KAEの観てきた!クチコミ一覧

241-260件 / 855件中
二都物語

二都物語

東宝

帝国劇場(東京都)

2013/07/18 (木) ~ 2013/08/26 (月)公演終了

満足度★★★★

舞台慣れが裏目に出てる役者さんが…
3回目観劇、マイラストデイで、やや残念…。

前回、すみれさんも進化されていて、嬉しかったのですが、今日は、中日を過ぎて、演出家の目も届かなくなったのか、舞台慣れが裏目に出て、自己判断芝居をされる役者さんが数人いらっしゃいました。

変に笑いを取る必要はない芝居だと思うので、作品世界の空気を壊さない演技を追及して頂きたいなと思いました。

でも、ラストに向かう場面になると、涙腺緩むのは、必定!

何年後かに、更に熟成した「ニ都物語」再演を今から期待します。

ネタバレBOX

シドニーとチャールズが反目して対峙する場面、何だか、「半沢直樹」の堺さんと石丸さん並に、顔が接近していました。

ルーシーの立ち居振舞いが、益々、現代女性っぽく、ハッチャけている感じなのが、気になりました。

濱田さんのマダム・ド・ファルジュの歌唱は、更に圧倒的に…。

岡さんのブログのレクチャーのお陰で、理解度が増し、今日は、台詞の一つ一つが、胸に響きました。
LOVE,LOVE,LOVE

LOVE,LOVE,LOVE

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2013/08/02 (金) ~ 2013/08/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

歪だけど、リアル
全くどんな芝居か、内容を知らずに観に行ったので、ある意味衝撃的でした。

この芝居の主役の、ケネスとサンドラの思考形態や、価値観には、あまり共感は覚えませんが、それでも、これはイギリスの多くの家庭で、実際に起こりえる事象を丁寧に、転写表現した作品だという実感はありました。

大家さんの舞台は、数えきれない程観ていますが、今回の作品ほど、彼が魅力ある役者さんだということを認識させられた経験はかつてなかったと思います。
松熊さんは、以前から、上手な女優さんだなと注目していましたが、今回のサンドラ役の身を呈した乗り移りぶりは、快挙的な素晴らしさでした。
ジェイミー役の前田さん、お若いのに、先輩俳優の間で、実に繊細な役どころを無理なく演じていらして、驚きました。昔観た映画で、少年時代のブラッド・ピットが、自閉症の少年を好演していましたが、それを彷彿とさせる秀逸な演技でした。
安藤さんは、養成所時代から既に完成した演技力を有していましたが、青年座団員になられてしばらくは、才気が先走ってしまう、過剰演技が、彼女の良さを隠してしまう懸念を感じたのですが、今回のローズ役では、自然に近い演技の見事さに息を呑みました。安藤さんの女優としての躍進に期待が持てると、少なからず御縁があった人間として、嬉しくなりました。
嶋田さんは、少し前までは、役を深く考え過ぎて、役に演技を封じ込められるような迷いを感じる役者さんでしたが、柔軟性ある演技をものになさったようで、今回のヘンリー役、こちらまで、感情移入してしまうリアルさがありました。

創立当時から、新劇嫌いな父が唯一、目を掛けていた劇団が、旗揚げメンバーが次々と他界された後も、力を失うことなく、新しい才能や風を積極的に受け入れて、健在どころか、益々、価値ある劇団に進化している様を拝見し、個人的にも、万感胸に迫るものがありました。

ネタバレBOX

作劇と、演出の妙が利いている、素敵な舞台構成でした。

マリファナを吸うことに何も罪悪感を感じない、サンドラの思考回路は、日本でしか生活したことのない自分には、想像してみることもできないくらい、違和感だらけで、何も共感できないのですが、でも、イギリスという国の一般的家庭をリアルに再現している芝居なのではという、深さは、素直に感じられる作品でした。

私としては、こんな身勝手な親に育てられた、ローズとジェイミーが気の毒に思えてならないけれど…。
フットルース

フットルース

劇団スイセイ・ミュージカル

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/08/08 (木) ~ 2013/08/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

小野田レンは大成功!
小野田さんの歌唱力は、高校時代のデモテープを拝聴した頃から認知済みですが、ダンスはどうかな?とやや心配でした。

でも、幕開きから、その不安は払拭されました。

彼は、メインとしての華があるだけでなく、チームを統率するリーダーシップも併せ持っているようなので、この役には、ピッタリでした。

「ヒーロー」は、いつ聴いても、元気をもらえるし、歌唱力のある人の歌う「オールモストパラダイス」は、心に沁みます。

行けて、観られて、聴けて良かった!

若かりし頃、彼と観た映画館での会話も懐かしく思い出され、60近い年齢になっても、胸キュン現象、起きました。

ネタバレBOX

カーテンコールで、牧師役の川崎さんと、奥さん役の川島さんが、劇中では歌わない「オールモストパラダイス」をデュエットされ、そうか!何十年も前なら、このお二人のレンとアリエルの組み合わせも良かったかもなんて思いました。レンの母役は、たぶん、「ひまわり娘」の伊藤咲子さん。ずいぶん、時は流れたなあと実感するばかりでした。

牧師役が、熟練の川崎さんなのも、成功キャスティングだし、川島さんの奥さん役が、意外とはまり役で、舞台に真実味を増しました。

スイセイミュージカルの方達のダンスも息が揃い、観ていて、爽快感がありました。

この作品、何度観ても、レンとアリエルの気持ちが接近して、高架線の陸橋下での「オールモストパラダイス」のデュエットに繋がる場面には、心が揺さぶられます。今回は、小野田さんと、星野さんの歌唱力も安定し、二人の声もピッタリ合わさっていたので、尚更に感動的な場面でした。
あかい壁の家

あかい壁の家

オフィス3〇〇

本多劇場(東京都)

2013/08/01 (木) ~ 2013/08/11 (日)公演終了

満足度★★★★

不可思議な感動
「ゲゲゲのゲ」で、中川さんの才能にインスパイアされたらしいえりさんの、中川さんの存在故の音楽劇の誕生に、息を呑みました。

16年ぶりの舞台という緑魔子さんと、中川さんの共演は、まさに奇跡的なコラボという感覚があります。

芝居の内容自体は、頭の整理が追い付かない部分もあるのですが、何だか目ではなく、心の深淵で観た芝居という感覚です。

見逃さなくて良かったと心底思いました。

ただ、えりさんと同い年の私には、中のエピソードは全て理解できますが、若い観客には、少々不親切な部分もありそうな気はしました。

ネタバレBOX

それにしても、やはり緑魔子さんは、役名どおりの大女優でした。

この舞台は、えりさんが、中川さんと出会わなければ、あり得ない作品だったと思います。

以前たまたま喫茶店で、えりさんの隣の席だったため、中川さんを見染めた理由や覚悟を聞いてしまった私ですが、「ゲゲゲのゲ」で、益々お眼鏡に叶ったことが確信できました。

オリジナル曲の作曲にも中川さんが参加していて、無関係ながら、こういう奇跡のコラボの実現には、大いなる喜びを感じました。

高岡早紀さんの姉の存在感も好きでした。

田根さんの老妖精振りも愉快。

更に、進化させて、震災地での上演等、是非続けてほしい作品でした。
歓喜の歌

歓喜の歌

劇団姦し

ザ・スズナリ(東京都)

2013/07/31 (水) ~ 2013/08/05 (月)公演終了

満足度★★★★

他愛ない日常のスケッチが絶妙
取り立てて何か大きな事件が起こるわけでもない、3女性の小旅行の二日間の出来事を、スケッチ風に描いた芝居。

普通なら、退屈になりそうな素材なのに、切り口が良く、描き方が、脚本も、役者も丁寧なせいで、とても集中して見守ることができました。

会社の同僚の3人の女性が、意気投合して、ちょっと非日常のプチ家出という設定ですが、むしろ、描かれた世界は、実に日常そのもの。
学校時代の友人ではないので、3人は、お互いの生活や性格もそれほど深く知らない間柄。でも、きっとこの旅行から帰った後は、3人はかけがえのない友人関係になりそうだという予感を感じさせて、ふと、心がほっこりとしていました。
3人3様の服装やバックが、その人らしさを表出して、小道具に至るまで、齟齬がありませんでした。

ただ、スズナリは、カンフェティで買ってはいけないということを忘れていて、背もたれのない椅子だったので、後半、背中が痛くなって、舞台が早く終わってほしいという気持ちにされられたのは、やや残念でした。

ネタバレBOX

たまたま、会社帰りに一緒に飲みに行って、ひょんな流れで、プチ家出をしようと意気投合した3女性が、目的地も定めずに旅行に出て、うらぶれた民宿で1泊する二日間の物語。

ここで出会った民宿の女将の倉野さん、気の良い仲良し夫妻の、日比さんと池津さんの3人の客演俳優さんも、それぞれ、良い味わいの演技で、取り立てて何も起こらない芝居に観客を惹き付ける魅力がたっぷりとある素敵な舞台作品でした。

最後の、バス停の場面は、ほとんど、幕開きの同場面とダブる台詞を話しているのに、この旅行で、3人の心が通い合ったせいで、最初の空気とは微妙に異なり、深みが増した、3人の人間関の変化が絶妙に描写されていて、秀逸でした。


あまり私生活をお互いに知らない間柄故、3人の抱えている問題は、ついぞ明らかにされることはなく、適度な距離感を保ったまま、舞台は進行して行くのですが、それだからこそ、描かれているどの場面にもリアリテイがあり、そうそう、そういうこと、自分にもあると、無闇に共感して、自分も一緒に旅行したような気分でした。

倉野さんの「リチャード3世」の台詞、懐かしくて、嬉しくなりました。

あめくさんの、いつも微笑みを絶やさない女性の心の中を覗いてみたくなりました。彼女は、故郷が沖縄だと話して、「いいなあ!沖縄!」とリアクションされた時も、「そうお?」と優しく微笑んで、短く受け答えするだけ。本当は、いろいろな思いが交錯していると思うけれど、決して、他人に反論しない人なのね。彼女と、同棲相手の喧嘩の理由を知りたくなりました。

具合を悪くした息子に、携帯で、薬や体温計などのありかを伝える時の、赤堀さんの書く自然な台詞と、かんのさんのナチュラル演技に、何度も笑ってしまいました。

舞台女優でもある那須さん演じる白井さんの、飲み会から先に帰れなかった理由の台詞に、何度も、共感していました。

今回、初めて拝見した日比さん、実に味わいある演技をされる方で、好感が持てました。


台詞にも出てくる、「だから何だって話」が、1時間40分、スケッチされただけの作品なのに、どうして、こんなに心が揺さぶられるんだろうと思うくらい、愛着を感じる舞台でした。

ただ、私だったら、やはり、病気の息子が心配で、駅から戻っては来ないだろうとは思います。たぶん、あの水野さんなら、薄皮饅頭みつけても、息子の所に帰りそうだけれど…。作者が、たぶん、男性だから、母親の心理はわからなかったのではと感じました。(那須さんの台詞にあった、飲み会から先に帰れなかったのと同じ理由で、彼女は、駅から舞い戻って来たんだと思いますが、ノロウィルスも疑われる状況の息子を放って、旅を続ける普通の母親はまずいません。)

水野さんのクマモンのバックが、とてもあの役にピッタリで、見る度、笑顔になってしまいましたが。

赤堀さんは、等身大の人間の何気ない日常を描く天才作家だと思います。舞台に描かれていない登場人物の日常が、手に取るようにわかるような繊細な脚本を書ける方です。それと、探しものの場面の演出が最高!!今まで拝見した他の舞台でも、耳かきや爪切り探しの場面とか、大変印象的でした。(笑)
カタルシツ『地下室の手記』

カタルシツ『地下室の手記』

イキウメ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2013/07/25 (木) ~ 2013/08/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

安井さんの芸を堪能しました
ドストエフスキーの原作というのは、全く知らないので、どこまでが、原作に忠実なのか、どこからが、前川さんの創作なのか、皆目見当がつきませんが、とにかく、とても面白く拝見しました。

半分以上は、安井さんの一人芝居状態で、彼の芸の力に魅せられました。

前川さんの気の利いた舞台構成にも、ワクワクの連続。

特別でない人間の特別でない日常が、活写されて、ちょっぴり、胸に堪える匙加減が絶妙の、魅力的な舞台でした。

ネタバレBOX

主人公の語りに反応する、ニコ生のコメントが、カーテンに映し出されて行く趣向が無茶苦茶愉快でした。

今のニコ生ユーザーが如何にも書きそうなコメントで受ける。その挿入が、実に当意即妙。やはり、前川さんは只者ではないなあと痛感します。もしかすると、主人公の発言や行動には、ご自身の若かりし頃の思いも投影されているのかも。

登場しない母親の、困った息子に対する言動もそこはかとなく、見えて、余計、主人公の状況が、観客に伝わり、ある種の切なさを感じました。

ともすれば、秋葉原の通り魔や、先日の、山口の新八墓村事件の犯人のようになりかねない主人公を、特別に道を逸れてしまった人間として描くのではなく、どこにでもいそうな、誰もが、自分にも共感できるような卑近な人間として、登場させたところが、非常に秀逸な舞台になっていると思いました。
二都物語

二都物語

東宝

帝国劇場(東京都)

2013/07/18 (木) ~ 2013/08/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

芝居としての深みが増していた
2回目観劇。今日の席は、非常に良席でしたので、先日より、一層舞台に集中することができ、一瞬たりとも目が離せない展開でした。

先日、違和感を指摘した、ルーシーとドクター・マネットのデュエットシーンも、後ろで聴いているキャストがきちんとリアクション演技をしていて、芝居としての完成度が高くなっていました。

岡さんも、悪役として、徹した演技をされていて、先日より、憎たらしくなっていました。(笑)

どなたなのか、パンフを購入していないので、わからないのですが、マダム・ドファルジュの兄役の役者さんの歌唱が素晴らしく、印象に残りました。

すみれさん、もう少し、イギリスの上流家庭の令嬢の品を体現できるようになれば、更に、物語に深みが増すと思うのですが…。

8月に、3度目の観劇ができる日が、心底楽しみになりました。

それにしても、福井さんと宮川さんの、ミュージカル脇役俳優としての存在感は、ピカ一で、お二人の登場シーンは観ているだけで、ワクワクします。

遠くに行くことは許されない

遠くに行くことは許されない

セロリの会 

「劇」小劇場(東京都)

2013/07/25 (木) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度

人間を描いてほしい
芝居というのは、所詮虚構です。
劇作家が、テーマを決め、登場人物を造型し、それを役者が演じる、嘘の世界。でも、作者は、生身の役者の肉体を使って、本物の人間の姿を舞台に再構築するものではと、私は思います。

相変わらずの、お茶の間芝居的な、自然な会話のやりとりに、前半、ヒロセさんらしい、至近の人間の喜怒哀楽芝居かと期待しました。

でも、後半の展開は、滅茶苦茶です。人間の性を全く無視して、作者が、頭で考えたストーリーだけが、私の心を置き去りにして、どんどん進み、愕然としました。

たとえば、拉致被害者の家族の心情を想像してみてください。
もし、めぐみさんが、目の前に現れた時、横田さんご夫妻ならどうされるでしょう?あんな状態で、探し求めた家族を放置するでしょうか?

芝居は、所詮虚構で、登場人物は、作者が創り出した架空の人間です。
でも、わざわざ舞台で上演するのなら、舞台上の人物は、実際にいそうな人物であるべきです。

この作品は、再演だとのこと。ならば、尚のこと、この展開には、疑問が湧くのみでした。
役者さんの演技には、何も問題がないだけに、この曰く言い難い不快感が残念でなりませんでした。

ネタバレBOX

作者が、どういうシチュエーションで、何を描きたかったかはわかり過ぎる程、わかるつもりです。

でも、22年探し続けているゆうちゃんらしき女性が、あーいう形で、目の前に現れた時、誰一人、ロープを解こうとする人間が皆無なのは信じ難い行動です。さすがに、作者も、後ろめたかったのか、後で、ロープをしたままの状態の言い訳を何人かの登場人物に語らせますが、そんな言い訳めいた台詞を書いても、この穴は埋まらないと思いました。

他にも、作りごとだと感じる箇所は幾つか散見されます。具合を悪くして、床に伏せる母親が舞台に登場しないのは納得しますが、子供達と一緒に、ずっと娘の行方を捜していた父親も、娘らしき女性が帰ってきたと聞いても、一か月も帰宅しないなんて…!!あり得ない!!!

説明では、娘探しに協力してくれた人へのお礼行脚で、北海道から戻れないんですって!!

ゆうちゃんが、みつかるまでは、誰も幸せになれないなんて、枷をはめられたような生活を続ける家族なのに、そんなことは、あり得ない!!
こんな無謀な設定にするなら、父親は死んだことにしておけばよかったのに。

美しい優が、施設から貰われた子だったとわかり、育ての親や家族に違和感を感じていたと吐露する台詞でも「、親兄弟に似ていない」だけにしておけばいいのに、「犬や亀にも似てない」なんて台詞を言わせる。

客席に、確かにクスクス笑いは起きるけど、こんな小ネタで客席を笑わせる意味があるでしょうか?ドタバタコメディなら、構わないけれど、これはシリアスな芝居なんでしょう?

何か、全体的に、劇作の根本をはき違えている作品だと思いました。

そうそう、人の気持ちを思いやれる人だから、愛が好きになった花井家の弟が、幾ら優が説得に応じなかったからと言って、妹だと思う女性を縛りあげ、頭に紙袋を被せて、強引に拉致してくるというのにも、無理を感じました。

これでは、好演されている役者さんが、大変お気の毒な気がします。
七月花形歌舞伎

七月花形歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2013/07/04 (木) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★

久々怖いお岩でしたが…
全体的には、深みのない四谷怪談でした。

菊之助さんは、お岩を丁寧に演じていて、その上、身震いするほど、恨みを前面に押し出した怖さのあるお岩でしたが…。

この演目は、私の個人的な思いからすると、主役二人と同じくらい、直助と宅悦、お梅を誰が演じるかが重要なんですけれど、今回満足したのは、お梅だけでした。

30年ぶりという「蛍狩」の場面、30年前は子育て真っ最中で、しばらく歌舞伎は御無沙汰の時期で、今回初めて観たのですが、染五郎さんと菊之助さんの踊りはため息が出るほど美しかったものの、どうもいつも見慣れている舞台進行と違って、違和感を感じてしまいました。
個人的好みから言えば、直助とお袖の夫婦の場面の方をむしろ観たかった気がします。

ネタバレBOX

直助の松緑さんの登場の仕方が、どうも現代劇風で、気になりました。松緑さんは、日舞の方は、周囲にきっちり基本を教えて下さる方がいらしたので、しっかりしているのですが、歌舞伎の基本を手取り足取り教えて下さる方はいらっしゃらないと思うので、無理からぬ気はするのですが、先輩役者さんが次々亡くなられた今、より一層、歌舞伎役者として、精進される環境が困難そうで、心配になります。

染五郎さんのように、叔父様がきっちり教えて下さる方はお幸せだなと改めて思いました。

それにしても、明治座の時にも驚きましたが、今回の舞台でも、大詰で、「高麗屋!」の掛け声ばかりが聞こえ、誰も「音羽屋!」と言わないのには、驚愕しました。どちらかと言えば、主役は菊之助さんの方だと思うのですが…。
ウィーン・ミュージカル・コンサート2

ウィーン・ミュージカル・コンサート2

梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2013/07/20 (土) ~ 2013/07/22 (月)公演終了

満足度★★★★★

楽日だから、更にパワフルでした
先日、オーチャードホールの公演に感激したので、急遽、チケットを買って、楽日に参りました。

素晴らしい内容なのに、残念ながら、今日も、2階席は半分も埋まっていませんでした。

でも、会場の観客は、総立ちで、心からのブラボーを叫んでいました。

容姿、歌唱力、全てにおいて、クオリテイの高いメンバーが集結しているので、目も耳も蕩けそうになりました。

特に、トート役のマークさん、人造人間ではと思うほど、生身の人間とは思えない完璧な造型で、オペラグラスを覗く度、にやけてしまいそうでした。

ウイーンミュージカルは、楽曲がとても優れているので、できれば、毎年でも来日公演して頂きたくなります。

ネタバレBOX

本当に、しつこいようですが、マークさんを見逃したミュージカルファンの方々、大変な損失だったと思います。

あんなに、非の打ちどころのないトートは初めて観ました。

ルカスさんも、相変わらず、青年ルドルフの若さを体現できる純粋さがあり、コンサートとは言っても、役の気持ちを表現する技能が優れいて、感動します。

エリザベートは、若く可憐なアンネミケさんと、熟練の尊厳さを身につけたマヤさんのお二人の歌唱を聴き比べられて、贅沢でした。

「ロミオ&ジュリエット」の対決場面のダンスも、コンサートバージョンは、仲互いしない作りで、洒落た演出でした。

今日の特別カーテンコールは、「三銃士」とマヤさんの「私だけに」と、最後は、全員で歌う「星から降る金」。

目にも耳にも、記憶にも、焼きつけて帰りたくなる、至福のコンサートに、感謝致します。
ワーニャ伯父さん

ワーニャ伯父さん

演劇集団円

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2013/07/19 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★

極寒の観劇で、心ここにあらずでした
さすが、カンフェティ席!寒いの何のって!!羽織るものを慌てて出したけれど、そんな物では追いつかず、まるで、冷凍室で観劇という拷問を受けているかのような寒さで、体中が痛くて、早く終わってくれと念じながらの、過酷な状況でした。

そんなわけで、集中できずにいましたが、そうでなくても、あまり上出来な舞台ではなかったように思います。

「ワーニャ伯父さん」を、普遍的な物語として、今の日本で上演するなら、それ相応の演出の工夫があってしかるべきと思うのですが、私が観る限り、そういった演出意図は感じられませんでした。

まあ、以前観た芝居では、エレーナ役の女優さんがお世辞にも、美人とは言い難く、台詞で、「美しい」が連発される度、違和感を感じたので、今回の舞台のエレーナ役は、魅力的な女優さんで、ほっとしましたが。

ワーニャの金田さん、医師アーストロフ、ソーニャ役の役者さんは好演されていたと思います。

ネタバレBOX

客席に、ソフトバンクのパパ犬役の北●路さんがいらしたのですが、ご感想を聞いてみたいと思いました。

確かに、家族の物語として、今の日本でもあるような普遍的な出来事が描かれているので、共感できる部分はありますが、もう少し、今に生きる観客に向けた演出の工夫があっていいのではと思うのです。

もっと、ワーニャとソーニャのような、誰かのサポートに徹するだけの、存在の小さな人間の苦悩と悲劇を掘り下げるような演出であってほしかったと思います。
二都物語

二都物語

東宝

帝国劇場(東京都)

2013/07/18 (木) ~ 2013/08/26 (月)公演終了

満足度★★★★

ミュージカルファンにはどうか?
錚々たるメンバー、鵜山さん演出ということで、個人的に大変期待度の高い舞台でした。

「ニ都物語」は、ディケンズの作品、ということ以外何も知識のない私には、大変筋もコンパクトにまとまり、人間関係もわかり辛くなくて、さすが鵜山さんという感じではあるのですが、ミュージカル作品である以上、必要不可欠な要素がやや足りないように感じられました。

たとえ、どんな内容の物語であれ、ミュージカルである以上、高揚感や、夢見心地になれるシーンや、耳馴染みのある楽曲が必須だろうという気がするのです。そういう要素が、この舞台にはやや不足しているように思います。

でも、そういうミュージカル作品としてのクオリテイを度外視すれば、やはり、期待通りの上質な舞台作品だったと思います。

すみれさんが、身長が高く、それでいて、まだ舞台慣れしていないせいか、舞台上の佇まいに少し違和感を感じましたが、まだ開幕して日が浅いので、これから、進化されるだろうと期待します。

キリスト教精神に充ち溢れた芝居で、三浦綾子さんの「塩狩峠」を読み終えた時のような、深い感動を覚えました。

井上芳雄さんは、相変わらず、ぶれのない好演。浦井さんは、父親になってからの演技に、渋さが加われば、更に説得力が増すのではと思います。

今井さん、橋本さん、濱田さん、福井さん、宮川さんと、熟練の脇役陣が好演される中、楽曲が役を光らせるタイプの岡さんだけが、貧乏くじを引かれたような気がして、お気の毒でした。

難解曲が多い中、すみれさんのソロナンバーだけが、耳に残る美しい曲調でしたが、これが、ワイルドホーンさんの追加音楽でしょうか?

ネタバレBOX

鵜山さんは、ストレイトプレイの演出家としては、私のベスト5に入る大好きな演出家ですが、この作品を演出されるのは、任ではないのかなとも感じました。

ルーシーが父親と再会して二人が歌う場面とかで、普通のミュージカルの舞台では、歌う二人にだけスポットライトが当たる場合が多いと思うのですが、この舞台では、後ろに立って聴いている役者さん達の為所がなく、所在無げな感じでお気の毒になってしまいました。台詞劇だと、聞いている役者も、それなりの演技をできるわけですが、ミュージカルだと、どうしても不自然な気がしてなりません。

それぞれの役者さんが、この作品の役どころをしっかり自分のものにされた時、この舞台は、きっと深みを増して行くものと思います。

終幕になって、ようやく、ミュージカル作品としての見せ場が揃い、シドニーとお針子の女性との間に、心の絆が生まれるあたりから、涙腺が緩んで困りました。

観客の一人が、「リピーターは増えそうにない舞台ね」と言っていたのに、同意ですが、私は、進化を期待して、まだ2回観る予定でいます。

もう少し、メロディラインの美しい楽曲が多ければ、この作品、もっと素敵なものになっていたのにと惜しまれます。
象

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2013/07/02 (火) ~ 2013/07/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

木村さんの台詞を届ける力に驚嘆する
木村了さんは、ドラマで凄い役者さんが出てきたと注目してから、何度か舞台も拝見しましたが、今日ほど、彼が役者として、存在してくれていることの喜びを噛み締めた日はありません。

これだけ、難解な不条理劇の台詞が、客席で、耳に頭に自然に浸透する体験は、今まで一度もありませんでした。

もう55年以上、ありとあらゆる芝居を観て来ましたが、彼ほど、全てを兼ね備えた役者さんを観るのは、初めてかもしれません。木村さんの演じる、ドリアン・グレイとかいつか観てみたいなあ!

不条理劇にはそぐわない観客が多数いたせいで、舞台の世界観を邪魔されずに味わうのが難儀でしたが、木村さんや神野さん、奥菜さんなどの役者陣の力量に助けられ、出色の不条理劇が完成したと思いました。

ネタバレBOX

舞台装置がとても秀逸。開幕前は違和感を感じた、何百枚はあろうかという衣服の山が、舞台の内容に実にピッタリで、大変衝撃的でした。

人物の出はけを、床の衣服に溶け込ませることで、様々な意味合いを表出し、たとえば、人物が床に倒れこむと、服と同化して、存在が見えなくなり、まるで、舞台上にいないかのように見せる手腕も見事でした。

別役作品の必須アイテムの一つの電柱に替り、今回登場するのは、点滴スタンド。これが光を受けると、十字架のようにも見えたりします。奥菜さんの看護婦が赤い帽子をこのスタンドに掛けるのは、キリストの受難を表現しているのでしょうか?

震災の後で、この舞台を観ると、あの服の山は、瓦礫のようにも見えました。

残念なのは、他の役者さんの台詞がいつも明瞭に聞き取れる中で、大杉さんの台詞だけが、何度も聞き取れない点が多々あったことでした。
非常の人 何ぞ非常に ~奇譚 平賀源内と杉田玄白~

非常の人 何ぞ非常に ~奇譚 平賀源内と杉田玄白~

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2013/07/08 (月) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

名作ではないでしょうか
マキノさんの舞台はずいぶん拝見していますが、面白い時とそうでもない時が両極端で、正直、この舞台には、それほど期待していませんでした。

でも、観てビックリ!とても切り口が斬新で、素敵な人間賛歌の作品だったように感じました。

キャストが、これまた秀逸!岡本さんの舞台もかなり拝見していますが、今回の杉田玄白役、私は、最高に好きです。たくさんの役を演じ分ける、篠井さん、奥田さんの演技力も、魅力のひとつ。

特に、篠井さんは、ありとあらゆる脇役を楽しげに演じていらして、こちらまで、嬉しい気持ちになれました。

高校時代、「天下御免」で、平賀源内には興味を持った私ですが、彼の内面の悲劇には、その頃は思い至ることはありませんでした。今回の舞台を観て、改めて、源内の生涯に興味を感じてしまいました。

それにしても、マキノさん、万人受けする劇作の方法を体得された気がします。この作品、杉田玄白や平賀源内のことを何も知らなくても、十分楽しめる作品です。空席があまりにももったいないので、是非、皆さまいらして下さい。
もちろん、蔵之介さんファンには必見舞台間違いなしです。

ネタバレBOX

先人というのは、とかく、その時代には受け入れられないものですが、源内の悲劇的な最期は、観ていてかなり辛い気持ちになりました。

あまりにも天才過ぎて、彼の気持ちに同調する人間がいなかったのだろうとする玄白の言葉が胸に応えました。

長く庇護して来た佐吉を庇って、殺人の身代りを名乗り出る場面で、佐吉を抱きしめる蔵之介さんが、暖かそうに抱いていると思ったら、その後源内が、「佐吉を抱いて、人は暖かいと初めて感じた」というような台詞を言うので、驚きました。蔵之介さん、そこまで、人物の気持ちを体現できる役者さんなんだと改めて、感動!!

源内と玄白をどういう視点で描かれるのかと興味があって、観劇したのですが、ただの年表芝居にはならず、二人の人間関係と、性格の違いに主軸を置き、丁寧に、歴史上の人物を舞台上に蘇らせた、キャスト、スタッフの力量に、演劇の楽しさを満喫できる、見事な名舞台だったと感じました。

素直に笑える要素がふんだんにあった点も、とても嬉しくなる作品でした。

ただ、私は、大学時代、西鶴の書物を読み漁ったので、衆道、男色、蔭間などの言葉の意味はすぐにわかりますが、他の観客にはどうだろう?とちょっと気がかりな部分はありました。
ウィーン・ミュージカル・コンサート2

ウィーン・ミュージカル・コンサート2

梅田芸術劇場

Bunkamuraオーチャードホール(東京都)

2013/07/05 (金) ~ 2013/07/06 (土)公演終了

満足度★★★★★

夢のようなステージに酔いしれました
2008年の大坂のみのコンサートを行きたいよと項垂れて過ごした東京在住ミュージカルファンにとっては、実に待望のコンサートでした。

それに、今回のキャストは、歌声はもちろんのこと、ビジュアル的にも素敵な方ばかり。

目にも耳にも麗しい素晴らしいコンサートでした。

回替りアフターボーナスショーというのが、毎回必見要素満載なので、できれば、全回制覇したい気分。

帰宅後、千秋楽のチケットも買ってしまいました。

今日も、2階席、3階席、ガラガラでもったいないと思いました。

安くチケットが買える立場の方、どうぞ、ウイーンミュージカルを観たことがなくても、是非いらして下さい。知らない歌でも感動できること、保障します。

ネタバレBOX

「ダンス・オブ・ウ゛ァンパィア」、「ルドルフ」、「モーツアルト!」からが1幕、「ロミオ&ジュリエット」、「レベッカ」、「エリザベート」からが2幕。

その上、今日の公演のボーナスショーは、ディーバスペシャルと銘打ち、マヤさん、アンネミーケさん、オクさんの3人のディーバの饗宴。

「エリザベート」でも、この3人のシシィが同時に楽しめる贅沢な構成。

マヤさんの抜きん出た伸びのある歌声、アンネミーケさんの可憐で美しい容姿、オクさんの迫力ある熱唱と、どのエリザベートも、魅せて聴かせてくれました。

男性キャストも、歌、容姿、表現力ともずば抜けた方ばかりで、アンサンブルのダンスも抜群。

本当に、非の打ちどころのないコンサートを満喫しました。

若い女性客が、異口同音に、「日本の歌えないエリザを観たばかりだから、夢のよう」と感激していました。

それにしても、韓国のミュージカルスター、オクさんの「レベッカ」には圧倒されて、怖いくらいでした。

トート役の初来日のマークさんも、素敵で、ルカスさんとの「闇が広がる」は、圧巻でした。
ドレッサー

ドレッサー

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2013/06/28 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

情感を掘り下げた「ドレッサー」、好配役で成功
この作品は、過去に二度拝見しています。

いつも、座長は良くても、ノーマンに不満とか、その逆とかで、脚本が素晴らしいだけに、残念な思いの残る観劇体験でした。

でも、今回の配役は、申し分なし。それに、三谷さんの演出も、座長と、付き人、妻、舞台監督それぞれの関係性を、深く掘り下げ、理屈でない、人情の機微を的確に描いて秀逸でした。

声だけの出演者も含め、贅沢な布陣。

大泉さんが、台詞の言い間違えをしたのは、ちょっと残念でしたけれど…。(奥様に向かって、「奥様にお知らせして来ます」と言ってしまわれたのが)

ネタバレBOX

まるで三谷さんの書き下ろしかと錯覚しそうになるほど、三谷テイストの舞台でした。

老座長の橋爪さんの哀愁に満ちた演技が、お見事。私の観たどの座長より、人間的魅力に溢れた、シェークスピア役者を体現されていました。

妻役の秋山さん、舞台監督の銀粉蝶さんの、それぞれの、座長に対する思いが、すんなりと、客席に浸透します。

座長の陰になり、日向になり、支え続けた、付き人ノーマンの、いじらしさが、胸に沁みます。期待以上の大泉ノーマンに感激!

それに、新人女優アイリーン役の平岩さんのしたたかさ。戦争中で、どんどん役者がいなくなり、才能以上の役を演じさせられる浅野さんの懸命な役作りの努力シーンとか、見どころ、聞かせどころ、満載の舞台に、日本で初めて、この名戯曲に見合うキャストが揃ったと嬉しさひとしおの観劇になりました。

劇中劇の「リア王」の観えない舞台には、段田さん、高橋克実さん、八嶋さんと、まさかの応援声優も加勢して、本当に、贅沢過ぎるキャスト陣。

できることなら、もう一度観たくなる、名舞台でした。
DOWNTOWN FOLLIES Vol.9 ~もっと男らしくもっと姦しく~

DOWNTOWN FOLLIES Vol.9 ~もっと男らしくもっと姦しく~

Aux-Sables

THEATRE1010(東京都)

2013/06/26 (水) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

初回からずっと観てるので
どうしても、初回の感動は抜かない印象ですが、今回、玉野さんと吉野さんが不在の割には、まとまりのある良い舞台になっていました。

ミュージカル特集ということで、かつてのサスペンス特集のような、いつもとは様相が違うのかと思っていましたが、いつもながらの作風で、私としては、もう少し楽曲優先舞台を期待していたため、やや残念な部分もありました。

島田歌穂さんの変わり身の早さは、やはりこのレビューショーの醍醐味。

香寿さんが参加すると、いつも締まって、決めが利いて、わさびのような存在感を感じます。

北村さんの、替え歌の歌詞が妙に哀切感があり、感涙しそうになりました。(笑)

ただ、パロディの元ネタのミュージカル作品が、マイナーなものが多く、私は、全作観ていますから、わかりましたが、もう少し、ポピュラーな作品を取り上げた方が、観客には親切だったのではないでしょうか?

ネタバレBOX

還暦間近の私は、子供の頃、エノケンの浅草オペレッタのLPレコードを擦り切れる程愛聴していましたから、「ベアトリ姉ちゃん」とか、懐かしい歌が聴けて、嬉しく思いましたが、他の観客の皆さんには、耳馴染みがあったかしらと気になりました。

取り上げたミュージカルも、Vol.9に掛けて、「ナイン」を捩ったシーンを延々とやっていましたが、このミュージカルは、パロディ向けの作品ではないし、マイナーな作品だと思うので、こういう笑いを狙うレビューには、不向きな選定だった気がしました。「ラ・カージュ・オ・フォール」にしても、同様。

やはり、「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」の替え歌は、一般受けが良かったような印象でした。

特に、北村さんの、「オンマイオウン」の替え歌は、エポニーヌのWキャストの楽屋の悲哀を歌って、ありそうな情景が目に浮かんで、なかなかに秀逸な歌詞でした。香寿さんの教授も歌穂さんとは違う趣があり、新鮮でした。

序曲の運びがいつもと違うと、歌穂さんがごねるシーンで、島健さんや高平さんの名前を出すまではいいとしても、船田さんまで出されると、観客は誰のことやら?と、気持が冷めると思うので、楽屋受け過ぎる台詞は、不適切ではと感じました。

トクホン姉妹の漫才ネタも、橋●市長をいじるのはいいとしても、何だかトモちゃんの方はお気の毒な感じで、あまり笑えませんでした。他人の不幸をネタにするのは、あまり好きではありません。

飛びぬけて面白いという程ではありませんでしたが、ある意味、落ち着いて、渋みの効いたショーではありました。

それにしても、高平さんは、私が学生時代、放送作家組合で、アルバイトをしていた頃から、ご活躍で、いつも、再放送の著作権支払の書類に、お名前を書いていたんですが、あれから、40年近く。今でも第一線でご活躍なことを嬉しく感じます。
ミュージカル「シルバースプーンに映る月」

ミュージカル「シルバースプーンに映る月」

Quaras

東京グローブ座(東京都)

2013/06/14 (金) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

監視社会を体感!
芝居の内容に言及する前に、どうやら、テロリストの嫌疑を掛けられたらしい顛末を…。

楽しく観劇中、いきなり、係員の女性に、「お客様、バックの中の点滅がとても気になります。中を見せて下さい」と言われたんです。一瞬、何のことかわからず、あー、携帯の電源を切ってから、バックの奥底で、充電中だったと気づきました。でも、膝に乗せたバックは、私の肉眼では、点滅なんて確認できません。たぶん、どこかで、赤外線サーチか何かで気づいたんでしょうか?
周りのお客様にも迷惑だし、休憩がない公演でしたから、もし盗撮とか盗録とかを疑われたのなら、終演後、私をとっ捕まえて詰問すればいいわけで、わざわざ観劇中に尋問するなんて、爆弾でも持っていると疑われたのかしら?
バックから携帯を出して、「充電してただけですが」と言ったら、充電辞めてとも言わず、何か囁かれて、無罪放免になりましたけど…。

しかし、あまりにも驚いて、その後の芝居はどこか心ここにあらずで観ていました。こういうことがあるのなら、事前に、「観劇中の携帯の充電も御遠慮下さい」と御忠告頂けたら良かったのにと思いました。

そんなわけで、途中からは集中できない環境でしたが、芝居そのものは、キャストも素晴らしい人材ばかりで、脚本も、G2さんのオリジナル作品の中では一番好きなタイプの芝居で、大いに内容的には満足しました。

ただ、セットも洋館風ですし、この舞台、日本の設定にするよりは、どこか架空の国だとしても、外国の設定にした方が、内容に馴染んだ気がします。

グローブ座、久々に行ったら、観切れの多い3階席最前列に、背もたれのマットが置かれていて、舞台の観難さが緩和されていたのは、大変ありがたく感じました。

ネタバレBOX

坂本さんのミュージカルは、以前からずいぶん拝見していますが、観る度、立ち姿がカッコ良くなられてビックリします。V6の坂本さんをカッコいいとは思ったことはないのですが、舞台の坂本さんは、拝見する度、カッコ良くなられて、素晴らしい舞台役者さんだなあと感心するばかりでした。

キャストが、端役に至るまで、申し分なく、中でも戸田さんが、相変わらず秀逸!

最初「レベッカ」のような、サスペンスタッチで始まり、またG2さんの,観客騙しタイプのお芝居かと、警戒しましたが、さにあらず。

シチェーションコメデイと、ハートウオーミングな味付けが程良い、なかなか素敵な、心がほっこりとするミュージカルでした。

荻野さんの音楽も良くて、またいつかこのメンバーで再演して頂けたらなと思いました。
崩れゆくセールスマン

崩れゆくセールスマン

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2013/06/14 (金) ~ 2013/06/23 (日)公演終了

満足度★★★

昔の詐欺事件がモチーフの様子
昔、豊田商事事件というのがありました。

ペーパー商法で、顧客に金を売ったと見せかけて、実際の金はどこにもなかった、濡れ手で泡の商売。

我が家にも、頻繁に、この会社から勧誘の電話がありました。

でも、私は、いつも応戦して、逆に、演技の勉強をさせてもらっていたりしました。

だから、変な話、妙な懐かしさを感じました。

青年座の役者さんの演技には、大満足。特に、息子と同期だった嶋田さんの演技の幅が飛躍的に伸びたことが実感できて、嬉しさひとしおでした。

ただ、期待した野木さんの脚本には、やや不満も残りました。
女優さんの台詞に、苦心されたからなのかもしれませんが、野木さんの本領が発揮されていないように感じました。

ネタバレBOX

この詐欺会社の名前が、帝塚商事というので、個人的に、とても受けました。

そういえば、今WOWOWで放送中の、食肉偽装のドラマでも、手塚商事というのが出て来ます。(笑)

たぶん、実際の豊田商事事件の頃が舞台になっているからだと思うのですが、今の詐欺はもっと巧妙で、騙す側に人情なんてないし、マスコミも、ほぼ同じ穴の狢で、毎日のニュースも詐欺まがい。

きっと、作者は、今の詐欺を書いても、ドラマにはならないので、昔の詐欺を書かれたのかもしれないですね。

セールスと詐欺は紙一重。騙す側に、人を陥れる意識があるかないかの違いだけなんでしょう。

このお芝居では、騙されるおばあさんにも、事情があり、自ら好んで騙されているというオチがあるのですが、芝居の早くから、セールスマンが、この老女の真意に気づき始めてしまうので、ラストの展開がそれほど衝撃的でなく、観客にも察しがついてしまうのは、あまり効果的ではないような気もしました。

300円ちょっとの、安易な教師の施しを根に持って、金に恨みと執着を持つ、帝塚商事の社長の背景ももう少し知りたい欲求もありました。彼は、安藤という名前なのに、何故、帝塚商事という会社名にしたのだろうか?とか、いろいろ気になりました。

それにしても、豊田商事の社長は、マスコミの前で殺されて、事件も核心をつくことなく、うやむやになりました。マスコミを賑わせる大事件の主役って、どうしていつも闇に葬られて、事件もそれと共に、フェイドアウトしてしまうのか?

次回は、是非、野木さんにはそういう面から考察した本を書いて頂けたらと思いました。
きれいなお空を眺めていたのに

きれいなお空を眺めていたのに

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2013/06/19 (水) ~ 2013/06/30 (日)公演終了

満足度★★★★

久々、好きなタイプの芝居
こゆび侍は、たぶん「はちみつ」から拝見しているのですが、今でも思い出すだにぞっと戦慄が走る、まるで、3・11の原発事故を予知したかのような芝居から、どうも、自分の好みからかけ離れてしまって、今回も観ようか観まいか、かなり躊躇しました。

でも、息子と御縁が深い役者さんも出演されているし、何より、こゆびの佐藤みゆきさんを拝見したくて、伺いました。

結果、オーライでした。

また戦慄が走るSF的なストーリーかと思いましたが、ちゃんと、現実世界に根ざしたお話でした。

同じ動作を繰り返す中での感情の変化を表出するには、佐藤みゆきさんの演技力は、他を圧倒しているといつも感じます。

ネタバレBOX

最近のこゆび侍の芝居は、何だかいつも人(擬人化した虫も含め)が殺されてばかりでしたので、今回の作品は、とにかく、誰も殺されなくて、ほっとしました。

いつぞや観た外国の世紀末芝居や、松田正隆さんの作品を彷彿とする場面もかなりありましたが、その中にも、成島さんの世界が構築されていたのが、嬉しく感じました。

サルマークを集めて、砂漠を緑にしようとしている女子高生二人の関係性や、引きこもりの息子がいる夫婦が、何とか食事だけは家族揃ってしようとする場面などに、表面的には、SF的な世界を描きながら、バーチャルだけでは解決しない、リアルな人間関係の絆がさりげなく描かれて、秀逸だと感じました。

虐めは、人間が存在する限り、皆無にするのは不可能だと思いますが、この芝居に出てきたような「美じめ」的な手法でなら、ある意味、かなりましな方法だと容認できる気もしました。

体操着に、装飾を施して、恥をかかせる「美じめ」は、被害者さえ、受け止め方を変えれば、笑ってちゃらにできそうな悪戯に思えましたから。

最終場面で、新谷夫妻が、延々と、チョキを出し続けて、ジャンケンが終わらないシーンは、作者の意図が見えていても、まんまと、あの秀逸さにノックダウンさせられました。夫婦役の、日暮さんと佐藤さんの演技力に負うところ大のシーンですから、キャスティングの成功が、作品をより良く見せたお手本のような気がします。

このページのQRコードです。

拡大