
メリー・ポピンズ
ホリプロ/東宝/TBS/梅田芸術劇場
東急シアターオーブ(東京都)
2018/03/18 (日) ~ 2018/05/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
平原綾香/柿澤勇人/駒田一/木村花代/島田歌穂の回を観劇(80分+休憩25分+70分)
歌、ダンス、舞台装置が高度に完成され融合していて圧倒されました。
今までの私の基準では星は6つは必要です。どこにも文句のつけようがありません。絶対のお勧め。
出口へ向かう途中で、おじさんも、おばさんも、お兄さんも、お姉さんも、子供も、みんなニコニコという絵に描いたような幸せなミュージカルでした。ひねくれジジイの私としてはあまり使いたくない表現ですが他に書きようがありません。
あらすじはご存知の通り「厳格な父親に反発していたずらをする子供たち。躾係にやってきた宇宙人(?)メリー・ポピンズは数々のマジックで一家の綻びを繕って去って行く」というところでしょうか、ここを押さえておけば観劇には十分でしょう。もっと詳しく調べたほうが楽しみは増えます。映画をレンタルして観ておけば相違点を探す楽しみもあります。子供の身長を測るところは小さい点ですが映画を観ていないと意味不明でしょう(巻き尺に性格が表示されるのですが舞台では工夫してそうやっていたとしても見えません)。
歌とダンスの凄さというのは想像がつくでしょうから舞台装置の凄さを少し書いておきます。まずオープニングの舞台上は一家が住む家の前の通りです。家は平面の書割で、なんとも安っぽいなあとがっかりしていると、その家だけ前に出て来て中央から両側に開くと居間のセットになるのです。目の錯覚かと思うほどの鮮やかさです。子供部屋になったり、公園になったり、セットが次々に変化していきます。舞台裏はどうなっているのか見てみたいものです。ワイヤーでの天吊りも何度か効果的に使われます。フィナーレ直前にはそこまでやるかと唸ってしまいました。
始まってちょっとしてから観客席にライトが当たるので、どうしたのかと見回していたら、その隙に舞台にメリー・ポピンズが現れていたなんてこともあったので、舞台から目を離してはいけません。
終盤からカーテンコールにかけて、ここまで盛り上がるのは私には初めての体験でした。これからリピーターが増えてくると大変なことになりそうです。

トリスケリオンの靴音
サンライズプロモーション東京
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/03/28 (水) ~ 2018/04/08 (日)公演終了
満足度★★★★
題名とチラシを見て何か奇妙な味わいの物語というイメージを持っていたが、それは完全な間違いであって、人間模様を描いた伝統的な演劇であった。このトリスケリオン(三脚巴)とは3人芝居を表していると思っていれば観劇には十分である。あと少しの意味は劇中で分かっていくだろう。
内容は、亡くなった彫金師の工房に偶然集まった初対面の弟子、娘、イベント会社員の3人が数日の交流でそれぞれの人生でのわだかまりを解消していくというもの。登場人物はこの3人のみでそれぞれの演技がたっぷり楽しめる。中でも一番若い碓井将大さんには全体をコントロールしているような安定感があった。
粟根まことさんは「髑髏城の7人」の“鳥”そして“上弦の月”での“裏切り渡京”が脳に焼き付いていて、今回は粟根さんを観るのが一番の目的であった。おかしさは控えめだが、髑髏城では役柄の関係で観る機会のなかった渋い演技が心地良い。
観客は仕事帰りの女性会社員が過半であったが、子供から老人まで誰にでも安心して勧められるものである。

ハムレットマシーン
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2018/03/22 (木) ~ 2018/03/24 (土)公演終了
若者から老人まで休日ということもあって満席である。日本人は勉強家だなあと思っていると外人さんも結構いらっしゃるので現代人は勤勉だと言い直しておく。
これは「ハムレットマシーン」を読んだ脚本家の頭に浮かんだイメージで「ハムレットマシーン」を再構築したものであろう。年をとって柔軟性を失った私の頭には、どの場面も思わせぶり、こけおどしとしか見えなかった。まあ私のこれからの人生とは無縁のものだ。
基準を持っていないので評価は不可能。

Yellow Fever
劇団俳小
d-倉庫(東京都)
2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
貴重な高齢者向けエンターテインメント。
シリアスな戦争ものでなくこういうのをどんどんやってほしい。
まあこれも戦争が背景にあるのだが、表看板はあくまでハードボイルドである。
おおむね満足なのだが、コートだけは別のものに替えてほしい。
1サイズ大きなコート、ジャケットは冴えない感じを出すためなのだろうが、ちょっとやりすぎで最初の登場シーンでは子供が大人の服を着たようでがっかりした。
追記:開演直前の曲の名前が思い出せないでいたのだが
アルバート・ハモンド「落ち葉のコンチェルト 」
だと丸二日たって突然閃いた。内容には関係ないけどターゲットの世代が分かる。

ロスト花婿
ENG
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/03/16 (金) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
新郎、新婦の知られたくない秘密が次々に明るみに出て、ドロドロの展開になると思っていたら、その部分はあっさりとしたものでした。ストーリーは私には物足りないので星3つ。
役者さんは上手で、舞台セットも綺麗、歌と踊りも適切で+1つ星です。
これはミュージカルにした方が良い気がしました。栗生みなさんの見事なビブラートはそちらでより映えるのでは。

再生ミセスフィクションズ2
Mrs.fictions
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2018/03/15 (木) ~ 2018/03/19 (月)公演終了
満足度★★★★
多くの皆さんの「観てきた!」に背中を押されて予約をポチ。DVD付きで3,000円は安すぎ。
下北沢の小劇場風のところを予想していたらまさかの駅近接高層ビルの15階。清潔で大きなトイレも素晴らしく、下北沢のように駅で済ませるのを忘れて会場で嘆くということもない。ただ何だか落ち着かないのも事実。しかし会場に入るとカニの怪人が舞台でポーズを決めて、それに多くの人がシャッターを切っているという大劇場ではありえない光景に頬が緩む(小劇場でも無いけど)。
『男達だけで踊ろうぜ』にはすっかりやられてしまった。切れ味の良さはオー・ヘンリーの短編を思わせる。
『上手も下手もないけれど』はしっとりとした美しい作品。賞を取った脚本も素晴らしいのだろうが、岡野康弘さんと豊田可奈子さん、お二人のうまさには敬服した。萩原流行似の岡野さん、化粧して行くとジョニー・デップのマッドハッターとかヒース・レジャーのジョーカーを連想させた。豊田さんはちょっとアホッぽい娘から悟りを開いた老婆まで何の無理もなく変身して行った。
『東京へつれてって』はもうひとつ共鳴することができなかった。
『男達だけで踊ろうぜ2』は「魁!!男塾」風味。ストーリーは本能全開で安っぽくなってちょっと残念。応援団長役の高木健さんはアガリスクの「そして怒涛の伏線回収」で拝見して以来だが、こういう押しの強い役をやらせると日本一。

港に着いた黒んぼ
ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
MUSICASA(東京都)
2018/03/13 (火) ~ 2018/03/15 (木)公演終了
満足度★★★★★
小川未明「港に着いた黒んぼ」は盲目で笛がうまい弟と、歌と踊りが得意な姉の二人のお話。
私はフラメンコというとパコ・デ・ルシアや沖仁のギターは聴くが踊りは映画でちらと見るだけである。したがってこの公演のメインである踊りについては何も語るものを持たない。期待していたギターも見せ場はなかった(もちろん快適なリズムを刻んでいたが)。それでは慣れないものを観て、経験値を積み上げるだけだったのかというとそうではない。
場内に響いた笛の音が私の心を鷲掴みにしたのである。音の主は篠笛の武田朋子さん。笛が割れてしまいそうな強く短い音からささやくような音まで自由自在である。踊りとの白熱のバトル、そしてソロ演奏と縦横無尽の大活躍であった。こういう思いもよらない出会いがあるので馴染みのないステージにも出かける価値がある。
それにこのお話のもう一つの要であるヴォーカルの中里眞央さんも素晴らしかった。若く柔らかく安定した歌声に癒された。それらを音楽監督でもある中島千絵さんのピアノ(とコーラス)ががっちりとバックアップしている。
1時間ちょっとの短いステージだったが音楽だけで十分に満足した。
観客の誰も拍手のタイミングを心得ていなかったのは残念だった。絶対何回かはあったと思うのだが、もしかするとフラメンコでは途中の拍手は無しなのか?

おかえりのないまち。色のない
キ上の空論
吉祥寺シアター(東京都)
2018/03/10 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
若くて美しい女優さんをたくさん集め、脚本・演出の名人が素材の特性を十分生かして手早く調理し、最後にあの映画のテイストのソースをかけると一丁できあがり、という感じだろうか。
テーマを突き詰めたとかギリギリの演技をしたとかとは無縁だが、それだけ妙なハイテンションもなく、中々良い具合に仕上がっている。お目当ての女優さんがいるならば文句なく5つ星だろう。
的確な照明の操作によるオーバーラップしながらの場面転換は全体のリズムを崩さず観客の緊張を保つのに十分な効果があった。裏方さんは大変だろうなあ。私はここに+1つ星である。

何しても不謹慎
箱庭円舞曲
駅前劇場(東京都)
2018/03/08 (木) ~ 2018/03/13 (火)公演終了
満足度★
corich にある【あらすじ】と【Introduction】は全くその通りで私も日々気にかけていることである。
しかし、劇場に行って観てみると「えっ?!これってただのイベントが面倒くさいかどうかの話ではないの。高く掲げた問題意識はどこへ行ったのよ!」と叫びたくなるくらい、看板倒れであった。
【あらすじ】と【Introduction】がなければ普通の会議劇でアガリスクがスピード感・爽快感を持ち味とするならこちらはゆるゆる感・後味の悪さを売りにしていて星3つである。
しかし、この【あらすじ】と【Introduction】がなければそもそも私は観に行くことはなかったのである。海苔巻き寿司を買ったはずがおにぎりであったようなものでおにぎりの味が普通であっても海苔巻き寿司としては星は1つがせいぜいである。

ジキル&ハイド
東宝/ホリプロ
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2018/03/03 (土) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
原作はスティーブンソンの1886年の小説「ジキル博士とハイド氏(の奇妙な事件)」で、これをもとにした1990年のブロードウェイミュージカルが「ジキル&ハイド」である。登場人物を含め内容がかなり異なっている。日本版は鹿賀丈史さん主演で2001,2003,2005,2007年に上演され、2012,2016そして今回2018年は石丸幹二さん主演となっている。
石丸さんはチラシ束を受け取ると必ず主演のものが入っていたり、TVでもミュージック・フェアなどミュージカル関連の番組では必ず引っ張り出されるミスター・ミュージカルである。半沢直樹での悪役支店長が2013年のことだったとは信じられないくらいだ。52歳のこの舞台も絶好調である。私的には最初にハイドになって登場するところが特に何があるというわけでもないのにツボにはまった。
笹本玲奈さんは2012,2016年には献身的で貞淑な婚約者エマ役を演じていたという。しかし今回は妖艶なルーシー役である。これが見事にフィットして、歌も踊りも演技もそして容姿も素晴らしく、10年も前から続けているようだ。
宮澤エマさんは名前も同じなエマ役で新規出演である。前回観た「ドッグファイト」では悪くはないがどうももうひとつという印象だったのだが、今回は実力、オーラ全開で笹本さんとも互角に渡り合っている。勝手に想像するに、宮澤さんはまだまだ発展途上で前回のように主役となると委縮し、今回のようにスーパースター達に囲まれるとめらめらと燃え上がってレベルアップをするという漫画の主人公のような方なのではないだろうか。
田代万里生さんはジキルの友人の弁護士アターソン役で新規出演である。歌声はいつものように素晴らしい。しっかり芯が通りながらも若さ、みずみずしさをたっぷりとたたえている。今回は重要な役柄で演技でも、というか演技の方でより強く、全体を引き締めている。
全体として、どこにも文句のつけようのない出来であって、ぜひ来年の公演では1階中央10列目以内で観ようと心に誓った。

劇場版爆弾紳士
円盤ライダー
山野美容学院マイタワー27階 〒151-8539東京都渋谷区代々木1丁目53-1(東京都)
2018/02/21 (水) ~ 2018/03/12 (月)公演終了
満足度★★★★
観客は作家の草加一郎のノンフィクション文学賞受賞記念パーティーの参加者という設定である。明るいサロンに案内されて、いつもの暗い劇場用の汚い格好で来たことをちょっと後悔してしまった。
パーティーが始まると爆弾紳士によって出入り口が封鎖されてしまい、彼から出題された沢山のパズルを解かないと仕掛けられた爆弾で命を落とすことになってしまうという。
そこで会場に入るときに選んだ「読者ファン」「作家仲間」などのグループに分かれて担当のパズルを解いて行くのである。クロスワード・パズルとか穴埋めなどの比較的簡単なものであるが、いきなり出題されると考えこんでしまう。難しいものもあって、これは誰も解けないだろうと困っていると解ける人が突然現れるので「何か怪しいなあ」と思うこともあった(笑)。
想定内の時間で全グループが解き終わるというありえない結果はこの劇団の努力の結晶のノウハウのなせる業なのだろう。素晴らしい手際の良さだ。会場を縦横無尽に動き回る俳優さんの演技も的確で大いに笑いも取っていた。
若い頃ならすいすい解けたであろうパズルが全く解けなかったのは悔しいところであるが自分の現状を知ったという点では悪くない。入社試験の集団面接でこのようなものがあると聞いたことがある。今日の私は指示された場所にはすぐに行き、一見協調性があるように見えるが、実は立っているだけでたまに解こうとしても解けないという困った志願者であった。確実に不合格だよ(笑)。

奴碑訓
Project Nyx
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2018/03/09 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了
満足度★★★★
戦争物でもないのに会場は年齢高めの男性が多いという不思議なことになっている。
1978年の寺山修司による作品ということなのか、ベテラン女優さんが多いので固定ファンが来ているのか、Nyxの美女劇が高年齢のファンの心をつかんでいるのか…。
場所は「イーハトーブ」農場という設定で「雨ニモマケズ…」などの言葉が断片的に散りばめられ、「セロ弾きのゴーシュ」も登場する。もっとも全体とどう関係しているのかはとうとう分からなかったが。私にとって連日の宮沢賢治は奇妙な偶然だ。40年も前の有名な作品なので川島むーさんのコレクションにはしっかりと入っていることだろう。
内容は主人の留守の間に召使たちが交替で主人となり、やりたい放題の後は便所掃除に戻ることの繰り返しというドタバタ音楽劇である。まあストーリー云々よりは見て聴いて感じたままを楽しむものだろう。下敷きは1731年にイギリスのジョナサン・スウィフトによって書かれたものである。そのため、その時代のドレスが使われ舞台が華やかになっている(もっともかなり面積の小さな衣装もあって、そちらに気をとられたのか全体の衣装の記憶が飛んでしまって詳しいことが書けないのは我ながら情けない)。
ベテラン勢を除けばスタイルの良い女優さんが多いことに驚いた。そのスタイルをずっと保っていただきたいなあ。
また舞台上のビジュアルも素晴らしく、特に最初と最後の場面では持ち込まれる明かりが幻想的な美しさを作り出していた。
私にとって今回の最大の収穫は「黒色すみれ」のお二人の歌とバイオリン(+一部アコーディオン)のすばらしさである。鍛えられた喉から生まれたどこまでも破綻なく美しい声は、バイオリンのしっかりコントロールされた音色でコーティングされて行く。今まで全く知らなかったのが悔やまれる限りだ。

ひとり語り芝居『土神ときつね』
お茶祭り企画
あさくさ劇亭(東京都)
2018/03/09 (金) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★
オノ・ヨーコ似の川島むーさんによる宮沢賢治大好きの研究発表会 with ピアノ by 本多千紘さんである。
前半はマニアの家に行って「これは見たか」「それはどうだ」「これは知ってるか」…などと次々にコレクションを見せられたような感じで微笑ましい。実際に資料もいくつか回覧された。
後半が表題の「土神ときつね」のひとり語り芝居である。とはいえ登場するのは土神ときつねと樺の木の3人(?)なので、演技の定型があるわけでもない。勢い、ダンスとかパフォーマンスに近いものになる。ここは好みの分かれるところで、私は3人の声を変えた朗読の方がすんなりと心に入ってくるように感じた。
会場の「あさくさ劇亭」は合羽橋商店街から一本通り違いにあって外観は普通の家である。玄関の引き戸を開けると路上で靴を脱いで直に家に上がることになって戸惑う。

一月物語
夢幻朗読劇『一月物語』製作委員会
よみうり大手町ホール(東京都)
2018/03/07 (水) ~ 2018/03/12 (月)公演終了
満足度★★★★
元宝塚トップスターの水夏希さんと当時の2番手の彩吹真央さん(久保田秀敏さんとのWキャスト)に加えて俳優の榊原毅さんの3人が朗読を務め、横関雄一郎さんのバレエダンスとかみむら周平さんのピアノ演奏で作り上げる舞台である。
水さんと彩吹さんは椅子から動かないので、その点では朗読であって朗読劇ではない。榊原さんが狂言回し的に動くのとダンスがあるので朗読劇としたのだろう。ちょっと用語に困るところではある。
テキストは平野啓一郎作『一月(いちげつ)物語』、設定は明治30年ということだが古典の幻想譚の趣が濃い。朗読とバレエと音楽が一体となってそういう雰囲気を醸し出している。BGMには琵琶でもすんなり行けそうな気がした。正直、私はバレエの巧拙は分からないのでそこはノー評価である。榊原さんの朗読は発音明晰、変幻自在(やりたい放題?)で他のお二人とはキャリアの差を感じた。ピアノは朗読(劇)では常に感じるように、あるとうるさい、ないと寂しいという二律背反が今回も健在である。最初、中間、最後に少し長めの演奏があって途中は聞こえるか聞こえないかぎりぎりのBGMに徹するというのが今のところの私の理想である。
観客は女性が大多数であるが、ミュージカル系に比べて少し年齢は高めであって開幕前のおしゃべりが盛んであった。宝塚時代からのファンが多いのかとは思うがインタビューするわけにもいかないので勝手に推察するのみである。
バレエを評価できる方なら4つ星を付けるのかもしれないが、そこが分からない私としては3つ星に留まる。しかしこの回は水さんと彩吹さんのアフタートークがあって宝塚時代の話やこの舞台の稽古の話を大変楽しく聞かせていただいた。+1星である。

赤道の下のマクベス
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2018/03/06 (火) ~ 2018/03/25 (日)公演終了
満足度★★★★
会場は見渡す限りの白髪と薄毛のオンパレードである。平均年齢は優に70歳を超えているだろう。
この世代は親が戦争に行ったのである。私も子供のころ夕食で父親がお酒を飲むと戦地の話をするのを(父さんそれはもう何回も聞いたよ)と心の中で言いながらも、毎回相槌を打ちながら話し相手になる母親の手前おとなしく聞いていたことを思い出す。
舞台は終戦から2年を経過したシンガポールの死刑囚収容所である。3人の日本人と3人の朝鮮人が暮らす独房が6つ並んでいる。日本人BC級戦犯については裁判の理不尽さは常に語られることであるが朝鮮人BC級戦犯になると胸中の思いはそれをはるかに超えるものだろう。日本人3人それぞれに事情や思いがあり、朝鮮人3人もここに至った経緯は一様ではない。巧みな表現で6人の6つの人生が自然に見えてくる。
状況設定から見て一方的に日本人が非難される展開も覚悟していたのだが、作者はかなり抑えて書いていて刺激的な問題作となるよりも普遍的な作品を目指したように感じた。

The Entertainer ~新しき旗~
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シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/05 (月)公演終了
始まってすぐに来たことを後悔した。女性の甲高いキャンキャン声が会場に響いたからである。
主役の絶叫調の声に一々イライラしていては話にならない。
当然これは女優さんが勝手にやっているわけではなく演出家の意図なのだから、この舞台と私の相性が悪かったということだ。
まあそういうこともあるさ。
女性トリオの歌は良かった。
おまけ
(1) 法律の施行は「しこう」か「せこう」か。
この舞台でも役者さんで違ってましたね。
一般人は「しこう」、NHKも「しこう」、で法律の専門家は「せこう」と読む(らしい)。
あの外人さんは法律の専門家という設定なのでしょう。
(2) 「祖父が死んだ」か「祖父が亡くなった」か。
この舞台では「死んだ」を使ってました。身内に敬語は変だということだと思いますが、あの世に行くと神や仏になるので敬語で良いというのが私の考え。敬語ではないとかいろいろ議論はあるようですが、実際に身内が亡くなって言い慣れると違和感はなくなります。

ある日、ぼくらは夢の中で出会う
劇団6番シード
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2018/02/15 (木) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★
「D・ミリガンの客」以来の劇団6番シード観劇。
前作が良かったので期待していたが、今回は番外公演ということで実験的なものであった。
あまりネガティブなことは書きたくないが公演も終わったし、不条理劇なのに皆が「分かった、面白かった」と言っているのでは演じた方も拍子抜けするだろうから置いておく。
不条理劇ということだが、夢だと思えばそんなに飛んだ夢でもないので不条理さはほとんど消えてしまって、ただのつまらない劇になる。会話劇としても特に優れているとも思えない。新人刑事(犯罪者)が最初から最後までテンションMAXだったのが心地良い人も会場には沢山いたようだが私は疲れるだけだった。
俳優さんの勉強会に付き合ったということなのか。それはそれで意義のあることだが、次回からは本公演だけ行くことにしよう。

卒業式、実行
アガリスクエンターテイメント
サンモールスタジオ(東京都)
2018/02/17 (土) ~ 2018/02/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
「〜その企画、共謀につき〜『そして怒濤の伏線回収』」以来のアガリスク鑑賞。
文句なく面白い。外れても裏切られても小劇場通いを続けていて良かった。
一言でいうと、卒業式実行委員長に降りかかる数々のトラブルメーカーを巡るドタバタ喜劇である。ドタバタとはいっても、どついたり、転がったり、裸になったりするものではなく下ネタも一切ない。また奇妙奇天烈な人物もいないし、悪人も聖人もいない。普通から微妙に外れた人たちが予想のわずか上をクリアして行く、その匙加減が絶妙な正統派会議系コメディーである。
皆さん芸達者な中で、生徒会長の熊谷有芳さんと美術教師の中田顕史郎さんがとくにツボだった。
詳しい説明は他の方にお任せして、とりあえず1番ゲット。

サロメ
TremendousCircus
シアターシャイン(東京都)
2018/02/10 (土) ~ 2018/02/12 (月)公演終了
満足度★★★
「サロメ」の話はごく短いが、今回の舞台はそれを大幅に改造、拡充したものでこの物語の精神を理解しようとしていた私の助けにはならなかった。しかし、あまりに妙な内容に調べてみる気になったのは幸いというべきか。
複雑な構成になった原因の一つは現代の様々な苦悩を表現しようという狙いにあり、そしてもう一つは若手の育成のために全員に見せ場を与えたことにある。これでは散漫になるのは当然である。
テーマを増やすのは良いとして
・サロメとヨカナーンが昔からの恋人であったり、
・サロメが子供を産んだことがあったり
するようなサロメ物語の骨格を変えてしまうことはさほど有名でない物語に対してはいかがなものかと思う。またヘロデ達が殺されてもすぐに生き返るのはサブストーリーを繋ぎきれなかったのだろうか。
衣装については、私が最近AKB48の「ハロウィン・ナイト」のPVを繰り返し見ていたこともあって、自然に世界に入って行くことができた。統一感のある整ったものだった。
演技について少しだけ書くと、ヨカナーンのセリフ回しが預言者らしくて良かったのだが、独白が長いところでは集中力が切れるのか段々と素に戻ってしまっていた。それでは聴いている私も折角のファンタジーの世界から現実に引き戻されてしまう。サロメの踊りが無いことも残念だった。まあしかし、あの舞台の流れでどんな踊りをするのか、それができる人材がいるのかと問われれば誰でも答えに窮してしまうだろう。

FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇
東宝
シアタークリエ(東京都)
2018/02/07 (水) ~ 2018/02/26 (月)公演終了
満足度★★★★
先週観た「マタ・ハリ」(corichでの登録なし)では全曲どれも声を張りビブラートを盛大にかけて終わるものだった。拍手の強制感はあるものの世界観と合っていて悪くはない。それに対して、こちらの「FUN HOME」の曲は無理な盛り上げを仕掛けてこないすっきり系の趣である。もちろんそれは物語の内容に沿ったものであり、観客も最初は曲ごとに拍手をしていたが途中から静かに聞き入るべきだと悟ったようである。
内容は完璧主義の父と反発しながらも大好きな娘のお話。父はゲイで娘はレズビアン。父の自殺で物語は終わる。一昔前なら陰鬱に重くするところを父の死でさえも淡々と、どこか爽やかに描いている。穏やかな感動がじわじわと染み入ってくるのが私には新鮮だった。