KAEの観てきた!クチコミ一覧

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『隠蔽捜査』&『果断-隠蔽捜査2-』

『隠蔽捜査』&『果断-隠蔽捜査2-』

キョードー東京

THEATRE1010(東京都)

2011/10/19 (水) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★

2は、よりテレビドラマ的
えーと、取り合えず、SATとSITの違いがわかりました。(笑い)

先日観た1より、より緊迫感の少ない、まあ映像で観ればいいんじゃないかな?という感じの軽い芝居でしたが、でも力量のある出演者のお陰で、観終わるとそれなりに充足感は感じ、それなりに観劇を楽しめて帰路につきました。

今回も、近江谷さんのコミカルな演技が楽しすぎます。上川さんと近江谷さんのコンビの舞台を生で堪能できたので、まあ、満足ではありました。

お名前はわかりませんが、SITの隊員役の方、素敵でした。

ネタバレBOX

何だか、最後は、東大のアニメ科の宣伝かしら?と思ったりしました。

どうして、今更「風の谷のナウシカ」なのかも、やや不明。

この作品、今現在の警察の話なら、幾らあの堅物の竜崎夫妻でも、「風の谷のナウシカ」の存在くらいは知っていそうに思うのですが…。

小林さんが、弾けてて愉快でした。
ひとよ

ひとよ

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2011/10/21 (金) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

やや作りこみが過ぎるとは言え
やはり、この劇団の資質は健在でした。

会場に足を踏み入れた瞬間にワクワクします。

上演時間は2時間弱なのに、その中にしっかりと、登場人物のそれぞれの15年が丁寧に描かれている。
これだけの、特化された虚構世界の出来事を描きながら、その裏にきっちりと、人間の真実の姿が投影されているのは、ひとえに、桑原さんの筆力、演出力、そして、KAKUTAの劇団員の演技力のなせる技と、いつも感心します。

ただ、今回の舞台は、自然な演技に定評のある劇団員と、役を演じるという演技法の一部客演陣との間に、微妙ながら、演技の不協和音を感じました。

また、若い二人の登場人物が、蛇足に感じてしまいました。友国と木俣のカップルは出さない方が、話が散漫にならなかっただろうし、リアルさが増したように思いました。

ネタバレBOX

相変わらず、KAKUTAの桑原さん、若狭さん、高山さん、成清さん、原さんの役を生きる技術に魅了されました。

普通、劇団員の場合、座付き作者が、似たような役を書く傾向があり、バランスを保つためや新しさを求めて、客演陣を投入する方法が取られるように感じる劇団が多いように思うのですが、KAKUTAの役者さんは、いつも、その芝居の役がまるでその人自身のように感じさせて下さるので、芝居内容だけではなしに、今度はあの役者さんはどんな人間として、舞台に現れるのだろうと、常に興味が尽きず、観劇を心待ちできる稀有な劇団だと感じます。

今回もその期待は裏切られることがありませんでした。

ただ、「ひとよ」に関する決め台詞を、客演の岡さんに任せたのは、失敗だったようにも感じました。岡さんは、役を演じるタイプの女優さんで、あの台詞の前に、さあ、ここで大事な台詞を言うぞという一瞬の溜め呼吸を感じてしまったのです。
だから、最後の最後で、あー、これはお芝居だわという感じがしたままエンディングとなり、いつものKAKUTAの終幕から感じる衝撃が薄まってしまったように思い、そこがちょっと残念ではありました。

まいどさん演じる堂下の顛末は、もう少し前に出して、終幕は家族だけにした方が効果的ではなかったかな?と感じます。

いつもセットの巧みさに舌を巻くKAKUTAですが、今回も、舞台上空のタクシー車内の場面が秀逸で唸りました。運転手さん、3人の運転気質までが如実に表出されて、桑原さんて、あれだけ、重要な役を演じつつ、こんな演出をできるなんて、驚異的ですね。

あ、そうそう、登場人物の台詞に出て来る「タクシードライバー」の映画感。私も当時全く同じ感想を持ちました。あの映画は決して面白いという内容ではありませんでしたが、あの主役の貧相な生活感が今でも胸に残ります。あの生き様は体験したくないなと。

桑原さんて、私より何世代もお若いのに、すごい感性の持ち主だったんでしょうね。きっと幼少の砌から。当パンの彼女の巻頭文を読んだ時点で涙が出ました。
『隠蔽捜査』&『果断-隠蔽捜査2-』

『隠蔽捜査』&『果断-隠蔽捜査2-』

キョードー東京

THEATRE1010(東京都)

2011/10/19 (水) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

演出とキャストに助けられた脚本
1の方を観て来ました。

これ、原作も、テレビドラマも観たことないのですが、どうも、舞台にしては、脚本が凝縮されていない印象がありました。

何となく、放送シナリオをそのまま舞台にしたような雰囲気で、もっとテンポ良く、2時間以内で収めた方が、この作品の持つ味わいが活かせるように感じました。

でも、演出とキャストは、素晴らしい!

高橋いさをさんの演出は、三田村組以来ですが、あの時も、時間軸の移動がうまく舞台化されていて感心しましたが、今回の舞台も同様。
先日拝見した「エレジー」にも、こういう演出センスがあればなあと改めて思いました。

上川さんはもちろん扇雀さんの現代劇が意外と良くて、ビックリ。歌舞伎俳優さんの現代劇にはどこか違和感を感じることが多いのですが、扇雀さんの伊丹刑事、なかなかでした。
それに、端役ながら、近江谷さんの存在には、終始心が和みました。

ネタバレBOX

足立区綾瀬の今も釈然としない、実際の陰惨非道な女子高生殺人事件に端を発する事件が描かれた芝居で、台詞に、実際の事件や固有名詞が出て来て、それでいて、後はフィクションというのはどうなんだろうと、ちょっと訝しく感じてしまいました。

あの事件は、当時の新聞報道によれば、世にも怖ろしい陰惨な許しがたい犯罪に違いはなく、実際この芝居のような展開の事件が起きても不思議はないとは言え、その犯人の少年が、二人も殺されるという設定は、どうなんでしょう?
実際の犯人が今も社会に生きていて、当時少年だっただけに、安易にこういう題材に扱っていいのかという疑念が付きまとい、どうも芝居だけを単純に楽しむという思考が起きずに観ていました。
場所まで、実際の固有名詞が出て、事件の通称も一度台詞として出て来るので、あの当時を知る人間は誰でも、あの事件に結び付けて考えます。
国松長官狙撃事件のことも、そのままの台詞で語られ、さすがに、こういう誤解を生むフィクションは良くないのでは?と感じました。

それに、あれだけ足立区のイメージを悪くした事件を題材にした芝居を足立区の劇場で上演し、足立区民が多数訪れているという光景にも不思議さが否めませんでした。

とは言え、上川さんは、やはりいつもしっかりと役を演じて下さる稀有な俳優さんの一人だし、脇の役者さんも、全員丁寧に演じていて、好感の持てる舞台ではありました。

セットのセンスと演出センスで、装置を全く変えないにも関わらず、きっちりと、場所が、警察庁や竜崎家や伊丹家に見えるところが、感心しました。

扇雀さんが、ストーリーテーラーも兼ねていて、役として演じるのとの切り替えの巧さにも感服しました。

2の方も観るのが楽しみになります。
エレジー

エレジー

(公財)可児市文化芸術振興財団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/19 (水)公演終了

満足度★★★★★

名戯曲と名役者のコラボ、期待に違わず
平幹二朗さんと山本郁子さんの共演にひたすら興味が湧き、観に行きました。

素晴らしい!!

大人向きの情感溢れる名舞台で、わけもわからず、何度も涙が頬を伝いました。

とにかく、キャストが素晴らしい!!これには文句のつけようもないのですが、反面、スタッフワークが、雑で、その点が非常に残念でなりませんでした。

それに、いつも感じるのですが、どうして、西川さんの演出ってこうも野暮ったいんでしょう?文学座の「モンテクリフト伯」の舞台が、あまりにも庶民的で絶句したのを思い出します。

塩子の劇中劇シーン、ちょっと目のやり場に困りました。
もっと演出の工夫で崇高なシーンになりそうな所が、非常にもったいない!!

できれば、この作品、鵜山さんの演出で拝見したかったと思いました。

客席に、1本づつ丁寧に包装されたバラの花が置いてあって、私は、家に直行するだけで、ありがたく頂戴しましたが、中にはありがた迷惑な方もいるのでは?と気掛かりでした。大きな袋とかないと、観劇中、花を膝に置いていなければなりませんし…。
たとえば、終演後に、スタッフが、お客さんに手渡しで観劇お礼を述べつつ渡し、不要な方には辞退できる機会も与えて下さった方が、せっかくのご厚意が生きるのではと感じました。

チラシのセンスもイマイチで、これでは、せっかくの佳作への誘い度が低下するように思います。

ネタバレBOX

清水邦夫さんの戯曲は、リアルタイムでは拝見する機会がなく、最近になって、何作か観劇するようになりましたが、劇作に、人間を温かく見守る目を感じ、大変筆力のある作家だと一気にファンになりました。

この作品も、声高でなしに、人間愛に満ち、家族への言うに言われぬ情念が生き生きと照射されて、台詞の一つ一つに、心を揺すられる想いがありました。

たくさんの名優が相次いで逝ってしまい、今やこういう静かな情感に満ちた芝居をできる人は平さんを置いて他にはいないのではと思います。
台詞、表情、佇まいに、こんなにもリアルな役作りができる役者さんは、そうはいないなあと、芝居の世界に感動しつつ、片側の脳が、役者平幹二朗の存在のありがたさにも感動を禁じえずにおりました。
期待したとおり、山本郁子さんと対峙する場面では、名役者の名コラボに、何度も涙腺が緩みました。

特に、糸の切れた凧に言及する場面は秀逸でした。

弟役の坂部さんも、当意即妙な名脇役ぶりで、このややもすると、情感一色になりがちな芝居を活気付ける役目を体を張って全うされていました。
角替さんの、エキセントリックな伯母役も、見事はまり、好配役。

それだけに、セット転換時のスタッフの手際の悪さが、せっかくの名舞台に水を差し、残念な気がしてしまいました。
特に、前半の静かでジャージーなBGMが、セット転換の騒音にかき消されたのは、雰囲気を損ない、気が殺がれました。 

ローンを払い続け、各人の想いがこもった家にしては、セットに重厚感がないのも、芝居の真実味が薄れ、惜しいところに感じました。

個人的好みから言えば、死んだ草平の生前の悪行が暴露される部分に、やや唐突な違和感を若干感じてしまう点はありましたが、総じて、登場人物それぞれの想いが、自分にも思い当たる卑近な感情であったので、全ての登場人物に、共感し、家族への自分の想いが不意に脳裏に過ぎり、観劇中ずっと、切ない気持ちになってしまいました。

しみじみとした、人間賛歌の芝居だと思います。
クルーシブル~るつぼ~

クルーシブル~るつぼ~

劇団昴

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/10/05 (水) ~ 2011/10/11 (火)公演終了

満足度★★★

役者陣の演技が古色蒼然
この作品のテーマや題材には、普遍性があり、よくできた芝居で、大変興味深く拝見はしたのですが、どうも悪い意味での新劇らしい舞台で、特に前半は、どこかの養成所公演かと錯覚しそうな雰囲気でした。

舞台に、重厚感が出たのは、エリザベス役の林佳代子さんが登場してから。ヘイル牧師の山中さん、副知事役の田中正彦さんの好演も手伝い、ようやく、それからは、舞台上の世界へ、心が誘われたような気がします。
メアリ・ウォレン役の箱田さんも、大健闘でした。

一部の役者さんが、大事なシーンの人物名等、何箇所か言い間違えたりして、興醒めでした。
こういう緊迫した舞台での、凡ミスは作品の質を落とします。

ネタバレBOX

どんな時代も、人間社会は、手垢にまみれ、大きな権力の前には、小市民は抗う術もなく、無力な存在なのだなあということを改めて、思い知らされるような作品ですが、現実社会の非道な事件や企みに接しすぎたせいか、あまり、動揺はしませんでした。

キリスト教徒ではありませんが、私がこの芝居の登場人物だとしたら、きっと、エリザベスとジョンのプロクター夫妻と同様の選択をし、同様の台詞を叫んだことだろうと思います。

現実社会でも、この芝居のように、親しい人間関係が、悪意ある他人の企みのために、感嘆に崩壊してしまう例をたくさん見てきました。
また、宗教や考え方が異なる人間を異端視して、集団イジメのような排斥をする社会の仕組みも、どこの世界でも、いつの時代でも、珍しいことではありません。

でも、この芝居が救いなのは、ジョン、ジャイルズ、フランシス、それに、エリザベス等、主要な登場人物が、皆、配偶者を愛し、最後まで、家族を守ろうとする姿があることでした。
ダブルアルバム

ダブルアルバム

グループる・ばる

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/09/28 (水) ~ 2011/10/03 (月)公演終了

満足度★★★

それなりに面白いのですが
どうも、永井作品にしては、インパクトに欠けると言うか、どこか作為的過ぎて、鼻白む部分が多々ありました。

松本演出も、杓子定規で、面白みに欠けました。

最後のシーンは、やや蛇足感も、冗長感も感じ、終わり弛み。
スッキリしないエンディングで、永井作品と知らずに観ていたら、青年団系かと思ったかもしれません。

半海さんは、大活躍で、良いスパイスになっていました。
半海さんのファンの方には必見舞台だと感じます。

ネタバレBOX

過去と現在が行き来する展開ですが、この場転が、どうも素人劇団のようで、ガッカリしました。

スタッフの力量不足か、演出のセンスかは不明ですが、この転換が、ダサいので、観客としては、その度白けました。

半海さんは、瞬時に、若い時と中年になってからの、立花の早替り振りがお見事で、前回拝見した舞台での印象を劇的に変換してくださいました。

電話のコードが抜けてしまうというアクシデントは致し方ないとして、田岡さん、岡本さんのお二人が、それで動転してしまったのは、ベテラン女優として、やや首を傾げたくなりました。

最後の方で、夏子の実子の起こした事件で、秋子がお金を工面する云々が、結局どうなったかわjからないままで、これは、振り込め詐欺では?とか思って観ていたので、最後まで、腑に落ちず、すっきりしない幕切れでした。

秋子が死んだ?とか思わせて、次の場面で、じらす手法は、スタイリッシュな運びでないと、不愉快なだけで、面白くはありません。
永井さんも、オリザさんの影響受けたかしら?と自分の目を疑いました。

初演は、20年程前だったそうですから、永井さんも、まだお若かったのでしょうね。
アパッチ砦の攻防

アパッチ砦の攻防

劇団東京ヴォードヴィルショー

紀伊國屋ホール(東京都)

2011/09/23 (金) ~ 2011/09/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

良かった!単純に面白いのが嬉しい
実は、東京ウ゛ォードウ゛ィルショー、今まであまり面白いと感じた舞台がありませんでした。

角野さんも、ワタ鬼や、栗山組のこまつ座の舞台は、あまり好みではありませんでした。

最近の三谷作品にも、疑問が多いし…。

ということで、あまり期待していなかったのですが、これは、心底面白くて、ほっとしました。

横の女性が、鞄を叩いて大笑いしていて、どんな劇団かもよく知らずに観に来た男性は、「これなら、次の芝居も観たくなる。だけど、知ってる役者は3人だけ。あの女優は、2時間ドラマでよく観るね。何て女優か知らないけど…」とのたまっていらっしゃいました。

「あれは、佐藤B作さんの奥さんのあめくみちこさんですよ」と振り返って教えてあげたくなったけど、彼は、B作さんがこの劇団の主宰だとも知らないのでしょうから、余計なことを言うのはやめました。

とにもかくにも、何も知らずに観に来た客が、今日、確実に一人は、演劇の楽しさを知った様子で、何よりでした。

ネタバレBOX

客演陣が、揃って好演。そのお陰もあって、久々の三谷芝居の大ヒット。

再演の度に、登場人物が増えるそうですが、それが蛇足にならないのは、さすが三谷さんだけのことはある。大したものでした。

B作さんも、お元気になられたようで、安心しました。

相対的に、女優さん達が、皆さん、快演でした。
B作さんと角野さんのコンビネーションも、抜群!
このお二人で、ニールサイモンモノとか観たいなあと思いました。

ただ、性的交渉事を安易にシチュコメに使う手法が嫌いなのと、B作さんの役が、角野さんの役の所有物を平気で他人にあげてしまうところは、どうも、正義感強い人間には、気持ちよくは笑えない場面でした。
皆さんの演技が達者なので、笑えましたが、これをもしも、私が心底嫌いな劇団や役者でやられていたら、絶対嫌な気持ちになっていたと思います。

そういう部分を排して、尚且つ面白いシチュコメ書ける劇作家さんに是非登場して頂きたいものです。
ロミオ&ジュリエット

ロミオ&ジュリエット

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2011/09/07 (水) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★★

出演者で、こうも印象が変わるとは!
今日は、育三郎ロミオの日。

リピート購入ではなく、育三郎ロミオ希望の友人のチケットを間違えて買ったため、城田ロミオは息子と観て、今日は、その友人と行きました。

先に、城田ロミオを観てしまったので、今日は、作品の粗ばかりが印象に残ってしまう結果になりました。

城田・昆組は、二人の舞台上の姿に陶酔してしまって、他の雑念を一掃する瞬間が多くあったのですが、育三郎さんは、どうもロミオの任ではなかった気がしてしまいました。
見た目、高条件の揃い過ぎる城田さんと比較するのはお気の毒な気がしますが、もう少し、姿勢良く舞台に立たれるだけでも、ずいぶん印象が違って見えると思うのですが…。

今日、初見の大貫さんのダンスは、美しくて、目の保養になりました。

ネタバレBOX

山崎さんも、歌唱、ダンス、演技、どれも卒なくこなされていて、決して、彼の力不足ではないのです。

でも、目に訴えるロミオらしさが希薄でした。

他のダンサー達と、舞台上に登場した時の、一人輝くような後光が射す様なロミオを観てしまった後では、どうも、他者との傑出した相違性が感じられず、二人が出会う場面や、初夜のシーンの、観客としてのときめきを感じることができませんでした。

そうなると、先日は、大目に見られた、この舞台の粗が一層目立って、益々気持ちが乗らなくなりました。

あの、アイデアの微塵も感じられないダサい訳詞や、下品な衣装、おぞましき、現代のツールの登場…。

どれもこれも、首を捻りたくなることばかり。

でも、やはり、昆ジュリエットの素晴らしさには驚愕します。
中川モーツアルト!の初舞台に継ぐ衝撃です。
友人も「、彼女の次回作が既に楽しみ!」と言っていました。

皆さん、歌唱はいいし、ダンスも素敵なので、そういう視点で、注目して観ると、楽しめるとは思いますが…。

こんなに、乳母の見せ場があるロミジュリは初めて観たし、作者の視点には、感心する部分もあるのですが、それにしても、どうして、こういうワケわからない設定にする必要があったのかと、理解に苦しみます。

やっぱり、携帯やメールとかって、パロディじゃないんだから、ガッカリですよね。

それにしても、浦井さんは、拝見する度、歌声が伸びやかになって、若き日のデモテープを何度も拝聴する機会があった身としては、感涙モノの感動でした。
正直なところ、浦井ロミオで観たかったなあ!
ちょぼくれ花咲男

ちょぼくれ花咲男

文月堂

サンモールスタジオ(東京都)

2011/09/16 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

皆生きていた!
結局3回、拝見させて頂きました。

もう、楽日の仕上がりは最高潮!

文句ない楽しさでした。

登場人物全員が、江戸に実在しているのではと錯覚するほど、実存感があり、後半に向けての躍動感には、ワクワクします。

三谷さんが幾度か用意された笑いどころには、不発な箇所もありましたが、それも、ご愛嬌!

高揚感、躍動感が、初見時より一気に加速し、ずっとこの人たちと時を共有していたい思いに駆られました。

登場人物全員に愛着を感じる。
こういう芝居にもっともっと、小劇場で出会えたらいいのに。

ずっと、サンモールでロングラン上演してほしくなる程でした。

元気をもらいたい時に、足を運びたくなる芝居が、誕生した瞬間に観客として立ち会えて幸せでした。

ネタバレBOX

3回拝見し、好きな役者さんが一気に増えてしまい、今後、観たい芝居が増えてしまいそうで、困りました。

特に、霧島ロックさんを知り得たことは、私の観劇人生でも、類稀な宝物のよう。ロックさんが舞台上で生きる度、快感を覚えました。

KAKUTAでも注目した、佐藤さんは、ここでも全く違う人物をリアルに造詣され、底力のある役者さんだと再認識しました。

最後の心中場面、歌舞伎でもなかなかお目に掛かれない、稀有な艶があり、本当に、これが小劇場で観られるなんて夢ではないかとさえ思いました。
恍惚して陶酔し、我を忘れる瞬間でした。三谷さんが選ばれた素敵な台詞と共に、佐藤さん、石川佳那枝さんの名演は、終世忘れられない場面として、目に焼き付けておくことになりそうです。

楽曲の選択もグッド!効果音、照明等、スタッフの仕事も全て職人芸に近いものを感じました。

今日の満足度、昨日のとある場所での落胆の反動で、星5では足りません。

終演後、6時間が経過した今も、まだ興奮が冷め遣らない程、舞台の余韻で満ち足りています。

こんな素敵な舞台に、陰でこっそり関わらせて頂けたことを誇りに思います。

「ちょぼくれ花咲き男」、間違いなく、50年の演劇オタクおばさんにとっては、大いに入用の舞台でした。

似非演劇人がゾンビ化しそうな小劇場に絶望しそうになりましたが、まだまだ希望があることを教えて下さった、このカンパニーの皆様に、心よりお礼申し上げます。
月いちリーディング/11年9月

月いちリーディング/11年9月

日本劇作家協会

座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)

2011/09/24 (土) ~ 2011/09/24 (土)公演終了

満足度★★

確かに、雰囲気変わりましたね
先日、この予約をした時に、事務局の方から、「これまでとは様子が違いますが、御承知置き下さい」という感じのご返信を頂き、久々の参加で、その点にも注目して参加させて頂きました。

確かに、おっしゃる通り、今までの月1リーディングとは、似て非なる印象がありました。

九電のやらせ討論会のことが、何故か頭に過ぎりました。

仕方ない傾向なんでしょうが、この企画が立ち上がって実現した時、小躍りして喜んだ、純粋演劇ファンの一人としては、残念な現実に遭遇した気持ちでした。

今後は、バカ正直に、ブラッシュアップのための会とは思わずに、興味深い方がゲストコメンテーターとして参加される時にのみ、参加させて頂こうと思い定めました。

ネタバレBOX

劇作家協会の総会(総会だというのに、出席者11名だけという驚愕の総会)の時の、事務局の方のお話ぶりから、今後は、月1リーディングは、当初の構想とは違う方向に行きそうな予感がしましたが、的中したようです。

今日は、永井さんと前川さんという、名実共に、名劇作家だと、尊敬するお二人がゲストでしたので、伺いました。

私の期待通り、お二人は、お気持ちを正直にコメントしてくださったので、行った甲斐はありました。

今日の作者の方に、申しそびれましたので、ここに記しますが、震災後、非日常と、日常の同居する世界を見事に表現された劇作家が今日、あの会場にお二人いらっしゃいました。

「奇怪!」を書いた前川さんと、みきかせで、リーディング作品を書かれた楢原さんです。

今日の作者の方の作劇意図を伺って、そうであるなら、是非、前川作品を研究されることをおススメ致します。

前川さんの作品は、描かれる世界は虚構でも、登場人物は、皆大変リアルですから。
ちょぼくれ花咲男

ちょぼくれ花咲男

文月堂

サンモールスタジオ(東京都)

2011/09/16 (金) ~ 2011/09/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

直感で好きになった女性
三谷智子さんとの出会いは、芝居ではなく、脚本が先でした。

横内さんが大層押したのに、劇作家協会の公開審査で落選された時の作品で。

この方は、近い将来、大物になられるに違いないと直感しました。

あれから、何年??

初見の芝居では、まだ綻びが見えたけれど、今回の作品は、素敵でした。

初の時代劇と伺って、もっと破綻があるのかと予想したのですが、さにあらず。

もちろん、時代考証や、衣装考証等、重箱の隅をつつこうとすれば、いろいろありますが、とにかく、まず三谷さんの演劇制作者としての躍進振りが、嬉しく感じて、最後は、初日の友人の報告同様、涙しました。

キャストの皆さんが、適材適所の布陣で、これだけの登場人物に全て光りを当てる、作・演の裁量にまず感じ入りました。

文月堂さんの今後にも、期待感が膨らみました。

そうそう、余談ですが、以前サントリー美術館の「鳥獣戯画展」で見た、意外なある事象の庶民の飛ばしあい競技を、この花咲男の特技で思い出しました。
江戸時代って、そういうおおらかな庶民の楽しみもあったんですよね?

その絵の模写を、屏風に使ったら、更に面白かったかも。

ネタバレBOX

当パンの三谷さんのご挨拶文に、まず甚く共感。相手に必要とされているかはどうでもよい、ただ、相手の存在を欲しているだけ…という文章に。

これを読んだだけで、既に涙腺が緩みました。

始まった芝居は、この挨拶文を素直に舞台に投影したような、心温まる佳作でした。

たくさんの既製の芝居や物語等のエッセンスが巧みに織り交ぜられ、それでも、きっちりと、三谷さんの独自性が色濃く…。

女性らしい、細やかな作品作りが、胸を打ちました。

吉原遊女お二人の美しさ。佐藤さんの口跡の良さと、確かな演技力、霧島さんの軽妙洒脱な演技に、小劇場ではなかなかお目に掛かれない、プロの芝居の醍醐味を感じました。

同じ年齢の同じような芝居流儀の小劇場芝居を見慣れたせいか、こういうプロの技を感じる舞台に出会うと、それだけで、富くじに当たった気分でした。

前回の見逃した公演では、最後に、私の好みではない収束の仕方だったと聞いていたので、最後まで油断できないなと、恐々観ていましたが、最後まで、爽快!心から、安堵した次第です。

伊之助と美鈴の最後のシーンは、演じ手の佐藤さんと佳那枝さんのピッタリ息の合った名台詞が生き、まるで、時代劇の名作にも劣らない哀れを感じて、涙が自然に流れました。

本当に、素敵!!大おススメ作品です。
父が燃える日

父が燃える日

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2011/09/14 (水) ~ 2011/09/19 (月)公演終了

満足度★★★

収束への算段間違いが見える
途中まではね、実に面白いんですね。

場転の度に、毎週楽しみにしている連続ドラマの次週放送を待つような心境でした。

堅物だった青年座が、劇団全体、丸みが出て、弾力性が出て来た印象で、これはかなり面白い!!と楽しんで拝見していました。

ところが、終盤に近づくに連れ、この軽快な歩調が乱れ、姑息なリアル感を持ち出したがために、逆に鼻白む展開になって来たのが、とても残念でした。

役者さんは、総じて、皆いい。特に、小豆畑さん、前田さん、万善さん、宇宙さん、名塚さん、山本さん。

名塚さんは、一目で大ファンになりました。こういう、リアルに元気の良い芝居をして下さる若い女優さんを観るのは本当に久々で、まだ演劇界、捨てたもんじやないと嬉しくなりました。

ネタバレBOX

舞台装置の工夫にセンスを感じ、開幕から意表をつかれ、これで、一気に観客の気持ちをゲットした芝居だと感じたのですが、どうやら、席によっては、全く観えない位置があったらしく、これはあってはならないことですね。(観客の嫉妬は根深いことを、劇団は肝に銘じた方がいいと思います。チケット代を払いもせずに、初日乾杯などに加わる、表面上の後援者より、正規のお金を払って芝居を人生の楽しみにしている一般客の想いに準じた芝居作りをして頂きたいと痛切に願う次第です。)

箱庭の古川さんの戯曲は、オーバーな人間描写の中に、実は、リアルな人間が照射されていると感じますが、終盤、変に人情話に持って行ったせいで、逆に、リアルさが薄れてしまったように感じました。

せっかく、僕役の宇宙さんが素敵な自然体の演技で、観客の心を舞台に集中させたのに、その後の、母親の戸袋内の行動が、あまりにもわざとらしく、一気に、笑う気持ちも失せ、その後は、いつ終演になるのかと、舞台への興味が半減してしまいました。
おばあちゃんの隠された病気の話など、蛇足もいいところに感じてしまいました。

ただ、あのろうそくの灯はとっても綺麗でしたけれど。

最初面白く、後半つまらない芝居と、最初つまらなくて、後半面白い芝居と、どちらが好きかと言えば、後者派なので、昨日のR&Jとは真逆で、観た後の
満足度がかなり激減することになり、とても残念でした。

「父が燃える日」という題名にも、ちょっと誇大広告的な雰囲気を感じました。
何か、この芝居で、父が一番端役だった印象。
場転ごとの父がの副題も、思わせ振りで、こういうの、生理的にやや抵抗を感じます。
ロミオ&ジュリエット

ロミオ&ジュリエット

TBS

赤坂ACTシアター(東京都)

2011/09/07 (水) ~ 2011/10/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

歌唱力が全てを凌駕する快作かな?
いえね、幕開きは正直気持ちが萎えました。

あら、これ、相当駄作??って感じで。

ところがですよ、結果的に、これは近来稀に見る優れもののロミジュリでした。

一幕ではよしてよ!と内心思った小道具が、実は、これを出す意味があったのかもとさえ、善意的な解釈が可能に成る程でした。

城田ロミオは、見目麗しく、歌唱に色気があり、もう文句のつけようがありません。昆ジュリエットには、一声聴いて、驚嘆させられました。一体、どこに、こんな歌が上手で、ピッタリな女優さんが今まで隠れていたの??と、信じられない思いでした。

周りのキャストも、こぞって歌唱の優れたツワモノばかり。
こういう歌唱に不安のないミュージカルが日本でも上演される日が来るなんて、昔は期待もしませんでした。

ただ、脚本と、訳詞の酷さには、やや残念な部分もありました。

「ロミオとジュリエット」と言うよりは、「ウエストサイドストーリー」のパロディ的な味わいでした。

ネタバレBOX

開幕早々、携帯やフェイスブックネタが満載で、あれ、そういうテイスト?とかなりがっくりしたのです。
衣装が現代風なのはいいとしても、時代設定も場所設定も滅茶苦茶な感じで、それでいて、大公や両家の設定等は、原作に忠実という、矛盾で、気持ちが付いて行けるだろうかとかなり不安が過ぎりました。

ところが、主役二人が登場するや、その不安はいっぺんに解消され、「わお、日本でこんな本まもんのロミジュリが観られるのねえ!」と一気に心がハートマークに豹変しちゃいましたよ。

だって、若くて、素敵で甘い歌声のまさにロミオ的な城田さんと、まだ乙女の純粋無垢な感じの、昆さんの可憐さに目が釘付けになって、耳はとろけそうになるんですもの。

皆さん、歌もダンスもお上手。

意外な人物のソロナンバーがたくさんあって、ちょっといつものロミジュリを側面から照射してみました的な視点が新鮮でした。
歌詞は、他のシェークスピア作品からも拝借したり、工夫が感じられたのですが、訳詞がうまくないせいか、耳障りな単語が耳につき、ちょっと違和感を感じる部分がたくさん見受けられました。
特に、「憎しみ」という語を連呼する歌は、歌いにくそうだし、ダサい印象を受けてしまいました。
主役二人のデュエット曲は、やはりいつ聴いても佳曲だなあとウットリ!
今度、CDを作る機会があれば、絶対入れたい曲ですね。

石川禅さんの出場が少なく、もったいなく感じたり、涼風さん扮するジュリエットの母のキャラクター設定に、異を唱えたい思いなど、細部をほじくれば、多々不満もありましたが、とにかく、観ても聴いても、清々しく、観客の気持ちが幸せになるクオリティ高いミュージカルだったことは確かです。

最初は、これだけは勘弁と思った携帯の存在も、もしかしたら、意味があったのかもと感じられさえしました。
以前、誰かが言ってたんです。「もし、携帯があったら、ロミオとジュリエットは死なないで済んだのに」って。
でも、この芝居、携帯があっても、すれ違いは起こり、やはり死んでしまうのねえ。つまり、二人は、どういう時代に生まれても、人々に、戦いや復讐の愚かさを自らの死をもって、伝える役割を神から与えられた存在なんでしょうね。そして、愛情の素晴らしさもね。

何か、久々、一演劇ファンとして、ただ単純に幸せになれる舞台でした。
今夜は、いい夢見られそうです。
キネマの天地

キネマの天地

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2011/09/05 (月) ~ 2011/10/01 (土)公演終了

満足度★★★★★

演劇愛に満ちて、涙を禁じ得ない秀作
井上ひさしさんの演劇愛に満ち溢れた作品で、家までずっと泣きどおしでした。

何度も、観た作品もある中、この作品は、今日が初見でした。

イキウメの窪田さんのショックなニュースを昼に知り、開演前には、息子の同期生が、来年羨ましくなるような舞台に立たれることを、チラシで知りました。
そういう、様々な想いが交錯する中で拝見した「キネマの天地」、きっと、今日であったからこそ、余計胸に響いたのだと思います。

こういう本当に演劇愛に満ちた劇作家が、今後二度と再び、現れないかもしれないという危惧が、頭に充満し、窒息しそうでした。

井上さんの演劇愛と共に、自分自身の演劇愛も再確認する舞台となりました。

世の中から、似非演劇人や似非演劇愛好家を一人残らず、駆逐したい!!
そんな気分になる、素晴らしい作品であり、井上さんの新作が二度と観られない悲劇を痛感して、涙が止まらなくなりました。

ネタバレBOX

終わり近くなるまで、こういう内容だということに気づかずに観ていました。

最後は、衝撃を受けました。

このキャストだからこそ、なし得た作品です。全員の出演者が、真に演劇を愛していなければ、この作品は、駄作になってしまう。そういう、命題を抱えた舞台です。

このキャストならばこそ、どんな演出家が介在しても、井上さんの演劇ラブの精神を観客に伝えられたのだと思います。

麻実さんが、このところ、台詞を忘れたり、咬んだりする場面に何度か遭遇し、心配になりました。今日は、秋山さんが、そっと助け舟を出されましたが…。
麻実さん演じる立花かず子同様、年齢に負けず、いつまでも第一線でご活躍頂きたい女優さんなので、心から、エールを送りたく思います。

7人の役者さんの演じる演劇人は、演じ手の皆さんの分身の如く、それぞれが、役への情熱や演劇愛に溢れた人ばかりで、これからの日本の演劇界も、こういう方々で満たされてほしいものだと強く思いました。
髑髏城の七人

髑髏城の七人

劇団☆新感線

青山劇場(東京都)

2011/09/05 (月) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★★

終盤は、手に汗で、「小栗!」と声掛けたくなる
たぶん、3回は観た「髑髏城」。今回は、捨之介と、天魔王が一人二役でないので、どうなるのかと興味津々でした。

小栗捨之介は良かったけれど、森山天魔王にはかなり違和感ありました。

でも、やはり新感線の殺陣には、心惹かれます。終盤は、心の中で、「いよ!小栗!!」と掛け声を掛けて観ていました。

明治座の昔観た田村正和公演を何故か思い出しました。

勝地さん、仲さん、河野さん、早乙女さん、好演!!

何気に、高田さんの贋鉄斎に、癒し効果あり。

ネタバレBOX

一幕の流れが新感線とは思えない冗長な展開。
兵庫の兄と沙霧の握り飯騒動がくどくて長くて、もたれました。

早乙女さんの殺陣は、見た目にも美しく、彼が登場すると、一気に、夢心地に誘われます。舞台のマジックが掛かり、ここから、気持ちが髑髏城の世界にやっと入って行けた気がしました。

まさかの高田贋鉄斎は、とにかく、文句なく面白く、この舞台の要のように感じました。

仲さんの沙霧は、アニメのようにかっこよく、台詞の表現力を、見た目で十分カバーする、女優力が感じ取れました。

滑舌の良い、勝地さんには、いつも惚れ惚れするばかり。

小栗さんは、初舞台から拝見していますが、魅せる役者への仲間入りを認識。得難い若手俳優さんとして、今後が楽しみとなりました。

古田さんや橋本さんがいないのに、この客演陣、総じて、よく新感線舞台を形成して下さったと感無量でした。

でも、どうも、何か物足りない…。

やはり、天魔王は、圧倒的存在感の染五郎さんで拝見したかった気がします。
現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』

現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』

世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター(東京都)

2011/08/19 (金) ~ 2011/09/01 (木)公演終了

満足度★★★★

死者の幻影に彩られた舞台が秀逸
やはり、如何にも前川作品。

いつもは、笑いを取る役の多い山内さんのスタンスが新鮮でした。

小松さん、以前も何度か拝見していて、それほどに感じなかったのに、この舞台、彼の発声がほとんど聞き取れず、閉口しました。脳内で、クロスワードパズルを解くように、小松さんの台詞を予想する作業を強いられ、前川作品に素直に没頭できなかったのが、かなり残念でなりません。

でも、それでも尚、前川さんの作品には、過剰な台詞を排したが故の、目に訴える印象が鮮やかで、舞台を観る内に、個人的に親しかった逝ってしまった人々や、震災で亡くなった方々への想いが交錯し、不意に涙ぐみそうになる瞬間が多々ありました。

静に心に染み入る舞台作品でした。

ネタバレBOX

舞台が、奥に長く続く道のような構造で、ちょうど、京都駅の外側の通路のよう。これは、能舞台もイメージしたものなのでしょう。
たくさんの穴があり、人物がそこから現れたり、落ちたりするのは、歌舞伎では、死者や霊などがスッポンからせり上がる決まりだから、それをヒントにしたのかなと感じました。(よしさんが、能では別の霊登場の決まりがあると教えて下さったので、昨日の、私の能に関しての誤解コメントを訂正しました。)

いろいろな死者のエピソードが、語り芝居のように、役者の演じ分けにより、披露されて行く手法で、その積み重ねの中で、山内さん演じるところの、神社の息子の心象風景が焙り出されて行く構成がとても印象的で、素晴らしいと感じました。

最後の、キャスト総出の場面は、明るく語る様子を長く見せることで、その後の顛末を衝撃的に表出したかったのだろうと思うのですが、私の個人的な体感で言うと、数分長過ぎたように思いました。
原稿用紙で3枚ほどの刈り込みがあった方が、最後の山内さんの盆踊りのような仕草がより生きたように感じます。

イキウメと奇怪チームの合同公演風な味付けで、私は、其ノ壱より、自分好みでした。
最後の場面が、福島の現状とダブり、心が張り裂けそうな感覚を覚えました。

震災後の劇作家の作品は、私に、その人が本物か偽者かの判断基準を提示してくれていると感じますが、この作品を拝見し、前川さんは、やはり本物の劇作家だと確信できました。
ブロードウェイミュージカルライブ2011

ブロードウェイミュージカルライブ2011

サンライズプロモーション東京

新国立劇場 中劇場(東京都)

2011/08/27 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

看板に偽りなし
本当に、名曲を堪能できる夢のステージでした。

皆さん、歌唱力に不安のない方ばかり。

構成がシンプルで、余計なつまらないおべんちゃら司会がいないのが心地良い。

選曲センスが抜群!これなら、私は安心して、ミュージカルコンサートから身を引けます。

ただ、惜しむらくは、演奏が、編曲のせいか、前に出すぎて、歌唱より立ってしまうところが多々あり、それがちょっと残念でした。

意外な人が、意外な楽曲を歌い、オリジナルキャストより、ずっとこの人で観たいと思わせられることがたくさんありました。

それと、DVD販売や、放送予定の関係からか、四季の作品等、英詞で唄われる曲が多かったのも、ちょっと残念でした。
やはり、日本人のミュージカル役者さんには、日本語詞で歌って頂きたく思います。

ネタバレBOX

以前から歌唱力に定評のある人もそうでない人も、益々実力がアップして、本当にうっとりするようなコンサートでした。

特に、藤岡さんと戸井さんの歌がメキメキ上達されて感無量でした。
このコンサートのためにだけ来日されたというキムさんの歌唱力、日本語詞での表現力の豊かさにはただただ感嘆!人気だけが先行している一部のミュージカル俳優さんに是非お手本にして頂きたいような見事な日本語詞の歌唱でした。

特に印象に残ったのが、知念さんの「命をあげよう」、石井・神田の「ロミオとジュリエット」の曲、岡田・知念のデュエット「トゥナイト」、保阪・土居の「サイドショー」の曲のデュエット、神田さんの「素敵じゃない?」、キムさんの「時が来た」「星よ」、藤岡さんの「オールモストパラダイス」姿月さんの「レベッカ」「最後のダンス」、本間さんとコーラス、ダンサーによる「ビクタービクトリア」のダンス…。

そして、圧巻が、戸井さんの歌う「サイドショー」の愛情に満ち溢れた歌唱でした。戸井さんに本編に出てこの歌を歌って頂きたくなりました。

こうして、いずれも、甲乙つけ難い実力者揃いだと、音譜どおりに歌うのは上手でも、技巧に走り、歌に心がない方の歌唱はつまらなく感じました。

バックダンサー・コーラスのメンバーも実力者揃いで、特に、息子達が先日お世話になった白石拓也さんが、常に笑顔で踊っていらしたのが好印象でした。
八月花形歌舞伎

八月花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2011/08/06 (土) ~ 2011/08/27 (土)公演終了

満足度★★★★

22年が感無量の乳房榎
第3部、とても組み合わせのいい演目でした。

舞踊劇「宿の月」は、今の時代にも通用する夫婦の情愛と倦怠期のすれ違い等を、喜劇仕立にした作品。舞踊をきちんと表情でも踊れるお二人なので、退屈にならず、微笑ましい気持ちになって鑑賞することができました。

舞踊では、扇子を様々な物に見立てますが、橋之助さんが扇子で赤子を表現すると、実際、赤ん坊がそこに抱かれているように目に映りました。

扇雀さんは、こういう喜劇タッチの舞踊がお得意なので、久々、楽しい舞踊を堪能させて頂きました。

「怪談乳房榎」の方は、内容については、ネタバレで触れますが、獅堂さんの表層的で紋切り型の芝居作法が、水を差し、せっかくの勘太郎さんの熱演を援護射撃しそこねて、単なる早替りに主眼を置くエンタメ芝居に格下げしてしまったのが残念でした。浪江は橋之助さんに演じて頂きたかったと切に思いました。

22年前、この八月歌舞伎が始まった時、勘三郎さんの「乳房榎」を、歌舞伎をほとんどご覧になったことのないPTAの100人の方にご覧に入れて、熱烈な歌舞伎ファンにしてしまったことがありました。

あれから、22年。勘太郎さんが、この演目を上演する日が来ようとは!
様々な感情が湧き上がり、感無量の観劇となりました。

ネタバレBOX

勘太郎さんの4役早替り、若いだけに、行動が機敏で、早替りの観点だけで言えば、もしかしたら、歴代随一だったかもしれません。
何しろ、10代の時から、この演目の上演は全て拝見していますので。

ただ、どうしても、気持ちが逸るのか、特に、重信の時に、腰から下が、役になり切れていないように感じました。三次と円朝はなかなかでした。正助は、実直な感じを懸命に演じているけれど、まだそれを演じる勘太郎さん自身が見え隠れしてしまいます。
勘太郎さんが演じるには、5年早かったような気がどうしてもしてしまいました。
階段での、三次と正助の早替り、父上の勘三郎さんはそれはそれはお見事で、一瞬にして、役の人柄まで豹変させて感嘆しましたので。
何度も演じられて、あそこまで達せられる日が近いことを楽しみにしたいと思いました。

七之助さんは、若いのに、人妻の風格を見事に演じていて、声の出し方も工夫され、巧い女形さんになられたなあと感激しました。

最後の真与太郎の仇討ち場面を割愛し、代わりに、園朝が口演して大詰を語る趣向。この方が冗長にならず、気がきいていたように感じました。

お父様は、早替りの時、今替わったとわかる時がありましたが、勘太郎さんは、その点ではパーフェクト!誰もが、驚嘆していて、小気味のいい早替り芝居となりました。
ドラキュラ

ドラキュラ

フジテレビジョン

東京国際フォーラム ホールC(東京都)

2011/08/20 (土) ~ 2011/09/11 (日)公演終了

満足度★★★

箱が大き過ぎるけれど
花總さんのファンなので、彼女のステージを観られる機会を逃したくなくて、出来にはあまり期待せずに観劇しました。

案の定、ストーリー展開等には、難も感じましたが、まあ、和央・花總ファンの方には、必見舞台なのではと感じました。

とにかく、お二人のスタイルの維持に感服します。

最近は、ステージもそんなにこなされていないでしょうに、常に、舞台人としての努力を重ねていらっしゃるのだろうと、尊敬の念を抱きました。

先日まで、他の舞台で主役を務めていた安倍なつみさんの舞台女優としての目覚しい成長振りには目を見張りました。

若手の活躍も目立ちます。特に、小野田さん。彼の歌唱が確かなのは知っていましたが、あれほどの演技力を兼ね備えた役者さんとは知らず、御見逸れしました。

舞台作品としての質から言えば、それほどの作品とは思いませんが、とにかく、若い俳優さん達の実力を拝見できて、演劇ファンとして、単純に嬉しくなる舞台でした。

ネタバレBOX

ドラキュラモノの舞台は、過去にもいろいろ観ていますが、ストーリー展開のみに主軸が置かれ、人物の心象表現が希薄な舞台で、今まで観たドラキュラモノで、一番感動の薄い作品でした。

でも、やはり、花總さんの存在感、可憐さ、ドレス姿の高貴な美しさには、目を奪われます。

もっと彼女の舞台が観たいけれど、お二人セットでないと難かしそうで、残念です。

ドラキュラを追い詰める若者役の3人、上山さん、矢崎さん、松原さんのチームワークが清々しく、印象に残りますが、いい意味で鳥肌が立ったのが、ドラキュラの手下に利用される若者役の小野田さんの演技。彼の演技には一番心を動かされました。
将来のご活躍が楽しみです。

安倍さんも、単なるアイドル女優の域を脱し、立派なミュージカル女優さん振りで、得難い存在になられたなあと感心しました。
三銃士

三銃士

東宝

帝国劇場(東京都)

2011/07/17 (日) ~ 2011/08/26 (金)公演終了

満足度★★★★

二度観て感じたこと
東京千秋楽目前に、もう一度観劇。

以前より、ずっとチームワークが良くなっていましたが、やはり、肝心の三銃士の見せ場があまり、内実見せ場になっていないのが残念。

剣さばきは、井上くん、吉野さん、明賢さんに軍配ですねえ。

でも、やはり、チームワークの良さを感じさせられる舞台は、他に如何に難点があったとしても、それを超越して、観る者を幸せにする原動力があるなあと、つくづく実感しました。

何かと心労の多い従妹と行きましたが、カーテンコールで、思い切り拍手し、二人とも、しばし、現実社会の憂いを忘れ、幸せな気分になれました。

ネタバレBOX

二度観て、ちょっと感じたのは、岸さんの役、太ってるのに、顔はそのままなので、何だかテレビバラエティの寸劇みたいに見えてお気の毒。
顔と体型がアンバランスだと、如何にも作り物めきますね。

それから、坂元さんの台詞。バッキンガム候が真剣に王妃を愛していたと言うのを受けて、「いつも真剣でした。カテリーヌの時も、○○の時も…」と、バッキンガム候の移り気を揶揄して、笑いを取る部分。あれは、このストーリーをやはり、ただの「三銃士」の寸劇的に、レベルを下げるだけで、原作の風格を貶めてる気がしました。

カーテンコール後の、井上さんと三銃士のおしゃべりは、とても楽しく、一口講座のような三銃士ネタも、ためになるし、和気藹々として嬉しいお土産話でした。

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