満足度★★★
「サロメ」の話はごく短いが、今回の舞台はそれを大幅に改造、拡充したものでこの物語の精神を理解しようとしていた私の助けにはならなかった。しかし、あまりに妙な内容に調べてみる気になったのは幸いというべきか。
複雑な構成になった原因の一つは現代の様々な苦悩を表現しようという狙いにあり、そしてもう一つは若手の育成のために全員に見せ場を与えたことにある。これでは散漫になるのは当然である。
テーマを増やすのは良いとして
・サロメとヨカナーンが昔からの恋人であったり、
・サロメが子供を産んだことがあったり
するようなサロメ物語の骨格を変えてしまうことはさほど有名でない物語に対してはいかがなものかと思う。またヘロデ達が殺されてもすぐに生き返るのはサブストーリーを繋ぎきれなかったのだろうか。
衣装については、私が最近AKB48の「ハロウィン・ナイト」のPVを繰り返し見ていたこともあって、自然に世界に入って行くことができた。統一感のある整ったものだった。
演技について少しだけ書くと、ヨカナーンのセリフ回しが預言者らしくて良かったのだが、独白が長いところでは集中力が切れるのか段々と素に戻ってしまっていた。それでは聴いている私も折角のファンタジーの世界から現実に引き戻されてしまう。サロメの踊りが無いことも残念だった。まあしかし、あの舞台の流れでどんな踊りをするのか、それができる人材がいるのかと問われれば誰でも答えに窮してしまうだろう。