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東海道四谷怪談

東海道四谷怪談

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2015/06/10 (水) ~ 2015/06/28 (日)公演終了

黒衣が活躍する舞台作品
 物語構成や音楽面などいろいろあるとは思いますが、スタイリッシュで挑戦的な演出が目立つ、また、後見としてのそして大道具としての黒衣が大いに活躍していた舞台作品という印象を受けました。

ネタバレBOX

 直助の筋の部分を大胆に削ったことでガタガタになり無理がかかった物語構成を美術衣装、装置、闇と光のコントラストを効かせた照明などを含めた演出のパワーで強引に押し切ったような形になっていたと感じました。

 第一幕で狭い空間に抑え込まれ溜まりに溜まった情念が第二幕で一気に解放されるのですが、その様がさまざまな仕掛けに反映されるかのようにダイナミックで斬新な演出手法に十分現れていたと思いますし、第二幕は第一幕で帰らず堪えて付き合って観てくれた観客に対するサービス精神の表れというかご褒美のような気もします。

 また、悪人としての格こそ違いますが「リチャード三世」のリチャードを思い起こさせるような場面構成や「マクベス」に出てくるバーナムの森を彷彿とさせる迫り来る壁などいろいろ連想をかきたててくれる刺激的な演出でもありました。

 黒衣といえば、現在上演中の「草枕」は、プロジェクションマッピングのような先端のものを取り入れながら同時に黒衣が活躍するようなレトロな手法もあったりと演出のバランス感覚がとても優れていたことを思い出しました。
三人吉三

三人吉三

木ノ下歌舞伎

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2015/06/13 (土) ~ 2015/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

EDOとTOKYO
 百両の金をめぐる因果の糸で結ばれた登場人物たちを緻密な構成で描いた黙阿弥の世話物ですが、原作戯曲を十分リスペクトしながらも緩急をつけわかりやすく現代性も取り入れた切り口で俳優陣の熱演も含め総力をあげて見事に再構成していた舞台作品になっていたと思います。
 最期の場面や復活させた「地獄の場」の上演の仕方にはいろいろあるとは思いますが、廓話も含め、黙阿弥の原作にほぼ沿った形のものを通しで今回観ることができたのはたいへんよい機会でした。
 上演時間は途中15分、25分の2回の休憩を含め約5時間(本公演は多少の変更の可能性あり)。

ネタバレBOX

 所作やセリフの節回しなどいわゆる歌舞伎のそれとはやや違いますが、
「大川端庚申塚の場」での「月もおぼろに白魚の」から始まるお嬢吉三の七五調の名科白などももちろんあり、幅広い層の方に楽しめる作品になっていると思います。
 今回の「三人吉三」だけでも台本構成や演出の仕方次第で、つかこうへいさんの「熱海殺人事件」ではありませんが、数多くのヴァリエーション作品を生み出せるのではないかという可能性を強く感じさせてくれました。
 第ニ幕最初の「地獄の場」は観客にとってはほぼ息の抜き所になっていて(逆に俳優陣は大変ですが)どうなるのかとおもってみていましたがきちんと本筋に戻ります(武井壮似の小林の朝比奈、例えば山本か中屋敷を呼んでおけばよかったといった内輪ネタ、じゃん拳ならぬ地獄拳など笑いどころには事欠きません)。
 また、幕末である当時の退廃的な世相と今の世相を絡ませる演出、特に最後の場面のところなどは蜷川演出の影響が少なからずあるのかなという印象も受けました。

 いわゆる古典あるいはそれに近いものを今の視点から再構築してみせてくれる作品は、シアタートラム「草枕」が現在上演中でこれも素晴らしい作品だと思います。
 また、今週はシアターウエストでは「三人吉三」、シアターイーストでは「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」という魅力的で強力なラインアップがそろって上演中です。
鑪―たたら (残席僅か)

鑪―たたら (残席僅か)

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2015/03/20 (金) ~ 2015/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

K市の今昔物語
 鋳物で有名なK市を舞台にその今昔を扱った物語ですが、緩急が絶妙な構成のうまさとセリフのうまさを兼ね備えた戯曲、繊細な感性でその機微までくみとり見事に立体化した演出、俳優陣の意気込みががっちりとかみあい、キュポラからほとばしる溶湯のように、不器用にしか生きられない男たちの熱い思いがひしひしと伝わってくる作品になっていて、特に劇作家と演出家の相性というか組み合わせがとてもうまくあっている印象を受けました。
 テーマの一つでもあるものづくりは舞台作りにも通じており、劇団創立60周年記念公演の締めくくりとしてとてもふさわしい作品をもってこられたのではないでしょうか。
 上演時間は途中休憩無しの約2時間。

ネタバレBOX

 舞台空間の使い方が見事です。さらに、登場人物の設定や配役がよくできており(例えば、石母田さんの一人二役のキャスティングの効果など)、特に東京オリンピックの聖火台を作った鋳物職人の親子の逸話を新派風の劇中劇でみせた際の山路さんと山本さんの夫婦役のやりとりはめったにみることの出来ない必見の場面だと思います。




悲しみよ、消えないでくれ

悲しみよ、消えないでくれ

モダンスイマーズ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/01/23 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

冷徹なまなざし
 ことばだけでなく練り込まれた構成にもとづく演出で、生きている人間の現在、
欺瞞、傲慢、あさましさといったものが次第にあぶりだされてゆく過程が実に
緻密に描かれている。
 モダンスイマーズの作品特に混迷低迷期の作品群などでは、作品によっては
こちらの心にうまく届かずなにかもやもやした感じが残るのだが、今回は、
自分の鑑賞眼という普通のカメラでもその焦点近傍に入ってくる、かつての
勢いをかなり取り戻してきているような蓬莱節が見事に炸裂している作品。

ネタバレBOX

 コの字型に舞台を囲む座席配置になっていて、席によっていろいろみえ方も違ってくるかもしれませんが、現代口語演劇の手法も取り入れられていて随所に工夫の凝らされた演出舞台でした。
 また、男達の情けなさ弱さが徹底している分(ハイバイの「おとこたち」に出てくるおとこたちもすさまじかったですが)、女達の強さ適応力といったものが対照的に自然と際立ってくる作りになっています。特に、問題の男の元恋人の妹(この物語のいわば隠し球というか切り札的存在)の内面的なまなざしが実は極めて冷徹で、人間の虚無と闇の世界を見つめた紫式部のあの冷徹なまなざしにどことなく重なるところがあるような気もしました。


夜と森のミュンヒハウゼン

夜と森のミュンヒハウゼン

サスペンデッズ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/01/24 (土) ~ 2015/02/01 (日)公演終了

満足度★★★★

人の心の闇の深い広がり
 一筋縄ではいかないやっかいな代物である人の心の闇の深さや広がりといったものを実にうまく扱っていた作品だと思います。

ネタバレBOX

 女主人公が心の底に潜り夢と現実が交差しながら展開する凝った構成や登場人物の配置配役(アユミとサキ、クロ以外は対をなす一人二役など)が表層と深層を行き来する人の心の複雑さを表しているようにも感じられました。
 同様に人の心の奥底を扱った最近の作品としては、趣きは異なりますが、、例えば、モダンスイマーズの最新作「悲しみよ、消えないでくれ」は、雪深い山荘を舞台に死を巡って現実に追われ生きている人間の欺瞞や醜さが露呈してゆく様が実に緻密にうまく描かれていたのが深く印象に残っています。




みえない雲

みえない雲

ミナモザ

シアタートラム(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★★

本との出会いと考え続けることの難しさ
 細かいところをあげればいろいろあるとは思いますが、原作の持つよさを損なうことなく活かしながら私(=瀬戸山さん)のドキュメンタリー的な要素を加味した構成力のバランス感、随所に見られる演出の工夫が冴え渡っていた舞台作品でした。上演時間は約2時間25分(休憩無)。

ネタバレBOX

 大事なことはなかなか見えてこないからこそ、しっかり自分の目でみて自分の頭で考えなければいけない。しかしそれをせず他人事として無知、無関心に徹しさらに他人にその判断を丸投げにしてしまう人々がいかに多いか、その憤りが最後の場面に集約され実によく表れていたと思います。
 また、ほとんど何もない広い舞台上で、それぞれメインの役以外に何役もこなし小道具のセットも行い縦横無尽の動きをされていた役者の皆さんは大変だったと思いますが、それによって舞台に躍動感のようなものが生まれていました。
 「ことばは発した瞬間から腐ってくだらないものになってゆく」というせりふにもあるように、世の不条理に何もできない自分に腹を立てことばの無力さに絶望しながらも自分には物語を書き続けることしかできないという私(=作者)の頭の中の葛藤をストレートにぶちまけて表現していた陽月さんの好演が印象に残りました(やや作りすぎの感はありましたが)。
桃色家族

桃色家族

桃と団地妻

Gallery & Space しあん(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

会場の雰囲気とよく合っていた作品
 紡ぎ出される物語世界が会場の古民家の佇まいとよくマッチしていていい雰囲気を生み出していました。上演時間は約2時間(休憩無)。

ネタバレBOX

 粗さがある展開と強引なエンディングではあったものの物語の方向性はよかったと思います。ただ全体としての演技力が物語にあともう少し追いついていれば作品がさらによくなっていくのではという印象を受けました。
 会場の古民家は庭もついていて趣がありなかなかよいのですが、観客側からみると、会場に合った作品の選定や上演時間の設定、用意する客席の高さや配置、演出面での工夫などが相当必要で、この会場を使いこなすのはかなり大変とも感じました(今回は観客の裁量で客席の方向等を周りの方の邪魔にならない範囲内で変えてもよいというアナウンスがありましたが)。そういう意味では、会場は違いますが、例えば、みそじんさんのお座敷公演「ドアを開ければいつも」は会場としての座敷を演出的にもうまく使っていました(ただ客席の方はやはりかなりきつい体勢になりましたが)。
 また旗揚げ公演ということなので当日パンフに役者さんの名前だけでなく配役も載っていれば役者さんの名前と顔が一致して初めての方にも優しくありがたかったのではと思います。
汽水域

汽水域

てがみ座

シアタートラム(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/12/06 (土)公演終了

新たな作劇への旅立ちの決意ともとれる作品
 ここしばらく続いた評伝劇スタイルを離れ新たなテーマ、モチーフを求める作劇へ旅立とうとする作者の並々ならぬ決意の表れともとれる舞台作品のように感じました。新作についてはしばらくは模索の旅が続くような予感がします。

ネタバレBOX

 長田さんの戯曲は長田さんの生真面目さがそのまま戯曲に出てしまい(このこと自体は美点なのですが)ややもすると一本調子になりがちになるところがあり、息の抜きどころがあまりなく緊張感を常に高く保つため観ていて疲れることがあります。肩の力を抜き緩急の落差をもっと大きく効かせた遊び心というかゆとりの要素が加われば、さらによりよい戯曲にそしてレパートリーの幅が広がることにもつながるのではと思います。
 また、長田さんのアイデアなのか扇田さんのなのかはわからないのですが、最初のほうの場面で賭け将棋もとい賭けチェスで紛失したクイーンの駒の代わりにメトロン星人のフィギュアが使われていた(かなり前方の席から観ないとはっきりわからないかもしれません)のにはニヤッとしてしまいました。ナベゲンの畑澤さんの「さらば!原子力ロボむつ」でもそうですが、演劇の方でもウルトラシリーズのファンは結構いるようです。
『さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』

『さらば! 原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』

渡辺源四郎商店

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2014/11/28 (金) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★

プロアマ混成のお手本のような舞台作品
プロ(劇団員、客演)とアマ(高校演劇部員)の混成で演劇を行う場合の手本の一つといえるようなとてもバランスがよくとれていた舞台作品だったと思います。

ネタバレBOX

 演出もさることながら、台本も、ヤマト、ロボットアニメ、ウルトラセブンなどからのマニア向けの小ネタを詰め込みながらもとても素晴らしい出来ばえだったと思います。
 また余談ですが、畑澤さん扮するダース・ヴェイダー似の将軍はライトセイバーを握った途端やられてしまいみかけ倒しで弱すぎました。
トーキョー・スラム・エンジェルス

トーキョー・スラム・エンジェルス

Théâtre des Annales

青山円形劇場(東京都)

2014/11/14 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

資本主義経済の行く末
 人間に本来備わっている思考や行動のクセから自然と発生してきたとするprimitiveなところから経済を説き現代資本主義経済の来し方行く末を扱っていますが、あくまで人間中心の物語でした。この先資本主義経済は衰退、消滅も含めどのような方向へ向かうのでしょうか。

ネタバレBOX

 扱うテーマに関してprimitiveなところをベースにしている限り、ドラマとしては確かにわかりやすく面白いです。ただ、そこからさらに深く触れようとすると、観る側にも高度な専門知識が要求されたりまたテーマの重要概念がレトリックのごとく散りばめられるだけで本質を外れ表層的な扱いをされたりすることもあり、ドラマで扱うにはハードルが上がりすぎて困難になってしまうことが多い。風琴工房の「hedge」を観た時も同じような印象を受けました。
 やはり扱うテーマによっては、テーマとドラマとしての演劇との相性というか演劇の限界のようなものを感じざるを得ないような気がしました。



よるべナイター

よるべナイター

FUKAIPRODUCE羽衣

青山円形劇場(東京都)

2014/10/30 (木) ~ 2014/11/02 (日)公演終了

代打ver
 妙ージカルも演劇の一つのスタイルだということがなんとなくわかりました。約1時間50分のほとんどの時間役者の皆さん歌って踊っているので相当大変ですが、観る方としても円形劇場の囲いの中で、否この球場で発散されまくる剛速球並みのあの熱気とパワーをスタンドでキャッチャーのごとくじっと座りながら受け止め続けるのはかなりしんどかったです。

ネタバレBOX

 代打verの意味が最初よくわからなかったのですが、9回裏FUKAIPRODUCEの攻撃で本当に代打が出てきてホームランをかっ飛ばしてようやくわかりました。代打はFさんでした。
近未来能 天鼓

近未来能 天鼓

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/11/02 (日)公演終了

満足度★★★★

テンコ病
 国家による高度な情報操作の行き着く先にある人民の有様は...という近未来的なそしてミステリー色もある一種の寓話劇と呼べる作品。ストーリー構成にやや無理がかかったかなという感はありましたが、開帳場のシンプルな舞台上で、能の所作や様式などの要素を随所に取り入れながらもスリリングな物語が展開する、伝統的な面と斬新的な面を併せ持った(美術衣装の点でも)とてもcoolな舞台作品になっていたと思います。

ネタバレBOX

 上演時間は休憩無しの約2時間。
 近未来能ということで、区切りのときに舞台前方の床面に序、破、急の文字が投影されているようにみえたのですが、照明がちかちかしすぎてどうもはっきりしませんでした。
 サザンシアターでの一つ前の劇団民藝の公演「コラボレーション」も舞台は開帳場のシンプルな舞台だったことをふと思い出しました。
 ホールの方では青年座の「地の乳房」がちょうど上演中で、今ならホールとサザンシアターで老舗劇団のまったくタイプの異なる舞台作品を観ることが出来ます。

出演者総勢27名!地の乳房

出演者総勢27名!地の乳房

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2014/10/24 (金) ~ 2014/11/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

青年座らしさが存分に出ていた重厚な作品
 若狭の一寒村で大正から昭和を生きた女主人公 愛をとりまく家族の物語。紀伊國屋ホールはこんなにも広かったのかと改めて気づかせてくれるほど空間全体をめいいっぱい使った演出が特徴的で、特に俳優陣の演技力の高さで青年座らしさが存分に出ていた舞台でした。ラインナップとしてもAct3D公演の新鮮さの後で青年座のtraditionalな面でのポテンシャルの高さをうかがわせてくれる見応えのある作品をもってきたと思います。上演時間は約2時間50分(15分休憩含)。

ネタバレBOX

 水上節炸裂の悲哀に満ちた波瀾万丈といっていい主人公やそのまわりの人々の人生をとても丁寧に描いており、最初はもたつき感のようなものも感じたのですが、丁寧に描くことで実は知らず知らずのうちに観る者の心にじわじわと、後半の見せ場となる原発論議の終盤で愛が発することばが大いに重みと説得力をもって届いてくる、細部も含め全体的な流れといったものが非常にうまく演出されていた舞台であったようにも感じました。


匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

匂衣(におい) ~The blind and the dog~〈当日券あり!〉

劇団印象-indian elephant-

シアター711(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★

コミュニケーションの階層性
 舞台の高さの問題や演出面で、例えば、あそこでなぜ踊りだすのかといった疑問が残るところはありました。しかし、シンプルな物語構成の中で、匂衣と記憶の介在を前面に押し出して、いわばコミュニケーションレベルの階層性といったものを観る者に強く意識させてくれる見事な舞台作品だったと思います。

ネタバレBOX

 内容からいえばしゃがみこんでの演技がかなりの見せ場ということになるのですが、その肝心なところの演技(特に舞台前方での演技)が後方の席からだと舞台の高さが低すぎるため埋没してほとんどみえなくなっていました。いくらよい演技でも観客にみえなければなんの意味もありません。




「ダム」

「ダム」

メメントC

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2014/10/22 (水) ~ 2014/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

ダム建設事業をめぐる人々の物語
 ダム建設事業をめぐる人々の、特に、建設予定地にある民宿を経営する女主人公の母娘二代(三代?)の関わりを軸とした物語ですが、きちっとした構成のもとで骨がありながらドラマ性豊かな見応えのある作品になっていたように感じました。また、本格的な舞台セット、力のある俳優陣の演技、山の息吹を感じさせてくれる凝った演出も見所になると思います。

ネタバレBOX

 プレビュー公演での上演時間は休憩無しで約2時間20分でした。
 リーディングを拝見しておらず今回の公演ではどこがどのくらい変わったのかよくわからないのでなんともいえないのですが、最後はこうしめくくってきたかといえるエンディングでした。
 また、「鴎外の怪談」(現在、上演中。しげさんの倍返しは消滅しましたが。)でも話に出てきたドクトル大石を扱った「太平洋食堂」の再演が来年の夏に予定されていて、嶽本さんと藤井さんとのコンビの作品がまた拝見できるのが楽しみです。


御ゑん祭

御ゑん祭

バンダ・ラ・コンチャン

青山円形劇場(東京都)

2014/10/09 (木) ~ 2014/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★

構成のよさが際立つユニークな企画公演
 近藤さんの独り舞台の感もありましたが、各々20分の短い持ち時間にエッセンスが凝縮されたあれだけカラーの異なる劇団の作品群をその持ち味を損なうことなく全体として一つの作品にまとめ上げてきたその構成力の手腕が際立っていた、演劇ならではの醍醐味満載のユニークでおもしろい企画公演になっていたと思います。

ネタバレBOX

 轟天張りの先輩のアドバイス的な実況中継が印象に残るナカゴー作品はナンセンスワールド炸裂の舞台で、一撃でカオスをつくり出すその破壊力が衝撃的でしたし、現実世界から作品世界へそしてまた現実世界へとその揺れ動きの中へ観客を誘っていたチームオールドの自然体の演技は見事でした。
落伍者。

落伍者。

ラチェットレンチF

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/09/30 (火)公演終了

満足度★★★★

絶妙な距離感で紡ぎ出される孤高の男の生き様の物語
 筋立てにやや粗さと強引さはありましたが、物語というか現実の話と落語の世界が適度な距離感で重なり合いながら謎解きも含めて絶妙な展開でみせてくれた、変わり者の天才落語家の生き様の物語だったと思います。

ネタバレBOX

上演時間は約2時間です。
初萩ノ花

初萩ノ花

演劇集団円

ステージ円(東京都)

2014/09/19 (金) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

作者の、人に対する鋭いながらも優しいまなざしと繊細な感性を感じさせてくれる作品
 衝突して傷ついたり、ごまかしたり、癒し癒されたりしながらどう生きてゆくのか、人の営みの根本的なところを鋭くとらえると同時にどこか心に痛みや傷を抱えながらも不器用で実直に生きている人へ向けるまなざしの優しさ、温かさがじわっと伝わってくる作品です。笑って、少しほろっとして、誰もが普段は恥ずかしくて人前ではさらけだせないような屈折した思いや心のもやもやしたものを登場人物がぶちまけてくれることで、観ている者の傷が癒されたり心の重荷が少し軽くなったりしてencourageしてくれているようにも感じました。
 また、普通の何気ない会話で交わされるせりふ、照明による一日の移ろいの表現や季節感のある作品作りなどから作者の繊細な感性をうかがい知ることができる作品という印象も受けました。

ネタバレBOX

 上演時間は、約1時間50分です。
 また、長女役の谷川さんとフルート(正確には長女の娘が吹いているのですが)の組み合わせを観ていて、谷川さんが下田和歌代(通称ばかよ)役で出演されていたナミギン作品「サニー・コースト・セレナーデ」をなんとなく思い出してしまいました。

サバイブ!

サバイブ!

自転車キンクリーツカンパニー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/21 (日)公演終了

満足度★★★★

互いの自立へ向けて一歩進み出そうとする母娘の物語
 お互いに過保護ぎみで自立できない母娘がそれぞれ自立へ向けて一歩踏み出し始めようとする物語ですが、わかりやすくやんわりとじわじわくるタッチで主人公の家族やその周辺がうまく描かれていました。母親に対して気が弱くて優しく優柔不断なところがある主人公の長女役を歌川さんがその雰囲気をうまく出して演じられていたと思います。上演時間は約1時間50分です。

ネタバレBOX

 ローソンのお団子が人それぞれ好みが違うアイテムのひとつとしてうまく使われていました。
 新国立で上演された「鳥瞰図」では、親子、夫婦、姉弟などのいろいろな家族の間の関係が取り上げられていましたが、今回は主に母と娘の間の関係に話の焦点が当てられています。また、「鳥瞰図」で保険の営業員役だった弘中さんが今回は主人公の妹である次女役を好演されています。


マナナン・マクリルの羅針盤

マナナン・マクリルの羅針盤

劇団ショウダウン

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/05 (金) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

一人語りのラジオドラマを観ているような感覚
 一人語りの長編ラジオドラマに耳を傾けながら観ているような新鮮な感覚を持ちました。一つの物語を長時間続けるという様式上、語りの部分が多く単調ぎみになったり、語り部と多数の登場人物の役の間をめまぐるしく切り替わる際にぎこちなさが出てしまうところはありましたが、ハードなタイムスケジュールで公演を重ねる俳優の熱演が光るexciting performanceだったと思います。

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