ひなつの観てきた!クチコミ一覧

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グァラニー ~時間がいっぱい♥KR-14【神里雄大】

グァラニー ~時間がいっぱい♥KR-14【神里雄大】

キレなかった14才♥りたーんず

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/17 (金) ~ 2009/05/05 (火)公演終了

満足度★★★★

運ばれてきたお茶は、温かく、優しい味だった。
この企画の4作目にして、はじめて、14歳だった頃のことが甦ってきた。
けっして、
パラグアイからの帰国子女で、日本での人間関係に齟齬があった、
なんて体験はまるで自分にはないにも関わらず。
そうそう、他人と自分との境界や差異がはっきりしだした頃だったんだよなあ~

しかも、中盤以降に炸裂する、“全身を使った饒舌な話法”が魅力的すぎで!
いやいや、伝えようとする力がとてつもなく強い作品、だったのだと思う。

ネタバレBOX


最後、
それまで描かれてきた時間(親子三代)と空間(パラグアイと日本)が重なりあうとき、
おそらくは“腕によりをかけて作られた”とおぼしきパラグアイ料理の入った、なんの変哲もない、というかどこか懐かしい感じの「鍋」が持ち込まれた瞬間、
思わず、胸が詰まる。
さらに直後の、“友愛の証”でもあるマテ茶を飲むシーンが駄目押しで…。

かなり、こころ揺さぶられました。
少年B♥KR-14【柴幸男】

少年B♥KR-14【柴幸男】

キレなかった14才♥りたーんず

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/19 (日) ~ 2009/05/06 (水)公演終了

満足度★★★

狭い、けれど無限の小宇宙
基本的な舞台装置は全6作品共通。
なので、黒基調の床面に白線で描かれたマス目が、正四角形を作れるのは8×8マスが最大だということ(実際には左右に2列ずつ設けられている)は、すでに知っていた。

8×8。
それはチェス盤とおなじ、である(将棋なら9×9)。

そしてこの作品では、開演前から主演のぼく(岡部たかし)が立っている場所は、
チェス盤になぞらえれば「e4」(下手から5番目、奥へ向かって4列目)というマス目。
じつはチェスのオープニング(序盤定跡)では、もっとも一般的な先手側の初手は、「e2」にあるポーン(歩)を「e4」に進める、というものだったりする。

ネタバレBOX

そう、だからそこは、世界的に有名なゲームにおいては、
“はじめの一歩”を踏みだした場所、という意味をもつ。

つまり彼は、空想の世界でだけ、他のマス目に自由自在に移り、ときとしてヒーローとして喝采すら受けることができるのだ。
ところが現実世界では、最初から最後まで、その場所からけっして離れることはなく…。

それは、14歳という若者の閉塞感なのか、はたまた広がりゆく未来の象徴なのか。
もしかしたら「少年A」になったかもしれない「少年B」の物語は、
無限の可能性とともにはじまり、
その先は、作者や観客それぞれが違った結末を探しつづけなければならないだろう。
学芸会レーベル♥KR-14【中屋敷法仁】

学芸会レーベル♥KR-14【中屋敷法仁】

キレなかった14才♥りたーんず

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/20 (月) ~ 2009/05/05 (火)公演終了

満足度★★★

正確には、高度なお遊戯会
幼稚園で先生が園児(あるいは他の先生、はたまた園児が園児)を操るための“お遊戯な呪文”が上手く作られていて、楽しい。

一方、中屋敷法仁演出の役者を操る呪文は、役者のもっている背景によってか、ちょっと掛かりにくくなったりも。役者個人のアニメや少年漫画との親和性も大きかったような印象。

そんななかで得した部分もあるだろうけど、「木の演技」が素晴らしい。
きっと、非常ベルがなっても逃げなさなかったり、モノを投げつけられても顔をしかめたりしないんだろうなあ(←ガラスの仮面だよ、それは!w)。

遡上  (4/13&20 2日間のみの公演です)

遡上  (4/13&20 2日間のみの公演です)

東京ネジ

名曲喫茶ヴィオロン(東京都)

2009/04/13 (月) ~ 2009/04/20 (月)公演終了

満足度★★★★

まるで羊水に包まれるかのような温かさ
子供を産む話が重層的に絡まりあい、出産体験のあるほずもない自分(男性)にも、母親の大変さ、尊さが伝わってくるような作品。そして、名曲喫茶ヴィオロンの歳月を積み重ねたゆえに生まれる雰囲気も含め、とても心地よい時間を堪能。なので思わず、お母さんありがとう! と、童心にもどったかのような素直な気持ちにも。たとえるならこれは“カフェ浴”? ああ、癒されたぁ~

ネタバレBOX

唯一残念だったのが、劇中で2回使われるラジカセの音質。その瞬間だけ、ちょっと空気が乱れてしまったのは勿体なかったかも。
アントン、猫、クリ♥KR-14【篠田千明】

アントン、猫、クリ♥KR-14【篠田千明】

キレなかった14才♥りたーんず

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/04/16 (木) ~ 2009/05/04 (月)公演終了

はじまった、はじまった♪
動きで魅せるカワムラアツノリ(初期型)と、台詞で聴かせる中村真生(青年団)のふたり芝居。初日の段階では、前半はそれぞれの長所がぶつかりあい、後半になって融和しつつも互いの自由度が増していったように思えるのだけど、次回以降、どう完成に向かっていくのかまったく予見できず(こうなればいいなあ、というのはあるけど♪)。
なので、少なくとも、もう一回観ることは決定!

※初日ゆえ評価は控えさせていただきます。

にぎやか動物横丁

にぎやか動物横丁

ゴキブリコンビナート

タイニイアリス(東京都)

2009/04/10 (金) ~ 2009/04/13 (月)公演終了

満足度★★★★

オールスタンディングの悦楽
やはりゴキコンは、今回のようなオールスタンディング(他の日には観客席も設けられていた模様)で、逃げ回ったりするのが楽しい♪
しかも音楽劇としても秀逸だったので、けっこう、歌に合わせて自由に身体を動かせたのもよかったなあ~

ネタバレBOX

「ニワトリ」に爪を立てられて、ちょっと痛いです、まだ。
あと、人間の女性に授乳されていた「牛」が勃起してたのも可笑しかったりも(笑)。
ああ、まだ全身ケモノ臭い!
義弟の井戸

義弟の井戸

黒色綺譚カナリア派

シアタートラム(東京都)

2009/04/10 (金) ~ 2009/04/15 (水)公演終了

満足度★★★★

赤澤ムックの美しい世界感が、
「つるべ」がカラカラと音を立てて手繰りよせられるような、あるいは放たれるような心地よい韻律を刻んで、“鮮やかな闇”をともなって展開する後半が素晴らしい!

7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母

7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母

うさぎ庵

アトリエ春風舎(東京都)

2009/04/02 (木) ~ 2009/04/06 (月)公演終了

凝らされた演劇的な工夫よりも、
ときおり、舞台を「憎しみ」「悲しみ」「喜び」に一瞬にして染め抜いてしまう鄭亜美があまりに魅力的で。

ネタバレBOX

なので、つぎつぎと裏返される、そんなに転がりの速度のない、軽い物語ではなく、彼女(二十代の母親)と「46歳で祖母と呼ばれる母親」(フライヤーなどでは47歳)との“女でありつづけたい二重螺旋な絡みあい”のほうが観たかったなあ。
アルカリ

アルカリ

壁ノ花団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/03/25 (水) ~ 2009/03/31 (火)公演終了

ジャケ買い的観劇
前回の東京公演『悪霊』につづき、フライヤーのイラストはオノ・ナツメ。彼女(?)の大ファンなので、ベケット風な不条理劇に苦手意識を抱きつつも、あえて再見。
たまたま隣に座っていた女性も、開演前に『聖☆おにいさん』を読んでいたりしたので、案外、ジャケ買い的観劇な漫画好きな人も少なくなかったかも?(笑)

と、2回目だと、けっこうわかりやすく感じるんですね! 
もちろん、今回のほうがそういう作りになっている可能性もあるのだけど、そこまでは判断できず(笑)。

ネタバレBOX


前回が第二次大戦のヨーロッパな作品だったので、今回はすぐに、舞台は孤児院でそこに収容所から解放された女が登場することで、ああ、戦争によって零れ落ちてしまった人々の話だろうと、勝手に一本筋が通る。

そして、舞台に散乱していた古鞄を集めて階段にし、二階から、妻がありながら孤児を誘う男と、
それを受け入れようと、一階から抜けだそうと登ろうとする女、その出来事は過去のことなのに、女に懸想しているがゆえに阻みたいと願う、おなじ孤児院出身の男が絡むシーンは秀逸。

ただ反面、強烈な美意識に彩られた作品なのに、ときおり、美しさに綻びが感じられてしまうのは勿体ない、とは前回も思ったこと。
前回だと、男性の着替えシーンで、今回だと、冒頭の半裸の部分、とかね。
あるいは台詞的にも、女が罵る「ウンコ」や教師が教壇から発する「黙れ」あたりには違和感も。
前者だと「糞尿野郎」(孤児のボキャブラリーではないけれどw)、後者だと「静かに」とかのほうが舞台の雰囲気に調和している気がしたんだけど…。
インテレクチュアル・マスターベーション

インテレクチュアル・マスターベーション

パラドックス定数

シアター711(東京都)

2009/03/27 (金) ~ 2009/04/01 (水)公演終了

満足度★★★★★

演劇を観てきたんじゃない、演奏を聴いてきたんだ!
大杉栄や幸徳秋水をはじめとする登場人物たちの知識はほとんどなく、
舞台上ではイデオロギーの“微妙な”対立も繰り返されつづける。
しかも、会話のテンポは速く、
非常に巧みに観客にわかりやすく戯曲が作られているとはいえ、
場合によっては、進行する物語に置いていかれ、取り残されてしまっても不思議ではない状況だ。

けれど、そうやって織りなされるリズムが気持ちよくて、
いつしか昂揚感に包まれていた。
ああ、これは音楽なんだ。
だから、歌詞の正確な意味がわからなくても、興奮したり感動したりできるのだ。

もちろん、パラ定らしく、
役者たちの互いへの思いのたっぷり込められた視線が絡まる様も楽しいだけではなく、
演目にふさわしく“赤”のかならず混じった衣裳も素敵で、
演劇を観てきた充実感もたっぷりとあったのだけど(笑)。

ネタバレBOX

大杉栄の話だと思っていたのだけど、
じつは幸徳秋水が自分には主役としか思えず。
だって、幸徳秋水役の今里真の語りがとにかく格好良くて。
熱さのない灼熱、というか、
炎は赤々と燃えるより青白いほうが温度が高い、みたいな引いた演技が素晴らしいのですよ。
転校生◆フェスティバル/トーキョー09春

転校生◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2009/03/26 (木) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

本物の女子高生が演じている、にも関わらず、
あんましリアルな女子高生っぽさを感じられなかったりも…。

たとえば、もっと人の話まったく聞かない生物な印象なんだけど、
実際はそうでもないの?
少なくとも、つねに相手に伝わるように意味を込めて順番に均等に喋るのには違和感。

とはいえ、楽日だったこともあり、カーテンコールで感情を抑えきれず涙していた子も少なくなく、その光景だけはかなりリアルで、思わずつられて落涙したのは内緒(笑)。

ネタバレBOX

冒頭、女子高生が「せーの」と声を合わせた瞬間、園子温監督作品の『自殺サークル』がよぎる。
そこでは、通勤時間の駅のホームで女子高生たちが手を繋いで一列に並び「いっせーの、いっせーの、いっせーの、せっ!」と声を揃えて飛び降り、集団自殺を遂げるのだ。

ちなみにその映画は漫画化されていて、描いたのは今回の演出を担当する飴屋法水がかつて主宰していた「東京グランギニョル」の『ライチ☆光クラブ』も漫画化している古屋兎丸なのだから、
この『転校生』のラストで女子高生たちが手を繋いで一列に並び「せーの」と繰り返すことが生命の誕生、生の喜びみたいなものを意味することになっているのも、けっこう意図的な連なりのある可能性は高いかもしれない。
リア王

リア王

東京デスロック

富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ(埼玉県)

2009/03/26 (木) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

ふつふつと再見したい気持ちがいま、湧いてきてます…。
初日観劇だったのですが、デスロックゆえの“伸びしろ”がたやすく想像できるから、明日の楽日に劇場にいきたくて仕方ない! でも、仕事的にどうしても無理だから、感想を聞いて羨ましがったりしてあげるので、みんな、観にいくといいと思うよ。

ネタバレBOX

リア王の“老い”の象徴でもある重しを、彼の死後、若者たちが引き継ぐように格好良く着こなすシーンが素晴らしく。物語の終わりなのに、そこからの物語を観たいと思えるのは、やはり幸せ☆
エスカルゴ

エスカルゴ

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2009/03/25 (水) ~ 2009/03/29 (日)公演終了

奥行きを感じた戯曲
初日ということもあってか、鮮烈なフライヤーほどのエスカルゴ感というか、粘度の高さみたいなものが不足していた感じだった、かも。ただ、ネタバレBOXに書いたように、本としての骨格は非常に魅力的で好みなので、二日目以降はもっと良くなっていくんだろうなあ、もう1回観られなくて残念。

ネタバレBOX

「妻」という漢字が「毒」にみえるのは、文字の下の部分が象徴するように、女が母になったからで、それゆえ、おそらく夫はいまだに妻を愛しつつも、どこか性的な部分の欠落もあってか、新しい“うつくしい女”に惹かれてしまうのだろう。しかもそこには、「毒」を抜くことで自らの枯渇したかに思える才能を甦らせられる可能性、なんて自分を納得させやすい理由があるので、不倫不貞の罪悪感を乗り越えることは容易い。たとえその相手が、息子の彼女であろうが、娘の親友であろうとも。

そして、子供たちが家をでていったことで、バスルームで狂っていた「毒」(母)が「妻」(女)へと戻るラストも、綺麗に収束していると思うのだけど(乾燥に弱い生物ゆえ愛の乾きに耐えられず? 水分の多い場所に籠もるとか、すごくカタツムリっぽかったし)、でも、じつはそれは台本的な世界でのことで、現実の舞台ではそれほど上手くはエスカルゴの殻が剥けてはいなかったかもしれない。

たぶん、もっと観客を混乱させる作りのほうが、戯曲の持つ奥行きがより生きてくると思うのだけど、それだとマニア向きかも?(悩)
コウカシタ◆フェスティバル/トーキョー09春

コウカシタ◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2009/03/14 (土) ~ 2009/03/20 (金)公演終了

満足度★★★★

タイ人と直に語りあえたような楽しさ!
見馴れていない肉体の動きというのは、こんなにも楽しいものかと、最前列で、タイのダンサーたちを堪能。途中、タイ語での芝居も入るのだけど、字幕なしでもなんでも伝わっちゃうよなあ、と思わせてくれる表現力(振付)がすごい、というか新しい言語を習得できてしまったかも! ぐらいな勢い。いやあ、ダンスは技術だけじゃないねぇ~

ネタバレBOX

そう。じつは、振付の井手茂太が主宰するイデビアン・クルーは未見で、コミカルさで人気を博しているぐらいにしか思っていなかったんだけど、ぜんぜん違った。言語の壁を軽々と超え、ダンサーと仲良くなれちゃった気分を味わえる素敵なダンスだったんですよね♪

序盤、タイ人が中世貴族風の衣裳なのに手には竹刀を持ち、眠狂四郎の円月殺法を使うバカバカしさに笑い、なんとなく本編への接し方が定まった、かな?
なので、タイ人が「なるほど」と納得するとなぜか「アナルホール」になっちゃう(←なんか微妙に違うかも?)とかでも楽しく(笑)。
なんだろ、たとえばそれを芝居でやられたら勘弁してよとなるところをダンスが補い、はたまた、そこかしこに漂う物語の気配がダンスとしての不足を感じさせない、いい湯加減(←なので個人差は大きそう)だったんじゃないかなあ。
 
そして、会場をでると首都高5号線の高架下で、一気にタイトルとともに作品が甦ってくる感覚も楽しくて。
改造☆人間

改造☆人間

田上パル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/03/13 (金) ~ 2009/03/22 (日)公演終了

天才科学者か、子供にしか作れない作品
動ける役者さんが多いのに、なんだかドタバタした印象になってしまうのは勿体ないなあ、なんてことはずっと感じつつ、でも、なんか変なところがツボに入り、笑いという点に関してはけっこう愉快な観劇ではあったのですよ。あと、とにかく男子は半裸、ということにはべつに触れなくてもいいんだけど、女子はひたすら足を強調、という一貫性には好感を抱いたりした(笑)。

ネタバレBOX

自然のものだけ摂取という方針の道場なのに、砂糖はなんで毒なんだろう…(単に太るから?)。
誰か、教えて!w
blueLion◆フェスティバル/トーキョー09春

blueLion◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/03/13 (金) ~ 2009/03/15 (日)公演終了

ダンスと音楽の融和を目指す、洗練された優雅な作品。
ただ、その辿り着こうとした場所の高さゆえか、
出はけの頻度が多いミュージシャンたちの“ふつう”の動きですら、
秀逸なふたりのダンサーとの対比ゆえに、
舞台に不協和音を作りだしてしまっていたようにも感じられてしまったのは、
少し勿体なかったような。

15 MINUTES MADE VOLUME 5

15 MINUTES MADE VOLUME 5

Mrs.fictions

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2009/03/12 (木) ~ 2009/03/15 (日)公演終了

粒揃い
場の空気に馴染まないと楽しめない性質だったりするので、一作品15分という制限のある6劇団によるオムニバスという設定にやや尻込みしていたのだけど、予想以上に楽しむ。どの作品もすんなり入れるし、話自体のまとまりもいいしで、なかなか粒揃いだった印象。

ただ反面、ちゃんと作りすぎてるなあ、見本市なのに完成度で勝負しようとしてない? こういう場ではもっと破綻した壊れたもののほうがインパクトあるのに、次回以降に自劇団へ足を運んでもらうためのプレゼンとしては全体的にちょっと弱めだったかもしれない、なんて思いも。まあ、あまりに自己主張強すぎでトンガリまくってたりしたら座っているのすら辛かったりする可能性もあるので、そこ、あんまし文句いっちゃあいけないんだけど(笑)。うん、よいセレクトでした♪

ネタバレBOX

個人的には、自分たちの空気感と役者の魅力を感じさせることに注力していたように思える「東京ネジ」の好感度高し。なので、一番、本公演を観たい思った。やっぱり双子は反則スレスレな強力な武器、だと思う(笑)。
あと、6劇団共通の舞台装置をもっとも華やかにみせていた点も、
これから春を迎えようとする季節の気分と合っていたんじゃないかなあ。
しかし冷静に考えると、夏目漱石の『夢十夜』が原作で、なおかつ『母をたずねて三千里』をモチーフに使っているのに、鬱々ともジメジメともしなかったのはある意味、すごい(笑)。

一方、15分の作品としての完成度では圧倒的に「青☆組」、でしたか。
冒頭から、謎はあるんだけど疑問は生じないという、非常に観客に親切な作りで、なおかつ最後まで緩むところなし。
しかし、作・演が女性だというのに、このオヤジくささはなんでなんだろう?(笑)
そんなことにくわえ、いわゆる一瞬の時間とか空間を切り取るのは上手いけど、心ときめかないことの多い“団”芝居なんで、もし6作品から決勝進出に3本選べといわれれば絶対に残すけど、2本の場合にはあえて落としてしまったかもなあ…。

でもって、自分が評価する“芝居”としてのクオリティでは「DULL-COLORED POP」。
脚本も演出も、ここでは少し格上の安定感だったような。
とくに、ラストのタイトルへ「裏返して」の繋げ方とかピタリと嵌っていて、格好良し。
だけど、そのあたりの巧みさとか、一人3役という工夫のある、でも最近だと既視感のある見せ方ゆえに、逆に、都会で一人暮らしをする女の子の深夜帰宅後の15分間の切なさをきっちり届けられなかったような気も。
たぶん、ちょっと論理的すぎたんだと、思う。

あと、「ジエン社」の“かぐや姫”の使い方は超好み♪
いないよ、ふつう、会社に「姫」は!w
彼女に気に入られるために、過去にどれだけ多くの王侯・貴族たちが艱難辛苦、ときには破滅してきたかに思いを巡らせてしまい、あの社長が妬ましくさえなったりも。
月での食事を取ってしまったら、ここでの記憶はすべて失われてしまうのですね、なんていわれてみたいよ!(そして彼女は、社長との思い出を守るために餓死するんだよ、きっと!!!)
また、どこに向かうのかまるでわからない前半とか、自分的には集中して観よう、という感覚が高まったので、意図的なものかどうかはともかく、短編の手法としては評価したい(笑)。

「MOKK」は、冒頭の立ち姿美しく期待したのだけど、その後の、重さも感じられないけど軽やかでもない、やや指向性を欠いた振付で失速。もっと、ひとつひとつの動きを丁寧に作って欲しかった、かな? たとえば柔道の横四方固めみたいな絡みとか、二度目は返しを入れたりするだけでかなり速度感が増したりして、より楽しくなったと思うのだけど。

で、主宰の「Mrs.fictions」は、出演者数が多かったためかキャラ勝負の比重を高めた作品だったのだけど、いまにして思い返すと、中島みゆきとか松任谷正隆とかフェチな警察官(自分的にはかなりツボ!)だとかあまり一般的ではない笑いと、意外とまっとうな物語とが、平日のマチネのまだ会場が暖まらない一番手という場ではきっちり噛み合わなかった印象。しかも、なんとなく締め、っぽかった気も(笑)。もちろん、トップバッターだからまずは出塁とは思わないのだけど、もっと大振りして三振かホームランな作品でもよかったかも?
MY NAME IS I LOVE YOU

MY NAME IS I LOVE YOU

快快

5TANDA SONIC(東京都)

2009/03/07 (土) ~ 2009/03/08 (日)公演終了

満足度★★★★

はじまりの前のはじまりから魅力的
まだ桜の季節の喧噪からはほど遠い目黒川沿いの、ビル街の一角にあるGOTANDA SONICの前の暗がりには、開場前というのにけっこうな人だかりが。おそらく、限りある当日券を求める人も多かったのだろう。はじめて訪れた場所だけに、入口すらどこかわからないまま、予約していたチケットを受け取り、列に並んで待っていると、すぐにガラガラガラと音を立ててシャッターが上がりだし、ようやく会場内の様子が判明。奥にはライトに照らしだされたステージが、それまでの夜闇との対比もあり、皓々とまぶしく輝き期待感を煽る。開場しただけだというのに、けっこう昂揚。一方、手前の入口横のウインドウには、ハート型に折られた無数のパンフレットがクリップで止められ愛らしく貼りつけられ、場合によってはドリンク券がなかに封入されていると告げられながら、観客はそのなかから一枚撰びとりながら入場。もう、それだけで楽しい♥

あらためて、舞台のうえの作品だけが快快の魅力ではないと痛感。なので、あえて野暮な劇評めいたことは省いてしまうのもあり、だよね?

火の顔◆フェスティバル/トーキョー09春

火の顔◆フェスティバル/トーキョー09春

フェスティバル/トーキョー実行委員会

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2009/03/05 (木) ~ 2009/03/08 (日)公演終了

満足度★★★

生々しくも、頽廃的で美しい、
現代版「恐るべき子供たち」でした。

なので、姉と弟が、いつまでもそのふたりだけの楽園で遊びつづけられたらよかったのに!
なんて、物語を無視した願いとかも、ついw

ネタバレBOX

もちろん役者もそれぞれ魅力的なのだけれど、やっぱり相変わらず素晴らしいのが杉山至+鴉屋の美術で。

舞台上にある長テーブルの下手よりから天井まで伸びた鉄パイプが、途中で、消防署の緊急出動用ポールに思えた瞬間に、勝手に、“穢れにも似た火を鎮める”という救済を切実に求める物語なんだと強く思えてきて。
そしてそれゆえに、そのポールを伝って最後まで誰も助けには降りてはこず、鎮火のために酸素を途絶えさせようとするかのように(同時に、水を求めて羊水に還っていくわけでもありましたが)、ビニール袋にくるまって自死する展開もより切なく感じられたんだよなあ。

とはいえ、アフタートークを聞くまで「最後のクルトの独白は広島に原爆を落とした爆撃機からの視点と重なる」なんてことをまるで読みとれていなかったりもしたので、松井演出だからじつは単なる子供の男根の象徴とかだったのかもしれませんけどね!w
誰も寝てはならぬ 

誰も寝てはならぬ 

国道五十八号戦線

神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)

2009/03/05 (木) ~ 2009/03/08 (日)公演終了

満足度★★★

絶滅した演劇の化石って、ちょっとみてみたいかも☆
たとえば漫画の場合だと、その創作の舞台裏を描いた作品に熱い秀作がけっこう多いと思うんですよ。近年でも、日本橋ヨヲコの『G戦場ヘヴンズドア』とか、よしながふみの『フラワー・オブ・ライフ』とか、まだ未完もやまだないとの『ビアティチュード』とかね。あと、熱さということなら島本和彦の『アオイホノオ』か(笑)。

ところが日本の演劇の場合、個人的には、清水邦夫の『楽屋』あたりを除くと、舞台袖や奈落とかで役者やスタッフたちがドタバタしているだけだったり、作家か書けない書けないとぐちぐち呟いているような作品ばかりという、あまりいい印象がないのだけど(いや、ほんとはいっぱいあるのかもしれないけど…)、この作品は演劇好きをも楽しめる“楽屋モノ”という面白い領域に踏み込んでたんじゃないかなあ♪

ネタバレBOX

ただ、だからこそ、きっちり最後に集約し、起承転結という物語の枠組みのなかにしっかりと収まってしまった造りには、少し不満も(←ふつうはそれ、誉めるとこだろ!w)。

じつはみんな雇われて演じていただけでした、現代の話でした、あなた以外のすべては! というなんとなく坐りのいい結末ではなく、
ほんとうに演劇が滅んでしまった近未来に、残存する数少ない資料のなかから「演劇」の本当の姿を復元していく、あるいは理想像を模索し創りあげていくていくような話だったら、もっと好みだったのだけど。

はたまた、
いま、もてはやされてるタイプの芝居とか正しいと語られている演劇論とかを客観的(主観的でも問題なし!w)に検証し、時代の雰囲気という曖昧なものを除いていって(考古学の強味を活かして)、単にでかくなっただけの頭の悪い恐竜みたいな演劇は死滅するのは当然で、これから繁栄する哺乳類的な新しい演劇はこれだよ! ぐらいの大風呂敷も広げて欲しかったりも。

まあ、もちろんそんなことは、言葉でいうのは簡単だけど実際に表現するのは異常に大変そうなうえ、結果的には一握りのマニアしか喜びませんでした、なんて大徒労に終わる可能性も高いんだけど(笑)。

でも、そんな未来の演劇、ちょっと観たくない?

そう。それほど欲張りなことすら期待してしまうようなポテンシャルを持った戯曲だったかと☆

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