第三毒奏 公演情報 劇団開花雑誌「第三毒奏」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鋭いテーマであるものの、その表現力が...
    シアターグリーン学生芸術祭招致公演...大阪芸術大学 劇団開花雑誌による、近未来または仮想・架空という設定の物語。その脚本・演出は鋭く観応えあると思われるが、少し凝り過ぎた感もある。
    ちなみに、道頓堀学生演劇祭Vol.8最優秀劇団賞受賞作品でもある。

    全体的な雰囲気・印象は、幻想、ファンタジーであり、その観せ方は舞踏要素も取り入れて比喩的に感じた。
    小道具、食べ物もその一つになっているが...


    ネタバレBOX

    まず現況、背景を整理しないと分り難い。自分の解釈としては、<If(仮)>戦争後の世界におけるスラム...そこで生活していたタケと桐也は、富豪の家に空き巣を狙い、桐也が手違いで殺人を犯し逮捕される。その後、スラムが解体され、そこにいた子供たちは少年院へ。そこでは少年法に則り20歳になると「戦争孤児は殺処分になるという」規則である。子供たちは20歳を前に脱出を試みるが、桐也が送り込まれて来る。ここから少しずつ歯車が狂いだし、狂気の世界観が見えてくると...。

    まず「第三」は第二次大戦に対する意味であり、まだ起きないであろう仮想の戦後であることを表しているのだろう。そして多くの「毒」が吐き出されるが、その象徴が殺(人)戮...キャベツを足で潰す、またはそれを下に落とす(斬首)表現である。また冒頭に、小道具として包丁、拡声器、懐中電灯、本をボストンバッグに入れるが、それもラストに近いシーンで傷殺のため使用する。戦争は国家命令として多くの人間を殺害するが、ここに登場する桐也はたった1回しか殺人はしていない、と強調する件。その行為に正当性があるのか、という問いかけのように聞こえる。

    また、大人(20歳)になれば、世間の目も厳しくなり、簡単に殺処分にできないという、現在の少年法を皮肉る。そのアイロニカルも際立っているが、公演全体を通じて、凝っていたため主張が暈けたように思う。
    最後に「奏(音楽)」は、基本的にクラッシックが流れ、その中のドボルザーク交響曲第九番 第二楽章は哀しい。見事な選曲だったと思う。

    本公演は、芝居をある程度観ている観客には満足、しかしあまり観ていない観客には難しく感じるのではないか? 観客の感性がどこまで追いついているのか、逆に劇団として捉えているか。その辺りを考えてみてはどうだろうか。

    今後の期待込めての★4つ
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2015/08/15 18:30

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大