現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』 公演情報 世田谷パブリックシアター「現代能楽集Ⅵ 『奇ッ怪 其ノ弐』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    死者の幻影に彩られた舞台が秀逸
    やはり、如何にも前川作品。

    いつもは、笑いを取る役の多い山内さんのスタンスが新鮮でした。

    小松さん、以前も何度か拝見していて、それほどに感じなかったのに、この舞台、彼の発声がほとんど聞き取れず、閉口しました。脳内で、クロスワードパズルを解くように、小松さんの台詞を予想する作業を強いられ、前川作品に素直に没頭できなかったのが、かなり残念でなりません。

    でも、それでも尚、前川さんの作品には、過剰な台詞を排したが故の、目に訴える印象が鮮やかで、舞台を観る内に、個人的に親しかった逝ってしまった人々や、震災で亡くなった方々への想いが交錯し、不意に涙ぐみそうになる瞬間が多々ありました。

    静に心に染み入る舞台作品でした。

    ネタバレBOX

    舞台が、奥に長く続く道のような構造で、ちょうど、京都駅の外側の通路のよう。これは、能舞台もイメージしたものなのでしょう。
    たくさんの穴があり、人物がそこから現れたり、落ちたりするのは、歌舞伎では、死者や霊などがスッポンからせり上がる決まりだから、それをヒントにしたのかなと感じました。(よしさんが、能では別の霊登場の決まりがあると教えて下さったので、昨日の、私の能に関しての誤解コメントを訂正しました。)

    いろいろな死者のエピソードが、語り芝居のように、役者の演じ分けにより、披露されて行く手法で、その積み重ねの中で、山内さん演じるところの、神社の息子の心象風景が焙り出されて行く構成がとても印象的で、素晴らしいと感じました。

    最後の、キャスト総出の場面は、明るく語る様子を長く見せることで、その後の顛末を衝撃的に表出したかったのだろうと思うのですが、私の個人的な体感で言うと、数分長過ぎたように思いました。
    原稿用紙で3枚ほどの刈り込みがあった方が、最後の山内さんの盆踊りのような仕草がより生きたように感じます。

    イキウメと奇怪チームの合同公演風な味付けで、私は、其ノ壱より、自分好みでした。
    最後の場面が、福島の現状とダブり、心が張り裂けそうな感覚を覚えました。

    震災後の劇作家の作品は、私に、その人が本物か偽者かの判断基準を提示してくれていると感じますが、この作品を拝見し、前川さんは、やはり本物の劇作家だと確信できました。

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    2011/08/30 03:30

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