閃光
reset-N
王子小劇場(東京都)
2008/07/24 (木) ~ 2008/07/28 (月)公演終了
発表会。
他に相応しい称し方を見付けられなかったのです。「発表会レベル」とは意味合いがまるで違うので、抱かれる心象にはくれぐれも御注意を。これは夏井孝裕氏による、演劇という概念を題材にした発表会。表現というよりは再現であり、品(しな)であり品(ひん)。内容に関しては説明文とここまでのコメントに委ねます。
このタイミングで敢行した事の意義。団体としての単独公演でもありますが、大きな枠組みで見ると演劇祭の一演目。これがreset-Nとのファーストコンタクトになった観客は決して少なくないでしょう。先読み出来たであろうその状況に、これを行う。果たしてその真意とは?結果的には、自らが演劇に関わっている人々に好評な様子。そういう自分は事前に得た風評で「多分好きじゃないな」と思い、いざ劇場でパンフレットの挨拶文を読んで「絶対好きじゃないな」と思いました。けれども、終わったら拍手をしていました。私は普段しない時のほうが多いです。同時に、演劇を観慣れない人を一緒に連れて行っていたとしたらその拍手の意味は理解されないだろうなという気もします。
残念に思うのは公演期間の短さ。小劇場としてはむしろ長いほうではあるのですが、この倍の期間が必要だったと思います。ここまでの反応が公演の前半戦で生まれたものだったとすれば、後半戦に劇場へと足を運ぶ人々は内容をある程度把握して意図的に向かう事になったでしょう。その時に向かう人々は演劇関係者ばかりになったであろうとも思います。演劇を広める為には普段あまり観ていない人々にこそ観てもらうべき。ですが、演劇関係者に刺激を与えるのもまた必要な事。
吉田ミサイル7時間一人芝居・第三弾《夏だ一番!ドラえもん奉り》
東京ディスティニーランド
タナトス6(東京都)
2008/07/26 (土) ~ 2008/07/26 (土)公演終了
観て来てはいない。
奉って来たのです。
システムはいつも通り。入口に空のティッシュ箱が置いてあり、客は入れたい額だけ入れて帰ればよし。お賽銭みたいなものです。いつも何かしらの現物支給が紛れています。前回はベーゴマでした。別途、カンパ200円以上を払うと飲食物が際限なく支給されます。今回は暑さに講じてアイスキャンディが登場。一人で5本くらい食べた人々がいるのにそれでも用意された数の半分以上が残りました。
そこで起きた出来事に関してはどう説明すれば上手く伝わるのか判断しかねるのですが、とりあえず最も近しいであろう言葉を探すと「ちょっとした乱交パーティ」。男女とかそういう垣根は存在しません。とにかく、乱れて交わる。恍惚の表情を客が舞台上で…。おっと、これ以上はネタバレにて。
才色兼備
多少婦人
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2008/07/25 (金) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
多少、久々。
単独公演を観に行くのは「ジェントル怒髪天」以来でした。シアターミラクルには初めて行きましたが、外見と違って中は結構広いですね。フロアに行くまでのエレベーターはルデコみたいで狭く感じるんですが。
演目に関しては上演登録の説明に載っているものでほとんど語られています。個人的に思ったのは、1作目と2作目を逆にしたほうが観やすかったかなぁと。初めにまず台詞回しと動きに特徴のある渡辺さんの演目をやったほうが掴みになった様な。芝居を観慣れない人には特異に感じるかもしれないけど、テンポがいいのですぐに慣れてくれると思います。すると中間で酒井さんの作品が並んでしまうのですが、それは大して気にならなかったんじゃないかな。「才」「色」「兼」「備」の順にならないのが問題になるけど、観易さが落ちるならこだわる部分ではないし。流れさえ上手く作れていれば順が変わっても大丈夫な気がする。
ワールズダッチ
青年団若手自主企画 大久保企画
アトリエ春風舎(東京都)
2008/07/16 (水) ~ 2008/07/21 (月)公演終了
「虚実の境い目は、わたしのビニールより薄い」。
なるほど。だから美術がああなっていたのか。
いくつかの要素で「サンプル?」って思う部分があったり。でも違う。いえ、そう思ったのは事実です。けれど別物でした。なんか、こっちはソフト。そういえばダッチワイフって柔らかいのかなー。
冒頭の30分でタイトルに絡んだ話も出るし、人物の背景もひとしきり描かれています。なので一度その辺りで山を越えた気分になるのですが、よく観るべきは更にそこからの部分。対比する姉と妹の関係や思惑を、じっくり。どちら側の言い様も正論ではありますが、一般的には妹の主張に立ちたい人のほうが多いと思います。しかしその妹の行動が正しいかと言えばそうでもないし、対する姉の行動にも全く理解が出来ない訳じゃないけどちょっと距離を置きたい気がする。どちらも自分に正直ではあるのです。ただそれだけじゃやって行けないのが社会的な生活を送る上での人間の性。「性」と書いて「さが」であり、「せい」なのです。
アンタも喜びなさいよ
バナナ学園純情乙女組
pit北/区域(東京都)
2008/07/19 (土) ~ 2008/07/20 (日)公演終了
垂れ流し。
良くも悪くも。濃いです。前回よりもブラック度が増していて、それに関しては最近の柿よりも上。しかしながら脚本の力を制御し切れていない感じもあります。ホースから勢いよく水が出て、のた打ち回る様なイメージ。客席にいるとうっかりその水を浴びてしまった気分になります。「これからは停滞していくのかなー」と思った頃に、それまでの物語をぶち壊す新キャラが登場したり。そもそも役者にも物凄いモンスターが紛れています。たまたまパンフレットを早々にカバンにしまって上演中に取り出すのが忍びなくて見られなくなってしまったんですが、結果的には良かったかも。人物紹介を事前に見ないほうが登場時のハラハラ度も上がる気がします。
ダンスや歌、多め。これへの好き嫌いは分かれるかも。個人的には嫌いじゃないんだけど、全体の尺がもうちょっと短くてもよく思えたので少し減らしてもいいかも。上演時間は120分ですけど、これを90分に凝縮したらそれこそカオス。
劇中で「せんかん」って言葉が出て来ます。うっかりすると「戦艦」に聞こえて深読みしますが、「選挙管理委員会」の略です。
なくしたてがみ
演技集団 朗
東京都児童会館ホール(東京都)
2008/07/19 (土) ~ 2008/07/19 (土)公演終了
そうだ。こんなだ。
朗は作品が変わってもいつも同じ事をやっている印象を受けます。脚本の基本構造が似ているというのもある。演出がブレないというのもある。それこそ再演で別の役者がやってもほとんど変化を感じない。勝負の面で見ると物足りなさがあるけれど、これは児童演劇。安定した作品を供給するのが第一なのかもしれない。
郵便配達員の少年が紳士から「これを届けてくれ」と手紙を直接渡される。しかしその住所は公園。手紙をよく見ると、受け取り手の名前が書いていない。差出人の名前も住所もない。その手紙はかつてその紳士とあの人の…。そんな話。
いやー、客席にはお子さんだらけ。ちょうど真後ろに年の近い兄弟(4~5歳くらい)がいてずーっとなんか喋ってました。でも、彼らなりに一応観てはいるのね。結構的確にダメ出しとかしてました(笑)。分かりやすい傾向で、変な動きとか過度なリアクションはめちゃくちゃ受けてました。逆に長台詞には飽きちゃう。お約束のパターンだったんだけど、終盤では先述の紳士が真実を説明に近い形で語るのです。そこは飽きちゃったみたい。あの子らの親御さんはどういう流れで今日の場に連れて来たのかな。出来ればたまにでいいからそういう場に連れて行ってあげて欲しいですね。
恋人ができないが、もういい
箱庭円舞曲
OFF OFFシアター(東京都)
2008/07/12 (土) ~ 2008/07/21 (月)公演終了
個人的に前回が40点。
今回は70点まで上がりました。楽しめてよかった。しかも今日の感じではこれから更に伸びそうな予感。80点近くまで行くんじゃないな。まぁ個人的な感覚ですので、あんまり当てにしないでください。前回は場面が終わるタイミングが悪く思えたのです。人物の感情が上がり切らず落着もせずに次のステップに行っていた気がして。今回はそれを感じなかったのが評価プラスの要因かと。
『あと10分短ければ…』の意見には賛同。「あぁ、このままの余韻で終わったら気持ち良いな」というのが、終盤で場面の終わりごとに2、3回出てくるのです。楽章形式を取っている分、一度にまとめてではなく一つずつ紐解いているからそうなっちゃうのかな?芝居全体をバランスで観ようとすればするほどこの違和感が出るのかもしれない。一点集中で観る方は恐らく何の支障も沸かないんじゃないでしょうか。
どうでもいいんですけど、扇風機の稼動範囲に感動しました。最近のやつはあんなに動くのかー。
真夏の夜の夢
東京オレンジ
駅前劇場(東京都)
2008/07/15 (火) ~ 2008/07/22 (火)公演終了
即興。その場で生まれる。
誰もがかつてはごっこ遊びをした事があるでしょう。それを大人になっても続け、突き詰めたのが彼ら。だって、playですから。その日ごとに完成品の内容はまるで変わります。スポーツの試合を観に行くつもりでどうぞ。勝ち負けだけでなく、経過を観るのが面白味。個人的には普段劇中でアドリブ芝居を観るのはあまり好きではありません。しかしこれはそれとは別物。
本編は「ピクチャーズ」と名付けられたインプロ。「場所」だけがお題に出され、初めはみな同時にバラバラな何かを演じます。その後で個人ごとにフォーカスを当てて掘り下げて行き、最終的には全体の見え方が意義を持つようになる仕組み。まさかアレとアレが繋がるとは…!の連続。その場しのぎではなく、ちゃんと足元を固めて先に進んでいきました。
そしてゲストゲームと称されたほうが、「真夏の夜の夢」。「シェイクスピアかな?」と思っていたものの、実は対して関係ありませんでした。日替わりゲストが扮する役柄が毎夜見ているらしい夢をインプロで具現化する、という形式。つまり、事前知識とか要らないので難しい事を考えず観に行きましょう。開演寸前まで客席にお題のアンケートを募り、それを元に作られていきます。あなたの思い付きが、舞台上で形になります。
団地ラムネ日和
開店花火
新宿シアターモリエール(東京都)
2008/07/12 (土) ~ 2008/07/21 (月)公演終了
プシュッ!シュワ~。
団地に住む人々の群像劇。そこには兄弟がいて家族がいて、みんな大小それぞれに訳ありだったりして。団地だと御近所さんとよく顔を会わせるもんで、色んな事が筒抜けだったりして。
最初に絶対的な話を終えておきます。座席は中央以外オススメ出来ません。それ以外は何処かしらに死角が出来てしまうので、観ていてストレスやら未消化に繋がると思います。自分の場合は下手前方の席だったのですが、「…あ。なんだ。あんな所にも人がいたんだ」とか「あー、自分にはもう見えてないけど反対側の席の人にはまだハケる前の役者の姿が見えてるんだろうなー」なんて事が。
芝居はリアルな空気感ではないし、テンションで押し切るタイプでもありません。やんわりほんわりしたコメディ。役者のせめぎ合う姿を見たいなら物足りないかもしれないけれど、老若男女が理解出来る内容なのは確か。それこそ親子で観に行ってもいいくらい。
ラムネはね、そんなにじーっと注目しなくてもいいです。
相思相愛確信犯
MU
駅前劇場(東京都)
2008/07/09 (水) ~ 2008/07/13 (日)公演終了
あれ?うーんと、…あれ?
事前にネット上のクチコミで情報収集をして行ったのです。「えんげきのぺーじ」での不評振りは正直かなりのもの。尚且つ、観る前からちょっと納得もしていたのです。個人的に短編は残念な印象だったし、脚本提供をしたCENTERLINEも観ています。なので数日前までは行くか否かで相当に葛藤。ハマカワ嬢が出るし、しかもJK役。彼女のセーラー姿を過去に5~6回観ています。ここまで来ると最早コンプリートする事に意味を感じてしまうのです。年内に彼女が出る他2つの芝居は確実に観る予定。だったらこれはパスしてもいいかと悩みつつ、でも結局は仕事を終えて駅まで全力で走って下北沢へ向かいました。
冒頭で掴みの様なものがなくて「あぁー、やっぱ今回もこんな感じかー」と思いました。「タイトルコールのやり方がセンス的に好きじゃないなー」と思いました。が、しばらく観ていて「あれ?そんなにつまらなくないじゃん」と思う。中盤を過ぎるまでは「あんだけ言われるからには何処かで破綻して急につまらなくなっちゃうのかな?」とか構えていたんですが、いやいやそんな事もなく。自分の中でのハードルを低くしていたつもりはないし、むしろ隅々まで観たつもり。確かに脚本の穴を突付こうとすればいくらでも突付けるし、演出的には人物同士の遣り取りで生まれる感情がよく見えないという大問題がある。もしくは表情など視覚的な見え方で指定へのOKを出しているのか、ポーズのみに見えるリアクションなどもあった。役者間の演技スタイルの摺り合わせが完璧でないので、3次元の存在と2.5次元くらいの存在がいたりもするのです。そんな気になる点はあるんだけど、『その混沌がMUの持ち味です』と言われたら「まぁそうだね」と返してあげてもいい気がする。
役者。ハマカワ嬢はJK以外にもう一着。気になる方は見に行きなさいよ。過激な言動がありますが、個人的には見慣れた姿なのでむしろ安心だったり。メタリック農家の女王様・葛木さん、クロムモリブデン以来お姿を拝見しました。人物像としては決して好きな類じゃないんですけど、彼女がそれをやってる姿はなんか惹かれたなー。好き。play-unit-fullfullの杉本さん。そっちでは前回の公演で情けないお坊さんをやってましたね。今回はもっと骨太な役柄。登場してすぐの頃は作品全体の内のその位置取りに据えられている感覚があるものの、しばらくすると単独で見られる様になりました。説得力があったのかな。
みみ
東京ネジ
アトリエヘリコプター(東京都)
2008/07/10 (木) ~ 2008/07/17 (木)公演終了
澄んだ空間。
まず、舞台美術が綺麗。照明の具合も良いです。それだけで既に雰囲気が生まれている気がしました。そんな空間で起きる、静かだけど深々とした物語。女性作家ならではの空気感だった様に思います。
役者。佐々木富貴子さんの破壊力が爽快。穏やかな作風の団体にこんな役者がいるのは非常に強力な武器だと思います。他の役をやらせたらどうなるのかにも興味が沸きました。堀越さんは柿喰う客からわずか10日のブランクで今作への出演。稽古とか一体どうなっていたんだろう?地に足の着いた役を上手くこなしていました。
残念だったのは中盤辺りから芝居にちょっとダレた感じがした事。単に自分が観るのに疲れたのかもしれず、まだ理由を考えてみています。とはいえ初日でしかもマチネだったのを考慮すると結構な水準にありました。今度観る時にはソワレで観たいな。今回また行くか、次回の際になるかはまだ不明。
進化の気持ち
FLAT
荻窪メガバックスシアター(東京都)
2008/07/04 (金) ~ 2008/07/06 (日)公演終了
観て来たかどうかよく分からない。
寝ていた訳ではありません。あ、すいません。一瞬は寝たかもしれないです。「観る」というよりも「観せられた」。もっと言えば「体感させられた」とかのが正確なのかもしれません。
芝居で扱っている中枢の部分が概念寄りなので、観ていて決して分かりやすくはない。かなり速いテンポで捲くし立てる様な台詞の速さ。序盤は全く付いていけませんでした。掴みであるべき冒頭でまずちょっと惜しさを感じたり。ぶっちゃけ、役者の滑舌の悪さも理由ではあった。なので滑ってしまっている印象もあったし、それを承知の上で客を置き去りにしている気もしました。後者の可能性が見えた分、置き去りにされても着いて行こうと思えるだけの求心力が欲しかったですね。
演出指示なんでしょうが、キメの多い演じ方をしていたのはちょっと個人的に受け入れ難かったです。役者は女性陣のほうが惹かれたかな。鬼本ゆりなさんが気になってネット検索したけどすぐには過去情報が見付からず。あ、上手かったというよりは風貌が好きでした。はい。
父親がずっと新聞を読んでいる家庭の風景
あひるなんちゃら
サンモールスタジオ(東京都)
2008/07/03 (木) ~ 2008/07/08 (火)公演終了
いい加減。
「良い加減」。滅茶苦茶なのではありません。絶妙なのです。温いけど冷めてはいないし、緩いけど破綻してはいない。ほわほわ~っとしてます。解釈の難しい芝居や役者が忙しく動き回る芝居を観ると疲れる方にはとってもオススメ。個人的には前回よりも更に楽しめました。
内容は説明にある通り。家族の話。とても変な人や少し変な人がたくさん出てきます。あくまでみんな変。普通ではありません。でもなんだか麻痺してしまって少し変な人が結構普通に見えてしまったりするのです。
根津さんは客演だと味のある役をこなすけど、あひるだとなんかどうでもいい人をやります。贅沢。黒岩さんはあひるの時が一番可愛いかもしれない。ラブリー。ツッコミ役として充分に役目を果たしている異儀田さん。彼女はちょっと前にカカフカカの高山さんとつるんで何かやってませんでしたっけ?
“Kiss me, deadly”
smartball
王子小劇場(東京都)
2008/07/04 (金) ~ 2008/07/14 (月)公演終了
好きか嫌いかで言えば、
大嫌い。smartballとして上演されたものは3作とも観ているのですが、どうも好きになれません。でも「×」にチェックしたのは観劇初心者の方に対してのもの。尚且つ、自分でも分からないけれど何かが引っ掛かっているのです。なんだろう?開演までのBGMが大音響ロックなのはとても好きです。なんなら1時間くらい聞いててもいい。まぁ、演劇を観に行ってるんだけど。
この団体は好き嫌いが分かれるというか、実は結構な人数が嫌いなんじゃないかとさえ邪推します。今日の客席にもウケている人はいたけど、これは決してコアとは違う。あえて言うならアウトサイド。だけど好みの団体を探す内にここに辿り着くのもアリだとは思う。だからこそ他団体とは一線を敷いて存在していて欲しいという身勝手な期待もあります。
ひっそりと憶うアムネジア
明治大学演劇研究部
アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)
2008/06/27 (金) ~ 2008/06/29 (日)公演終了
おっと…?
御手透きであれば、私の記した「観たい!」のコメントを御覧になってからどうぞ。色々な思いを抱きつつ、しかし予想外の事は起きないだろうなという心持ちで向かったのです。けれど、予想よりも良いものを見せてくれた。ほっこりした気持ちになりました。
タイトルからして雰囲気のあるものになるのかと予想していたので、1人目の役者が台詞を口にした瞬間にある程度は先読み出来るだろうと思っていたのです。その雰囲気を作るのにどの手法を選択したのか。そして迎えたその瞬間、いきなりちょっとした予想外。お、これは嬉しい事態だ。冒頭でまず掴んでくれたので、それからしばらくは流れに乗れました。安心。役者ごとの癖などで気になる部分はあったのですが、しっかりと全体を統括するべく枠組みの中で存在する事は出来ていました。学生サークルはそもそもが友人であり仲間なので絆は生まれやすい。とはいえ、これは良い状態。詳細を知りませんが窮地があった様なので、良くぞ乗り越えたものです。客席は大入り。多くの人に観てもらえてよかったね、とか思いました。
決斗、高田馬場
タナトス6 プロデュース
タナトス6(東京都)
2008/06/28 (土) ~ 2008/06/29 (日)公演終了
呪われている。
呪われています、私が。
そもそもは早稲田に向かっていたのです。いつも高田馬場から歩いて向かいます。そしていつもは四車線道路の「右側」を歩くのです。でも何故か今日に限って「左側」を歩きました。理由はありません。あえて言えば、呪い。しばらくして「あぁ、そろそろタナトスが近いな」と思った頃。一方的にお姿を存じていて失礼ではあるのですが、正にその付近にてじべ。さんのお姿を発見。その瞬間に「…まさか!」と閃いてタナトスの入り口へと目をやりました。張り紙。「決斗、高田馬場~久堂秀明対吉田ミサイル~」。うわーーーーー!!!今日か!!どうする?早稲田のを観てから戻ってきてもきっとまだやっているだろう。でも初めからちゃんと観たい。そして観る事にしました。申し訳ない、観るはずだった団体のフレッシュな若人達よ。私はモンスターに魅入ってしまったのだ。何しろ呪われている。
何を記してもネタバレになりかねないし、観なければ真意がまるで伝わりません。最もライブ特性にある演劇がこれだと思います。その場のノリで芝居の色味がまるで変わるのです。やる側のパワーも凄いし、観る側のノリも凄い。ここまで好奇心豊富な客層は他で見た事がありません。なんならミスを観たいだとか、演劇じゃないものが始まったりする事を期待している様な雰囲気。なんだこれ。あぁ、分かった。コロッセウムだ。行った事ないけど、多分あそこで闘牛を見てる感覚に近いのかもしれない。
その夏、13月
チェリーブロッサムハイスクール
サンモールスタジオ(東京都)
2008/06/27 (金) ~ 2008/07/01 (火)公演終了
じゅうさんがつじゃないのかー。
ある人々の13ヶ月に渡る物語。見せ方に仕掛けがあるのですが、それはネタバレになる為にここでは控えます。それがですねー、どうも上手く機能していなかった感じなのです。明らかにそれが理由で、人物の思惑や行動原理が序盤はよく分からない。上演60分を過ぎた頃になると色々な物が繋がり出してぐっと観易くなります。しかし当てもなく待つ約60分間は決して快適ではありません。退席する客の姿もありました。作った側は当初からそのリスクも念頭にあっただろうと思いますので、腹を括って楽日まで遣り切って欲しいです。万が一その辺を曖昧に考えて幕を開けてしまったのだとしたら、今からでも括るしかないですね。
癖のある演技の役者も多かった中、個人的には波那役の宮本奈津美さんに好感。この方の演技があくどかったら観劇後の後味は確実にもっと悪いものへ変わっていたかと。以下に長ったらしくわーわー記してはいるものの、そんなに後味は悪くなかったのです。
あゆみ
toi
こまばアゴラ劇場(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/06/24 (火)公演終了
走馬灯。
楽日に観ると決めて先の日のお楽しみにしていたら、その間にあちこちで絶賛の声が上がるわ上がるわ。必然的に期待も高まっていた訳です。
戯曲としてのルールはとても簡単。演者はひたすらあゆむ。客はひたすら観る。それだけ。なのに開始10分もせず見入っている自分に気が付きました。なんだ、この安心感は。分かりやすく面白い。今更ファミコンとかのレトロゲームを引っ張り出して熱中してしまっている様な感覚。この演目は世にいうリアルな演技を求める方向にはありません。ルール下で清々しいほどに記号化されている演者と小道具の存在。それらがゲームっぽい感じに近付けていたのかもしれません。そして、そんな記号の中から浮き上がってくる演者それぞれの違い。可愛らしさ・力強さ・繊細さ・真摯さ、同時にそれらとは逆のものも。同一人物を演じる分、余計に違いを見出すのです。個人的にそれは大いにプラス。尚且つ舞台上の移り変わりが急速なので、「あの人を見たいな」と思った直後にはまた見られる。そういう「見たい欲」は満足しっぱなし。
観ている間、客席にいる人間はあゆみを止めて席に着いた。そんな事もちょっと面白く思えたのです。
「て」
ハイバイ
駅前劇場(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/06/23 (月)公演終了
た・ち・つ・「 」・と。
この演目の名前は「て」。一文字だ。今後はどんな文章であろうとこの「て」という文字を見付ければ、この演目を連想してしまいかねない。嫌ではないです。むしろ連想して思い出す度にちょっとハッピーになれる気がする。
ボケの進行したおばあちゃんが結局寿命で他界。家族揃ってお葬式をしなくては。こんな時にしか全員集合しない家族です。だってあんな奴と一緒にいられるか。そこに存在する軋轢と拒絶とちょっとした思い違い。と、確信的な嫌悪感。そんな話。
インパクトより、明らかなピンポイント。上手いトコばっかり付いてくる。手先の器用な仕事振りに思える点では、これこそが日本人ならではの作風に成り得るのかもしれない。
フェルマーの最終定理
ユニークポイント
atelier SENTIO(東京都)
2008/06/20 (金) ~ 2008/06/22 (日)公演終了
理解は可能。しかし知識が及ばない。
でも、知識は要らない。作者がコメントしているのでネタバレには当たらないでしょうが、ひたすらに黒板に数式が記されていくという演目です。導入部分では前提条件にある数式の解釈を理解出来る様にやってくれるので、「なるほど」と考えている内に引き込まれる。しかし中盤以降は結構な速さでの進行。「え?それはどういう意味?」とか思っている内にあれよあれよと置き去りに。にも関わらず、観ていられるのです。熱のこもった科学者が黒板に走らせるチョークの動きとリズムはさながらダンスの様。
45分という上演時間は適切。それ以上あのまま置き去りにされたらきっと寂しささえ覚えてしまいます。先述の通り、黒板に数式を記す事こそが主題でもあるこの作品。人物間の関係性や気持ちの移り変わりはそこまで綿密に描かれてはいません。長編にするのであればそこをいじれば不可能ではない。けれど個人的には綿密でなくてもここまでやれるという証明を見せてくれたので、これはこれとして満足です。