みさの観てきた!クチコミ一覧

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愛獣-改訂版- 全公演日程無事終了いたしました

愛獣-改訂版- 全公演日程無事終了いたしました

MissPRs

サンモールスタジオ(東京都)

2010/02/03 (水) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

もののけ!
白いお面を付けた「かおなし」みたいな女が登場する。闇夜に瞬く獣のようだ。どうやらこの「かおなし獣」が物語の「愛獣」のようだ。しかしこの「愛獣」は一人という箪称ではない。それは心に潜む象徴なのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台はいつもの霧がかった怪しい世界。そこに「愛獣」が登場する。かつて獣でなかったころ、彼女は一人の男性を愛したのだった。しかし、男性が自分の元から去ってしまうと、愛に餓えた獣となって執拗に男性を追いかける。果てに「私以外を誰も見られないように目を、私以外誰も抱きしめられないように腕を、何処へも行けぬように足を切り落としてしまおう。」と呪いのような言葉を吐く。

一方で女に裏切られた咲田は女を殺して自分も死のうと考えナイフをポケットに忍ばせる。その途中、ジョニーと会い、ジョニーは咲田の行動を察して、自分の過去の出来事を話し始める。

そして、ジョニーの過去へと物語はトリップする。
ジョニーが幼いころ父が他界してからずっと母子家庭で育っていたがママの満ちあふれた愛情のおかげでジョニーは幸せだった。「美しく優しく非の打ちどころがない完璧なママが俺には眩しすぎた。」と話し始めるジョニー。
しかし、ジョニーの将来を考えたママが再婚した夫は暴力男だったのだ。ぶたれても「あなたのためなのよ。全てあなたのためなの。だって愛してるんですもの。あなたは私の全て・・。」とジョニーに言いながら耐えるママ。ママの愛を得られないことに心底苛立つ義父。ジョニーに対して特別な愛情を抱く義弟。これらの愛が重すぎたジョニーは盲目の愛が恐ろしくなって、逃げる。

少年ジョニーとママとの情景を白い衣装をまとったバレエで魅せる。美しい風景だった。少年ジョニーと美しいママとの繊細なシーンだ。やがて・・・カルメンのような動のダンスに変わっていく。

逃げたジョニーはなるべく人と深く関わらずに生きた。しかし、そんなジョニーにも明子という存在が深く関わってくる。明子はジョニーが油断しているうちにグングンとジョニーのアパートに押しかけ一緒に暮らすことになる。明子はジョニーの隙間にいつの間にか入り込んで、その隙間をせっせと均していく。この二人の生活風景がギャグなのだ。実に楽しい!コメディだ。

やがて、ジョニーは「これ以上俺に入ってこないでくれ!」と叫んで明子の元からも逃げてしまう。母の愛に素直になれず、義弟・ケンとも向き合えず、明子からも逃げてしまう。
そして、月日は流れて20年後、憶病で誰の気持ちも受け止められなかったジョニーはやっと明子のもとへ帰る決心をしたのだった。
「あの人たちは美しいと思った。俺は愛されるのが恐かった。自分が傷つくことが恐かった。自分自身が愛獣になってしまうのが恐かったんだ。明子を愛するがゆえに醜くなるのが恐かったんだ。」と、ジョニー。


この物語は一人の臆病な男が素直に愛情を受けられるになるまでを描いた本だ。不器用な少年が他者からの愛情を上手に受け止められないで、その愛情を重く感じてしまい、自分自身を外界から閉じてしまう。他人と接触する気のない閉じた気配を身にまといながらも、それでも温もりは欲しいと心底は思っている。この冷えた心を癒してくれたのが明子だ。ジョニーは天真爛漫の明子を想うだけで愛しさがあふれてくるのだと、20年もかけて気づくのだ。そして悟る。自分に必要なのは明子だと・・。
序盤、登場する「愛獣」はジョニーの中の「愛獣」だ。普通の人よりも深く人を愛してしまうジョニーは、愛する人を失うのが恐いのだ。失った後の喪失感が恐いのだ。いつまでもジクジクと傷ついた傷は癒されず膿となって心を支配されるのが恐いのだ。

素晴らしいと思った。ジョニー役の奥山は相変わらずちょっと病んだ屈折した男の演技が上手い。なんだろ?内からにじみ出るようなあのくすんだダークさは!(笑)  合間に入るダンスのシーンも素敵だった。そして何よりも、受け止める愛情の不器用さ加減が愛しいと思ったのだ。繊細な物語だ。



サイコパス 木村伝兵衛の自殺―熱海殺人事件―

サイコパス 木村伝兵衛の自殺―熱海殺人事件―

中央大学第二演劇研究会

東京アポロシアター(東京都)

2010/02/04 (木) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★

完成度高い!
申し訳ないけれど正直言ってあまり期待していなかった。しかし、そんな期待度を見事に裏切り、実に見事なエンゲキだった。惜しむらくは木村役の今永大樹の声が潰れてしまっていてバックミュージックに完全に負けて消されていたことだ。そして今永の歌の導入が中盤にあるのだが、これが本当にマズイ。完全に物語の流れを遮断していた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語はアルツハイマーの母とセックスをし、殺した木村部長刑事、そんな木村の愛人・水野婦人警官はフィラデルフィア症候群の木村部長を愛してやまなかったが、彼女自身も水野家に養子に出された過去を持つ。そして売春をしていた実の母親。一方で心理学者の榊原は神戸殺人事件のあの殺人鬼・榊原という過去を持ち少年院あがりだった。未だに心に闇を持ちどこか卑屈で尖った言葉を吐きながらも自分自身の闇をなかなか認めようとしないこの3人が熱海殺人事件の容疑者をとことん追いつめていくのだから、観ている観客は楽しくて仕方がないのだ。

この物語の見どころは、容疑者の切ないほどの過去、そして愛する母親から欲しかった愛情を見出せなかった時の落胆ぶり。一方で取り調べる立場の刑事らも病的なほど母親からの愛情を欲しているさまの深層心理の仕方に尽きる。しかし、彼らはそういったことを認めたくない。認めてしまうとその瞬間、自分を支えている何かがポキリと折れてしまいそうな逆にとがったものが刺さって抜けなくなりそうな、よくわからないけれど、とにかく「認めると負け」のルールが確かにあって、自分の気持ちの中で自分が被害者になったら、もう、全てがめちゃくちゃになってしまう。という空気感を見事に演じる。

立場は違う4人だが、暗い過去を持つ4人の心は終盤に向けて少しずつ繋がっていく。その繋がりは似た者同士がちっさく輪になって大きな圧力から身を守るような体制だ。しかしそんな抵抗も空しく、容疑者大山が殺されてしまうと、榊原も殺されてしまう。そして「母親からの妄想から逃れるには自殺しかない。」と榊原が予言していたとおりに木村は自殺してしまう。残された水野は養子の先の水野家の父親が指揮いる自衛隊によって、同じく殺害されてしまう。終盤、水野が司法に直訴をする。といっていた言葉だけが空しくさ迷う。

チャイコフスキーの導入音楽、真紅の薔薇を叩きつけるシーン、劇場いっぱいに広がるローズの香り、一気に妖艶になる雰囲気などの演出はほんとうに素晴らしい!そして何よりもキャストらのキャラクターの立ち上がり方が見事なのだ。他者から一歩足りとも譲れない完全なまでの立ち位置がきちんと確立されてて完璧なのだ。舞台はテンポよく一気に観客を引き込み、笑いどころも満載で飽きさせない。そして、こおろぎ兄弟の登場によって、会場は和み、一方で芝居の確信に迫っていく。終盤、長台詞を全く噛まないで演じた水野役の矢野由布子が実にいい。美しく聡明で芯が強く情の深い水野役を完全なまでに演じ切っていた。全ての出演者とスタッフに惜しみない拍手を送りたい。

アルトゥロ・ウイの興隆―それは抑えることもできる―

アルトゥロ・ウイの興隆―それは抑えることもできる―

ピーチャム・カンパニー

シアターPOO(東京都)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/08 (月)公演終了

満足度★★★

劇団合併後の一発目
平たくいえば、劇団サーカス劇場と劇団地上3mmとが合併して新劇団「ピーチャム・カンパニー」を設立したから、どんな空気感なのかが、ものすごく楽しみだった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

シアターPOOはとにかく狭い。しかし、その狭さにも関わらず観客は満杯状態だったから、一発目としては観客誘導数からして成功なのだと思う。

一方で、端っこに座らされた男女2人連れの観客の女性の方が「観えない、帰る!」と言ったと思いきや、連れの男性の意思も確認せずに出口へ向かう。その後を追いかけるように、「見えないんじゃ仕方が無いね。」って草食系の気弱な僕男が従う。つまり、彼らの、いあ、彼女らの関係が直球露呈されて楽しかった。もしかして、作られた芝居よりも、こんな現実的でリアルな情景のほうが楽しいのではないか?と思った。(失笑!)

さて、物語は殆どが説明にあるから今更解説する事は無い。シカゴを舞台にギャングが野菜市場を牛耳って汚職にまみれ、挙句は自分たちの利益の為に、昨日の友までをも殺しながらのし上がっていく、という筋。また、一方で司法で追及される場面になると証人を次から次へと消し去って、証人の家族や、ある人物に成りすまし、陰謀や巧みな罠を仕掛け、結果、民衆をも傘下に置いて支配してしまうという内争、紛争、暴力、偽善、裏切り・・・黒という黒真っ盛りの物語。

で、今までの劇団サーカス劇場の空気感は全く無い。ベタで解り易い芝居だ。キャストの演技も噛みかみはあったものの、存在感ばっちりで秀逸だったと思う。しかしながら、ワタクシは前回観た劇団サーカス劇場の「カラス」があまりにも良かったため、ってか、ああいった妖しげな独特の雰囲気が好きだったから、今回は、ちょっと不満が残ったんだよね。だからってギャングものを妖しい雰囲気には出来ないのかもしれないけれど・・。

Invisible/インヴィジブル 〈舞台写真の公開はじめました!〉 【無事終了いたしました!ご来場くだすったお客様、ありがとうございました。】

Invisible/インヴィジブル 〈舞台写真の公開はじめました!〉 【無事終了いたしました!ご来場くだすったお客様、ありがとうございました。】

一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド

d-倉庫(東京都)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白い!(^0^)
この劇団の公演って毎回、ちょっとエロい部分があるよね。だけれど、この微妙なエロさがいい。いあ、エロが好き!というのじゃなくて、このエロさが今回の公演でも必要不可欠なんだよね。湖泥を舞台にしたセットで、妖しいエロさ加減が絶妙の女体2つはレズビアンふうに白い太ももをあらわにゆっくりと転がりながら、くねる。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

序盤、妖しい女体が白い肌をあらわにして身悶えるシーンがある。まるでレズのごとく・・。この描写は由紀子と秋子だ。この二人の性的考え方がこの部分で表現され、以降ちょくちょく登場する。そんな嬉しくも(笑)、妖しい静かな場面から一転、消防団が湖底をさらう掛け声の場面への反転が上手い。流石だなー。。と心服する。こういった演出がほんと、素晴らしい。


横溝正史の「湖泥」といえば、もう誰でも読んだ事があると思うけれど、御子柴由紀子の義眼のインパクトがあまりにも強くて今でも記憶に残ってる。

磯川警部を訪ねた金田一は、磯川がある奇妙な失踪事件の捜査に関わっていることを知る。村の娘・御子柴由紀子は隣村の祭りのさなかに姿を消した。2日後、婚約者・浩一郎から由紀子に宛てた手紙と由紀子のサイフが相次いで見つかるが、そのどちらにも不審な点があった。そして義眼をくりぬかれて殺されていた由紀子は、いったい誰にどんな風に殺されたのか?この真相を探偵は暴いていくのだが、ここに登場する人物たちが、それぞれに人に言えない事情を抱えていたのだった。

その事情とは、御子柴由紀子の婚約者・浩一郎は志賀恭平(消防団長)の後妻と姦通をしていた。一方で由紀子は北神浩一郎(北神家の跡取り)と婚約する前には西神康雄(西上家の跡取り)の心を自分にひきつけ手玉に取っていたのだった。つまり美貌の由紀子はどちらに転んでもいいように策を弄していたのだ。西神家と北神家は村を二分する有力者だったが、由紀子への恋に破れた康雄は村の劣等性となってしまう。僻地で隔離された村の因縁とは実に根深いものなのだ。

そこに都会から逃げ帰ってきて自分の殻に閉じ篭ってしまった北神九十郎を、心身薄弱だといって相手にしない村民たち。村民たちが九十郎を無視し、見えない男として扱ったことが、この殺人事件の盲点だったことが暴かれる。不倫や暴行、姦通などを本人たちが必死になって隠そうとしていた事柄が九十郎だけには見えていたのだった。自分を相手にしなかった村人たちへの復讐の為に、由紀子と秋子を殺し、村全体に罪の烙印を押し付け、これから先も村の殺人事件が語りつがれるであろう状況を察して、九十郎は悪魔のように低く濁った野太い声を発っして「ざまあみろーー。」と叫ぶ。

ダムのようなセットでの芝居。だから傾斜は45度くらいある。そんな上でキャストらは、それぞれが独特な動きで魅せる。一徳会/K・A・G の何が好きって、この絶妙な動きと空気感だ。そこには説明できない、言い知れぬ深みがある。その光景は本当に村人たちが自分の業や欲望や羨望や妬みを露呈しながらも、村という見えないロープに縛られ悶絶する姿が見えるのだ。その人間らしい姿が滑稽で可笑しくて、それでいて嘲っているのだ。だから人間の心理を、内心を、見事に見透かしている側面もあり、愉快でしかたが無い。村人の罰と罪の意識はバックに設置された十字架が見守る。


 『F』

『F』

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/01/29 (金) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★

『F』Girl's ver.リーディングを観た!
観なければ良かった、と激しく後悔。前回観た端田と多田の二人芝居が切ない感情を表現した舞台だった。だからこちらも観ていて息苦しくなったほどだった。
ところが今回の後藤麻美&長野 海バージョンはワタクシが期待していた感情を重い蓋のようなもので封じ込める強引さがあった。それでもまだ出たがっている想いというしっぽを、「これが最後の最後!」なんて笑いながらいとも簡単に押さえてしまったのだった。

以下はネタばれBOXにて。

ネタバレBOX

脚本は同じ。しかし、めちゃくちゃだった。よくもまあ、これほどまでにふざけた言いあいが出来るものだと、二人の表情やセリフの語尾を反芻したほどだ。「小さい秋」を歌う場面でも、がっかり。音程が外れてて、しかも何の感情移入もない歌い方だ。薄っぺら。そして胸の奥が急に冷え冷えして、今までたしかにそこにあった何かがすうっと消えうせてしまう、そんな感じだった。そして落胆した。
ワタクシはもっと違うリーディングを観たかったのだ。違うふうに聞きたかったのだ。

ここでのアンドロイドはAを「あんた」と呼ぶ。そして自分を「あたい」
それだけで、はすっぱな感じだ。そして後藤麻美の声がやたら大きくてふざけてて、悲しい場面でもにやついてて、情緒もへったくりもない。要するに品がなく不躾でぶっきらぼうに元気すぎるアンドロイドだ。アンドロイドというより、ガンギャルみたい。そしてAも悲しいセリフの場面なのに、そんなギャルアンドロイドと視線を合わすたびに可笑しそうに笑う・・・笑う・・・笑う。
だから、Aが死んでもアンドロイドは「ふぅ~~ん。」って感じなのだ。それを受けて、ワタクシも「ふぅ~~ん。」って感じだ。つまり、Aに同情すら湧かないのだ。

キャラクターの設定が違うって思った。こんな情景は観たくはなかった。息をのむほどの感情のブレが欲しい。不意打ちのような絶望が欲しかったのだ。ボクシングの世界でいきなりとび蹴りを見舞われたみたいな衝撃。そして友情。・・・だから違う!、違う!って悲鳴をあげたかったけれど、その感情の輪はぎこちなくほどけて、なんだか空しかった。それで劇場から外に出て、雪をみて、ますます空しくなったのだ。

幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2010/02/02 (火) ~ 2010/02/04 (木)公演終了

満足度★★★★

コメディかと思いきや
かりそめの幸福感を表現した舞台だったりする。そのかりそめの幸福感は他人からみると、それって不幸じゃん。と思うのだけれど、本人にとっては昨日までの絶望を忘れる為には、そんなかりそめも、手段の一つなのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

谷が何とかまとめて1本の長編にした内容とは、大方こんな感じだ。

ヒロインの妊娠している女は自殺をしようと高尾山に行った。イザ、自殺!なんて場面になんだか怪しい・・ってか滑稽な宇宙人9体が現れる。ヤツラは頭にカタツムリみたいな触覚を付けてグレーのスーツを身に纏っている。どこまでも怪しくて白黒はっきりしないグレーなヤツラだった。観ててもなんだかとっても弱そうなグレーの宇宙人は宇宙語をしゃべっていたが、ポケットからホンヤクコンニャクを取り出して女に伝える。「我々はどーしても理解出来ない。何故人間は常に不幸だと呟くのか。だからもっと研究しようと考えた。」なんつって、バカバカしいネタを披露する。この時点で、ワタクシ、「いあいあ、ワタクシのほうが君たちを理解できないなー。」とひとりごちた。

で、宇宙人らは地球人を幸せにしてやろうと、不幸がってる登場人物の電波をキャッチすると記憶を無くしちゃう。自殺しようとした女は昨日までの過去をすっかり忘れてしまい、そんな女を好きになって苦悩していた男も、宇宙人の勝手なおせっかいで記憶喪失になる。記憶喪失の女が通っていた喫茶店の女主人は恋人の浮気癖や暴力に悩んでいたが、そんな貞操観念をも宇宙人は消し去って、人類みな兄弟!じゃあないけれど、ゲイだろうと愛人だろうと、おかまいなしにセックスOK!あなたが楽しければ私は幸せ!なんつって考えに変わってしまう。

ただ一人、現状に置かれた自分を幸せだ、と語っていた「ハイテンションロック歌手」のみがまともな精神で歌を歌い上げて終盤を迎える、という筋。山本真由美の歌唱力が素晴らしい。ちょっとハスキーがかった声が素敵だ。
この物語は観客を選ぶと思う。そもそも役者のやりたい役を繋ぎ合せて本を作っただけに物語に深みはない。だから、ただ単に楽しい企画と楽しめるか、谷の公演だから期待してたのに・・。と期待を裏切られるかのどちらかだ。ワタクシは?っていうと、どうせならコメディのみで突っ走って欲しかった。谷のコメディなんて前代未聞なのだから・・。

西方の人

西方の人

4RUDE

シアターX(東京都)

2010/01/29 (金) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

クリストの一生
『西方の人』(さいほうのひと)と聞けば、クリストの一生と唱える人は多いだろうと思う。芥川はとクリストの一生を自分の一生とリンクしていた感があったからだ。
だから、今回のように無駄なセリフは全くなく、動きと少しのセリフだけで魅せる技は完璧だと思った。そこに芥川の静の精神を見た気がしたのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

会場に入ると舞台の中央に梯子が設置されてる。
おお~、あれがクリストの最後を表現した「折れた梯子」ね?なんつってちょっと感動。だから作品の終盤に描かれる場面を想定して、ちょっとドキドキ。

でもって「折れた梯子」が、「天上から地上へ登る」と形容されている事から、いったい演出家はあの梯子を上から登らせるのか、それとも下から登らせるのか?または逆さに登らせるんだろうか?なんてワクワクしていた。。「天上から地上へ登る」の解釈の説は色々あって、クリストは地上より下にいたから地上より下が天上という説と、「地上から天上へ登る」の誤記ではないかという説もあったりして、この部分だけでもミステリアスだよね。で、結局、演出家は終盤で素直に下から登らせていたから、誤記説をとったのだろうか・・?

芥川は、西方がクリストで東が老子や孔子と言い、クリストのロマン主義に対して老子が唱える「衛生学」をちょっと悪者扱いしているところがあって、更に突き詰めるならクリストを産んだマリアを崇拝していた感があった。だから、「我々はあらゆる女人の中に多少のマリアを感じるであらう。」なんて言葉を残してる訳だけれど、そのマリアを多少とも妻にも感じていたのだろうか?

舞台上では妻への関わり方や家族との風景も描写される。序盤のおどろおどろしいあの世の世界の描写とは打って変わって、長男と次男の動きが素晴らしいのだ。気功のようなスローモーションの動きが緻密に計算され、無音の静寂の中に溶け込んで完璧に秀逸した世界を作り上げていた。なんだか、懐かしい家族の風景だった。

やがて芥川は服毒自殺をするのだけれど、いつものことながら、芥川の自殺と太宰治のそれがワタクシの中でリンクする。どうやら、芥川と太宰はワタクシの中で同じ線上にいるらしかった。だから、芥川の小説も太宰の小説も乱読しないことに決めている。この二人には読者を取り込む魔性のようなものが潜んでて、こちらの精神まで持って行かれそうになるからだ。笑

そして自殺するまでの芥川の苦悩や迷い、クリストの一生を芥川の一生となぞらえ、死と深く関わる瞬間を表現する稲川光の動きが絶妙なのだ。まるで何か他の生き物に体全体を乗っ取られたような動きだ。芥川龍之介の「人生は地獄よりも地獄的である。」は決して抽象ではない現実味を帯びている。

ワタクシは舞踊に関しては殆ど無知である。しかし、この無知な心臓を熱い手でギュッと掴まれたような感触があった。

照明、音楽、映像、美術、何かを唱えるような声、カルマ・・、それらと静の舞踊が重なって実に芸術的な舞台だと心服した。


異説 卒塔婆丸綺談

異説 卒塔婆丸綺談

しゅうくりー夢

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2010/01/28 (木) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★

解り易い物語
フライヤーの印象とはちと違う。物語はごくごくベタな芝居。「芝居」の前に三文なんて2文字を付けちゃうと「なんだ~、そっか!」なんてそれこそ2文字だけで解っちゃう!だけれど、これは三文ではない。ベタだけれど三文と言わせないところが凄いのだ。セット、衣装、照明、音楽、演出はお見事!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

一言で言うと海賊船、卒塔婆丸 の海賊野郎「とら」「たつ」の恋愛もの。

周りを海で囲まれた流人の島があった。生きる為に彼らは海賊になり海賊の棟梁の指揮のもと秩序は保たれそれなりに暮らしていた。ある日、いつものように海賊らは豪華船を襲い船底から一人の姫を見つける。名を真乃という。そしてその姫のお付きの者、鼻っ柱の強い伊織。

隔離された島でいつしか、とらは伊織と、たつは真乃と恋に落ちる。しかし、今まで姫と思っていた真乃が実は身代わりに姫のふりをしていたお付きの者で、本当の姫は伊織だと知らされたとらは、あまりの身分の違いに動揺してしまう。

一方でお家同士が決めた結婚に反抗し行方をくらました浅香家の姫には追手がいた。家老の言いつけにより姫を探す入江と大賀と保科。やがてこの3人は成智を暗殺した家老を殺してしまうが、海賊らとも激しい戦いの果てに大賀と保科も死に島の海賊らは壊滅状態となる。

伊織と真乃と所帯を持つことを決めたとらとたつは海賊から足を洗う事を決意する。その後、仲間から祝福されて島を出てしまっていたことから、そんな悲惨な島の状態を知らない4人は船上で、来るべくこれからの未来に希望で満ちあふれていた。

しかし、そんな幸福なひと時も長くは続かない。密かに同船に乗り込んでいた追手・入江が執拗に命を狙う。とらはたつと伊織、真乃を庇い一人で入江と戦うも相打ちとなって二人は倒れる。とらを抱きかかえる伊織。悲しい光景だ。
しかし、幸せの絶頂に居るたつと真乃はとらと伊織の配慮によって現在進行中の二人の不幸を知らない。二人の犠牲の上に成り立っている、たつと真乃の幸福そうな4つの瞳は船上の甲板から輝ける夕陽をいつまでも観ていた。


舞台上左側の二人のどん底の不幸と、右側の二人の希望に満ちた至福の表情が対比して、まるでこの世の心理を観た思いだった。夢を見続けている人間は夢を捨てた人間が守っているのだ。それでもこの二人には何かを誰かを踏み台にしてでも幸せになって欲しいと願う。そう観客に思わせるほど二人の笑顔は輝いていたのだ。


追伸:才谷梅太郎と名乗っていた土佐弁ばりばりが実は坂本竜馬だったと気付く。この竜馬がちょこちょこと舞台に顔をだすが、これがまた絶妙なタイミングなのだ。そして忠次役の原が舞台挨拶でコミカルな動作をする。サル・・だ・・。笑

HOTEL CALL AT

HOTEL CALL AT

メガバックスコレクション

荻窪メガバックスシアター(東京都)

2010/01/28 (木) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

ディズニーばりばり!
登場人物のキャラクターの確固たる立たせ方が巧みだ。ホーンテッドマンションやシンデレラ城のような優美で妖しく不思議な物語だ。それでいて、観客の胸にドカーン!と一発ねじ込むような直球勝負だと感じた。衣装、セット、音楽、キャラクター、演出、全てが完璧な舞台だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

とにかく素晴らしい舞台だった。舞台が始まるとすぐに、ミス・トライアラスキーや、フェイズランドが登場する。この人間離れした妖怪のようなキャラクターの登場で一気にそして強引に観客を空想の世界に引きずり込む。

降りしきる豪雨の中、8人を乗せたバスは目的地まで急いでいた。落雷が響く音、ブレーキの音、フロントガラスを叩く雨の音、岩に叩き付ける音、悲鳴・・。やがて彼らは「HOTEL CALL AT」に辿りつく。このHOTEL に入る瞬間の演出が素敵だ。まるで霧に覆われた下界と天界の狭間、天空の通り道「HOTEL CALL AT」を思わせる。

HOTELのロビーではそれぞれのキャラクターが優雅にそしてそれぞれの関係性や思惑を表現していく。ここでのキャラクター達もディズニーっぽい。笑
やがて彼らの様子がオカシイことに気づく。そう・・、彼らは死んでいたのだ。彼らは自分が死んだ事を認めたくはなかったが、ミス・トライアラスキーの説明「ここは現世の長い旅の疲れを癒し、天国に行く為の準備をするところ。貴方達の乗ったバスはあの日、崖から墜落して全員即死でした。当時の悲鳴や岩に叩きつけられて天地が何度も入れ替わったことを憶えているはず。」に納得する。ここでのそれぞれの人間関係が面白い。

やがて、この中の一つの魂が生きてることに気が付いたミス・トライアラスキーは、一つの提案を出す。それは生き返らす一人を8人の投票によって決める。ということだった。この提案により、生への執着やら、業やら、欲やら、色んなものが入り乱れる。笑
しかし、本来の人間の持つ良心によって観客も登場人物をもが納得する人物が選ばれるのだ。ここにたどり着くまでの演出も巧みだ。この劇団は初見だったが、全てにおいて完璧だと感じた。妖しくて優美な情景のなか、彷徨える魂たちの焦燥感や深層心理を見事に舞台化していた。
キャストらの演技は秀逸でした。

 『F』

『F』

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/01/29 (金) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

ひと言で言えば切ない
人間ってやっかいだな、って思う。人間に生まれてきた女がアンドロイドに愛情を持ち始めたのをきっかけに一人と一体の言葉による交差が表現される。いわば人間の心の襞を表現した舞台だけに切ないのだ。しっかりした芝居だった。観てよかったと心から思う。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

舞台の序盤、あれ?正月?みたいな音楽が流れる。そのうちポップな音楽に切り替わる。

一人の女が登場するがやたら元気だ。ちっさなガキ大将みたいにやんちゃで楽しそうだ。一方もう一人の男はこの女の僕のように振舞っている。しかし女は男のそんな慇懃でよそよそしい態度に「もっと友達みたいに対等にして。」と要求する。その要求に男は従う。なぜって彼は女の利益を一番に考えるアンドロイドだったからだ。

女は新薬開発の機関から、契約金をもらって施設に隔離されていた。毎日、未認可の薬を飲み続けて人体実験をさせられていたのだ。だから、女は時間の経過と共に、だんだん体が衰弱していく。それでも確実に死に近づく薬を飲み続けなければならない。死んだあとは献体をも契約していた。

そんな彼女をアンドロイドは親身に世話をやく。「オレはお前の利益を守る。」といって至れり尽くせりなのだ。まるで父親がちっさな子供をあやすように女の幸せや楽しみの為なら自分を犠牲にしてでも尽くす。こんなアンドロイドが常に傍に居たらどんな鉄仮面の女だって、「よよよ・・・よ・・?」と燃えてしまうのだ。「ああ、ワタクシの命はこの蝋燭の長さなの。燃え尽きてしまったらワタクシの命も消えちゃうの。」なんつってヒロインにだってなっちゃう!笑

そして女もやがてこのアンドロイドに恋をする。女は自分の命の火が灯っている間は季節を楽しもうとする。春にはアンドロイドと桜を愛で、夏にはアンドロイドと浴衣を着て花火を観、秋はアンドロイドと紅葉の話をする。冬はアンドロイドとツリーを飾り、そうしてやがて女は潰えていく。それでもアンドロイドは涙一つ流さないで、まるで自分に与えられた使命のごとく、女を抱いて何か呟く。

舞台の中盤に女が歌うシーン「小さい秋」ってあんなに美しい歌詞だったんだね。端田の声が素敵だ。そしてあくまでも正論を言いながら与えられた情報どおりに動くアンドロイドを愛してしまった女が、心の苛立ちやどうしようもない感情を何処にぶつけたらいいのか解らない心理をアンドロイドに八つ当たりする場面で見せる。終盤では女の死と共に廃虚処分される運命にあるアンドロイドに「逃げて!」という思いやる場面もあり、グッと響く。けれど・・・、ワタクシは思うのだ。人間を相手にするより楽なんじゃないか?って。こう思うのは病んでるだろうか?それでもこんな風に感じることって皆にもあるはずだ。

想像するに女は今まで他人と深く関わらず、全てを受け流すように生きてきたのかも知れない。だから摩擦も無く嫉妬などという醜い感情にも振り回されることもなく稀薄な生き方が身についていたのだと察する。しかし突如、このアンドロイドに特別な感情を抱く事で、投げやりだった生を真正面から見つめるきっかけにもなる。死と愛の狭間で揺れる人間の感情と、あくまで正義的に女の利益を追求するアンドロイドの機械的対応が春夏秋冬の催しに反映して美しくも哀しい情緒的な場面でもある。


The Stone Age ブライアント『胸に突き刺さった5時43分21秒』

The Stone Age ブライアント『胸に突き刺さった5時43分21秒』

The Stone Age ブライアント

サンモールスタジオ(東京都)

2010/01/27 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★

コメディかと思いきやそうでもない
それなりのキャストを登場させた割には使いきれてない。もったいないなー・・、と思う。笑いのネタどころが古い。ベタな笑いまるだしの「師匠!」と言われてる関西芸人のギャグ。いたたたたた・・・た・・。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

箱に入ると、舞台に設置されたUFO公園が、目に入り、なんだかワクワクする。天井から吊るされたブランコや回転シーソー、滑り台・・、大人になってもこういった光景には心が躍る。そんな場面に登場したアーミータイツ姿の怪しげな3人。この時点では、「をを~~、やってくれるんじゃん!」なんつって、期待に胸は膨らんだーーー!!まあ、元々、膨らんではおります。

で、その体の線がくっきりはっきりのタイツはくつ下から首まで全て繋がって、手の5本指までもを包んでるわけよね。そのうえ、頭からすっぽりと顔を隠して首まで被るように作られてるから、きっと目の部分だけがうっすらと見えるデザインなんだろうと思う。もう、そのナリは中身と一体化しちゃった皮膚のようで地球外生物のもよう。笑

そんな恰好の皮膚を顔だけめくって七味まゆみの顔が見えた時には正直言ってのけ反った!嬉しくて。そして同時に良くやるよ!って思った。女性なのに・・。すんばらしいです。究極の役者魂ではないですかっ!(^0^)

でその不思議な3人の使命はどうやら主人公・大石をタイムパトロールとして見る事だった。大石はタイムマシンを操縦するパイロット養成学校に在籍しているが、ただ一人何年も留年しているパイロット志望の男だったのだ。しかし、本はこの大石を軸にしたスポットの当て方が弱く、クリスチャン養成を主軸にしたかったのか、タイムマシン学校の教官たちを主軸にしたかったのか、はたまた、タイムパトロールの怪しげな3人を前面に出したかったのかが、曖昧なのだ。だから、一番インパクトの強かったアーミータイツのタイムパトロール3人がワタクシの中では主役だったのだ。

大石は過去にホワイトホールを突き抜ける事が出来なかったのは5時43分21秒に暗黒星雲が横切った為だ、と主張し運が悪かった。とのたまうが、運も実力のうちで他力本願的な性格らしいのだった。そんな情けない大石を3人のヘンテコ(タイムパトロール)は「諦めるなー」って励ますのだけれど、結局薬局、大石は卒業できなくて学校を去ったのでした。この終盤はなんだか、作家自身の心境を反映してるようで、切ない気持になったけれど、やりたいことがあるのなら、石にかじりついてでも頑張るしかないよね。

壮大な音楽の選曲は素晴らしかった!
シンクロナイズド・ガロア

シンクロナイズド・ガロア

ユニークポイント

「劇」小劇場(東京都)

2010/01/26 (火) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★

面白い!(^0^)
箱に入ると、そこには大きな壁が立ちはだかってる。それが劇中、黒板として設置されたのが解るとなんだか、楽しくてワクワクドキドキ。でもって、ガロアを観客によりよく理解させる為に、一次方程式から始まって五次方程式を簡単になぞる。この解説も楽しい!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

フランス革命後の混乱期を過ごした数学者、ガロアの生涯を、どうやって東大全共闘とリンクさせるのかな~?と考えていたら、大学に在学している学生にエンゲキとしてガロアの生涯を演じさせることで、リンクさせる。だから、あの有名すぎる全共闘の暴走に至るまでの経過とガロアの生涯を同時進行で表現させる。

この試みが案外面白い!(^0^)
ガロアは一人の女と関わったことで、その婚約者に決闘を申し込まれて殺されてしまうが、この死は最初から仕組まれたものだった。

一方でインターン制度を改正すべく立ち上がった医学生は、いつのまにか動いた列車がスピードを増し壁に激突するまで止まらないごとく、その闘争も激化し凶暴化し一人の判断では止まる術を失っていった。

だから、舞台上の黒板に、「処分の撤回、医師法改正案、安田講堂占拠、自己否定、戦後民主主義批判、近代合理主義的批判、どんな鳥も想像より高く飛ぶことは出来ないだろう、くそくらえったら死んじまえ、この世で一番エライのは電子計算機」なんつって哲学的な文字やら批判を東大生が自らの感情を高揚させるべく、せっせと書いていくさまは、滑稽というか何というか、この言葉や演出だけでも面白いんだけれど、そこに多方面からの解説が入って、やたら、楽しかった。

自己否定って言葉、この頃の運動家、つまり赤軍派なんかもよく使っていたようだったけれど、現代では自己否定ってしないよね?自己肯定はしても・・。

でもって、こういう場合、闘争してる本人よりも観客として観てる分には、近くの悲劇も遠くの喜劇なのだった。やがて、安田講堂に機動隊が突入し事は収まるが、その年の入試は中止したのだから、東大に入ろうとした輩はいい迷惑なのだった。全共闘のアンディンティティは何か、エンゲキをしていた彼らはエンゲキで世の中を変えようとしたかったのか、ガロアの命を奪う為に仕掛けられた罠は、なんて大きな芝居だったのか、そうして当時の全共闘に関わった人たちは今、当時を振り返ってどんな思いで居るのだろうか?やはりそれは虚構のなかの一コマなのだろうか?

今回の芝居も丸ごと含めて、何て大きな虚構なのか実感せずにはいられない。  おわり
A-TEAM「悲しいことは数々あれど…」/B-TEAM「ブックマーク」

A-TEAM「悲しいことは数々あれど…」/B-TEAM「ブックマーク」

演劇ユニット Player's HEAVEN

OFF OFFシアター(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★

B-TEAM「ブックマーク」を観た!
B-TEAMは「コメディタッチ」との事だったけれど、それほどのコメディではない。だから、大爆笑はない。むしろ、人の良い店長の人情と恋愛を絡めた作品だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

客席には劇団関係者、友人がわんさか!(苦笑!)
終演後、役者に聞いたら、旭川からみんなで来たそうな・・笑
で、下北にはホテルなんてないから、それぞれにばらけて大塚とかに泊まってるって。ちょっとした旅行みたいで楽しそうだった。

親父のあとを継いでちっさな本屋の店長になった書店に、人気作家のサイン会と見合いの話が両方持ち上がり、見合い話を断った店長の元に一人の女性が現れる。それが見合い相手だったのだが、その女性を人気作家と勘違いした店長は会話の繋ぎがとんちんかんでオカシイ。

その後、本物の人気作家が登場したものだから、店長は慌てふためく。店長役の島野浩一って、なんであんなに無駄な汗かくんでしょか?とにかく、噴き出る汗の量が半端じゃないのよ。いつもタオルを持ってて劇中も拭いてるんだけれど、それでも後から後から噴き出る・・。その分、水分補給も凄いんだろうなー、とか、砂漠で迷子になっても自分の汗で水分補給できるんだろうなー、とか、余計な事を考えながら観てた!(^^;)

ちっさな本屋の商売の仕方が人情味あふれてて素敵なんだけれど、大型書店にはやはり、敵わない。このまま本屋を続けていくかどうか、迷っているうちに、人気作家と間違えた女性が自分の見合い相手だと気付かされる。そしてこの女性も本が大好きで店長と趣味が同じだったのだ。

我儘な人気作家の対応に追われながらも店長を助ける周りの人々。コメディというよりも人情劇のカラーが強い。そして、どうやらこの見合い相手と結ばれそうな雰囲気で物語は終わる。中盤に阿藤さんが書いた自費出版の本を売り込みに来るのだが「アカシックレコード」と思わせるような本の内容を、もっとホラー的に広がりを見せてほしかった。ってか、阿藤さんの本の中身を描いた芝居を観たいと思ってしまったんだよね。つまり、そっちの方がより興味深かったという感想でした。

茶沢通りに咲いた花

茶沢通りに咲いた花

ネコ脱出

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★

オムニバスというよりも
全てが繋がって、しかも世代も繋がっているという、割と時の流れを感じる舞台だった。だから、ワタクシ的には一つの物語と解釈した。この物語を観終わった時に作家の迷いみたいなものを感じた舞台だった。本来なら、もっと前に観た舞台だったから、もっと早くUPしてあげるべきだけれど、作家の迷いとか、不安が現在置かれてる立ち位置のような気がして、ワタクシ自身が慎重になったのだった。


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

この物語は作家自身が住む下北沢の茶沢通りに咲いていた小さな花を、ふと見たことから書いたという。そんな小さな花に男性が気がつくという心持がなんだか、いろんな見えないものに繋がれてじたばたしている作家の心境を感じて、いったいどんなふうにどうやって書いたらいいのか考えてたら今日になってしまったんだよね。

物語は一組の恋人たちの情景から始まる。三好はギタリストになりたいが、その夢はどうやら叶いそうにない。ガンを告知されたからだ。自分の命が余命いくばくもないと知った三好は恋人・アキとの約束だった結婚を破棄して、アキには別の幸せを掴んで欲しいと願う。結婚の約束を破談にされたアキは何も知らされてなかった事から理由が解らず途方にくれてしまう。ここでアキの兄・三郎(村手龍太)がアキを庇う為に登場するのだが、村手ってなんであんなにおっさん役が似合うんでしょか?笑  芸は身を助けるっていうけれど、芸っていうよりも内から滲み出た匠を感じる。ワタクシの中での巨匠ですわ。

でもってこの恋人たちは、三好に放った三郎の熱い助言、「死の瞬間まで守ろうとするヤツ、大切にしようとするヤツが優しいヤツなんだよ。中途半端に抜け出す前におめえの出来る事を全てやってみろ!」との言葉に気付かされ結婚する。

しかし、時代は学生運動の時代。理想郷の為にと結成された連合赤軍は進む方向を失ったトンボのようにクルクルと空回りし狂気と化す。

いつだってそうだ。同じ釜の飯を食い、同じように汗を流した体験は一体感、連帯感の醸成には効果的なのだ。ひとを高揚させ感激させ情動的にさせる。その場の誰かの指示や命令に反射するように従うようになる。隔離された環境に人を集めたことで彼らは、いつもあっさりと幹部たちが期待したとおりの気分を共有してしまい人殺しだってなんだってするようになってしまう。これは人殺しなんだ!と気付いた時には、もう深みにはまってしまい出られなくなる。出る者は殺されるのだ。だから、赤軍の中で恋愛感情が生まれた男女はここを抜けようとして殺されてしまう。

そしてアキの兄・三郎も強盗に入った連合赤軍によって殺されてしまう。そして、三好を失ったアキは一つの希望が宿る。妊娠したのだった。そしてその子が大人になって、見合い相手に結婚の申込みをしたいが中々言い出せない気弱な男として登場するが、この部分はコメディタッチで、なんだか作家とリンクしてしまう。笑

要は世代を超えた男女の営みの中で迷った時、絶望したとき、失意の淵に佇んだときに小さな花に願いをかけると叶う、というなんとなく切ない希望を表現したような舞台だった。だから、作家の夢への渇望みたいなものをひしひしと感じてどんなふうに筋道をたてて説明するかを迷った。筋道をたてればたてるほど、逆にほんとうに言いたい事からどんどん遠ざかってしまいそうな気がしたのだ。

スーパースター

スーパースター

劇団鹿殺し

青山円形劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/01/28 (木)公演終了

満足度★★★★★

ピカイチの中のスーパースター
鹿殺しの物語って毎回、回想劇的な香りのする芝居だ。しかしその香りは長屋の湿った匂いだったり、錆びた鉄の匂いだったり、雨上がりの土の匂いだったりする。登場する子供たちも下町の工場跡の廃墟で遊ぶのが似合う子らだから、なんとなく郷愁めいた懐かしいこころもちになるのかも知れない。だから、このような描写にこんなにも共感して時代とともに見えてくる将来像も嫌いにはなれないのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

うどん屋に生まれたピカイチは団地に住んでいたが、この団地に大阪西宮幹線道路を通す計画が持ち上がり、行政から立ち退きを命じられる。父の経営するうどん屋は経営不振のため借金した挙句、借金取りに脅されていた。そんな状況の中、弟の舜一は中学一年で中学ボクシングのチャンプになる。

「スーパースターは生まれた時から星を持っているんだ。相変わらず星を掴めない俺はドンキ・ホーテだ。」なんて思いながらピカイチは、おかんと交換日記のような交換漫画を描いていた。うどん屋の手伝いで忙しいおかんはピカイチと漫画を描いて交換することがゆういつのコミュニケーションだったのだ。そんなおかんもやがて不自由な体で入浴しようとして誤って溺死してしまう。あれほど父と弟に「おかんを看てて。」と言ったのに弟がボクシングの練習なんかに行ってしまうから。と恨めしく思う。

そんななか、舜一は栄光の道を駆け上がるかのようにボクシングの世界で一世を風靡する。今や恐いものがない舜一は時々兄のピカイチのところにやってきては、漫画を描きながらも未だにうだつの上がらない兄にハッパをかけては帰っていく。ここで登場する漫画のキャラクターたちがアニメちっくで可笑しい。そして自らが描いたこのアニメちっくなキャラクターたちに励まされたり、同調されたり応援されたりするのだから、夏目漱石の「坊ちゃん」みたいで楽しいではないか!笑

しかし、そんなピカイチにも春が訪れる。ヤンコミの編集者がピカイチの書いた「団地の超人ブッチャー」の連載を決めたからだった。ブッチャーはピカイチが小学生のころ、生乾きみたいな悪臭を漂わせながら、何処からともなくやってきて、何をやらせてもヒーローばりに事を成し遂げるピカイチのスーパースターだったのだ。しかし当のピカイチはそんな漫画を描いた覚えがない。覚えはないが描いた作家のフリをすればいい、なんてペルー(友人)に押されてその気になってしまう。しかし、順調にことが流れたのも第3話までで、それ以後は編集者の元に原稿が届かないという。慌てたピカイチは自ら原稿を描くが上手く描けない。

そんなおり、おかんとの思い出の場所だった団地の強制退去命令が届く。かじりついてでも守りたかったこの家をあっけなく叩き出されてしまうが、段ボール箱の中にあった、おかんと初めて描いたマンガ、二人で描いたマンガが出てくる。それはまさしく「スーパースターブッチャー」だったのだ。その中でのスーパースターブッチャーは「何度倒れても立ちあがれ!」とまるでピカイチの応援歌のようにボクシングのチャレンジャーとして登場する。

そしてピカイチは、これを描いたのは俺なんだ。とやっと気づくのだった。おかんのこと、マーチ(憧れの女性)とのこと、おとんに認めてもらいたかったこと、それらが自分の中で重なり合って自分自身の重心がはじっこに偏ってしまったみたいに、観る世界も偏ってしまったのだった。

バスケのシーンが素敵だ。中学生のころを思い出して懐かしい。イザという時に一番大切な時にシュートが決まらなかった演出の仕方もお見事だった。シュートが外れたボールは鈍い音を立てながら床の上を弾む。やがてその音は小刻みに揺れながら、ピカイチの耳と言うより顔に音をねじ込むように響く。
シュートが入っていれば・・!と落胆するピカイチに「たった一回シュートが入らなかっただけだ。何回だってシュートを打てばいいんだから。」とブッチャーが励ます。

やっぱ、これ応援歌だね。団地の使い方や見せ方が上手い。天井から吊られた蛍光灯の仕掛けや、ダンボール箱をビルに見せた演出も楽しかった。そして何より、喜怒哀楽の全てが詰まっていた芝居だった。
人生って大好きなもの(人)があるといいよね。エンゲキもそうだけれど、好きなものがたくさんできるといいな、って思う。

十三月の男 -メメント・モリ-

十三月の男 -メメント・モリ-

無頼組合

テアトルBONBON(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

面白かった!
前作と打って変わって、おちゃらけた部分がない分、ハードボイルドさが増したように感じた。思えば過去の公演で、白川とくせぽじの下野との絡みが絶妙だったのを思い出して懐かしさを感じた。あれ以上のタッグは無かったのだと気づく。舞台って人々の記憶にいつまでも残るから素晴らしいのだ。。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

詳細は説明に載っているから解り易いと思う。舞台もひじょうにベタな解り易い物語だった。コードネーム・イカロスこと流次郎は自衛隊入隊から、色々経て現在は傭兵部隊に属していた。その間、愛する妻・秋子を失ってしまったが、今でも秋子を忘れられない。秋子は太陽のような女性だった。一方、次郎は月のような男だ。案外、男性って月のような人が多いような気がする。つまり、太陽によって照らされて初めてぼんやりと輝くように・・。

秋子を失ってから失意の中にいた彼は死を恐れることが無かった。自らも凍血病にかかっていた次郎の元に反政府グループからの依頼がくる。それは政府に対するテロ行為だった。次郎は協力しながらも、組織がだんだん凶暴化していくことに、自らの身の置き所にも疑問を感じていく。そしてかつての妻との生活を思い出しながら、また、星山らと関わりながらも、本来の正義を取り戻していく。こうしてテロ組織と反対の立場に立った次郎は組織からも追い詰められながら、爆弾の藻屑となって消えていくのだが、終盤の流れ星のシーンと、妻・秋子の流れ星の言葉が重なり合って美しいのだ。

劇中、テロによる復讐の連鎖も登場し、そのシーンの選曲も素晴らしかった。妻を亡くしてから死んだように生きていた次郎の心の機微も繊細に反映され13月の檻から抜け出せない苦悩も見事に表現していたと思う。何より劇中吐かれるセリフの数々が妙に心に響いて感動したのだ。

赤い血が流れている限り人って何度でもやり直せる。という秋子のどこまでも前向きなキャラクターもいい。酒井の相変わらずのイッチャッテル狂人ぶりぶりが観ていてスカッとしたし、桐生こと長谷川のキャラクターも秀逸だった。とにかく、どのキャラクターもいい意味で秀でてる設定なのだ。桐生が美味しそうないちごにた~っぷりぷりと練乳をかけて頬張るシーンは映画のワンシーンをみてるようで感動。まるで味が無いように食べてるさまは演出なのだろうけれど、この場合、へたを取らないでまるごと食べて欲しいものだった。そのほうがワイルドでしょ?笑
それでも、こうしたちょっとした演出の詳細さも無頼ならではの見事な演出だ。だから・・・手前で演じてる場面よりも、後ろでの別のワンシーンが気になって仕方が無い。そして今回はその後ろの目立たない演じ方が絶妙だったのだ。

死ぬまで生きろ!死んだように生きてんじゃねーぞ!
とセリフる次郎は自分にも言い聞かせるようにして死んだのだ。
幕引き間際の輝く一つの流れ星はまるで次郎の命のように、瞬間輝きを増してすっと消えたのだった。



音楽劇「雨を乞わぬ人」

音楽劇「雨を乞わぬ人」

黒色綺譚カナリア派

ザ・ポケット(東京都)

2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★

音楽劇というよりも
カラオケ劇といったほうがより解り易い。だから小鳥が囀るような上品なフルートの音色も、白いドレスを纏った天女のような女がハーブを奏でるシーンも無い訳よ。キャストの歌は要らなかったなぁ・・。むしろ太鼓と笛が良く似合う劇だと感じた。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

好みか好みでないかというと好みの作品。
なんだかんだいって、昔からこういった村ってあったような気がする。だって閉鎖された村特有の言い伝えって絶大な威力を持ってた訳でしょ?
だから、人柱伝説とか捧娘伝説とか日本昔話ばりばりの「本当にあった恐い話」みたいな「日本の呪い」になるわけよね。

で、今回の物語は巫女伝説っていう、これも日本の天治村という外部世界を遮断した閉鎖的な村の伝説という説明だけれど、実はこの物語は本当にあったお話なんだから、どっぴゃー!!って仰け反ってしまうでしょ。笑
村の名前は違えども本当にこんな話はいくつもあって、何故かいつも犠牲にされるのは美しい生娘だけだってんだから、日本の大昔も残酷でした・・。

さて、物語は 天治村の天治家が巫女を守って育てているということで、村全体を取り仕切り、 外部から情報や人を入れさせなかった。この村に生まれて育った者たちは外の世界を知らないから、この村で起こってる狂気が狂気でなく巫女信仰が当たり前の出来事になっていたのだ。その村に神の如く祭られた巫女を泣かせると豪雨となって山が崩れ村が滅びるという伝説を信じて村人は巫女を泣かせまいと、蔵に監禁している巫女のために 村をあげての酒池肉林の饗宴三昧をする。

しかし、その因習を知った旅人は13歳の巫女が毎夜毎夜、男衆に犯されるのをオゾマシイと思い、巫女を外の世界に連れ出そうとするも、巫女はここから出ないのだった。トーゼンだよね。ちやほやされながら育って村の男衆の全てが巫女の夫であり僕だったなら、ここから逃げたって生きられようがないよね。巫女の使命は次の巫女を生む事だけで、その使命が完結すると巫女は殺される運命なのだから、とても哀れなんだけれど、そのことを巫女自身もうやむやに理解していて、巫女に新しい命が宿ったのを知ると、ワザと泣き喚いて雨を降らせて村をも自分をも崩壊させる。という筋。

こういった伝説は巫女(生娘)自身の悲哀を描いたものが多いが、今回の舞台も、ソレを見せつける。昔の言い伝えとは案外、本当にあった話だから、リアル感に満ち満ちて楽しかった。余談だが、生娘を捧げる伝説も、巫女伝説も村の長者が考えた独りよがりのHな行いだった。と現代版では解釈してるが、こういった解説も解るような気がする。要は金も地位も確立された男が次に欲しがるのは美しい娘なのだ!

最後の場面、何もかもが豪雨で崩れるシーンの演出はお見事!美しいとさえ思った。

第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★

甲府昭和高等学校「 放課後の旅その他の旅」
脚本: 中村勉( 顧問創作 )
関東大会最優秀、脚本賞受賞(第56回全国高等学校演劇研究大会に推薦)


高校生のともちゃんが放課後から下校時間までを学校の中で旅をするお話。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

オザワともこは同級生から「ともちゃん、今から旅をするんだよ」なんて言われて旅をすることになる。さて、旅を強いられても特別に行く当てもないともちゃんは、自分の学校でのポジションがないことに気づく。みんな、それぞれ自分のポジションを自覚してるのに・・。

ともちゃんは同級生に促されポカン!としながらも自分の居場所を探しに行く。保健室へ行くと先生は「旅の目的の相談ですね。」と先回りする。ともちゃんは覚えがないけれど、予約が入っていたようなのだ。先生は「オザワは辛いよな。」なんて言いながら猫を探している。ともちゃんは「猫より大事にされない・・。」なんて嘆きながらも、今度は図書館に行ってみる。

図書館では雑多な本が何だか踊ってるように動く。この場面の演出がお見事!だった。そうしてまた、ともちゃんは屋上や廊下や音楽室や色んな場所に行ってみるけれど、何処にも居場所はなくて、なんだか疲れてしまう。

「もうそろそろ戻りたいな・・、でも戻ってもなかなか大変だな。私、ずっと旅してたんだね、旅は色々あるんだね。疲れた・・。」

それからもともちゃんは何年も何年も旅を続けてました。「なぜ旅を続けたんだろう?この謎を解かないと家に戻れないぞ・・。」

こうして16歳のともちゃんは自分のポジションも解らなくておばあちゃんになるまで旅をしていたんだ。おばあちゃんは振り返って思う。「楽しい旅だった。そして淋しい旅だった。」

あやふやで傷つきやすくてちょっとの事でも悩んでしまう、そんな思春期の思いを旅という空想に乗せながら自分のポジションを追い求めたある女子の物語だった。序盤、不思議なぐだぐだな世界だなーって感じたのだけれど、終盤にさしかかっておばあちゃんが車いすで登場した場面から、「ああ、この物語は人生そのものだったんだ。」って気付かされる。

きっとみんな誰でも自分のポジションを追い求めてふらふらしながら迷いながら、それでも諦めずに追い求めるのだと思う。何かにしがみ付いて、その恰好がやたらカッコ悪くて、みっともなくても、それでも這いつくばって生きる人生って素敵だと思う。そうしてやがて年老いて自分の人生を振り返った時に、ポジションらしきものが見つかってなかったとしても、そのあやふやな立ち位置が自分のポジションだったんだ。と気づかされるのかも知れない。その時にはそんな生き方も受け入れられる幅が出来てるはずだ・・。


関東大会全体の総括
全体的にひじょうにレベルが高く満足した。一日に6~7本を1時間ずつ公演するのだから、ワタクシたち観劇人も芝居漬けだったが、疲れることなく実に楽しいイベントだった。私見だが、どうやら審査員たちは、高校生らしい物語(現在の描写)と自分たちで制作した脚本が入賞させるに相応しいと感じたようだ。だから演技力とかうんぬんより、旬の作品上演校が受賞を総なめにした感がある。ロビーでは各高校のボードにコメントが多数、寄せられてて大会の空気感を満喫した2日間だった。次は全国大会へ。(^0^)
冬のライオン

冬のライオン

幹の会+リリック

東京グローブ座(東京都)

2010/01/15 (金) ~ 2010/01/24 (日)公演終了

満足度★★★★

圧巻!
当日、パンフをめくったらイングランド王の相関図が載ってあった。(株)リリックの受付をしていた女性たちにフライヤーが欲しいと話したら、今日の分は無くなってしまったとのこと。では、相関図だけ欲しいとの問いに、パンフレットを購入して下さい。との回答。要するに相関図が欲しかったら買えよ。と言うのだ。そんでもって、この買えよ!って言った瞬間の(株)リリックの受付の3人の表情がめっさ傲慢なんだよね。
殆どの観客って主催側と話すことってないかも知れないけれど、こういった場面で主催側の質が露見される。だからワタクシも、表情と目が上から目線な3人をこうして暴露しちゃうわけよ。
以前もこうした場面はあったが、こういう場面で毎回女性の傲慢さが目につくというのは、どういう事なのだろうか?社会性がないのか、はたまたパートとか臨時雇いだから責任がないのか、家庭での裸の王様っぷりをここでも引きずっているのか、一部でもこんな女性が露見されと、女性が熟成されてない国、日本!のイメージが悪くなるよね。日本の恥部だと感じた。

だいたい、相関図を観客に配布するべきでしょう?観客がより良く理解するにはそういった配慮は当たり前のことだと思う。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

ヘンリー王の相続をめぐっての骨肉の争いと夫婦の愛憎劇。殆どが会話劇だった。平幹二朗と麻実れいの会話のバトルは圧巻で特に麻実のあの堂々たる立ち振る舞いは完全に平を食ってるような感覚があって実に秀逸だった。

ヘンリー王(平幹二朗)とエレノア(麻実れい)には現在、3人(リチャード、ジェフェリー、ジョン)の息子たちがいた。ヘンリー王は芝居がかった嘘を吐くことを趣味にしている節があり、この3人の息子たちそれぞれに「王の継承を継ぐのはおまえだ。」などと嘯いていたことから、息子達はその気になっていた。しかし、王の継承を授けるのはジョンだと心に決めていた王と、リチャードに王の継承を継がせたいと考えていたエレノアは様々な画策を煉る。

誰に王の継承を譲る気なのか?と疑心暗鬼になった3人の息子達は王を暗殺しようと企むがその計画が王にバレてしまった3人は王によって地下牢に幽閉されてしまう。息子達を助けようとするエレノア。

一方で、ヘンリー王はエレノアと離婚してヘンリーの美しく若い愛人・アレーを王妃として迎い入れようとするも、アレーは「もし私たちに子供が出来たら貴方の息子達に私たちの子供が殺されてしまう。そうなる前に貴方の息子たちを死刑にするか、ずっと地下牢から出さないようにしてください。」と話す。

王は将来のそんな光景は想像したくもなかったが息子達を殺そうと決心し、地下牢へ行くも、そこでエレノアに言葉巧みに水を向けられ息子達を処刑することを断念する。そうして自分には出来ない。息子達を処刑することは出来ない・・。と苦悩しながらシノン城の外へ逃がすのだった。

ヘンリー王とエレノアの夫婦の愛憎バトルが絶妙でみもの。ヨーロッパの貴族から不倫という言葉が発祥したなんて言われるほど、ヨーロッパは不倫の宝庫だけれど、ここでもヘンリーを愛しながらもヘンリーが自分を愛してくれない状況を嘆き苛立ち悲しみながらも、凛として、なんでもないような振りをして自分を崩さないエレノアを愛しいと感じた。夫婦の言葉によるキャッチボールはまるで小石を投げ合うような様で、時には勝負師のように、時には甘い蜜のようにくるくるとそのさまを変えながら、やがて・・・終盤にさしかかると長い間連れ添った夫婦の心の情景が確かなものと写されるのだった。その輪郭は愛なのだ。





第45回関東高等学校演劇研究大会

第45回関東高等学校演劇研究大会

関東高等学校演劇協議会

ひたちなか会場(ひたちなか市文化会館)(茨城県)

2010/01/16 (土) ~ 2010/01/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

松戸馬橋高等学校・ 神隠し「八十八ものがたり」

優秀校受賞(第4回春季全国高等学校演劇研究大会に推薦)されました。おめでと~。。
脚本は既成のもの。ここの顧問の土田先生も有名で毎年大会に出場する常連校。いやはや、もうこーなってくると堪らなく楽しい!(^0^)

生徒達はきっちりとした演技で実に素晴らしいです。特に女子は自分を綺麗に見せようとか可愛く見せようとか思わないレベルで見事な演技でした。観ていて気持ちが良かった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


220年前、岩城郡米里村の長者が神隠しにあう。しかし、その真相は神隠しではなく八十八という男が人を騙しながら金儲けをし、自分の死んだ親をとことん金儲けの道具に利用した挙句、大金を掴み、更に長者の金も騙し取って下男ともども大川に溺れさせるように仕向けた。という物騒なお話。だけれど、この話を仕組んだ村人達に、役人が「長者が持っていた金はどうした?」と聞くと、全員がとぼけるという状況!笑

県大会前日に役者がインフルエンザにかかり、役のセリフを分けて上演にこぎつけたらしいが、どうしてどうして・・実に素晴らしい完璧な演技でした。上演時間1時間という制約のなか、舞台はハイペースで流れるように進んだため、息をつく暇もなく、なんだか滑稽で楽しくてやたら可笑しくて上演時間が2~3時間くらいあったように思えた。そのくらい中身の濃い素晴らしい演技でした。

これだけの舞台を魅せてくれると茨城まで来た甲斐があります。んー全国大会も行きたいなー。きっと震えるような舞台に出会うはずだ!

演出、セット、キャストの演技、衣装、どれもこれも完璧!

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