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Too Young

Too Young

ワタナベエンターテインメント

紀伊國屋ホール(東京都)

2025/11/13 (木) ~ 2025/11/24 (月)公演終了

実演鑑賞

 心に何かしら屈折したものを抱え身動き出来ずにいた登場人物たちが
調査に関わっていくことをきっかけに自分の内面を掘り起こし向き合うことで
前向きに一歩を踏み出し始める物語。

 終盤、短時間ながら、90度程回転し横顔を覗かせ、存在感と象徴性で
観る者に訴えかけてくる廻り舞台のセットも効果的で秀逸。

存在証明

存在証明

劇団俳優座

シアタートラム(東京都)

2025/11/08 (土) ~ 2025/11/15 (土)公演終了

実演鑑賞

 上演時間は約2時間45分(途中休憩10分含)。

 リーマン予想が発表された1859年から50年後の1909年から
1977年頃を舞台に、二つの時代を往来交錯させる(この手の
演出にかけてはこの演出者はなかなかの演出巧者)構成で、
ミステリーも含め多様な要素を詰め込み過ぎ散漫気味ではあるものの、
ハーディ/リトルウッドを含め直接的間接的に彼らに関わる当時の
大英帝国人たちの姿や社会を活写している物語。

 演出者も含めサイエンスに理解のある、『インコグニート』の
かつての出演者が全員参加しており、演技面は万全の態勢。

 演出面では、場面に応じて3方向の寄木細工様の側面壁から立体ピースを
出し入れするようにセットを舞台上にピタッと出し入れする趣向は、
アイデアの着想や発想のひらめきを連想させ、物語との相性抜群で好印象
(俳優座スタジオとは違い、舞台裏というか舞台袖のスペースがある程度
とれるトラムという空間、装置の精緻な設計製作そして場面ごとに手早く
きちっとセッティングする裏方さんの高いスキルがすべて揃ったからこそ
できる芸当)。

 『アルカディア』、『インコグニート』、『ブレイキング・ザ・コード』、
『プルーフ』、『フォトグラフ51』、『アルキメデスの大戦』、
『ズベズダー荒野より宙へ‐』、『東京原子核クラブ』などの作品の
いいとこ取りをしつつ巧みな作劇構成力でまとめ上げてきたという感あり。
 well-definedでない、多義的な題名は何の存在(意義)証明かを明示していないので、
場面場面でその何のかを意識して観続けると山の頂に至る道筋が見えてくる
かもしれない(『ブレイキング・ザ・コード』での“ザ・コード”に相当する部分)。
 ただ、ミステリー部分は、prime number(s)に絡めた暗号解読に強引に
結び付けようとする意図が目立ち過ぎ比較的早い段階でおおよその謎が
みえてしまい、緻密さやエレガンスさとは程遠い、既視感のある仕掛けに
なってしまっている(このあたりは、最近久々の新作が出たダン・ブラウン
などはなかなかの名手)。
 盛り込み過ぎて話題が次々と移り発散してゆく中その回収に追われながら
到達点の、数学的証明とは何かを含むハーディとリトルウッドとの対話の場面に
収束させなければならないため、物語がドラマドラマし過ぎたものになり
かえって人工感が際立ってしまっている。また、海外戯曲でよくみられる
専門性にぐっと踏み込むことで生まれてくる深みや説得力という点でも脆弱。

 現在、我々の身の回りでサイバーセキュリティの一つとして利用される
RSA(公開鍵暗号方式での暗号化アルゴリズムの代表)などは、莫大な桁数の
数字を素因数分解することは現実的にスーパーコンピューターでも解読が困難
(劇中の双子の姉妹は別としても)という素数の特性を利用しており、
素数と暗号解読、暗号化技術、コンピューターとの結びつきの代表として、
劇構成的にも、バタフライ効果などよりこのあたりを物語にうまく組込むか
触れた方が、現代とのつながりという意味でも、数学(の有用性)が身近にある
ことがより親近感をもって観客に伝わったのではないだろうか。

ネタバレBOX

 数学者の登場人物は、ハーディ、リトルウッドのほかに二人。

 ハーディ、リトルウッドの教え子ということや現代の暗号化技術が
素数の性質を利用していること、また、コンピューター、AIへの萌芽につながる
物語展開ということもあり、リーマン予想とは直接関係ないにもかかわらず、
アラン・チューリングが登場する。また、二つの大戦をはさんでいることや
作者の個人的な思い入れが相当強いのか、特に終盤、例えば、純粋数学と
応用数学の相違に言及するところなど重要場面での出番が多くなる。
 さらに、数学における証明とは何かを観客側に示す役割も込めて、
インドの天才数学者ラマヌジャンも登場させている。
砂漠のノーマ・ジーン

砂漠のノーマ・ジーン

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2025/09/26 (金) ~ 2025/10/05 (日)公演終了

実演鑑賞

 内容と作品名の対応がやや不明なところはあるが、作品を拝見すると、
この作者は少なくともここ数年の名取事務所の上演作品群をよく
観劇されている模様。
 観るものを次第に前のめりにさせるニコラス・ビヨン張りの
スリリングな展開力やピンク地底人3号的な時空軸の巧みな操作術
などを駆使して、緻密な構成力の下、約1時間50分を駆け抜ける。
劇構造も重層的で、最近観た作品だと文学座の
『もうひとりのわたしへ』に近いものがある。

 ただ、その分、演じ分けは噺家同様に、
声色、しぐさ、顔(体)の向き、表情、言葉遣いなどを
巧みに使い分ける極度の技量が要求されるが、今回は、
十分観る側の想像力を刺激し、役柄が目まぐるしく
連続的にスイッチイングしている中にあってたとえ登場人物の声色が?
ということがあっても、観る側が活性化された想像力を働かせ
よく料簡しその不具合を乗り切れるだけの勢いやパワーが俳優側に
備わっていた気がする(今回は一人でのスイッチプレイだが、
以前トラムで上演された『レディエント・バーミン』では
確か昂進する目まぐるしさの中での二人のスイッチプレイの応酬だったか)。

 言語学者役の俳優の方もネイティブでないにもかかわらず
あれだけ英語のセリフが出てくれば立派で(それゆえ、英語が
あまり得手ではない者にもそこそこ内容が聴き取れるのだが)、
また、通常は日本語と英語の情報量の違いからどうしても
早送りになる日本語字幕の追従に気を取られ観劇がおろそかに
なりがちになるが、今回は俳優の演技を観つつ英語のセリフを
聴き取りながらなおかつ字幕で内容を再確認できる点で
オペレーターの方の字幕の送り方のタイミングも絶妙。

もうひとりのわたしへ

もうひとりのわたしへ

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2025/06/21 (土) ~ 2025/06/29 (日)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約1時間45分(途中休憩無)。

 演劇でラップといえば最近は杉原邦生演出作品という印象が強いが、
ラップとはかけ離れ真逆にあるイメージの文学座がそのラップを
劇中に本格的に取り入れ、果敢に挑んだ意欲作。

 恰好のタイミングで入るラップも様になっており、
また、抽象舞台美術などを含む演出面の影響もあってか、
この作者の作品としては洗練感があり、スマートな印象。
全体的に大林作品のSFファンタジー系パラレルワールドの
雰囲気をやや漂わせつつも、世界線の行き着く先にあるものは...
作品構造やテーマなどONEOR8での『かれこれ、これから』に
相通ずるものがある。というより、自他や時間軸の認識のゆらぎ、
混沌化、状態の重ね合わせにまでメタ的に踏み込んだことで、
さらにリープし作品がより深化している感すらある。

 最後は、近未来的装いの横田さん扮するスケール/大(役名)の
独擅場で、いいところをすべてもっていった印象あり。また、
途中はもちろんのことエンディング間際まで役者いじりの
小ネタや自虐ネタに近いセリフを放り込んでくるあたりも、
当て書き名手の作者らしさの表れか。

燃える花嫁

燃える花嫁

名取事務所

吉祥寺シアター(東京都)

2025/06/11 (水) ~ 2025/06/15 (日)公演終了

実演鑑賞

 今の世界の社会状況を的確に反映している作品。

 笑いというか息抜きの場の独特な筆致はいまいちな気はするものの、
最小限に削ぎ落した情報量での説明設定や時間軸を絶妙に操るあたりは、
クリストファー・ノーランのそれを彷彿とさせる。また、三年ほど前に
青年座に書き下ろされた『燐光のイルカたち』より戯曲のクオリティーが
向上している感あり。

 別の形で外国人との共生社会の在り方や外国人問題の底流に迫り、
民族としての日本人の未熟さやむしろその上をゆく在留外国人のしたたかさの
一面を垣間見せてくれた、北川大輔 作『未開の議場』とは、ある意味、
好対照の作品。

昭和から騒ぎ

昭和から騒ぎ

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2025/05/25 (日) ~ 2025/06/16 (月)公演終了

実演鑑賞

 小津作品の雰囲気漂う鳴門家の居間に掛けられてある額の書
「翁莎惟恩感」
は、翻案・演出者のさりげない、原作者や翻訳者等への
リスペクトの表れか(例えば、役名の付け方一つとってみても)。
 六割ほどそのまま原作翻訳の台詞を残して台本が構成
されている感触あり。

 ちなみに、翻訳者の方が、自らの新訳・作・演出で上演する公演活動
Kawai ProjectのVol.1で取り上げたのが、今回の原作『から騒ぎ』。

同盟通信

同盟通信

劇団青年座

新宿シアタートップス(東京都)

2023/10/13 (金) ~ 2023/10/22 (日)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約2時間10分(途中休憩無)。

 事実と真実との違い、記者の心得などにも言及しながら、
報道とは何か報道には何ができるのかを問いかけている力作。

六英花 朽葉

六英花 朽葉

あやめ十八番

座・高円寺1(東京都)

2023/08/05 (土) ~ 2023/08/09 (水)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約2時間15分(途中休憩無)。

明けない夜明け

明けない夜明け

演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2023/07/14 (金) ~ 2023/07/20 (木)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約2時間5分(途中休憩無)。

 タイトルは、ポジティブにとらえるかネガティブにとらえるかで
解釈が分かれる、
The night is long that never finds the day.
を想起させる。

 昨年上演された『白が染まる』を観劇していなくても当日パンフの
説明部分に目を通しておけば十分わかるし、もちろん観劇していれば
よりよくわかる作品になっている。ただ、当日パンフの人物相関図が
極めて小さく、明るいところで目を通しておこうかと思ったが、拡大
された人物相関図が別刷りでちゃんと入っており、観客への心配りに感謝。
ヒトミ役は、前作では確か高野志穂さんで、今作では宮田早苗さん。
ゴウ役は、引き続き奥田努さん。

 現在、東京芸術劇場では、プレイハウスでNODA・MAPが『兎、波を走る』、
イーストでserial numberが『スローターハウス』、ウエストで演劇企画集団Jr.5が
今作『明けない夜明け』と、各々が各々のアプローチで非常に重いテーマ題材を
扱った作品を上演中。

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)

劇団チョコレートケーキ

シアタートラム(東京都)

2023/06/29 (木) ~ 2023/07/16 (日)公演終了

実演鑑賞

 劇団が脚本演出等で参加した舞台版『アルキメデスの大戦』は
東宝演劇だが、その東宝の映画撮影所は世田谷区成城にあり、
円谷プロもかつて世田谷区砧にあって、また、今回の上演会場も
世田谷区ということで、奇しくも?同じ世田谷区つながりになっているが、
特撮絡みの作品は、畑澤聖悟さんが劇団民藝に書き下ろした
『光の国から僕らのために―金城哲夫伝―』以来久々。

 現在隣の世田谷パブリックシアターで上演中の『音楽劇 ある馬の物語』
と扱っているテーマに重なるところが少なからずあるが、作者の
着眼点と切り口は独自でさすがなもの。また、『ドキュメンタリー』
の時にも感じたが、演出者は小道具のさりげない使い方が上手く、
受話器の取り方置き方一つでその時その時の人物の内面を繊細に
観客に伝えるなど、上手と下手での電話機の使い方も効果的で好印象。
 ただ、題材が子供向け特撮番組ゆえムリスジなところがあるのも
1990年頃の話の設定というのも十分わかるが、それでも、特撮ものを
扱っているのに、怪獣が出ない、出せないや特撮ヒーローと怪獣との
格闘シーンがない流れでというのは、公共放送ならともかく民放での
放映を前提とすると無理のかかった劇構成の上、観ている方としても
もどかしさあり。

 特撮をもう少しという向きには、参考文献の他に、手っ取り早く
映像ドラマでというなら、年代などやや古いが、
TBS『ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟』(実相寺昭雄 原作 佐々木守 作)
NHK『私が愛したウルトラセブン』(市川森一 作)
などもある。
 『私が愛したウルトラセブン』では、初回最終回などいくつかの回の
シーンが一部ではあるが劇中で再現映像化されているだけでなく、
上原正三さんの未映像化台本の「300年間の復讐」も一部だが映像化
されていて、ドラマの流れの中で重要な役割を担っていた記憶あり。
 たいていの差別偏見に見受けられるが、差別を受ける側に差別を受ける
何かがあるわけではなく、差別する側が時代時代で都合のよい理由を
恣意的意図的に捏造して差別が行われる。昨年2022年は水平社宣言
100年の年と共に住井すゑ生誕120年の年でもあり、また、確か毎年8月頃は
「人権 同和問題啓発強調月間」ということで、各地の自治体で
人権同和問題(部落差別)の正しい理解を促進するための啓発活動が
いろいろ行われていたはず。

Spring Grieving

Spring Grieving

PLAY/GROUND Creation

サンモールスタジオ(東京都)

2023/05/19 (金) ~ 2023/05/31 (水)公演終了

実演鑑賞

 上演時間は、
side-A 約1時間50分、
side-B 約1時間35分。
2作品観る場合、どちらからでもよいが、関連性はあるので、
時系列的には、B→Aが自然。また、それぞれ完結しているので、
単独で観ることもできる。

 家族を真正面から扱った作品で、全体的にはやや抑えめで
静かなタッチだが、だからこそ、本音がぶつかり合うとき
その激しさが際立つ。

 作品の底流にある家族の喪失と再生というテーマが総合タイトルに
表されており、また、下手から上手に向かって伸びる桜も印象的。

ブレイキング・ザ・コード

ブレイキング・ザ・コード

ゴーチ・ブラザーズ

シアタートラム(東京都)

2023/04/01 (土) ~ 2023/04/23 (日)公演終了

実演鑑賞

 最近では、暗号解読がらみの作品は、パラドックス定数の
『Nf3Nf6』以来。今回の作品は、昨年、リバイバル上演された
『M.バタフライ』とモチーフ的に相通じるものがある。また、
舞台作品ではないが、サイエンスがらみでは、タイトルが似ている
『コード・ブレーカー 生命科学革命と人類の未来』は、
ウォルター・アイザックソンによる、ゲノム編集技術クリスパー・キャス9の
開発に携わった科学者ジェニファー・ダウドナが主人公のノンフィクション。

 辞書を引くと、"code"にはいろいろな意味があり、単に『暗号解読』
とはできないため、原題"BREAKING THE CODE"をそのまま邦題
『ブレイキング・ザ・コード』にしているのかもしれない。
アラン・チューリングはコード・ブレーカーとして描かれるわけだが、
"THE CODE"にメタファーとしてのコード破りの意味合いが
どれくらいの数込められているのかなども含め、観劇中でも観劇後でも
劇中に隠されたコード探しにトライしてみるのも一興。例えば、
"code"を"genetic code"ととれば、劇中に出てくるモミの実のかさの
螺旋の並びの数のパターンがフィボナッチ数になっている話も含め
生物の形態形成の話題や最後の場面にリンクするといった具合になる。
 また、天井からつり下げられ規則的に並んだ直管蛍光灯(LED灯)は、
作動音も伴って適宜オン・オフすることで、第1世代(真空管式)
コンピューターの作動を連想させるだけでなく、電気信号が
脳内神経回路に流れることで生み出されるイメージが
寄木細工模様似のパネル等のセットを含む舞台上に次々と
投影されそれを観る者が目の当たりにしているという幻覚をも
抱かせる心憎い仕掛けとみることもできる(もちろん、
脳=コンピューターというたとえが必ずしもあっている
というわけではないが)。

 ポーランドでマリアン・レイェフスキらが解読機ボンバを駆使して
軍の暗号解読機関ではじめてエニグマ暗号機の解読に成功したものの、
そのアップグレードに伴い予算と人手が不足をきたしてきたため、
連合国と協同で事に当たることになり、それまでに蓄積したエニグマの
解読技術などのデータがイギリスのGCCSに提供され、これをもとに
アラン・チューリングらのグループは、エニグマ・コードの解析を
行った経緯がある。
 また、この作品で触れられていたか記憶が曖昧だが、
GCCSでは、他に、ローレンツ暗号を解読するための
電子式解読機『コロッサス』の開発なども行われていた
(エニグマ暗号では、機械式解読機『ボンベ』)。

 情報機関絡み(これ見よがしに紙の空袋を二度も靴で踏みつぶす
ジョン・スミスはMI5か)なのもスパイ小説の本家のイギリスの
知識人階級好みな気がする。ただ、ドイツ軍が誇るエニグマ・コードを
いかにして解読したのか、スリリングで面白くなるはずの肝心な部分が
ほとんど拍子抜けの扱いで、これを知りたくて観に来た方は肩透かしを
食らう(これも、観客の予想期待を裏切るという意味では、コード破りの1つか)。
もっと知りたければ、例えば、ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
などを観てくれということなのかもしれない。

 ところで、聴き違いなら大変申し訳ないが、確か、第一幕の
チューリングとノックスとの会話の場面での、チューリングのことば
「…物理学者が原子の分裂を発見したのと同じです。…」
での「原子」は「原子核」では?

 ちなみに、いささか心もとないが、わたくしの記憶が確かならば、
『ブレイキング・ザ・コード』はセゾン劇場との提携で
劇団四季創立35周年記念公演の一環として地方公演も含め行われ、
再演もあったか。今回は新訳だが、翻訳は吉田美枝さん、
演出は浅利慶太さん、アラン・チューリング役は日下武史 さん、
パット(パトリシア)・グリーン役は五十嵐まゆみ(岡まゆみ)さん
だったような。翻訳、演出、主演は、上記の『M.バタフライ』
と同じ方々。

聖なる炎

聖なる炎

俳優座劇場

俳優座劇場(東京都)

2023/02/26 (日) ~ 2023/03/04 (土)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約2時間35分(途中休憩含)。

 適材適所のキャスティングの妙があり、
理性や論理だけでは割り切れない人間の本質の部分を
鋭く突くと同時にサスペンス劇というか推理劇的な要素も
織り交ぜ観る者の興味をぐっと惹き付ける
巧みな物語展開が冴える会話劇。

桜姫東文章

桜姫東文章

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了

実演鑑賞

上演時間は約3時間15分(15分休憩含)。

 半ば廃墟の和洋折衷の公衆浴場を芝居小屋に見立て、そこに集った
芝居好きだが演技はずぶの素人?の今風の若者たちが歌舞伎の真似事をしている。
浴槽と洗い場のある浴室辺りを(「黒御簾」や「床」に当たる所も含め)舞台、
脱衣所辺りを待機中の役者が後見や観客役を兼ね見物休憩する袖兼客席、
その間付近を引幕で仕切ってできた大まかな劇場空間で起こっている
芝居も含めた出来事を悉く隅から隅まで、実際のお客さんが客席から
観察しているという二重構造meta構造の仕掛けが施されているとみるのが
素朴な観方か(従って、幽霊が出るのもあり、待機中の大向こう?の
観客役の役者から舞台上で奮闘中の役者へ、例えば、べにヤ、いなげヤ、
ダルメシアン、セカチューもといセケチュー、ニコイチ、待ってました、
久しぶりなどと掛け声がかかるのもあり)。

 古典歌舞伎へのリスペクトも込め話の内容がよく分かるように
創意工夫されている演出。ただ、これまでの木ノ下歌舞伎でよくみられた、
つかこうへい芝居張りの多少のムリスジも押し通すあの勢い、熱量、
テンポのよさ、躍動感や高揚感に溢れた作品からはかけ離れるが、
その分、各場面に応じてreal実観客との適度な距離感の調節が行われていて
(ただ、終盤になるにつれこの制御が利かなくなりつつあるが、意図的か)
どちらかというとフラットでコンパクトな作りになっている。
 これまでをdynamic動的とするなら、今回は全体としてはむしろ
static静的に近い作品という印象あり(もちろん、いわゆる本来の歌舞伎に
比べればはるかに動的。静かな脱力系の『熱海』や『蒲田』を観ている
感覚に近い。ただ、深淵に沈み、また浮かばぬままの撃沈組が奏でる
健やかなBGMが終始耳に入ってきていたことも否定しないが)。

 注意深く観てきた方は、そういえば弟の松若丸はどうなった?
吉田家は?などと思うかもしれない。しかし、少なくとも公家の姫である
桜姫がジェンダーの縛りをこえ、これからの自分の運命は
自分で切り拓くといった自立意識、自我に目覚めたとするならば
(いかにも近現代的観点だが)、今回の幕切れ結末はそんなことは
どうでもいいことと物語っている気もする。

 また、細かいことで記憶が不鮮明なため間違っていたら申し訳ないが、
引幕の色柄が薄鈍色というかくすんだ白色から淡い青色へ開演時と終演時で
変わっていたような。町内の寄合の出席を渋る権助の出席への決め手が、
八百善の仕出し→なだ万の弁当
に変更されていたのには気づいたが。

カタブイ、1972

カタブイ、1972

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2022/12/15 (木) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約1時間40分(途中休憩無)。

千一夜

千一夜

ONEOR8

新宿シアタートップス(東京都)

2022/11/26 (土) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

上演時間は、約1時間55分(途中休憩無)。

ソハ、福ノ倚ルトコロ

ソハ、福ノ倚ルトコロ

演劇集団円

吉祥寺シアター(東京都)

2022/10/07 (金) ~ 2022/10/16 (日)公演終了

実演鑑賞

 『滝沢家の内乱』や『神遊(こころがよい)―馬琴と崋山―』などに続く、
『南総里見八犬伝』をめぐる、不屈の人、曲亭馬琴(滝沢興邦)と
その周囲の人々を描いた評伝時代劇の力作(小説では、山田風太郎の
『八犬伝』等あり)。

 世の中の情勢がどうであろうと、作品を世に出すということが
どれほど手間暇のかかることか、当時の読本の制作過程と
不要不急のものといわれる昨今の演劇作品の制作過程とが
自然と重なってみえてくる。
 作品というのは、一人の力だけで世に出せるものではなく、
幾人もの人たちの手による協働作業の賜物である。

 劇本体に、『八犬伝』の原文での劇中劇(読本の強靭な2.5次元舞台)を
織り交ぜながら話が展開してゆく(このあたりの構成は、山田風太郎の
『八犬伝』のそれに近い)が、そのタイミングと構成バランスは絶妙で、
グリフラの『かっぽれ!』シリーズ作品でみせたあの鮮やかな転換を
彷彿とさせる。『八犬伝』を完結させてもなお尽きることのない創作
意欲溢れる戯作者魂、気概をみせる馬琴のラストシーンも前向きで心憎い。

 ちなみに、題名は、『八犬伝』第四輯巻之一第三十一回の
「いにしへの人いはずや、禍福は糾縄の如し、人間万事往くとして、…」
からきているとおもわれるが、おおもとは、
「禍は福の倚る所、福は禍の伏す所なり」。

ガラスの動物園

ガラスの動物園

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2022/09/28 (水) ~ 2022/10/02 (日)公演終了

実演鑑賞

 シネマスコープ感のある舞台で、母親のアマンダに
相当焦点を当てているのが特徴的。

 戯曲の字面にとらわれず、人物の内面を反映させた
俳優のフィジカルな動きと照明が生み出す光と影の使い方の秀逸さ
が印象的な舞台作品。

 ただ、座席が千鳥配置になっておらず傾斜のほとんどない
前方中央寄りの席の方は、舞台床がやや低く舞台端での
座り芝居が多いため、字幕も含め観づらいシーンが
結構あるかもしれない。

M.バタフライ【福岡公演中止】

M.バタフライ【福岡公演中止】

梅田芸術劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2022/06/24 (金) ~ 2022/07/10 (日)公演終了

実演鑑賞

 上演時間は約3時間25分(20分休憩含)。

 男が生み出した女を愛してしまった男の、現実と幻想をめぐる
頭の中での回想の物語。

 また、タイアップでもないだろうが、7月8日~16日に、
新国立劇場オペラパレスで、劇場主催公演 
高校生のためのオペラ鑑賞教室 2022『蝶々夫人』が上演予定。

パンドラの鐘【4月25日~5月4日の東京公演中止】

パンドラの鐘【4月25日~5月4日の東京公演中止】

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2021/04/14 (水) ~ 2021/05/04 (火)公演終了

実演鑑賞

 上演時間は、約1時間50分(途中休憩無)。

 あまり奇をてらわず、真正面から戯曲に向き合う
姿勢に徹した演出が印象的な舞台作品。
 各々の役者が、戦争直前の日本と古代とをまたいで
ほぼ対応する役を交互に演じ分けながら話を進行させる
趣向は、二つの時代の単なる直線的な往来とは違い、
時間的渦のようなものを生み出し、観る者をスパイラルに
その中へ引き込み呑みこんでゆく作用あり。観ていて
おもしろいが、演じる側は負荷がかかり相当大変。

 初演時野田版でヒイバア役の野田さんも語り手として、
声のみだが出演。

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