走馬灯。
楽日に観ると決めて先の日のお楽しみにしていたら、その間にあちこちで絶賛の声が上がるわ上がるわ。必然的に期待も高まっていた訳です。
戯曲としてのルールはとても簡単。演者はひたすらあゆむ。客はひたすら観る。それだけ。なのに開始10分もせず見入っている自分に気が付きました。なんだ、この安心感は。分かりやすく面白い。今更ファミコンとかのレトロゲームを引っ張り出して熱中してしまっている様な感覚。この演目は世にいうリアルな演技を求める方向にはありません。ルール下で清々しいほどに記号化されている演者と小道具の存在。それらがゲームっぽい感じに近付けていたのかもしれません。そして、そんな記号の中から浮き上がってくる演者それぞれの違い。可愛らしさ・力強さ・繊細さ・真摯さ、同時にそれらとは逆のものも。同一人物を演じる分、余計に違いを見出すのです。個人的にそれは大いにプラス。尚且つ舞台上の移り変わりが急速なので、「あの人を見たいな」と思った直後にはまた見られる。そういう「見たい欲」は満足しっぱなし。
観ている間、客席にいる人間はあゆみを止めて席に着いた。そんな事もちょっと面白く思えたのです。