マドモアゼルはプリンス ムッシュはプリンセス ~桜木邸連続殺人事件~/ダンパチ13・銀
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2015/07/17 (金) ~ 2015/07/26 (日)公演終了
満足度★★★★
「劇」笑劇場は衝撃かも...
演劇的な理屈など細かいことは言わないで、肩の力を抜いて楽しんでしまう。そんなエンターテイメント笑ーであった。
そしてしっかり観せるミステリー・ストーリーとその演出は面白かった。とにかく観客を楽しませようとする、そのサービス精神で溢れた芝居である。笑い笑い...そして笑いで、最後まで明るく楽しい内容である。
ネタバレBOX
舞台は素舞台で、若干高い位置に設営してある。そこに小道具・小物を携えた役者が登場し、場面を作り上げていく。
客席は、横長ベンチに個々の座布団が置かれている。普通であれば後列に向かう中央通路があるが、今回はない。すべての列がベンチ席になっているから、入口(上手側)から入って下手席から順々に詰めて座るようになる。もちろん早く会場入りし中央席に着けるが、その場合、下手に行く観客が通りやすいように...との場内案内がある(心配りである)。最前列は舞台に近いため、演技の迫力は必至、しかし、冒頭の登場人物紹介では透し幕に映像を映し出すが、それが見えない。一方、2列目以降は前列の人の頭を気にしなければ、プロローグ映像が見える。好みの問題であろう。
さて、自分のお気に入りのシーンは、次のところ。
1つ目は、ベランダから下を覗き込んだ、俯瞰シーン。これは体力勝負であろうが、面白い観せ方であった。
2つ目は、シーンではないが、すべての役者の早着替えである。フォーマルな場合(パーティーシーン等)があり、結構時間を要するであろうが、見事に着替えていた。
そして、最後に推理劇であるから、その内容にも注目したが、特異な例ではあるが、しっかり考え構成されていた。上演時間、最後の挨拶含め約2時間、観応えがあった。
次回公演を楽しみにしております。
果てとチーク×コワい女シリーズ第一弾 『害悪』
劇団森
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2015/07/17 (金) ~ 2015/07/19 (日)公演終了
満足度★★★
凝った作り…
久し振りの早稲田小劇場どらま館…そこでの「害悪」は詰め込みすぎた印象である。凝らした演出は観にくく理解し難かった。
しかし、訴えようとする姿勢は真摯で好感を持った。
その凝った芝居は…。
ネタバレBOX
舞台セットは、少し高い位置に設営し下の席からは見上げるようで観にくいだろう。パイプで三面に区切り、上手は某組織の事務所、真ん中は事務所に勤めている女性姉妹の部屋、下手はその姉妹の寝室(または外の道?)を現しているようだ。そして正面舞台とは別に回廊花道を作り、その真後ろでも芝居を行った。しかし、当日は満席で詰めた状態で、さらに中央通路に増席をするほどで、振り向いて観ることが出来なかった。
さて内容は、「トロイヤの女たち」をモチーフ...過去から現在に至るまで戦争・紛争を繰り返し、そのたびに幼き子や女性が犠牲になってきた、そのことを人類に鮮烈に問いかける話である。そこには神と人間の存在がある。
本公演は、下手で戦争に行った夫や息子が戦死(インターネット上の仮想敵国との戦争か?)しても、姿・性格も同じアンドロイドが代わりに癒すという斡旋商売(契約)のようである。一方、その戦争で攻撃している相手がネット上の架空仮想国のようである。この虚実混合した物語に混乱を覚えた。さらに中央では生身の人間が生活しており、三姉妹の会話がきわめて人間的である。同性愛(レズ)、妊娠などのセリフがポンポン飛び出す。
この現実とも虚構とも言える独特の世界観...そこに見える問題提起。しかし、自分にはテーマの投げかけが、種々のレトリックが用いられているようで理解し難かった。
仮想敵国を滅ぼしてはならない、という均衡を保もつ姿は、どこかの国の事情を投影しているようで、苦笑した。
一応、戦死者を慰めるのに不可欠になったアンドロイドは、逆に人間の「悲しみ」「寂しさ」という感情を麻痺させ、戦争・紛争に恐怖を抱かなくなるというアイロニーを描いたのか。それが冒頭、社会的に受容された狂気の契約(クレーム)に繋がるのか。何でも(人さえも)代替可能という、現代の寓話でしょうか。
なお、観せ方として、セリフが被り、また敢えて同時に離す場面はなお理解しにくい。最後は、凄惨な場面で終わるが、そこには生人間とアンドロイドを確認し合うための行為...そんな近未来が見えるようだ。
「トロイアの女たち」の「神」と「人間」を「アンドロイド」と「人間」に置き換えたような感じもした。
次回公演も楽しみにしております。
闇
ドキドキぼーいず
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★
視覚的に観せる...
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
繰り返しの動き、発声練習のようなわざとらしい大声...演劇ワークショップのような印象を受けた。たぶん敢えての取り組みであろうが、粗暴のような感じがした。
ネタバレBOX
多くの役者が登場し、相互に不規則と思えるような動きだが、実は優れたフォーメーションであった。何か不気味で何か起こりそうな気配…最後に金属バットを持った人物が...作品のみどころ・意気込みは、登場人物の誰かが人を殺す。物語はそれだけです、とある。
薄暗い照明の中に、鈍い光の金属バットがドキドキする。ボレロとよくマッチした舞台絵図であった。
次回公演を楽しみにしております。
ふみ
LiveUpCapsules
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
短い時間の中で分かりやすい芝居
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
大きく2つの物語に分かれるが、一貫して自分の信念を貫き通した与謝野晶子が描かれる。脚本はしっかり書かれ、演出も面白い。
明治文壇で活躍した与謝野鉄幹・晶子夫妻の出会いと結婚が1つ目の話、晶子が詠んだ句をめぐり、評論家・島村抱月との論戦が2つ目の話であるが、その繋がりは微妙である。しかし、晶子の激しく一途な思いは2つの話があってはじめて伝わると思う。
芝居の内容がよく分かる脚本・演出であり、その観せ方も粋であった。
ネタバレBOX
明治の文壇史の一端をダイジェストで観たようだ。芝居の脚本・演出は丁寧で骨太い感じがあった。日露戦争当時の日本...国粋的な論調の島村抱月との論戦は、文学的見地というよりは国是に対する見方。一瞬、教育的な芝居になりそうであったが、前半の恋愛場面からの繋がりで中和させたと思う。
さて先に戻るが、鉄幹主宰の歌会への投稿を始め、”文”のやり取りは扇を文にみたて、それを投扇することによって粋に描く。時代背景を考慮した着物姿と相まって優雅の中に凛とした与謝野晶子が描かれていた。
次回公演を楽しみにしております。
○口なし
chon-muop
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/12 (日) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
記憶を記録する
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
迷宮の中で、さらにもがき苦しんでいる様子。登場人物の自分さえも否定するような今日的な空想劇のように感じた。
哲学者J=P・サルトルの戯曲『出口なし』から着想...その発想から既に難しいイメージを持ってしまった。
ネタバレBOX
さて、死んであの世とこの世の境...迷宮にいて自らの心情を吐露する男女の姿のようである。そこが地獄であるらしいが、そのイメージはない。3人のエピソードとなぜ3人がそこに入るのかが分からない。3人の関係、「出口なし」に入る説明をもう少しして、観えるようにしてほしかった。
全体としては不思議空間に誘われた演出はすばらしい。その独特の世界観と内容がうまくマッチして見れれば、「○□なし」の地獄が見えたかも...。
次回公演を楽しみにしております。
こんな気持ちになるなんて
劇団しようよ
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了
満足度★★★
想像の世界感…
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
想像力を豊かにする、そうすると少し気味悪くなってしまうような物語である。
「存在」と「非存在」を描いたもので、ある物が人間の体の中に入り存在していた物が段々と無くなるような...。
その説明は、一人の無表情のキャストがフリップを掲げて...。
ネタバレBOX
口から入って、食道、胃、腸へ...。
その不思議感覚は初めてである。
さて、最後にスイカが舞台中央に据えられ、それをスイカ割りするその行為は、自分には意味不明であった。
しかし、観る人が見れば解るのだろうか。
次回公演を楽しみにしております。
月に吠えろ
オーストラ・マコンドー
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了
満足度★★★
オーソドックスな…
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
その中で、一番わかりやすく、「せんがわ」という冠を付けたコンクールとしては共感が持てる内容だと思う。
確か、このコンクールの3~4回目ぐらいまでは、「せんがわ」という街をテーマないしイメージできるような内容が芝居に組み込まれていることが、応募条件だったと思う。その意味で、本作品は、このコンクールを通じて「その才能が調布市せんがわ劇場を中心に、仙川を文化の街としてますます発展させてくれることを期待」に合致したようだ。
それに応えるかのように、劇団の作品のみどころ・意気込みが、「地元の方々と共有できる演劇作品を作りたかった。」とあり、せんがわ商店街で取材を重ねたことを記している。
その芝居は...。
ネタバレBOX
昭和の雰囲気を醸し出すような、義理と人情が垣間見える内容である。
自転車屋の店主・萩原作太郎は、代々続くこの店を継いだが、時代の波に押され経営は悪化している。そしてお構いなしに変貌し続ける商店街 。今後どう対処していくのか、残された選択肢は二つ。
初めて芝居を観る人にもわかり易い展開で、また演技もしっかりしている。
この劇団、今年3月に映画監督・小津安二郎に捧ぐ「家族」を上演しているが、自分はそれを吉祥寺シアターで観ている。やはり、懐かしい感じのする芝居のスタイルは変わらないのだろう。このしっかり芯のある舞台姿勢を応援していきたい。
次回公演も期待しております。
尖ったものは、みんなそこに置いてください。
集団たま。
調布市せんがわ劇場(東京都)
2015/07/11 (土) ~ 2015/07/11 (土)公演終了
満足度★★★
現代寓話…奇妙なこだわり
第6回せんがわ劇場演劇コンクール参加作品。
現実なのか想像の世界なのか曖昧な不思議な物語。
観念的でシュールなことは何となく分かるが、その訴えたかったテーマ性なりが見えてこなかった。舞台上にいる犬の目線(下から見上げる)での世界観であろうか...。
ネタバレBOX
語り部は”犬”であり、居る場所がコンビニ前の路上という設定である。そこに出入りまたは通りすがりの人物を通して描く世界観...現実とも非現実とも取れる内容に戸惑いもあった。
この劇団ならではの視点、描き方は初めて演劇を見る観客には奇妙であり、理解も難しいと思った。
もっとも演劇コンクールであるから、その本質はしっかり捉えられているかも...。
次回公演を楽しみにしております。
変身
ttu【2017年5月末解散】
新宿眼科画廊(東京都)
2015/07/17 (金) ~ 2015/07/22 (水)公演終了
満足度★★★
視点の違いを理解しないと…
本公演「変身」と言うよりザムザ家は、難しいと思う。そこは、当日パンフの演出・山田真美 女史の説明を読んでいただこう。
さて芝居は公演中のため、内容の感想は「ネタばれ」へ。
制作サイドの課題だと思うが、梅雨時(観劇した日も小雨)であることを考慮した対応をお願いしたい。会場は、1階と地下の両方を借りていたようだが、1階会場の在時間は地下へ誘導する10分程度だった。それであれば、外(公道)で待たせず、受付順に1階会場へ入れたほうが良いと思う。
素材と場所をかけあわせて起こる化学反応を遊びながら、創作活動を行っている劇団(ttu)からすれば、新宿眼科画廊という「家」のなかにザムザ家が立ち上がる瞬間を楽しでもらう、という演出効果を狙ってのことは承知の上で…。
また、地下会場は冷房がきき過ぎだった。
さて「変身」刊行100年目を迎えて、描いたものは…。
ネタバレBOX
「変身」は、ある朝セールスマンのグレゴール・ザムザが、途方もない“虫”になっていた。本公演は、この男ではなく、その家族の視点で描いている。変身した主人公が『不在』であり、グレゴールが変身する前に借りてザムザ一家が住んでいたかつての『家』からの視点て『変身』を描く(山田真美 女史)。この劇団の真骨頂である「素材と場所の化学反応」である。
主人公が虫に変身して、自分の人間感情が段々と壊れていく狂気・恐怖の過程は伝わらない。逆に家族(一家)との関係が浮き上がるはずだが見えない。始めは家族の繋がりが見えるが、いつの間にか疎まれ邪魔扱い。主人公不在であるから家族による間接状況が上手く表現できるか。小説は「虫」が見えないが、自分で想像できる。芝居は可視可能だと思うと、その存在を無視出来ない。それだけに家族(周囲)状況が追い込まないと不思議感覚が立ち上がってこない。そう、画用紙の中心を淡色で描いた場合、その周りを色彩強くしないと暈けるような。自分の感性が乏しいのかも...。
演出は、1階ザムザ家から地下ザムザ家へ誘導する。そして、舞台中央の四角いテーブルと四脚の木椅子に集中させるため、終始薄暗い中で蠢く人物。その人物の手には俯瞰するような四角い又は歪め額縁、虫眼鏡をイメージさせる小道具。そしてこの小説の象徴的なリンゴも。役者は役柄を変えながら巧みに演じる。この演出・演技は確実に家族の小さな(立場)変化、時間(社会的状況)の流れを現しているのだ。
稽古では、虫を演じないことからスタートしたと...。騙られることに気をとられていると、(小説)語られていることを見逃すかららしい。
やはり自分には、カフカの「変身」は過たるほど難しかったかも。
次回公演を期待しております。
ペテンの系譜
ゲラニルゲラニルピロリンGGP
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/07/07 (火) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し深みがほしい
GGPがお贈りするスタイリッシュ・コメディー!という謳い文句であるが、同じような出来事の繰り返しである。イメージは空疎という感じである。
この公演は、シアターグリーンリニューアル10周年記念若手劇団応援企画(Sprout Support)である。劇場が力を入れていることは分かる。
それだけにその内容は...。
ネタバレBOX
ペテンという語感ではなく、単なる隠し事...嘘の上塗りで、何を描きたかったのかが分からない。スタイリッシュ・コメディーというが、嘘を隠すためのドタバタが繰り返されるだけのような上滑り。そのコミカル演技だけでは、真に笑えない(実質☆2だが、将来性にかけて☆3へ...期待しております)。
ペテン芝居として、観客を良い意味で騙すような仕掛けがほしい。物語としての面白さから、意外性への落差、そこに観客(自分)は魅力を感じるのだが。
役者(子役も含め)は熱演していたと思うが、それが生きていなかったのが残念である。
次回公演を期待しております。
紫陽花の夢
劇団水中ランナー
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2015/07/15 (水) ~ 2015/07/20 (月)公演終了
満足度★★★★
心温まる...(Bキャスト)
四葩の別がある紫陽花、開花後は順に色彩が変化するため、「七変化」の別名もある。さて、障がい者を抱える二家庭の心情を中心に制作され、好感を持った公演である。
二家庭とも四人家族であって、紫陽花の別...四葩が寄り添うように生活し、一人ひとりの人生の色彩を変化させてきた。その変化の節目に見る夢こそ...。
さて芝居は、取材を重ね熟慮して作り上げたのではないか、と思うような丁寧な仕上げ方である。それを前提にしつつも、気になることが...。
ネタバレBOX
この公演は、先にも記したが取材をし、描く対象が難しいことから熟慮したのではないか。その描き方に誤解を与えないような話の進め方(脚本・構成)、そして観やすくするための舞台セットもしっかり作り込んでいる。上手は液晶TVが置かれている低台・フローリングスペース、中央は応接セット、下手は別空間をイメージさせるベットがある。
この障がい者を抱える二家庭(斉藤家・黒木家)が、以前あった障がい者交流会で知り合い、親交を深めてきた。この舞台(セット)となるのは、黒木家の親戚で、支援施設・双葉園を経営する家である。障がい者は、どちらの家族も末弟という設定であるが、斉藤家の障がい者は1年前に亡くなっている。一方、黒木家は母親が交通事故で亡くなり三回忌法要の時期を迎えている。両家とも長兄・長女・末弟(障がい者)という構成である。斉藤家の母は息子が死んだことを受け入れられず、双葉園に入所している。そんな家族が結婚や将来の生活、介助などに悩み・考える姿が感動的である。
あくまで芝居としての感想である。この整理されたような話が気になる。
丁寧であるが、障がい者がいる家族が抱える苦悩は、どこか模したようである。最後はハッピーエンド的に結ぶ予定調和...ありそうなエピソードが表層的のようで、泣ける芝居であるはずが感情移入できない。いわば定番の収め方。例えば、兄が、姉が障がい者だったらどうか。異性兄弟姉妹を家庭内で介助するには。弟だから守るということなのか。エピソードのはめ込みではなく、どう考えていくか、その問題提起をするような切り口があっても...。ちなみに、夢とは子供時に描いたものから変更(変化)した、“中間の夢”を持つことらしい。
また、演出面で、特に前半は暗転が多く、全体を通じても場面転換は薄暗、スポット照射等、照明技術に頼っていたように思う。
この作・演出の堀之内良太 氏はしっかり制作される方だと思えば、もう少し自分のカラーを出しては...更なる高みを目指してほしいと思う(偉そうなことを書いて失礼)。
最後に制作サイドになるのだろうか。自分が観させていただいた回は、終わった後、多くの役者とその知り合い(観客)が舞台前(通路)で談笑しており、下手側から帰る客の邪魔になっていた。
せっかく余韻のある芝居、味わい深さが興醒めしないような配慮をお願いしたい。
第4回公演にも期待しております(第3回公演ということに驚いている)。
チャイルドボイス
『熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら。』
シアターサンモール(東京都)
2015/07/15 (水) ~ 2015/07/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
しっかり観せる
前回公演「梅子と『ボクらの青春交響曲』」も観ているが、その時は小学生時代からの秘密基地という設定で、いい大人が小学生に扮し熱演していた。その公演はグリーンフェスタ2015参加作品で、見事フェスタの「BOXinBOX THEATER賞」を受賞した。その時の謝辞で「いい歳した大人が小学生を演じてと言われようが、子供(たぶん弱い立場)を演じて行きたい」そんな趣旨を述べていた。そして、今回はなんと保育園児へ更に幼くなっている。
この6歳未満の子供たちの世界観...そして自分たちも過ごしたであろうその時間を忘れて大人になっている。しかし、確かにその時間を過ごしたのであるが...。
芝居、ダンスパフォーマンスと、そのパワー溢れる内容は本当に素晴らしかった。
ネタバレBOX
さて、初日は満員御礼の挨拶があるほどで、受付対応に手間取り開演時間が遅れた。全席指定であるが、席がトラブルすることもあり、混乱があったようだ。ちなみに前回公演では、自分もその洗礼(ダブルブッキング)を受け困惑したことを思い出した。制作サイドは事前の確認メール等、親切な対応をしていることから、2日目以降は善処するだろう。
芝居の梗概は、「ひまわり保育園」園長である父親が病で入院し、その代理となった元ヤンキーの里中丈一郎(夢麻呂さん)。子供嫌いの彼だが、保育士の資格は持っているところが面白い。その彼だけに聞こえてくる園児達の「もうひとつの声」と彼だけに見える「もうひとつの姿」...それは幼児とは思えない言葉遣いと格好である。そして大人顔負けの陰惨で暴力的な行動に丈一郎は立ち向かう。そして、子供たちの抱えている心の闇に近づいて行く、といった物語である。
この笑い笑いの連続の後に、しっかり泣かせるシーンを用意する。芝居の基本のような展開であるが、その観せ方がユーモアかつシニカルという輻輳さが、観客(自分)を楽しませる。そして寓言で教訓のようになりがちな話を、ダンス等のパフォーマンスでカバーしエンターテインメント仕立てにする手腕は素晴らしい。やはり良い芝居には光る台詞「心の目で見て、心の耳で聞く」という当たり前だが、出来ないのが大人かもしれない。それが子供が大人に気を使い、いつもいい子で気に入られたい、子供心が痛いほど伝わる。親の都合も含め、虐待問題へ発展させるところも社会性がチラリ。
餓鬼(蛟?)...迫力あり「心」の擬態(人)化は上手いし、宙づりと幕影(法師)も印象に残る演出であった。
少し気になったのが、次のところ。
幼稚園と保育園の違いを説明する件、縦割り行政への批判であろうか。公演は子供の内心を中心にした話であり、公演時間(3時間超)を考えれば、必要だったのか。
もう一つは、離婚して妻が育てている自分の息子のこと。携帯電話での会話中「息子に言った事がない」は、どんな言葉だったのだろう。聞き逃したのかな~(ラスト、園児2人を抱きしめて言った言葉か?)。
次回公演も楽しみにしております。
もしかして、赤ん坊にまで...。
僕の中にある静けさに降る、騒がしくて眩しくて赤くて紅い雪
天幕旅団
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/07/09 (木) ~ 2015/07/13 (月)公演終了
満足度★★★★
独特の世界観[カラフル版]
第一印象は、エンプティ-タイムといったところだ。時間を感じさせない、その不思議感覚を堪能した。
ほぼ素舞台で、そこに色鮮やかなスカーフのよう布が一面に...。照明は薄暗く、その照度強弱によって、場面状況や感情表現を示す。物語は白雪姫をモチーフにしており、大まかな展開はわかる。この芝居は、その構成が3場面から成っているようだ。その観せ方は、文章で言う起承転結のような感じ、観てもらうということを意識したものだ。その現れが舞台を中央平台、少し高い位置に設営し、三方向にひな壇客席にしていた。どの角度から観ても楽しんでもらえる、そんな自負があったのだろう。雰囲気は夢幻・夢想の世界観を表現しており、先にも記したとおりインパクト・出来事などは明るい(強い)照射で効果を出す。時として動作は同じことの繰り返し、それは日常生活の淡々とした暮らし振りと変化の兆しの時に顕著になる。この照明と並び効果的だったのが小道具・小物の使用である。
ネタバレBOX
白雪姫の構成を見ると、第一は継母との美の競演、第二に小人との生活、第三に王子との出会いに大別できる。もちろん公演であるからよく知られた展開とは違う結末になる。それでも寓話性は健在で人が持っている優しさ、その反面(反動)に孤影の怖ろしさを現す寂しさ、自分を守るために主体(姫)の否定(死)という狂気に繋がる。
舞台背景を明確にしないで、曖昧、抽象的にすることで観客が自由に想像できる舞台空間は良かった。だから観終わった余韻が心地よい。
なお、気になったところ...
継母との関係、美競演の場面は冗長に感じた。王子が現れるところと二分されるようで、物語としては分割してしまった。あくまで小人(スカーフの色で性格わけ)が持っている色々な側面を描いており、それは人間観察といったところ。この場面がしっかり描かれているからラストシーンが生きてくる。
心残りは、「極彩色の絵」であるカラフル版と、別バージョンのモノクロ版、イメージとしては「白描絵」も観たかった。この公演…「額縁の中の濃密な芝居」を比較したかった。
次回公演も楽しみにしております。
「月暈とメスシリンダ」(公演終了 ご来場ありがとうございました)
Sky Theater PROJECT
小劇場B1(東京都)
2015/07/07 (火) ~ 2015/07/14 (火)公演終了
満足度★★★★
梅雨時の五風十雨…
世の中平穏無事の様子…家族が1日を無事に過ごせる、そんな普通の毎日が幸せであることを改めて教えくれる。
芝居は、善人ばかりで心温かくなる内容である。観終わった後で優しい気持ちになれる。
しかし、気になるところも...。
また、理解不能であったのがタイトルである。
ネタバレBOX
月暈は、月の周囲に見える光の輪…とチラシに書いあったが、それをイメージする場面があったのだろうか。確かに月見のシーンがあり霞んでいたらしい。また、メスシリンダ(「ン」が逆)は、水等を量るシーンが多々あったが、予知能力なのだろうか。言葉遊びのようであるが、“暈”は、水を量る”嵩“に掛かっているのだろうか。遊び=子供…舞台の設定が駄菓子屋なのだから。
日常生活の多くは、平凡で坦々としており、その繰り返しであろう。しかし、芝居は観せるために起伏に富んだ、もしくは心情溢れる物語を紡いでほしい。その意味で、この芝居印象が弱い。
また、場面転換に暗転を多く使用しシーンが細切れのように感じた。
公演全体として優しさは伝わるが、その反面、淡色のようでインパクトが今ひとつ。
また、この劇場(小劇場B1)は、入り口左右に客席がある。今回はその入り口コーナーに横並びにソファーを、その奥にスチール製の事務机4つと椅子を向かい合わせに置いてある。芝居はソファーに寝るシーンがあり、左手奥の座席からは観えないと思う。舞台セット・配置にも工夫が必要だった。
物語として、都合の良い男...自分側の孝養、女性を待たせる勝手さが、なぜか緩い描き方。そこはやはり家族、または家族同様の人間関係の大らかさでしょうか。
次回公演を楽しみにしております。
つじたくvol.1
タクフェス
Zeppブルーシアター六本木(東京都)
2015/07/07 (火) ~ 2015/07/08 (水)公演終了
満足度★★★★
すばらしかった!
オムニバス4珠玉作とその幕間のダンスパフォーマンス...観応え十分な内容であった。
自分が観た7月9日(マチネ)は、会場のZEPP六本木の客席が前・後に二分(中間列が疎ら)されていたようで、場内全体で盛り上がっていたか、少し心配である。これだけのパフォーマンス、会場全体で楽しみたいと思った。
ネタバレBOX
開演までの時間を、ゲストの「ハレルヤシスターズ」がお笑いで盛り上げる。そのままの流れを維持し、つじたく(辻本茂雄、宅間孝行)の珠玉4作が上演される。その幕間にダンスパフォーマンスが披露される。先にダンス...ジャンルは、ソングリーディング JAZZといったところ。
さて、短編は15~20分程度であるが、そのどれもが真に面白く(シュールさも含め)、”最高最強の笑いの満載”は本当であった。
演目1「新幹線B席!」
一人の寝不足の男が新幹線3人掛の真ん中(B席)に座り、その後サラリーマン上司部下の2人が。手違いでA・C席に座り、何やら騒がしく話し、飲みだす...迷惑な話。
演目2「初恋レストラン」
地方レストランのテーブルに美人の女性...アイドル女優が座っている。そこに汚い身なりのダンプ運転手が来店する。偶然にも元恋人同士。女性が売れなくなりAV出演を打診されている。さて、この元恋人同士の顛末は...。
演目3「誘拐犯の憂鬱」
男2人が女性を目隠して誘拐してくる。実は身代金目当で誘拐したのは、男1人の彼女。彼女の実家が富豪と知っていての犯行。実は彼女は虚飾の人物で、すべては嘘ばかり。目隠し外した彼女は逆ギレして...。
演目4「DUET」
死んだ男の妻と後輩が一周忌(?)の墓参りに来ている。後輩は先輩の妻(未亡人)が好きである。それを見守る死んだ男(完全に成仏していない)を迎えに駄天使がきた。黄泉への旅立ちまであと少し。その男がとった行動...。
本当に素晴らしい笑い、泣ける作品であった。
次回、「つじたくvol. 2」を早く開催してほしい。
残夏-1945-(ざんげ)
サイン アート プロジェクト.アジアン
座・高円寺2(東京都)
2015/07/09 (木) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
泣かせない秀作
聴覚障がい者、戦争、長崎原爆...これらの説明から、重苦しい人生が描かれるのだろうと勝手に想像していた。しかし、悲惨さは伝わるが、それ以上に生きてきた、そして今も力強く生きている、そしてこれからも逞しく生きていく、そんなメッセージを発信している秀作である。単なるお涙頂戴のような観せ方ではなく、もっと前向きな母娘...というより家族の物語である。
上演後の大橋ひろえ さん(江原アイ子役)挨拶で泣いてしまいそうであった。「子育て中でも障がいがあっても高齢であっても、サポートによって『同じ空間で同じものを見て一緒に楽しむ』ことが当たり前となるような社会を創っていければ...そんな趣旨内容である。
この芝居、タイトルや説明から明らかなように、戦争への鋭い批判であることは間違いないであろうが、その描き方が実に良い。
ネタバレBOX
この芝居で素晴らしいと思ったのが、この母・逢沢康子役(五十嵐由美子さん)が、ろう者で終戦間際(1944年)の長崎で生まれ、被爆しているという設定である。この直接ではなく、自分の母・江原アイ子からの伝聞形式で語るという観せ方が良かった。直接だとその生々しさが強調され、お涙頂戴のようになり平面的な描き方になったと思う。伝聞という少しクッションをおく事で、戦争の悲惨さと、障がい者との関係もうまく観客(自分)に伝わった。お仕着せではなく、実に自然体で語られる...その暑い「残夏」は、新たな命「産夏」でもあった。そう人間讃歌という感じである。
さて、もう一方の現在を生きる母娘(逢沢夏美役・日野原希美さん、逢沢結役・貴田みどり さん)の確執である。こちらは障がい者としての思いが伝わる。障がいがあっても自由に表現したい、感じたいという強い思いは、母親の娘を守るという意識の違いがぶつかる。優しい思いのすれ違いがもどかしい。少し、ギリシャ悲劇「エレクトラ-コンプレックス」のような気がしたが、それは母親に対する反動...それが父親への思慕に繋がっている。
この戦争(被爆体験)と障がい者としての思いという多重構成を上手く魅せてくれた。実に泣かせない秀作であった。
次回公演も楽しみにしております
25528+
はちみつシアター
テアトルBONBON(東京都)
2015/07/08 (水) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
観せて...魅せて...決める!
アイドルライブのようでもあったが、その描く内容は”現代”にマッチ、というか今真剣に考えておくべきもの。演出はポップ調で観せるし、その体現はキャスト(女性+)が魅せており、楽しい芝居になっている。
この芝居、7月10日に観ているが、この日は四万六千日(7月10日に行われる観世音の縁日...この日お参りすると46,000日お参りしたのと同じ効き目がある)というとてもラッキーな日でした。
そして、このタイトルにも当然意味が...
ネタバレBOX
今年は戦後70年。この芝居の初日がこの日数に当たるという。公演は日を経ていくから”+”が付いている。
芝居の内容は、「同じ部品を作り、つなぎ合わせる仕事をしている、工場ではたらく女子。 通称『工場女子』 何のための部品なのかも分からず、毎日は平和でありながらも、平凡。」という説明からは想像できない、キチンとした主張を見せる。この軽妙なノリの演出と脚本テーマ性のギャップに驚いてしまう。
この工場で作っていたのはミサイル...その平和を脅かす武器へNOを突きつける。彼女たちの命懸けの情熱と信念は、実に痛快だが、同時に、この先の日本の有り様が若い世代にも危惧されている。
芝居として見た時、未来で守ろうとしていた一方の勢力(現権力の体制)は何だったのか。そして守ろう(鍵の死守)としていたものは何か。さらに猫が人間へ...その物語の脈絡に混乱したのは自分だけだろうか。
次回公演も楽しみにしております。
自由を我らに
カプセル兵団
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/07/07 (火) ~ 2015/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
現代向けの内容
丁々発止の会話劇のようであるが、その内容は極めて現代に向けて発信しているもの。「憲法」を文語体から口語体へという依頼であるが、その舞台配置から法廷劇のようにも感じた。そして法廷といえば、「怒れる12人の男」を想起し日本ではそのパロディ「12人の優しい日本人」という映画もあった。
さて、芝居で少し気になったことが...
ネタバレBOX
この1幕物で、キャストは常時舞台上にいる。そして、舞台配置は客席に向かって八字型に長テーブルとパイプ椅子が人数分、中央奥に少し高く演台がある。その配置は法廷そのものに感じた。さしずめ観客が傍聴者といったところであろう。
さて、物語は憲法公布までの2時間(上演時間の2時間と重ね臨場感を出す)の様子である。憲法公布が昭和21年11月3日であるから、この物語の設定はその前日の2時間という(憲法施行日は昭和22年5月3日・憲法記念日)。いろいろな笑いを得るような仕掛けがあるが、その中心は「憲法条文」の捉え方、解釈の仕方を「言葉」の曖昧さに求めている。憲法という規範が曖昧...というキツイ、そして鋭い問題提起を婉曲に描いた力量に感心する。
しかし、それは今・現在から見ているので、当時と意識のギャップが埋められない。それが残念であった。
自分の好みであるが、当時(戦後)と現在を交錯するようにし、曖昧にした功罪を論議してほしかった。登場人数が13名で、最高裁判所は長官を含め15名であることを鑑みると憲法を論じるに十分であろう。最高裁判所こそ憲法判断の役割を担っているのだから。
また、今回は憲法のうち、人権部分の条文だけであったが、統治部分の条文についても議論を観せてほしい。今、憲法改悪へ…。
次回公演を期待しております。
リ:ライト
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2015/07/01 (水) ~ 2015/07/06 (月)公演終了
満足度★★★★
忘れないほど…面白いかも...
説明にあるアルツハイマー治療薬をめぐる人間関係。その研究の「与件」と「予見」するような夢 物語である。
それは、コメディタッチでとても温かいハートフルな話である。同時に少し怖いと感じる二面性のある芝居であった。
そして、2014年(制作)の話題映画「アリスのままで」(ジュリアン・ムーア主演)を思い出した。
ネタバレBOX
本公演は、大学の神経科学研究室。そこに勤務する若手研究者が若年性アルツハイマーに...そこで見る「予知夢」が周りの人々を右往左往させるドタバタ劇である。ここに登場する人物は皆優しい人達ばかりである。それは人間性という視点から捉えている。一方、アルツハイマー(一般的には高齢者に多いそうだが、この芝居のように若い人でも発症)の対応は、喫緊の課題である。その社会的な課題は、本人だけではなく家族をはじめとして周りの人への影響が大である。その視点も垣間見えると良かった。
さて、少し怖いと感じたのは、すべての記憶がなくなっても、自分が生きた証は消せない、と思う。この芝居では記憶(予知夢)が微妙に違って現れるという。この件、記憶が少しずつ刷り替わり、もしくは刷り換えられる(良いことも悪いことも)。自分の記憶が曖昧なゆえに起こる怖い一面をイメージさせる。
この芝居ではもちろんハートフルであるから、本人が記憶がなくなることの悲しさと、一方、周りの人々は自分達が忘れられる寂しさの双方向の思い遣りが明るく描かれる。
この芝居は若年性アルツハイマーという、現実問題としては重く厳しいテーマであるが、あくまで前向きに”今を生きている”という消しゴムのない感動話である。
ちなみに、プロローグ...浮気はどう関係していたのだろうか。
昨日観た芝居なのにもう忘れかけている? これってもしかして...。
次回公演を楽しみにしております。
アンソロジー
ACRAFT
笹塚ファクトリー(東京都)
2015/07/01 (水) ~ 2015/07/05 (日)公演終了
満足度★★★★
豊かな創作力...
芝居は、脚本・演出・演技・舞台美術・音響・照明など、総合的に楽しむものであろう。そしてフィクションであり、それをどう面白く描き、観せるか。そこにテーマ性などが見えれば最高である。
その意味で、この芝居...壬申の乱は日本史の中でも教科書に記されるほど有名でありながら、よく知らなかった話を魅力ある物語にして観せてくれた。
その創作力、イマジネーションの豊かさ...同じことを並べて書いたが、文字も言葉と同じくらいに大切である。それはこの公演が教えてくれたこと。
ネタバレBOX
この物語の構成・展開は解りやすいが、それでもこの時代背景を理解しておいたほうが、より楽しめる。そのストーリーを牽引するのがストーリーテラーとなる、柿本人麻呂と稗田阿礼である。この二人の回想と俯瞰を通して「壬申の乱」前後が描き出される。その展開は時代を遡るが、そこからは時系列に進み、トピックも都度説明が加えられる。
この公演の良かったのは、有名であるがあまり知られていない事件について、発想力豊かに描いたこと。その中心は、人間の愛憎の視点であったが、当時の社会経済(財政逼迫)・政治(皇位継承)・国際情勢(唐、新羅および百済との関係)もしっかり織り込んである。この物語を貫いているキーワード「言霊」であるが、それを表す力強いセリフもちりばめられ、心地よく響く。その後、記される「古事記」「万葉集」などは、まさしく「心に(言葉)の種を植える」が実を結んだ証であろう。
だたし、この「言葉の力」の描き方が、歌を詠むシーンだけでは弱い感じがした。選歌が、個人的心情・情愛のものであるため、この内乱阻止に役立たないのかもしれない。しかしそこは芝居の世界...言葉の力が戦渦を防ぐ一端が観えればと思った。あくまで史実の流れという感じであったのが、個人的には残念であった。
最後に芝居の演出について、際立った戦闘シーン(殺陣)がないので、宮殿の業火シーンは上部幕の揺れと紅蓮照明が相まって陥落の雰囲気があった。逆にいえば、それ以外の演出の妙が感じられなかったのが残念である。
次回公演も楽しみにしております。