンサンブルの良さが観ていて、心地良く感じました。
アベニューQ
キョードー東京
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2010/12/15 (水) ~ 2010/12/26 (日)公演終了
満足度★★★★
パペットならではの程の良さ
予想していたより、ずっと面白く、舞台に吸引力のある作品でした。
何しろ、楽曲がとてもいい!!
メロデイも、歌詞も、共に、記憶に残る楽曲がたくさんありました。
人種差別や、性描写等、かなり際どい表現がたくさんあっても、そこは、生身の人間ではなく、パペットなので、インパクトが程好く緩和されて、心への刺さり方が強烈でないのが、救われます。
キャストの皆さん、とても上手だし、久しぶりに、来日ミュージカルで、自分にとっての、及第点ステージでした。
サンタクロースが歌ってくれた
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/25 (土)公演終了
満足度★★★★★
有り得ないことを信じさせる力
久々に観るキャラメル。やはり、生で観るこの劇団には、独特の力があると感じました。
大方が、SFファンタジー的作品が多く、ストーリーだけを語ろうとすると、正直バカバカしいような印象すらあるのに、それを、観客に、まるで、有り得ることのように錯覚させて行く、劇団の天分のようなものを感じてしまうのです。
かつて、この劇団のファンだった時、やや生理的に耐えられないと感じた、女優さんのキンキン声も、今回の芝居では感じませんでした。
以前は、苦手な女優さんだった、岡田さつきさんや、大森美紀子さんの好演は、観ている内に、頬っぺたが緩む程、嬉しい発見でした。
三浦剛さんは、たぶん初舞台を拝見しています。「容疑者Xの献身」の時にも、良い役者さんに成長されたなあと感慨深くなりましたが、今回は、更に、役者としての器の広さを感じ、とても頼もしく思いました。
西川さん、上川さん、近江谷さんのトリオが揃う舞台は、何年振りでしょう?
3人が、同じ舞台上にいるだけで、涙モノでした。
やっぱり、キャラメルって凄い!!そう感じさせられた、25周年記念公演でした。観られた幸運に感謝します。
鳥賊ホテル
プリエール
座・高円寺1(東京都)
2010/12/10 (金) ~ 2010/12/19 (日)公演終了
満足度★★★
「母」ではなく、「父」を語る芝居
結果論かもしれませんが、今回3度目の観劇となるこの作品に、私はそういう印象を待ちました。
実際は、ありえない設定の芝居なのに、私がこの作品に惹かれる理由はそこにあったのだと、今日改めて感じました。
自分の嫌いなタイプの筋立てなのにも関わらず、私がこの作品を愛してやまないのは、私も子供のように純粋無垢な父をずっと愛していたからではないかと思いました。
ですから、この作品を、母を描いた作品と捉えると、評価が下がる理由もよく理解できます。
ただ、今回痛切に感じたのは、この芝居、四男の演技如何に掛かっているという点。
私は、自分の初見だった2回目の上演時の花組芝居の役者さんが演じた四男の演技スタイルが一番好きだったので、その視点で判断すると、今回の芝居のおススメ度は、☆3になりました。
黴菌(ばいきん)
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/12/04 (土) ~ 2010/12/26 (日)公演終了
満足度★★★
ケラさんにしては普通過ぎて、やや物足りない
女優陣の奮闘の目立つ公演でした。
同世代なのに、年々より魅力的になる高橋恵子さんの魅惑には、同性ながら、うっとり!
可愛く健気な妻のイヌコさん、ケラさんの奥様になって、益々魅力的なたまきさん、相変わらずの間での笑わせ方が絶妙の池谷さん、ともさかさんも、以前より素敵な女優さんに成長していて、この5人の女優さんの共演が饗宴の光を放っていました。
ただ、ストーリーの方は、小ネタや、台詞回し、独特の所作などで、瞬間的な笑いを取りはするものの、内容自体には、普段のケラさん流の毒も深みもなく、薄味で、わかりやすい反面、やや、噛みごたえに欠ける作品でした。
説明台詞に逃げてしまうことも多く、ちょっと、肩透かしを食った気もします。
音楽がやけに印象に残ると思っていたら、いつも主人が大絶賛している、斉藤ネコさんでした。
セットは、相変わらず、自分好みで、堪能させて頂きました。
ジャンヌ・ダルク
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2010/11/30 (火) ~ 2010/12/09 (木)公演終了
満足度★★★★
結果的に大満足しました
冒頭の、伊藤さんのシャルル7世の演技は、ちょっとひっくり返りたくなる程、学芸会レベルに見えて、正直どうしましょう?と不安を感じたのですが、それ以降どんどん良くなって、結果的に非常に満足して、客席を立つ事ができました。
何しろ、わかりやすい脚本と、拙い所作をそれらしく見せてしまう、演出の業の勝利という気がします。
ジャンヌ・ダルクモノって、幼い頃からずいぶん観ていますが、こんなに腑に落ちやすいジャンヌ・ダルクは初めて観た気がします。
ヨーロッパの歴史や、プロテスタントとカトリックの壮絶な争いや教義の違いをよく知らない観客でも、この作品なら、理解しやすかったのではないでしょうか?
また、白井さんの演出も、自分の肌に合うと言ってしまえばそれまでですが、たとえば、大勢の兵隊の殺陣など、出自も経験も様々なアンサンブルの力量は、確かに、一人一人の所作は素人レベルだったりするものの、演出の工夫が利いて、全体の群集として目に入ると、それなりに舞台世界に違和感なく連れて行ってもらえて、この点では、蜷川演出や、栗山演出の戦闘シーンな
どよりも、よっぽど、当時の様相を再構築しているように思えました。
群集や兵隊役の役者を個々に見せて、アラに気付かせてしまうことなく、一個の固まりとして、うまく機能させる演出方法に感嘆しました。
テレビの学園ドラマで、大ファンになった堀北さんは、予想通りの凛とした風情と、驚く程の口跡の良さで、見事に、ジャンヌ・ダルクを体現していたと思いました。男優陣が、押しなべて、何を言っているのか台詞の不明瞭なヒトが多い中、彼女の立ち姿には、大女優になる片鱗が見え、益々、今後に期待が持てました。
他には、馬木也さん、石黒さん、柴本さんの演技に強く惹かれるところがありました。
浅野さんは、いつでもどこでも、特有の演技で、浅野さんらしいなと思いましたが、それ程、出番がなかったので、良いアクセントになっていたように思います。
一番意外なのは、上杉さん。もう相当ベテランの舞台俳優さんなのに、ほとんど台詞が聞き取れませんでした。声は相変わらず良かったけれど。