第三毒奏 公演情報 第三毒奏」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★★

    大人なんかを信じちゃいけニャイ! ニャロメ! にゃ~~~~~~~tti

    多大の戦費と孤児の大量発生に伴い、国家は、戦後スラムに孤児たちを強制隔離した。

    ネタバレBOX

    その後施設を作って孤児達を収容、非スラム居住者の為の食糧生産に従事させていた。無論、孤児達に教育の機会は与えられていない。それどころか、一切の人権を奪われ奴隷としてこき使われた上、20歳になれば、男女の別なく処分される運命が待っていた。大人達が始めた戦争によって孤児にされた最も弱い存在は、浮き上がる術も奪われていたわけだ。そんな状態でも施設を管理する大人達は、子供達に夢を見るよう勧める。無論、子供達もそんなミエミエの欺瞞にのる筈も無い。施設からの脱出を試みる者も多く、見付かっては、ミンチにされているようだった。何れにせよ、正確なことは分からない迄も殺されることだけは確実であった。だって、彼らは社会のお荷物でしかないのだから。だが、スラム出身者で施設に居る者の誰ひとりとして殺人だけは犯していなかった。
     然し、法律が変わった。殺人を犯した者も施設に入所できるようになったのだった。そして、この施設のリーダーであるタケが未だスラムで暮らしていた頃の兄貴分、桐也が入所して来たのだ。桐也は、音楽一家の長男で高等教育を受け、音楽や語学の素養も大変なものだったのだが、実家の父は狂死、母は有名な音楽家であった。然し母は、厳格で融通性が無く、天才ミュージッシャンである妹が、兄を慕う感性にも耐えられずに家を飛び出し、スラムに潜り込んで暮らしていたのだった。タケは、桐也から勉強を教えて貰い、舎弟となった訳だが、法改正後、施設に入所してきたのは「最後にしよう」と留守のハズの金持ちの家に盗みを計画した2人が、人が居るかも知れないと躊躇した時、クラシック音楽が掛かっていた為に狂気の発作に陥ったようになった桐也が人を2人殺した。而も、彼が殺人を犯した家は、方月家。娘の晴子と凛は、体の弱い母の薬を買いに行っていて留守だったもののその家に残っていた父母を惨殺したのである。姉妹が帰って見ると、父母は惨殺され、彼女らは孤児となってスラムに流れた。姉の晴子は、現在タケの彼女である。もう直ぐ20歳になる彼らは、仲間と共に一か八か、脱走を計画していた。処分迄1カ月しかない。
     晴子達は、父母の敵を見付け復讐する迄は死んでも死にきれない。そんな想いを抱えている。其処へ降って湧いたような法改正と共に桐也が舞い戻った訳だ。同時に殺人犯を施設で預かりケアし、自分達の出世のネタにしようとの目論見から、心理学者、施設長、施設長代理、刑事らがある計画を立てる。1年に一度、20歳になった孤児達を処分する権利を持つ一等監視管、東郷を除く大人達である。計画の内容は東郷を除き、現在休みを取っている施設長を含めこの施設に係る総ての大人が立てた計画であった。
     計画を成功させる為に、共謀した大人達は、タケを逮捕する。逮捕すれば刑が確定する迄は、20歳になっても殺処分されることはない。而も、世間の耳目をそばだたせる訳だから、現在行われている20歳で孤児を殺処分する制度を変えるきっかけにできる、と踏んだのである。彼らは当然、善人面ができ、その後の彼らの人生は更に輝かしいものになるとの計算からである。刑事は、タケは殺人に係っていなかったものの、桐也の共犯であることが分かっていることを証し、押し入ったのが現在のタケの彼女の父母の家であったことを知らせる。20歳で殺処分になることを廃止できるかも知れない、とタケは、自らが犠牲になることを覚悟する。
     一方、施設に残っていた晴子は、タケの舎弟格で15歳のデンに愛を打ち明けられる。タケも居ない中、近い内に間違いなく処分される心細い状況で過ごすうち、デンの侠気に少しずつ心を開いて行く。いくら気が強く男勝りに見えようと彼女も独りで重荷を背負うのはきつかったのである。デンは命を的に、彼女に結婚を迫った。彼女は受け入れる。
     だが、タケは取り敢えず生きたまま一旦、皆の下に戻ってきた。
     と恋の行方でも一波乱を含ませながら、物語は大団円に突き進む。関係する大人達は、20歳での孤児処分を良く無い、と声を挙げる為に、タケを逮捕して、犠牲になることの意味をタケに悟らせた上で、実際に人殺しをしていない彼を桐也の共犯としてクローズアップすると同時に、東郷に20歳になった孤児達を処分させることを通じて、この制度を改革することを目論んでいたのである。無論、殺処分当事者の東郷だけはこの計画を知らされていなかった。
     観客の中にも、殺処分反対とノタマウ彼らを観て善意の大人達と見る向きもあろうが、自分は、そのような解釈は拒む。これも無論、彼らの被った仮面に過ぎない。そして、この仮面を剥いで見れば分かることだが、その下には、また仮面があるだけである。更にもう一度剥いでも同じことだ。何と言っても既に彼らは仮面しか持たないのである。其処にあるのは利害だけで、真実などかけらほども無い。そのように取った方が、この作品の本質を、即ち、若者が大人達に向けた刃を受け取ることになろう。
     蛇足だが、本物のキャベツを何故使っているのか観劇中疑問に思っていたが、ラストに近いシーンで納得した。東郷に切り落とされた生首なのである。だから、作中でも踏み潰されたりする訳だ。東郷という名も無論、A級戦犯の東郷に係るであろう。尤も、東條と掛けて居るかも知れぬし、朝鮮から渡ってきた陶工の末裔の住むエリア出身であるから、その複雑な人生の一端を投影されているかも知れぬが。色々、考えることのできる作品であった。
  • 満足度★★★

    なんとなく小劇場らしいというか・・・
    でもチョット方向が違うというか・・・
    人の命が軽そうな世界での人間ドラマでしょうか

    脱出幻想劇って感じは出てたけど、今ひとつ解り難いというか何ともいえない観劇感があったなぁと思えた約90分=予定通り。

    ネタバレBOX

    キャベツを踏み砕く演出は食い意地の張った自分としては心苦しかった・・・最近葉モノ野菜は高いんだけどなぁ・・・・(-_-;)
  • 満足度★★★★

    独特の世界
    幻想的で柔らかい印象もありましたが、実はダークで残酷なストーリーでした。社会や大人に対する不信・皮肉等が感じられ、色々と考えさせられました。独特の世界観・表現方法で、暗くなり過ぎないよう工夫されていたと思います。役者さん達の熱演も好印象で、特にデン役の役者さんの、生き生きとした姿が印象的でした。演出方法(キャベツ)については、どうかな?と思う部分もありましたが、独特の世界観を味わえる、心に残る舞台でした。

  • 満足度★★★

    若い才能の今後に期待
    確かにシュールレアリズムファンタジーといったところで,最初のシーンから意図するところは難解ではある。また,ありきたりな**はいらないと捻りすぎ,盛り込み過ぎの部分もある。でも,最後まで通して観ると面白かった。若い発想なんだろうなぁ。演劇全体のため,こういう才能はどんどん伸びていって欲しいと思う。

    ネタバレBOX

    潰されたキャベツ見た目と匂いは苦手,星一つ減かしらん。あと,自分の観た回だけかもしれないが,前説が酷かった。学園祭での乗りかもしれないが,観客を相手にするという意識が全く感じられなかった。
  • 満足度★★★★

    鋭いテーマであるものの、その表現力が...
    シアターグリーン学生芸術祭招致公演...大阪芸術大学 劇団開花雑誌による、近未来または仮想・架空という設定の物語。その脚本・演出は鋭く観応えあると思われるが、少し凝り過ぎた感もある。
    ちなみに、道頓堀学生演劇祭Vol.8最優秀劇団賞受賞作品でもある。

    全体的な雰囲気・印象は、幻想、ファンタジーであり、その観せ方は舞踏要素も取り入れて比喩的に感じた。
    小道具、食べ物もその一つになっているが...


    ネタバレBOX

    まず現況、背景を整理しないと分り難い。自分の解釈としては、<If(仮)>戦争後の世界におけるスラム...そこで生活していたタケと桐也は、富豪の家に空き巣を狙い、桐也が手違いで殺人を犯し逮捕される。その後、スラムが解体され、そこにいた子供たちは少年院へ。そこでは少年法に則り20歳になると「戦争孤児は殺処分になるという」規則である。子供たちは20歳を前に脱出を試みるが、桐也が送り込まれて来る。ここから少しずつ歯車が狂いだし、狂気の世界観が見えてくると...。

    まず「第三」は第二次大戦に対する意味であり、まだ起きないであろう仮想の戦後であることを表しているのだろう。そして多くの「毒」が吐き出されるが、その象徴が殺(人)戮...キャベツを足で潰す、またはそれを下に落とす(斬首)表現である。また冒頭に、小道具として包丁、拡声器、懐中電灯、本をボストンバッグに入れるが、それもラストに近いシーンで傷殺のため使用する。戦争は国家命令として多くの人間を殺害するが、ここに登場する桐也はたった1回しか殺人はしていない、と強調する件。その行為に正当性があるのか、という問いかけのように聞こえる。

    また、大人(20歳)になれば、世間の目も厳しくなり、簡単に殺処分にできないという、現在の少年法を皮肉る。そのアイロニカルも際立っているが、公演全体を通じて、凝っていたため主張が暈けたように思う。
    最後に「奏(音楽)」は、基本的にクラッシックが流れ、その中のドボルザーク交響曲第九番 第二楽章は哀しい。見事な選曲だったと思う。

    本公演は、芝居をある程度観ている観客には満足、しかしあまり観ていない観客には難しく感じるのではないか? 観客の感性がどこまで追いついているのか、逆に劇団として捉えているか。その辺りを考えてみてはどうだろうか。

    今後の期待込めての★4つ
    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★

    キャベツが・・・
    若い息吹、独特の世界観を感じた舞台。
    なかなか良い芝居をする役者も見受けられ、これからの成長が楽しみ。

    ただ、脚本、演出共に“捻り過ぎ”のためか、ストーリーがわかり難くく、ぼやけている感じを受けた。

    また、キャベツを使った演出がちょっと・・・。

    ネタバレBOX

    キャベツを使った演出はこの作品のキーポイントなのだろうが、
    床の上の潰れたキャベツを見ると、何ともいえない気分に・・・。

    ※※「使用後は関係者一同で美味しく頂いております」※※とのことだが、

    「食べ物を粗末にするな!」、「食べ物で遊ぶな!」と言われ育った私としては、演劇表現上とはいえ、ビミョウなところ。

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