KAEの観てきた!クチコミ一覧

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線のほとりに舞う花を

線のほとりに舞う花を

てがみ座

王子小劇場(東京都)

2011/04/12 (火) ~ 2011/04/18 (月)公演終了

満足度★★★

今度は音楽劇でした
いつも公演の度、変化球を魅せて下さるてがみ座の舞台、今回は、音楽劇でした。ミュージカルではなく。

相変わらず、長田さんの生み出す物語世界は惹き付けるものが多く、感心します。

こういう状況下で観ると、天災で多くの命や家や土地が失われる中、人間同士の争いによって、命を失うことの愚かさをより痛切に感じてしまいます。

昔読んだ、アゴタクリフトフの小説を彷彿として観劇していたら、当パンに、長田さん御自身が、影響を受けたと書いていらして、驚きました。

ただ、この作品、私の個人的好みからすれば、別の演出で観たかった気がしています。

大ファンの大西さんの手の仕草が絶品演技で、またしても感嘆ものでした。

ネタバレBOX

演出の前嶋さんの思考動物は拝見したことがないのですが、もしかしたら、この演出は、前嶋さんらしさが如実に出ている作品なのかもしれません。

牛を殊更見た目で表現することなく、演技や仕草で象徴的に演じる手法に反対はないのですが、この演出とそれに付随する演技方法から考えると、もっと全体的に、抽象的な舞台の一貫性がほしかった気がしました。

寓話風な芝居なのに、急に、現実的な果物や野菜などが登場し、統一感のない感じがしてしまいました。

双子の姉妹役のお二人、マルタの孫娘を演じた女優さんの3人の演技が印象的。中でも、マルタ役の大西さんの、豆の鞘を剥く手つきが絶品で、彼女の演じる「わが町」をいつか拝見したくなりました。

双子の姉妹の、お互いに届けられなかった往復書簡が、最後に無事、宛先に届く結末に安堵する、清涼感あるラストが素敵でした。

てがみ座だけに、実際届かずとも、お互いの心に届いていた手紙が二人の心の支えだったのだなと、感涙するラストです。

説明過多にならない長田さんにしては、母親に、姉妹の助命の手助けを申し出る際の兵士の台詞だけが、やや説明的に過ぎる感じを受けました。
CLUB SEVEN 7th stage!

CLUB SEVEN 7th stage!

東宝

シアタークリエ(東京都)

2011/04/03 (日) ~ 2011/04/17 (日)公演終了

満足度★★★★

エンタメの鏡のような公演
毎回欠かさず観ているクラブ7も、これで7回目。

いつも感じるのは、玉野さんと出演者達が、心から、お客さんの喜ぶ顔を念頭において、お稽古されている様子が、ジワジワと、伝播して来る素敵なステージだなあということ。

今回は、こういう状況下の公演で、尚一層その思いを強くしました。

玉野さんに感謝の気持ちでいっぱいになります。

最後に、客席に深々とお辞儀をされる玉野さんの姿を、是非、企業の不祥事で、上辺だけの陳謝をする人達にご覧頂きたくなりました。

久しぶりに、切れのよいダンスで魅了する、吉野、東山ご両人が、クラブ7に帰って来て下さり、天にも昇る気持ちでした。

このステージを届けて下さった皆さんに、心からお礼を申し上げたいと思います。

ネタバレBOX

ただ、再演を心待ちしていた、ダンスミュージカル「妖怪」が、以前と形を替え、台詞と歌付きになってしまったのはちょっと残念でした。
せっかくの心に響くステージの完成度が変容して、陳腐なありきたりの作品になってしまっていました。
衣装も、以前の方がセンスが良かったし…。

今回のゲスト出演の元宝塚の娘役トップの女優さんも、まだ、全てが、発展途上という感じでした。
もうお一人の先輩女優さんとの組み合わせのバランスにも、疑問を感じました。

しかし、いつまでも、吉野さんと東山さんのダンスには魅力が溢れていますね。
西村さんの味わいあるスタンスにも、このステージはいつも力を得ています。

体が動く限り、いつまでも続けてほしい、素敵な素敵なエンタメショーの決定版だと、また改めて感じました。
国民の映画

国民の映画

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2011/03/07 (月) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★★★

圧倒的史実を題材にする難しさを感じる
三谷さんが、実在の人物を描いた作品は、過去にもたくさんありましたが、この芝居の登場人物は、あの戦慄の史実の中に生きたナチスの将校とそれを取り巻く映画人。

だから、三谷さん御自身が、「これはコメディではない」と断る必要もないほど、どんなに面白く芝居が進もうと、最後は、戦慄の真実を描くことになります。

実在の画家の交流をオリジナルの芝居で描いた時と違って、私達は、幾ら舞台上で、三谷さんの描いたオリジナルのゲッペルスやヒムラーやゲーリングの人間性に、愛着を感じたとしても、彼等がしでかした史実は、厳然と記憶の中にあるので、どうしても、「これはフィクション」として受け止める心の許容範囲が狭められ、その点が、この作品に対する好意的評価に自然と歯止めを掛けるのではないかと、観劇中も終始感じてしまいました。

とは言え、白井さん、風間さん、段田さん、小日向さんという、それぞれ、かつて一世を風靡した劇団で活躍されていた4男優の夢の共演、シルビアさんと新妻さんのまさかの歌唱対決、意外な平さんの軽妙洒脱な演技、小林勝也さんの重厚さなど、観客の喜ぶ要素は山のようで、飽きることもなく楽しめた舞台であったことは事実でした。

新妻さんと、小林隆さんは、本当に素敵な役者さんになられて、益々ファン度が増しました。

ネタバレBOX

1幕が、登場人物の紹介とお互いの関係性の説明に終始し、ドラマが生まれずに終わったのが、作品的にはやや残念でした。

ヒットラーの名前を出さず、「あの方」と各人に言わせるのも、やや作為意的な感じがどうしてもして、最後に、「ユダヤ人」の台詞も、一度だけ、それも、女優がうっかり口にする中で出る台詞ですが、これも、やや作為的。
三谷さんの作劇の際の様子が想起されてしまう点が幾つか感じられて、舞台上の登場人物の後ろに、作者の存在が顔を出しているように感じられ、話の中に同化できない自分がいました。

ただ、役者さんの技量を堪能するという視点では、概ね成功作だと思いました。
中でも、驚いたのが、ナチスに協力したドキュメンタリー映画を撮った映画監督を演じた新妻さんの存在感。彼女の初舞台からは想像できなかった程の飛躍的な名女優ぶりで、お見事でした。
臭い芝居をする俳優で監督の風間さん、ドキュメンタリーで観た体型そっくりのゲーリング役の白井さん、老ベテラン俳優役の小林勝也さんの面目躍如の演技等、それぞれの役者さんの演技の祭典的な楽しさがあり、台本の粗を各役者さんがデコレーションして、見応えある舞台に具現化した感がありました。

キーマンになる、小林隆さんは、大好きな役者さんですが、彼の演技は、もしかしたら、劇中、ゲッペルスが、ヒムラーの態度を例にとって解説する、「名優は、黙って何もしないこと」に通じる演技法なのかもしれないと思ったりしました。

個人的には、大好きな作家、ケストナーの描かれ方に、やや三谷さんの創意工夫が過ぎたきらいがあるような不満を感じないでもありませんでした。
段田さん演じるヒムラーも、架空の人物なら大変面白いのですが、やはり、史実とのあまりにも落差を感じて、それがやや残念な部分でした。
月にぬれた手

月にぬれた手

舞台芸術学院

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/03/25 (金) ~ 2011/03/31 (木)公演終了

満足度★★★★★

舞台芸術学院の底力の結集が見事
還暦の舞台芸術学院が輩出した、たくさんの力あるアーティストの業が結集した舞台で、まずそのことに、演劇ファンとして、胸が熱くなる思いがしました。

舞台が東北ですから、どうしても、今現在の震災の被害が常に想起されて辛くもなりはしましたが、でもこの舞台を観られて良かったと心から思えて、感動をたくさん頂きました。

内容に関する感想は、後日改めて書くつもりですが、終演後の金内さんの誠意溢れる、観客への感謝のコメントに、思わず、もらい泣きしてしまいました。
先日のある公演後に感じた後悔の念は、この公演では微塵もありませんでした。

渡辺えりさんの劇作の才、御見逸れしました。

南へ

南へ

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2011/02/10 (木) ~ 2011/03/31 (木)公演終了

満足度★★★

いつも構図が一緒
キャスト陣は、皆好演されていました。

開演前の野田さんのメッセージには、一部で、共感し、一部で、反論したい思いがありました。

内容についての感想は、少し落ち着いたら、改めて書くつもりですが、蒼井さん演じる女性あまねが誰をモデルにしているかがわかる世代とそうでない観客で、意見が分かれる気がしました。

〆(しめ)

〆(しめ)

自転車キンクリーツカンパニー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/03/16 (水) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度

今、観るべき芝居ではなかった
震災後、予約済の公演をずいぶんキャンセルし、今日も迷いましたが、チケットも購入していたので、あれ以来初めての観劇となりました。

行かなければ良かったと後悔しています。

あまりにも、脚本に求心力がなく、ごくごく個人的な、どうでも良いような内容なので、震災前なら、まあ、それなりに楽しめたのかもしれませんが、とても、そんな気にもなれず、役者さんにも、そういう内容に対するジレンマがあったのか、楽日だと言うのに、どこか心ここにあらずの演技が感じ取れて、この時期に上演すべき作品内容ではなかったなと、役者さんがお気の毒にも感じました。

また、これは声を大にして、訴えたい思いですが、作演出である主宰の、人間的な常識や見識を疑う部分がたくさんある作品であり、上演でした。

ネタバレBOX

死者、行方不明者、3万人近く、被災者20万近くという、戦後最大の同胞の悲劇の最中において、お気楽な虚構世界で言語化してはいけない、NGワードの台詞があまりにも多く、耳を覆いたくなる思いがしました。

たとえ台本が完成し、稽古が進んでいたとして、「死ぬ」とか、「非常時」というような、現実世界の状況下に、あまりにも思慮の欠ける台詞の差し替えは可能だったと思うし、人情があれば、こうした場合の変更はするべきだと強く感じました。

特に、主人公が、ライトノベルの原稿の締め切りから逃れたくて、「大型台風とかが来て、パニックで、原稿締め切りが延期しないかな」などど、のたまう台詞には、これを書いてそのまま上演する作家で演出家の見識を疑い、唖然としました。

飯島さんは、開幕前に、携帯と、地震の際の避難経路の説明を、事務的に注意はしたものの、震災や、この時期に劇場に足を運んだ観客へのメッセージは一切されず、終演後、瀧川さんが、キャストとして挨拶されただけなのも、大変気になりました。
こういう状況下では、劇団主宰が、何かコメントすべきだと感じてしまうのですが…。
音楽劇 わが町

音楽劇 わが町

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2011/03/03 (木) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

音楽劇化面では成功作
オリジナル楽曲による音楽劇化と聞いて、仕上がりを懸念しましたが、「わが町」の音楽劇としては、大変良い仕上がりの舞台だったと思います。

特に、1幕で、その良さが生かされていました。
楽曲も、あの戯曲の雰囲気に合って、とても効果的でした。
音楽を入れることで、余計体感時間が長くなるのかと思っていたら、いつも長く感じる部分がうまくカットされていて、テンポも良く、厭きませんでした。
ただ、3幕の演出面には、やや疑問が残りました。

土居さんの歌声にはいつも癒されるし、演技も、嬉しくなる程、お上手でしたが、でも、欲を言えば、エミリーとジョージは、せめて、20代の役者さんをキャスティングしてほしかったと思いました。

ネタバレBOX

最初のシーン、別役さんの芝居が始まったかと思いました。(笑い)

1幕のグローウ゛ァーズ・コーナーズの学者の解説部分など、いつもちょっと冗長に感じる部分が一部カットされ、台詞がほぼ歌詞にそのまま転用されて、素敵な音楽劇になっていました。
皆さん、台詞のない動作が自然で、芝居じみていなくて、すんなりと、わが町の住人に加わる心地がして、好感の持てる幕開きとなりました。
私が過去に観た2つの舞台とは反対で、ギブスさん宅が上手、ウェブさん宅が下手という配置。
ギブス夫人役の麻乃さんは、いつ観ても間口の広い女優さんだなと感心しますが、今回の役も素敵に演じていらっしゃいました。

2幕は、ギブス夫妻と、ウェブ夫妻の2つのデュエットが、視覚聴覚共にとても、効果的で、音楽劇にしただけのことはあるなと感心しました。
ただ、若い二人の恋が通じるシーンが、どうしても、土居さんと、粟野さんの見た目の大人っぽさが邪魔をして、進行係が台詞で言うような、自らの初恋の頃を思い出すというような心情にはなれず、ちょっと残念。
特に、粟野さんは、30代の酒屋さんが、プロポーズしてる風情で、ここは、やはり、もっと若い役者さんで観たいなと思う場面でした。

1幕、2幕と、軽快に、心地良く舞台が運び、これは、過去最高作かなと思い始めたところ、3幕は、逆に、演出的に?の多く感じる舞台進行でした。
もう死者となった、ソームズ夫人やギブス夫人の喋り方が、おどろおどろしくて、あれでは、まるで、妖怪のようでした。エミリーに諭しているのではなく、まるで、脅しているみたいで、何だか、いきなり拍子抜けしてしまいました。心なしか、3幕になったら、客席の雑音も多くなった気がします。
3幕が一番、作者の訴えたい部分ではないかと思うのですが、その点、やや残念な幕切れとなりました。


でも、土居さんの豆の鞘を剥く仕草のお上手なこと!進行役の原さんの流暢さ、ダンディな川井さん等、芸達者揃いの「わが町」の住人は、今まで観たどの町より、クオリティ高い住人の住む町ではありました。
月いちリーディング/11年3月

月いちリーディング/11年3月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2011/03/05 (土) ~ 2011/03/05 (土)公演終了

満足度★★★★★

実際観劇した戯曲なので
今日は、初めて、実際自分が舞台で拝見したことのある戯曲が取り上げられたため、芝居で感じたことと、リーディングだけで聴いた場合と、これ程、感じ方に差があるのかと、驚く点が多く、自分にとっても、新たな発見が多い、月1リーディングとなりました。

ゲスト劇作家の横内さんが、おっしゃったように、ヒロセさんは、大変演劇を愛していることがわかる作劇をされる方だと、私も全く同感でした。
そこで、横内さんは、「最近、あんまり演劇好きじゃないんじゃない?って思う芝居が多くて…」とおっしゃってましたが、それも同感。

ヒロセさんは、劇団を主宰し、ご自身で作・演されているので、ご本人も感じていらしたように、役の配分とかが、キャストに均等で、また戯曲に多くを盛り込まず、演出で補うというやり方が定着している感じを強く受けました。

完成した芝居として観ると、大変面白い部分が、戯曲だけを読むと、足りない点がかなりあるのではと感じました。

初めて、ゲストで参加された劇作家や演出家の方にとっても、たくさん発見があったように思う月1リーディング、来期も、5月から開催とのこと。

やっと、いろいろな面で定着して、今後の発展が益々楽しみになりました。

今日は、またキャストも演技派揃いで、楽しめました。
息子が大絶賛していた瓜生さん、やはり素敵な味のある役者さんでした。
てがみ座にご出演だった西田夏奈子さんのスターの追っかけも愉快でした。舞台では、大西玲子さんが熱演された役で、これも絶品演技でしたが、西田さん演じるこの役も、実際の舞台で観てみたくなりました。

ネタバレBOX

ヒロセさんが、論議の後の感想で、思わず、感極まって涙声になっていました。「(こういう場を設けてくれる)協会に感謝する」と言われて。

それを聞いていた私も全く同感!!

篠原さんと長谷さんの御尽力には頭が下がるばかりでした。
ドロシーの帰還

ドロシーの帰還

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

全くダークとは程遠い大感動作でした
こちらの演劇口コミサイトで、「ダークだ」という観て来たコメントを見て、行く前はかなり心配でしたが、私が実際に観て大好きになったほさかようさんは、私の勘を裏切ることはなく、今回の作品も、素敵な素敵な感動作で、ほっとしました。

群像劇に見せて、やはり最後は、ドロシーがこの作品の主人公だったとわかる、秀逸な劇構成。

セットの書割りの背景画もお見事。

どなたかの表現を拝借するようですが、まさに、職人芸のオンパレード。

帰宅後読んだ当パンの、ほさかさんの挨拶文に、また感銘を受けました。

いろいろ、現実社会の歪みを知ったこのサイトですが、こういう素敵な劇団とも巡り会えたことを思えば、この口コミサイトには、感謝しないといけないなとも感じます。

ネタバレBOX

ほさかさんが、紡ぎ出した、この作品の登場人物の語る言葉が、度々、心にビシバシ響きました。

そういう主旨のアンケートを書いて帰宅して見た当パンに、ほさかさんが、「観て下さった方に響けばいいと思います。それがどんな響き方だったとしても。」と書いて下さっていました。

スゴイ!!作者のほさかさんと観客の私の想いが合致してる!!
観劇した後の感動におまけがついたように、感激しました。

小劇場の未来を担う素敵な才能の集結舞台、是非、多くの皆様に観劇して頂き、本当の口コミをお願いしたいと思います。
AndvYou 3~いつもある場所~

AndvYou 3~いつもある場所~

+ new Company

南大塚ホール(東京都)

2011/02/24 (木) ~ 2011/02/26 (土)公演終了

満足度★★★

群舞や合唱にはやはり圧倒されました
一部の短編オリジナルミュージカルは、キャストと音楽の良さに救われました。
脚本に関しては、まだプロの仕事のレベルには到達していないと思います。

二部のレビューは、どうも構成や並びに一貫性がなく、ややもすると、発表会的な部分も見えましたが、それでも、群舞や、殺陣や、合唱は、文句なく、心を打つものがあり、今回も、何度か涙腺が緩みました。

過去の2作品は、全体で、一つのミュージカルレビュー形式の芝居だったので、あまり、粗は見えませんでしたが、今回のように、はっきり、1部の芝居、2部のレビューと分けるのなら、芝居の台本は、筆力のある方に依頼した方が成功したのではと感じました。

二部のレビューを、ソロや有名ミュージカルのデュエットをやめて、群舞や、合唱、客席参加型のワークショップ形式に特化すれば、より、観客の心を鷲づかみにできるパワーがある劇団なので、今後は、より一層の舞台構成の熟考を期待したいと思いました。

ネタバレBOX

吉田兄弟の三味線曲の殺陣と群舞が、とにかく圧倒的で、息を呑みます。

このカンパニーは、踊りや歌を、ここに参加してから、始めたというヒトも多くいるそうなのに、本当に、全員が心を一つにして、作品披露に渾身の力を結集するパワーが、物凄く、いつも、そのことには、他のどんな稚拙な部分をも補うだけの、集団の迫力があり、度肝を抜かれてしまいます。

だから、たとえ、どんなに、演劇的にはまだ未熟だとしても、おススメしたい気持ちだけは、常にマックス!

この若さと情熱の素晴らしさは、是非多くの方に体感して頂きたく思います。
シングルマザーズ

シングルマザーズ

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2011/02/20 (日) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★

永井さんらしさが帰って来た!
前回の公演「かたりの椅子」は、やや、永井さんご自身の私憤が前面に出過ぎて、演劇作品としては、疑問が残るものでしたが、今回の芝居は、永井愛さんらしい、ユーモアとペーソスに満ちた、とても素敵な作品でした。

何でも、二兎社の制作の女性の実体験に材を得たらしく、劇作家、演出家の永井さんが、彼女を心から応援する気持ちが、作品に、リアルさと愛を注いだのだと感じました。

名の知れた役者さんの健闘もさりながら、枝元さんと、玄覚(正式な字が変換できず)さんの、立場の異なるシングルマザー二人の好演が、嬉しくなります。

チラシから受ける印象より、ずっと、重く、深みのある佳作舞台でした。
これは、観に行って良かったと、心から思います。

ネタバレBOX

親戚や周囲に、この芝居の登場人物の抱えている状況に酷似している人間が数多いるため、笑う場面でも、笑えずに観てしまいました。

客席が、この私でも最年少かと思う程の、高齢の方がほとんどで、その方々は、ただのコメディ感覚で観ているようでしたが、実際、ワーキング・プアのシングルマザーや、DVに悩む女性、また、DV加害者の男性なども、身近にいて、とても、他人事と笑って済ませられない気持ちでした。

沢口さん扮する直は、DVの元夫から、養育費を出してもらうことも叶わず、でも、他のシングルマザー達の相談相手として奔走しています。
その直が、シングルマザーの支援団体に、顔を出した、吉田さん扮する、他所のDV男性に、いつの間にか心惹かれて行く様子が、同性として、心情がわかるだけに、観ていて辛い気持ちになったりしました。

子供のために、懸命に資格検定に頑張る未婚の女性役の玄覚さんと、3人も子供を抱えて、離婚し、養育費も払わない元夫との攻防に奮闘する、枝元さんの、溌剌とした好演が、舞台に活気を生み、世間的に有名な沢口さんや吉田さんとの役者バランスが絶妙で、こういう点、やはり、永井さんは、演出家としても、相当手腕がある方だなと、改めて、感嘆しました。
根岸さんも、相変わらず、素敵な存在感溢れる熱演振りでした。
コラボレーション

コラボレーション

加藤健一事務所

紀伊國屋ホール(東京都)

2011/02/19 (土) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

時代に抗いつつ、生きることの苦しさ
それが、静謐に胸に迫る佳作舞台でした。

いつも、感じることですが、鵜山さんの演出は、それがどんな国のどんな時代の、どんな分野の話であろうとも、時代や国籍を超越した、普遍性のある作品に変換させて、観客に提示する力がお見事だと、感心します。

今回のこの舞台もまさにそうでした。

ナチスの圧政や、それに纏わる、人物の動向をあまり知らない人間が観ても、きちんと、この作品のテーマが伝播する舞台構成になっています。

この作品の主人公である、リヒャルト・シュトラウスと、彼のオペラの脚本を手掛けたシュテファン・ツウ゛ァイクの、二人の人物の、時代に翻弄される苦悩は、いつ如何なる時代に生きる人の胸にも、共感を持って、心を揺さぶる舞台力がありました。

加藤さんももちろんですが、ツウ゛ィク役の福井さんが、とても好演されていました。
ナチスの党員役の加藤さんのご子息の義宗さんは、いつの間にか素敵な役者さんに成長されていました。彼の10代の時の初舞台も拝見していますが、年月が経って、口跡も、立ち姿も、役者さんらしくなられて、嬉しく拝見しました。

加藤さんと、紀伊国屋ホール、あー、ずいぶん昔、ここで「熱海殺人事件」を、狭い通路に座って、夢中で観劇したことを、懐かしく思い出しました。
あの頃の、演劇界は、何もかも素敵だったなあと、感慨深い想いがしました。

ネタバレBOX

年月と場所が、暗転もなく、瞬時に変わって行くのは、この舞台の性質上、あまり芳しくない気が最初はしましたが、それも、役者さんの熱演で、さして気にならなくなりました。

ただ、一度だけ、実際のニュース映像が流れる部分は、ない方が良い気がしました。実際に存在した人物の、歴史上の実話に基づいたストーリーではあったとしても、ここで描かれているのは、あくまでも、時代に翻弄させる芸術家の側面として、例示されているタイプの芝居だと感じたので、特定の映像は使用しない方が、普遍性のある作品に、よりなったのではと感じました。
深説・八犬伝〜村雨恋奇譚〜

深説・八犬伝〜村雨恋奇譚〜

東宝

シアタークリエ(東京都)

2011/02/11 (金) ~ 2011/02/24 (木)公演終了

満足度★★★★

楽しみな若手役者さんがワンサカいた
時代劇、現代劇問わず青春群像劇タイプの芝居には、目がない人間なので、時代劇群像劇の代表格の「八犬伝」は、昔から、大好物の作品です。

と、言うわけで、若い出演者は、高橋さんと大和田さん以外、全く存じ上げませんでしたが、行って来ました。

冒頭しばらくは、観なきゃ良かったと後悔しかけそうだったのですが、これが、やはり、原作の圧倒的面白さも加味してか、中盤から、どんどん気持ちが前のめりとなり、最後には、久々、大劇場で、心から、喝采の拍手を送ってしまいました。

犬塚信乃役の高橋さんは、声に色気があり、こういう役はまさに適役。玉房の保坂さんは、四季時代には想像もできなかった悪役を、実に生き生きと演じられ、さすが、殺陣などの所作も美しい!
お名前さえ知らなかった、古川さん、中村さん、加藤さん、窪寺さん、斉藤さん、汐崎さん、根本さん等、8犬士役やその他の若手男優さんも、皆さん、華もあり、姿形も美しく、真摯に演技に取り組んでいて、何だか、それだけで、えらく感動してしまいました。

ただ、残念なのは、冒頭の、意味のあまり感じられない、人物紹介的シーンが、同じような場面が続き、冗長に感じた点と、殺陣の剣さばきの所作と、擬音効果が、全く合っていなかったこと。音だけは、新感線張りなのに、あまりにも、「シャキーン」という音が、とんでもないところで、連打され、如何にも作り物めいて、興を殺ぎました。

ネタバレBOX

8犬士が、出会い、痣と珠の由来がわかる中盤までは、人物同士の関係や、これまでの経緯が不明確過ぎて、たぶん、このストーリーを全く知らない観客には、理解し難いものがあったのではと感じます。

冒頭の、犬士達が、観ている夢のシーン(それは、幕開き後、かなり経って、あー、あれは夢のシーンかとわかるのですが)が、説明不足で、単に、登場人物が出たり入ったりするばかりで、全く、何のことやら、意味不明な場面が長過ぎに感じました。同じようなシーンがリフレインされて、あれでは、お客さんの興味を引くどころか、逆に、飽きさせてしまいそうでした。


ところが、中盤になり、犬士達が出会うと、急に、物語に弾みがつき、それに伴い、役者さん達の魅力も輝き始めます。

敵役の若者達も含めて、それぞれに持ち味があり、こんなに、将来楽しみな若い人材が舞台に溢れていることを知り、大変嬉しくなりました。

信乃と壮助の二人の想いの吐露の場面が、涙さえ誘い、後半は、名場面がたくさんありました。
群集劇ですが、犬士それぞれの、二人芝居の部分に、観客を惹きつける脚本、演出の巧みさが目立ちました。

保坂さんも、ヒロインより、むしろこういう役の方が魅力的だと初めて知りました。大河ドラマとかで、くの一役とか観たい気がします。

本当に、八犬伝ファンのお陰で、良い出会いがたくさんあった舞台でした。
テンペスト

テンペスト

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2011/02/06 (日) ~ 2011/02/28 (月)公演終了

満足度★★★★

なかなか壮大な舞台でした
脚本、演出が、映像畑のお二人だし、この方達の舞台作品を過去に拝見し、やはり、芝居の何たるかが、まだ身についていない公演しか記憶にないので、正直あまり期待せずに観劇しました。

ところが、意外と、今回の舞台は、良かったので、ほっとしました。

きっと、何作か舞台制作を経験されて、映像と舞台の違いを体得されたのだろうと思います。

時折、舞台背景に使われる映像は、もちろん、専門家の仕事だけあり、とても美しく、効果的に使われていましたし、なかなか、大河ドラマのエッセンスもあり、見どころの多い舞台でした。

それに、映像でも活躍中の出演者の演技レベルが高く、たまたま、今日は、男子高校生の団体が来ていましたが、皆おとなしく集中して観ていたし、最後の拍手には力がこもっていたので、皆堪能したのではと感じました。

仲間さんの琉球舞踊の所作がお見事で驚きました。

それに、とてもスタイルの良い、殺陣もお見事な若い女優さんがいてどなたかと思ったら、長渕剛さんのお嬢さんの文音さんでした。
彼女のお母様の初舞台を、昔コマ劇場で観ましたが、その時のお母様より、演技も身のこなしも洗練されていたように思いました。

ネタバレBOX

最初の方は、コネタで笑わせる部分も多く、この劇場で打つ公演にしては、大衆的過ぎるような印象でしたが、中盤以降、山本耕史さんが登場されてからは、スケールの大きな舞台の醍醐味が随所に感じられました。

何度か、歌われる、山本さんのアカペラの歌唱の素晴らしいこと!!
30年以上のファンですが、また、聞き惚れてしまいました。

どこかの高名な演出家の、歴史は勝手に勉強して来いという態度と違って、冒頭、琉球の簡単な歴史ナレーションがあり、大変、観客にはありがたい配慮だと感じました。

何役も、八面六臂の活躍をされる西岡徳馬さん、祈祷師の生瀬さん、安田顕さん、福士誠治さん、そして、もちろん、山本さん、仲間さんと、テレビで見慣れた俳優さんが、こういう生の舞台で、実力を存分に見せ付けて下さると、日頃、テレビやゲームしか、興味を示さない高校生も、演劇に興味を持ってくれるきっかけになりそうで、家族揃って、演劇をこよなく愛する家庭に育った者としては、ちょっと、これからの演劇の行く末に希望が持てて嬉しく感じました。

仲間さんが、予想を遥かに超えて、なかなかの熱演振りで、新たな舞台女優の誕生かと、今後が楽しみになりました。
11人いる!

11人いる!

Studio Life(スタジオライフ)

あうるすぽっと(東京都)

2011/02/05 (土) ~ 2011/02/28 (月)公演終了

満足度★★★

ミーハーおばさん的には満足でした
スタジオライフのファンになって以来、一番好きなコンビ、山本芳樹さんと、及川健さんの久々の共演、アルコルチームの方を観て来ました。

スタジオライフにしては、いつも程、展開がスピーディでもないし、緊迫感もそれ程、なくて、もっと言ってしまえば、11人目が誰かとか、あまり気にならないのんびりムードでしたが、お二人のファンとして、ミーハー感覚で観れば、充分堪能させて頂きました。

毎度のことですが、ここって、選曲センスが良くて、それで、相当得してる感じもありました。

とにかく、若い役者さん達が元気に舞台を務めてくださっている姿を見るのは、それだけで、気持ちがいいものですね。

ネタバレBOX

スタジオライフ方式で、メーンでない方のチームメンバーが、端役で、舞台に華を添えるのが個人的に、とても好きです。
あそこ、何故かいつもニコニコしてしまいます。

役名失念しましたが、途中、「僕が11人目」と名乗る、クロレラ体質のアンドロイド役の方、凄く素敵でした。

及川さん、相変わらず、綺麗で可愛い!!
及川さんと、山本さんの接近シーンは、宝塚の、アンドレがオスカルに告白する場面を思い出してしまいました。

最後がハッピーエンドなのも、心がほっこリ。何だか、気持ち、元気になれて、嬉しくなりました。
ロクな死にかた

ロクな死にかた

アマヤドリ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/02/03 (木) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

嬉し泣きの100分、完成度マックス!!
ひょっとこ乱舞は、チョウ・ソンハさん観たさに「プラスチックレモン」をみたのが最初で、これで、確か4回目ぐらいの観劇歴ですが、まあ!今回程、感嘆したことはありません。

まず、昔から、広田さんの頭脳明晰さはよくわかったのですが、以前は、観客に伝わらなくても構わないという雰囲気がどこか、作品に漂っていたのですが、今回は、そんなところが微塵もなく、世代を選ばない、普遍的な作品に仕上がっていました。

スタイリッシュな演出でありながら、メッセージがダイレクトに伝わり、若者の会話のリアリティにゾクゾクする程の快感を味わいました。

今、私が知る限りにおいて、日本で、一番の若者会話劇が書ける作・演出家は、広田さんを置いて他にいないような気がします。

以前は、ストーリーと分離して、唐突感が否めなかったダンスが、今回の作品では、見事に、ストーリーと融合し、その美しいシルエットに何度もため息が出ました。

配役表を見た時、浮かないかな?と心配になった、ゲキバカの伊藤今人さんが、絶妙な匙加減で、適材適所の役を与えられ、ほろ苦い笑いを担われ、このキャスティングセンスにまた唸りました。

ひょっとこの役者さんも、いつの間にか、皆さん、素晴らしい進化をされていて、目を見張る思いでした。
早口の台詞が多く、何人か、とちる方もいましたが、そんなこと、全く気にならないし、むしろ、またそれが、リアルに拍車を駆け、とにかく、このステージの何もかもが超一級品揃いで、もうただただ感涙しまくりの100分。

倉田さん、西川さん、渡邉さん、笠井さん、寺田さん、田中さん、松下さん、中村さん、根岸さん…、あー、皆皆、とっても素敵でした。

広田さんのような頭脳明晰な方が、演劇に手をそめてくださったことに、感謝します。

本当に、たくさんの方に観て触れて感じて頂きたくなる素敵な舞台でした。

ネタバレBOX

広田さんが男性だということが信じられない程、どうして、そんなに、女心がわかるの?と、チサトと、村瀬と、みいの気持ちに、若き時代の自分の感情を透視されたような、不思議な高揚感と、寂寞感で、久々、恋に悩む女心を追体験し、胸が苦しくなりました。

一方、男性陣の描き方も、これまた秀逸。毬井君、武田君、白井君、生方君、困るじゃないの!この歳で、君達に恋心を抱いてしまいました。
何て、皆、魅力的なんでしょう!

一人の死を通して、生きている人間の精一杯の日常と優しさを、温かい緻密な目で、見事に、舞台上に活写した広田さんの、才気には息を呑むばかり。
そして、愉快なんだけど、どこか哀愁のある、今人さんの母。

通行人や、エキストラをダンスでスタイリッシュに見せる手腕も卓越していました。

本当に心から、何度でも「ブラボー!」を叫びたい素敵な素敵な作品です。
「神社の奥のモンチャン」 

「神社の奥のモンチャン」 

ゴジゲン

座・高円寺1(東京都)

2011/02/02 (水) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度

箱に見合わないレベルで残念
途中退場者、たぶん3~4人。

もし、モンチャンが目次さんでなければ、私は5人目の退場者になっていたと思います。

ゴジゲンは、「たぶん犯人は父」から観始め、その作風は好きなのですが、今回の作品は、松居さん学生時代の作とのこと。さもありなんと思う程、作品も、構成も演技も、学生時代に退行したような印象でした。

箱がゴジゲンには大き過ぎたきらいもあります。

全ての見せ方が、素人レベル。学内の無料公演なら、充分かもしれませんが、座・高円寺で、これだけの入場料を取るには、見合わないレベルだと感じました。

ネタバレBOX

これも、「泣いた赤鬼」をモチーフにしたようなストーリーですが、ストーリーテーラーとして、登場する現代の若者3人の役者さんの演技が、学生劇レベルで、とても残念。発声法も、演技もなっていなくて、彼らの演技が続いたせいで、退場者が続いたように思います。

イキウメ新人の大窪さんは、前川演出でこそ、光る演技ができるのであって、まだ他流試合に出るのは早過ぎるのでは。

村人の演技、セット転換、脚本構成、台詞、全てにおいて、箱に見合わないレベルダウン、ゴジゲン逆行の感がありました。

もう少し、人気先行で走らずに、自分の身丈に合った劇場で験算を詰まれた方が、良いのではと感じました。
クラウド9

クラウド9

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

青年座が、一皮も二皮も剥けた感あり
いやあ、正直、度肝を抜かれました。
性描写が赤裸々で、ほんとに、これ青年座の芝居??と驚愕でした。

でも、これ、観て良かった!!

すごく面白いし、感銘受けるし、何より、養成所時代から存知上げている、宇宙さんと安藤さんが、役者として、飛躍的進化を遂げていることを、見せ付けられた、心から、喜びを覚えましたから。

青年座の役者さんが、こういう戯曲を、ご自分の体に落として、表現できるようになったことが、嬉しくてなりませんでした。

欲を言えば、自劇団のみの配役で観たかったと思います。
クライブ役、山路さんで観てみたかったですね。

伊藤大さんの演出は、この作品の本質をよく捉え、迷いのないジャッジが行き届いたようで、成功だと思いますが、惜しむらくは、セットが、やや薄っぺらな感じがしたことです。もっと、抽象的なセットの方がむしろ良かったように思いました。

ネタバレBOX

かつて、自転車キンクリートの「OUT]を観た時や、「カラーパープル」を読んだ時の衝撃が蘇りました。

人種差別、男女差別、人間の性欲、自分という存在の確立までの不安と戸惑い、…、本当に、たくさんのテーマが内在する、濃密な戯曲でした。

休憩挟んで、3時間近くある舞台でしたが、全然長さは苦になりませんでした。

1幕、2幕で、役が入れ替わったり、男女が逆の役を演じたりが、実に効果的な演劇空間を作り上げていました。

1幕の宇宙さんは、スタジオライフの役者さんを彷彿させる、見事な女装演技。2幕では、ゲイの青年役ですが、全くの女性と、ゲイで女性っぽい人物の微妙な演じ分けがお見事でした。

安藤さんは、1幕のおばあちゃんが最高!歌う子守唄もどこか不気味で、ぞっとするような、長い人間生活の根を見せる演技に魅了されました。

少年期に、父の友人に、幼児性愛の対象にされ、それに、好奇心を持って、彼を慕ってしまうエドワードを演じた小暮さんは、独白場面の台詞と歌に説得力があり、思わず、こちらも涙腺が緩むことに…。彼女は、2幕の母親役も、高齢期の女性の悟りを、うまく表現されていました。

いつもお上手な山賀さんの名演は言うまでもなく、美人の勝島さんは、最後まで、1幕は2役演じていると気付かず、それだけ、演じ分けがしっかりされていたのだと思います。でも、彼女は、2幕のレズの女性役が、好きになってしまいそうになるくらい、魅力的でした。

一番、凄かったのが、南谷さん。この方は、1幕では、黒人の使用人、2幕では、ゲイの男役でしたが、それはそれは、刺激的、かつ魅力的な演技で、すっかり、心が鷲づかみされてしまいました。

皆さん、歌もお上手だったし、歴史ある新劇の劇団が、歴史にアグラをかくことなく、こうして、常に、新しく伸びようとされている、劇団全体の姿勢に大変好感を持ちました。

何しろ、演じていて絶対恥ずかしくなるだろう、性行為や、自慰行為を、潔く演じきった、青年座の皆さんの勇気と、役者魂に、敬意を表します。

他の新劇劇団ではこうは行かないでしょう。まさにブラボー!!
月いちリーディング/11年1月

月いちリーディング/11年1月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2011/01/29 (土) ~ 2011/01/29 (土)公演終了

満足度★★★★

やはり面白かった!!
今までの月1リーディングで、たぶん番参加者が多かったのではないでしょうか。

そして、作品も、ゲスト劇作家トークも、大変面白くて、何度も会場に笑い声が響きました。

ゲスト劇作家は、上から目線の方じゃないのに限ります。

土田さんのトークはいつも面白くて、場が和やかになるので、大好き!!
鐘下さんとの相性も良く、一番参加者が多い日が、こういうメンバーで、良かったこと!!

いつも、いろいろな劇場で、スタッフをなさっている作家さんの作品でしたが、ご本人の思惑通り、ライブ感がある、戯曲でした。
ブラッシュアップされたら、また拝見したい作品でした。

エディット・ピアフ

エディット・ピアフ

日本テレビ

天王洲 銀河劇場(東京都)

2011/01/20 (木) ~ 2011/02/13 (日)公演終了

満足度★★

嫌な予感が、見事的中
歌のうまい安蘭さんのピアフと、浦井さんを観たくて券を買ったものの、実は、この劇の作者と演出家名を見た時、嫌な予感があったのです。

案の定、幾らキャストを、集めたところで、それだけでは、いい舞台にはならないという、良い事例公演でした。

とにかく、場転が多く、暗転も多く、ピアフの人生のどこに焦点を絞るかという工夫もなく、本と、演出が、とても、プロのお仕事には感じられませんでした。
場転も、もっと気の効いた演出なら、多くても苦にはなりませんが、まあ、高校演劇の演出だって、もっとましなのではと思うようなド素人ぶりの転換で、これでは、☆は一つかしらなどと、もうこうなったら、安蘭さんの歌を聴きに来たのだと、自分に思い込ませようとしていたのですが、ようやく後半になって、ちょっと見所があり、救われた気がしました。

よって、星は二つに。これ、全て、キャストの皆様への☆のみです。

ネタバレBOX

大好きな中嶋しゅうさん、こんな舞台の稽古に拘束されて、お気の毒とずっと思っていましたが、後半、もう1役あり、少ない台詞に命を与えて下さって、安堵しました。

浦井さんは、モンタンの方は、任でない感じがしましたが、ピアフの最後の夫になるテオ役が、その登場シーンから、とても素敵で、ようやく、このテオと、その両親の登場あたりから、ちょっとだけ、演劇的な良さが顔を出した舞台となり、本当に、ここまで我慢した甲斐があったと思いました。

1階席は、安蘭さん達のファンの方が占めていたのか、温かい拍手に包まれていましたが、私のいた3階席は、ここまでの空席は久しぶりという程ガラガラでした。

もう、半世紀以上の観劇歴ですが、どうも、映画監督の演出舞台で、名舞台に出会った記憶がありません。場転も、キャストの使い方も、全部、映像手法なんですよね。
三言台詞を言う度、暗転になった、名匠木下恵介監督の「冬の旅」よりは、まだましでしたが…。

でも、キャストの方々は、皆さん、大変健闘されていました。
主役の安蘭さん始め、テオの浦井さん、佐藤さん、床嶋さん、中嶋さん、甲本さん。この方達の、役者としての最大限の努力を拝見できて、幸せに思いました。

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