
東海道四谷怪談
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2015/06/10 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了
黒衣が活躍する舞台作品
物語構成や音楽面などいろいろあるとは思いますが、スタイリッシュで挑戦的な演出が目立つ、また、後見としてのそして大道具としての黒衣が大いに活躍していた舞台作品という印象を受けました。

三人吉三
木ノ下歌舞伎
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/06/13 (土) ~ 2015/06/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
EDOとTOKYO
百両の金をめぐる因果の糸で結ばれた登場人物たちを緻密な構成で描いた黙阿弥の世話物ですが、原作戯曲を十分リスペクトしながらも緩急をつけわかりやすく現代性も取り入れた切り口で俳優陣の熱演も含め総力をあげて見事に再構成していた舞台作品になっていたと思います。
最期の場面や復活させた「地獄の場」の上演の仕方にはいろいろあるとは思いますが、廓話も含め、黙阿弥の原作にほぼ沿った形のものを通しで今回観ることができたのはたいへんよい機会でした。
上演時間は途中15分、25分の2回の休憩を含め約5時間(本公演は多少の変更の可能性あり)。

鑪―たたら (残席僅か)
劇団青年座
青年座劇場(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
K市の今昔物語
鋳物で有名なK市を舞台にその今昔を扱った物語ですが、緩急が絶妙な構成のうまさとセリフのうまさを兼ね備えた戯曲、繊細な感性でその機微までくみとり見事に立体化した演出、俳優陣の意気込みががっちりとかみあい、キュポラからほとばしる溶湯のように、不器用にしか生きられない男たちの熱い思いがひしひしと伝わってくる作品になっていて、特に劇作家と演出家の相性というか組み合わせがとてもうまくあっている印象を受けました。
テーマの一つでもあるものづくりは舞台作りにも通じており、劇団創立60周年記念公演の締めくくりとしてとてもふさわしい作品をもってこられたのではないでしょうか。
上演時間は途中休憩無しの約2時間。

悲しみよ、消えないでくれ
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2015/01/23 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
冷徹なまなざし
ことばだけでなく練り込まれた構成にもとづく演出で、生きている人間の現在、
欺瞞、傲慢、あさましさといったものが次第にあぶりだされてゆく過程が実に
緻密に描かれている。
モダンスイマーズの作品特に混迷低迷期の作品群などでは、作品によっては
こちらの心にうまく届かずなにかもやもやした感じが残るのだが、今回は、
自分の鑑賞眼という普通のカメラでもその焦点近傍に入ってくる、かつての
勢いをかなり取り戻してきているような蓬莱節が見事に炸裂している作品。

夜と森のミュンヒハウゼン
サスペンデッズ
吉祥寺シアター(東京都)
2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

みえない雲
ミナモザ
シアタートラム(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
本との出会いと考え続けることの難しさ
細かいところをあげればいろいろあるとは思いますが、原作の持つよさを損なうことなく活かしながら私(=瀬戸山さん)のドキュメンタリー的な要素を加味した構成力のバランス感、随所に見られる演出の工夫が冴え渡っていた舞台作品でした。上演時間は約2時間25分(休憩無)。

桃色家族
桃と団地妻
Gallery & Space しあん(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
会場の雰囲気とよく合っていた作品
紡ぎ出される物語世界が会場の古民家の佇まいとよくマッチしていていい雰囲気を生み出していました。上演時間は約2時間(休憩無)。

汽水域
てがみ座
シアタートラム(東京都)
2014/11/28 (金) ~ 2014/12/06 (土)公演終了
新たな作劇への旅立ちの決意ともとれる作品
ここしばらく続いた評伝劇スタイルを離れ新たなテーマ、モチーフを求める作劇へ旅立とうとする作者の並々ならぬ決意の表れともとれる舞台作品のように感じました。新作についてはしばらくは模索の旅が続くような予感がします。

『さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』
渡辺源四郎商店
にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)
2014/11/28 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了
満足度★★★★
プロアマ混成のお手本のような舞台作品
プロ(劇団員、客演)とアマ(高校演劇部員)の混成で演劇を行う場合の手本の一つといえるようなとてもバランスがよくとれていた舞台作品だったと思います。

トーキョー・スラム・エンジェルス
Théâtre des Annales
青山円形劇場(東京都)
2014/11/14 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了
資本主義経済の行く末
人間に本来備わっている思考や行動のクセから自然と発生してきたとするprimitiveなところから経済を説き現代資本主義経済の来し方行く末を扱っていますが、あくまで人間中心の物語でした。この先資本主義経済は衰退、消滅も含めどのような方向へ向かうのでしょうか。

よるべナイター
FUKAIPRODUCE羽衣
青山円形劇場(東京都)
2014/10/30 (木) ~ 2014/11/02 (日)公演終了
代打ver
妙ージカルも演劇の一つのスタイルだということがなんとなくわかりました。約1時間50分のほとんどの時間役者の皆さん歌って踊っているので相当大変ですが、観る方としても円形劇場の囲いの中で、否この球場で発散されまくる剛速球並みのあの熱気とパワーをスタンドでキャッチャーのごとくじっと座りながら受け止め続けるのはかなりしんどかったです。

近未来能 天鼓
文学座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2014/10/24 (金) ~ 2014/11/02 (日)公演終了
満足度★★★★
テンコ病
国家による高度な情報操作の行き着く先にある人民の有様は...という近未来的なそしてミステリー色もある一種の寓話劇と呼べる作品。ストーリー構成にやや無理がかかったかなという感はありましたが、開帳場のシンプルな舞台上で、能の所作や様式などの要素を随所に取り入れながらもスリリングな物語が展開する、伝統的な面と斬新的な面を併せ持った(美術衣装の点でも)とてもcoolな舞台作品になっていたと思います。

出演者総勢27名!地の乳房
劇団青年座
紀伊國屋ホール(東京都)
2014/10/24 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了
満足度★★★★★
青年座らしさが存分に出ていた重厚な作品
若狭の一寒村で大正から昭和を生きた女主人公 愛をとりまく家族の物語。紀伊國屋ホールはこんなにも広かったのかと改めて気づかせてくれるほど空間全体をめいいっぱい使った演出が特徴的で、特に俳優陣の演技力の高さで青年座らしさが存分に出ていた舞台でした。ラインナップとしてもAct3D公演の新鮮さの後で青年座のtraditionalな面でのポテンシャルの高さをうかがわせてくれる見応えのある作品をもってきたと思います。上演時間は約2時間50分(15分休憩含)。

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉
劇団印象-indian elephant-
シアター711(東京都)
2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了
満足度★★★
コミュニケーションの階層性
舞台の高さの問題や演出面で、例えば、あそこでなぜ踊りだすのかといった疑問が残るところはありました。しかし、シンプルな物語構成の中で、匂衣と記憶の介在を前面に押し出して、いわばコミュニケーションレベルの階層性といったものを観る者に強く意識させてくれる見事な舞台作品だったと思います。

「ダム」
メメントC
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了
満足度★★★★
ダム建設事業をめぐる人々の物語
ダム建設事業をめぐる人々の、特に、建設予定地にある民宿を経営する女主人公の母娘二代(三代?)の関わりを軸とした物語ですが、きちっとした構成のもとで骨がありながらドラマ性豊かな見応えのある作品になっていたように感じました。また、本格的な舞台セット、力のある俳優陣の演技、山の息吹を感じさせてくれる凝った演出も見所になると思います。

御ゑん祭
バンダ・ラ・コンチャン
青山円形劇場(東京都)
2014/10/09 (木) ~ 2014/10/13 (月)公演終了
満足度★★★★
構成のよさが際立つユニークな企画公演
近藤さんの独り舞台の感もありましたが、各々20分の短い持ち時間にエッセンスが凝縮されたあれだけカラーの異なる劇団の作品群をその持ち味を損なうことなく全体として一つの作品にまとめ上げてきたその構成力の手腕が際立っていた、演劇ならではの醍醐味満載のユニークでおもしろい企画公演になっていたと思います。

落伍者。
ラチェットレンチF
Route Theater/ルートシアター(東京都)
2014/09/26 (金) ~ 2014/09/30 (火)公演終了
満足度★★★★
絶妙な距離感で紡ぎ出される孤高の男の生き様の物語
筋立てにやや粗さと強引さはありましたが、物語というか現実の話と落語の世界が適度な距離感で重なり合いながら謎解きも含めて絶妙な展開でみせてくれた、変わり者の天才落語家の生き様の物語だったと思います。

初萩ノ花
演劇集団円
ステージ円(東京都)
2014/09/19 (金) ~ 2014/09/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
作者の、人に対する鋭いながらも優しいまなざしと繊細な感性を感じさせてくれる作品
衝突して傷ついたり、ごまかしたり、癒し癒されたりしながらどう生きてゆくのか、人の営みの根本的なところを鋭くとらえると同時にどこか心に痛みや傷を抱えながらも不器用で実直に生きている人へ向けるまなざしの優しさ、温かさがじわっと伝わってくる作品です。笑って、少しほろっとして、誰もが普段は恥ずかしくて人前ではさらけだせないような屈折した思いや心のもやもやしたものを登場人物がぶちまけてくれることで、観ている者の傷が癒されたり心の重荷が少し軽くなったりしてencourageしてくれているようにも感じました。
また、普通の何気ない会話で交わされるせりふ、照明による一日の移ろいの表現や季節感のある作品作りなどから作者の繊細な感性をうかがい知ることができる作品という印象も受けました。

サバイブ!
自転車キンクリーツカンパニー
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2014/09/13 (土) ~ 2014/09/21 (日)公演終了
満足度★★★★
互いの自立へ向けて一歩進み出そうとする母娘の物語
お互いに過保護ぎみで自立できない母娘がそれぞれ自立へ向けて一歩踏み出し始めようとする物語ですが、わかりやすくやんわりとじわじわくるタッチで主人公の家族やその周辺がうまく描かれていました。母親に対して気が弱くて優しく優柔不断なところがある主人公の長女役を歌川さんがその雰囲気をうまく出して演じられていたと思います。上演時間は約1時間50分です。

マナナン・マクリルの羅針盤
劇団ショウダウン
シアター風姿花伝(東京都)
2014/09/05 (金) ~ 2014/09/07 (日)公演終了
満足度★★★★
一人語りのラジオドラマを観ているような感覚
一人語りの長編ラジオドラマに耳を傾けながら観ているような新鮮な感覚を持ちました。一つの物語を長時間続けるという様式上、語りの部分が多く単調ぎみになったり、語り部と多数の登場人物の役の間をめまぐるしく切り替わる際にぎこちなさが出てしまうところはありましたが、ハードなタイムスケジュールで公演を重ねる俳優の熱演が光るexciting performanceだったと思います。