なしかの観てきた!クチコミ一覧

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荒野に立つ

荒野に立つ

阿佐ヶ谷スパイダース

シアタートラム(東京都)

2011/07/14 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★

抽象画のような現代劇
現実感の無い唐突な妄想に撹乱交錯しそうな観劇体験、無地のジグソーパズルの1ピースをいろんな所にはめ込んでいったら、静かに時間が過ぎて行ったという感じ。スムーズに乾いた世界から出てくれば良いのに気持ちの整理が上手い事出来ず。頭ん中は、もや〜〜とした霧がかかっていた感じで途方に暮れた状態。ちゃんと説明出来るかと言えば自信ない。でも、つまらなかったというわけではない。他国の言語を使って上演されても違和感無いような話だった。
もう一度見たらまた違う解釈になりそう。

ネタバレBOX

朝緒が荒野の中で失ったものを見つけたところは、それまでの風景が一辺に温かみのある印象的なエンディングでした。
特に意味ないけど、劇中の夏カレー食べてみたい。
英介とやっかいな仲間たち vol.1

英介とやっかいな仲間たち vol.1

英介とやっかいな仲間たち

吉祥寺スターパインズカフェ(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/07/30 (土)公演終了

満足度★★★★★

お酒飲みながら見る小芝居の面白さよ。
出演者4名がやりたい事(歌、コント芝居、演奏やら)を出しあって、見事やりきってました。
タイトルは篠井さん先導だけど、山中兄弟、草野さんが突っ走っていたような印象がなきにしもあらず。各自、普段の舞台やドラマで台詞を喋っている時とはまた違う別の表情が垣間見えて、それもまた素敵に楽しめました。
お酒飲みながら見る芝居って、限りなくフリーダム!って感じで見ていてお気楽で面白かった〜。多分小ネタは日替わりで変えていきそうで、それだけでも毎回見てみたいw。
そして、あの三人の中で篠井さんのミスマッチの絶妙さにもお値段以上に楽しませていただきました!
是非vol.2開催して欲しいです。

笑いすぎていたので、内容をちゃんと把握してないけどかなりネタバレしてます。
ご注意を!!

ネタバレBOX

サブタイトル〜小芝居四種盛り〜の通り、それぞれの作品の責任者となり4つ演目あり。

1:ブリティッシュ皇太子殿下 by山中兄
Vo:山中兄演じるレオナルド=デカチンチン G:パンティーストッキングナイスの山中弟 B:トマトスキー=イヌギライの草野 D:ポニーの篠井さん 他、志村さんという女性のジャーマネ
それにしてもなんちゅう名前だ‥

楽器弾けないエアバンド、その名も「ブリティッシュ皇太子殿下」結成20年で解散ライブ!パンティ(以下略)はそばが好き、トマトはうどんが好き、ポニーは暴威の狂介と名乗っていた時代のヤツと絡んだ経験有り、代役で熊になったジャーマネと格闘したり、てんやわんやのうちにレオ一人残され絶唱ライブを始めるがいつの間にかメンバー戻って来るがその傍らで、トマトはうどんこねるわ、ポニーは扇子持って舞っているわ、パンティは全員の頭にストッキング被せるわ、そんな中奇跡的にそのストッキングがメンバー全員を繋げる事になり歌終わり終了!
馬鹿馬鹿し過ぎて笑いまくっていたので、正直ちゃんと覚えてない!
なんだか、山中兄の楽しい頭ん中に入り込んだようだった。

次の準備のため一旦小休止。
その都度、素に戻った篠井さんが「すいません」の平謝り。

2:友達 by篠井さん(作のみ、出演はせず)
男1:山中弟 男2:草野 男3:山中兄
男1と3が町を歩いている。男3は男1に他愛のない話を喋り続けている。知り合いに会うと普通に挨拶しまた喋り続ける。そんなやり取りを微笑みながら聞いている男1。途中、男1と顔なじみの自転車に乗った男2に出逢い、ようやく話し始めるがそれは手話だった。その内容も「今度おごれ」とか、何の変哲も無い男3と同じような他愛無い会話。また今度と別れ、終わり。
男1は男3の話を聞いていたようなので、聴力はある聾者なのかな。
自分が多少手話経験があるのでその当時の事を思い出したりしたけど、ま、そんな事はどうでも良い。男性の場合、手話で会話する時、腕の動かし方加減でちょっと力強さが出たりするけど、この話の内容が何気ない日常会話だったので、当たりが柔らかく優しい動かし方で伝わり易かった。
短編ながら穏やかな気持ちになれる良い話でした。

篠井さんによる謝罪の小休止はさんで
3:ガラスのお面 by山中弟
まあや:山中弟 あゆ:草野 月影ちぶさ:山中兄 その他の人たち:篠井さん
タイトル通り、あの漫画です!大作でした!篠井さん以外まんまあの格好で美しく憑衣してました!
月影先生スパルタ!デカイ!まあや(13歳だけどね!)先生に認められたくて実の奥さんに実家に帰られたり、裸ん坊のお子さんにお昼食べさせたり自転車で遊び連れてったり、涙ぐましい努力で劇団月影に入る。あゆも負けじと梅の木になりきったり、もー大変。ほぼガヤ衆と化した篠井さんも面白かった。
次回作は、紅天女を是が非でもやって欲しいですわw!
山中弟一家の手作り手ぬぐいとDVDは完売したんだろうかw

次も大作という事で約15分休憩。
休憩中草野さんのウクレレ演奏ありでした。
途中、演奏に怪しい箇所もあったけどw、聞き易く楽しい気分にさせてもらいました。

4:天狗裁き by:草野さん
八五郎:山中弟 お光、家主:草野 六兵衛、天狗:山中兄 奉行:篠井
女房のお光のそばで八五郎が昼寝している。ふとその表情を見てみると何か夢見ているようで鼻ちょうちんがでたり、非常に楽しそうな面白そうな表情をしている。これは起きたらどんな夢を見ていたのか知りたいと、八五郎が起きた時に聞いてみるが見ちゃいないと言い張る。そのやり取りにカチンと来て大騒ぎの夫婦喧嘩勃発するが、隣の六兵衛が仲裁に入り、お光をひとまず隣家に追いやる。喧嘩の原因はなんでぃと聞くとかくかくしかじか、夢なんか見ちゃいねぇ、ほんとは見てんだろのループに突入。ここでまた取っ組み合いになるが今度は家主が仲裁に入る。ホッとしたのもつかの間、ここでもお約束の教えろとなるが、見てないものは教えようが無いと頑なに口を開かない。しびれを切らした家主、こうなったら奉行所で裁いてもらおうと奉行所出頭。お白州に出ても今までのやり取りを正直に話し、見ていないものは言えないと八五郎申し、その実直さに感心したお奉行、店子と家主はいわば親子の関係、ここで八五郎を裁けば家主も同罪と諭し、納得。一件落着となりようやく安堵する八五郎、しかあし、お奉行が「で、わしだけでも教えてくれ」と。またもや八五郎ピーンチ!と思いきや突如、突風が吹き高野山まで吹き飛ばされる!窮地を救ってくれたのはなんとサングラスでうさん臭いヒゲはやした股間に天狗のお面被った天狗様だった!空を飛んでたらなんか面白い話してるから〜と飛ばしてみた、でどんな夢見たの?と問いつめられ、苦悶する八五郎。だがそこはいつもの自分の寝床‥それを微笑ましく見ているお光。あらあら、なんか夢でも見てんのかしらねぇ‥。終。
古典落語のようで話の筋はだいたい読めたけど面白かった。
和服姿は姿勢がもろに出るけど、みんな姿勢がきちっとしてその姿にもほれぼれしてしまいました。しかし、アメリカンな天狗様反則だっ!あの姿が夢に出そうだw。

カーテンコール1回、山中兄弟と草野さんが挨拶。軽い雑談と明日はまたどうなるかわからない!と。そのやり取りを見ている篠井さんのお顔が保護者のような顔つきで妙に可愛らしかった。
拍手鳴り止まず、2回目はTシャツ姿で篠井さんが挨拶。
1階と2階の客席の(内容の)温度差を気にする。東北の皆さんすいません。客席に向かってまた暑気払いにでもお越し下さい。で〆。

客席でお酒呑みながら、ゆる〜く見ていたので非常に楽しませてもらいました。これを見られた事に感謝!
仕事で初日観劇だったけど、歌舞伎みたいに一幕観劇でも良いからもう一回見たいな〜。ああ、面白かった!

リタルダンド

リタルダンド

キューブ

PARCO劇場(東京都)

2011/07/15 (金) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★

出来た妻と優しい部下達
題材が病気ものはどうしても泣かせる展開になるのはわかっているんだけど、はい、案の定いろいろと泣けました。でも、なんかあっさりとした仕上がりで幕締め。
鋼太郎さんが病に冒されて行く姿がよりリアル。
高橋さんの選ばれなかった方の女の生き方にちょっと同情。
同じ境遇の立場に居る人はまた違った感想になると思うんですが、いろいろ考えせられました。

パルコよりル・テ銀とかで上演した方が良かったんではないかなと、いらん心配してしまった。

ネタバレBOX

全員、歌声も演技も良かったのですが、音楽劇と銘打っている割にあまり歌うシーンが少なかったような…。
献身的に支える妻、夫の病状について妹の先行きを心配しその行動が妹を困らせてしまう兄、亡き妻との息子との葛藤、仕事と病状について戸惑うけど理解を示す部下、拒否反応はあるものの世話を焼く後輩。
重箱の隅を突けば限りないけど、それぞれがみんな良い人だった。

人の気持ちがそっと寄り添えあえる話。
山羊…それって…もしかして…シルビア?

山羊…それって…もしかして…シルビア?

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2011/07/15 (金) ~ 2011/07/30 (土)公演終了

満足度★★★★

誰にも言えない性癖
山羊を好きになってしまったインテリ中年、一見歪んだ行為にも取れるがマジだった。不条理劇にも思えるが根底にそれぞれが抱える同性愛や倫理観、「知」の考え方に興味が尽きる事なく引き込まれる台詞劇でした。

ネタバレBOX

最後の妻の行為、妻には山羊ではなく完全に人間の女性に写って見えたんだろうな・・。
ゆすり

ゆすり

アル☆カンパニー

ザ・スズナリ(東京都)

2011/07/21 (木) ~ 2011/07/26 (火)公演終了

満足度★★★★

焼酎は「辛口」か
この作品は再演だけど、今年は青木さんの作品をよく見ているなー。
登場人物三人ですが、物語に引き込まれたあっという間の75分でした。

あれはあの男にすれば過ちに見えたのか、兄は事実にしたかったのか。
兄妹の業とそれを見ているこちらの気まずさをまざまざと見せつけてくれた、思わぬ展開の心理劇でした。井上さんの表情筋が凄い。

ネタバレBOX

強請ったつもりが自らの行動に跳ね返ってしまった卑しくも哀れな男。

兄が苦い過去を都合よく解釈し、記憶の曖昧さを真実に変えたい一言。
「思い込めば事実になる」
もう一人の自分を造り、翻弄された妹の哀しさ。
それらを受け止めた兄妹の行く末の曖昧さと不安な行動が何とも複雑な心境に陥りそうになり困った。
程よい緊張感のあるいい舞台でした。
ベッジ・パードン

ベッジ・パードン

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2011/06/06 (月) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

金之助氏イギリス留学中の出来事
ベッジの深津さんが物凄く可愛くキュートで働き者(多少大竹sさんを彷彿とさせる喋り方だったけど、すぐに違和感無くなる)柔らかい歌声、ラブストーリー的な要素は控えめだったが適度なエロも含め素晴らしかった。
浅野さんの十一変化も凄かった。
ロンドン地図の幕や、夕焼けに映える舞台セットや衣装がまた綺麗だった。

面白かったけど、3時間近くの話を引っ張るには少しばかりユーモア話の件部分の詰めが緩いようにも思えたけど、苦い部分もあるけど心にホッとした気分が宿った終り方でした。

ネタバレBOX

新国立劇場の舞台「雨」に通じる言葉、この作品の場合、言語か、がキーワードだった。ベッジの話す訛の強い下町言葉、ソータローの東北訛り、金之助の通じない事への言語コンプレックス等。

金之助がイギリスに滞在した時から、英語を喋りコミニュケーションを取らなければ留学の意味は無いのだが、なかなか思うように進展しない、家族へ手紙は書いても返事は来ない、次第に孤立感を味わうようになってしまうが、家政婦のベッジと接していくうちに彼女の夢を語る様子や喋り方、毎日顔を合わせていれば言葉の受ける印象により性格の変化も生じてくるもの、全てが愛おしくなりそれまでの孤立していた部分が共感から愛情に変化していく過程は2人のやり取りの可愛さに思わず微笑んでしまった。
ベッジのコンプレックスに共感した金之助の一言「君は私だ」の一言は、これから先の二人を見守り続けてあげたい!と思ったのだけど・・。

ベッジの最初のノックは2回、そのうち3回になったけど、金之助や大家の妻の指導のおかげなんだろうか。
一旦はベッジと一緒になろうと決めるも、とある経緯で妻からの手紙を手にした途端そっちに夢中になり、ベッジ放ったらかしにしちゃうし!
男性にとってちょっと都合良過ぎでないかな!?と思ってしまった。

友人と思っていたソータローが「センスオブユーモア」の「(上手く喋れないのに)英語教師」の発言が発端の裏切り原因、う〜んそれだけだとなんだか弱いような…後は「イギリス人がみんな同じ顔に見える!」かな…でも、それだけで手紙隠すのか、ソータロー。いくら地方の出身で自らも方言に悩まされて必死にこいて英語マスターしたとはいえ、少し大人げないぞソータロー、と言いたくなった。

ベッジ(アニー)の弟も登場し、姉弟の仲の良さを出したかったんだろうけど、なんか薄かった。銀行強盗の件は別に無くてもあの弟なら他の展開で話がありそうな感じで。そこだけ話の流れが滞った印象を覚え、後の、結構酷な状況になっても姉弟の間柄に深みが感じなかったので、ベッジを失ってから金之助が荒れた部屋にひきこもり、薄暗い中で喪失感は出てたけど、あら?もうそっち行くんだ?みたいな切り替え方だった。

他、下宿先の飼い犬Mr.ジャックと会話するシーンがあったが、金之助とジャックはそこまで親しかったのか。最初ベッジが「(ジャックは)人の言葉を喋る」と言っていたから、あれも金之助が見た夢の中の出来事なのかな?
浅野さんの十一変化も凄かったけど、大家さんの妻の妹さんは別に居なくても良かったんじゃ…すっごい可愛かったけどw!
大家夫人の最後の「これで良かったかしら?」は結構重い対応だと思ったけど、その台詞で笑い声も聞かれたんで、感じ方は人それぞれなんだなと痛感した場面だった。

「大事な事は言葉にしなければ通じ合えない」分ってはいるけど、当時の日本人の国民性から言えば、かなりハードルが高い行為。ま、今もあんま変わらないか。
この国の人は「上品に紳士的に差別する」「私を見ると笑いかける」と悩む金之助に対し、故イギリス女王の「差別していない、興味があるだけ」の一言は、自分も他人に分らない所で差別観を植え付けていると指摘されているようで見ているこちらにも響いた。

金之助氏の有名すぎるあのポーズで終るけど、あの姿はまんま上品。

アンケートの設問に「三谷さんに取り上げてもらいたい題材はありますか」とあったけど、またシスカンパニー関連で舞台企画するのかな?実現したらまた楽しみが増えちゃうじゃない!実現すればいいな…。
血の婚礼

血の婚礼

Bunkamura

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2011/06/24 (金) ~ 2011/07/30 (土)公演終了

満足度★★★

唾かぶり席ならぬ雨被り席で観劇
事前情報より、前2列はビニール被る事を知っていたので覚悟はしていたけど、鼓笛隊の登場が近づく度「・・来る!」とビニール構えながら見る事に。
迫力は充分感じたけど、幾分そちらに気を取られ過ぎた事もあり、話の内容より役者さんやらセットの猥雑さに興味が入ってしまった。
場面事の雨降らしに強弱があり、前の方に座っていても上手・下手で喋っていると一部台詞がかき消されて聞き取り辛い事もあったけど、後ろの方は聞こえたのかな?
なんだか、歌舞伎町の路地の一部で繰り広げられているような芝居だった。

ネタバレBOX

周囲が首を突っ込んできて問題がより複雑になり、絡まった糸がもつれたまま余計ややこしくなり、当事者達が予想していた事から予期せぬ結果になってしまう。ってこれってまんま現代の置かれている状況のような。
最後全員が見つめた電車の光は、日本の未来への暗示?明るい希望メッセージってことだったのかな?

雨が降っている間はオドオドした感じだったハルキが、雨がやみ停電した途端豹変、北の兄に敵意をむき出しにし、蝋燭の灯りだけで対峙している様は迫力があった。また好きな女を奪う北の兄は役に合ってた。
兄を気にかける弟、誰かと交信し繋がろうとするトランシーバー少年、わざと万引きし注意されたい男、傍観者のようで血の結末を選んだコインランドリーの兄さんと姉さん。街の中で交錯している人物達が雨の中でもがきながら生きている姿は脆くて苦そう。

停電後の蝋燭の灯りだけで進行する場面は、炎が揺らぐ度、先日の震災直後の心細さにも似て生や死を連想しそうになるが、正直、漠然とした理解しか出来ないのが口惜しい。
機会があったらビニール準備に慌てず落ち着いて見たい。
東京オリンピック生まれの男【振替公演】

東京オリンピック生まれの男【振替公演】

マセキ芸能社

サンシャイン劇場(東京都)

2011/07/07 (木) ~ 2011/07/10 (日)公演終了

満足度★★★

‘64生まれ、±3年世代の人はかなり嵌り易いかも
タイトル通り、‘64生まれの(多分平凡な)主人公の半生?一生を独り語りで演じていた。その当時流行った歌謡曲やフォーク、ニューミュージック、洋楽を多用し使用していたけど、あの時代に青春期を過ごしていた人達には感慨に耽りたまらんのでは、と思った。
ちょっとかじってる自分も使用されてる曲が流行った時、当時夢中だった事とか思い出してたし。
でも映像化する時(するのかな?)どうするんだろうと邪な考えがよぎってしまった。

千秋楽の為かカーテンコールの際、花束やプレゼント手渡しする人が何人かいたけど、制止するスタッフもなく、テレビに出ている有名人なんだなーと妙な実感。
でも、流石に舞台に駆け寄らせる行為は注意しましょうよ、スタッフ。

ネタバレBOX

子供の頃に一等賞を取った経験が、その後の人生に多大な影響を及ぼし、小・中・高・大・劇団員・社会人と過ごす中、それぞれの時代で一等を目指して生きていこうと毎年懲りずに努力はする。一時的に良いとこまでいき脚光は浴びるけど、すぐ現実が邪魔をして結局挫折。

ひょんなトコから無人島漂着、無事帰国し脚光浴びても旬はすぐに終る。その時サポートしてくれた女性と結婚し、子供を授かり、人と違う事をやっていても子煩悩さは他人と同じでカメラで愛息を撮りまくる日々。
ある時、故郷に帰省し初恋?相手の訃報を聞き、自分の人生を重ねあわせるも戻れない日々に「悪いヤツは長生きし、いい人は居なくなってしまう。」と慟哭に近い叫びを上げてしまう。が、いつもの日常に戻りつつ過ぎようとしている。
この辺り、震災の影響もあったのかな、少し胸が熱くなった。

ある時、ふとした光景を写真に収めたのがキッカケでコンテストで念願の一等を取ってしまう。その写真をコンテストに送ったのは誰あろう支えてくれた妻。一等を掲示されてる写真に映し出された姿は横断歩道を渡ろうとしている手押し車を押す母と、周りの車を制し愛妻を守ろうとしている父の姿だった。

一瞬、客席をうるっとさせ、そして感動の〆へ向かうのだろう、と予想。
これをキッカケに写真家へと転向、なんてしません!と堂々と宣言し最後の最後まで見事に期待を裏切るのであった。
数年後、愛息が徒競走で見事一等を取る。
子供の何気ない一言で一等の精神は引き継がれていく。

時代時代で経験してきた事がキーワードとなり、その後の人生に意外な形で関わってくるのだが、それぞれを再現するのにアクションやら、ダンス、ピアノ演奏、(独りなので当たり前だけど)台詞を駆使し楽しませてくれました。
誰も傷つけない優しい芝居でそこら辺が演者の人生観というか、真面目な部分が見え隠れしたような印象。
でも、なぜかテレビ画面越しに見ているように感じた舞台だった。
SAD SONG FOR UGLY DAUGHTER

SAD SONG FOR UGLY DAUGHTER

大人計画

本多劇場(東京都)

2011/06/10 (金) ~ 2011/07/10 (日)公演終了

満足度★★★★

アンコール1回が浸透してきましたね。
どんなに無頼派や突飛さを気取っていて世間とはかけ離れた生き方をしていても、家族が増えると作風の変化や性格の変化が見受けられるけど。
「人はどこまで分りあえるのか」がテーマだけど、違う劇団がやると、かなり毛色の違った話になりそう。
ウーマンリブはどこから見ても明るく軽く、しかし残酷、救いの手の出しづらさは変わっていない。清々しさは無いけど、生きる事への葛藤と力強さが大きい登場人物達の無味乾燥ぽさと辛さ。
沢山笑って、終盤トンネル迷路に入り込み抜け出せなくったような気分で帰路についた。

ネタバレBOX

父親とは真逆の生き方をしている、父親よりも年上の自由人の犬吠さんと結婚したかったのに、実家の和菓子屋の七代目が決まった途端父親と同等のように見えて気持ちが離れていく。
父親は後継者が決まったら重い病気にかかってしまい、遺影撮ってくる。
弟は学校に行くつもりだったのに、自主退学を勧められるし。
2年後80%の人間がいなくなるとか、終末世界を連想させ、結構深刻な話になってくるのに、なんで笑わせてくれるんだろう。

胸の奥底にいろんな思いが沈殿してきて、ホームドラマ特有の家族や信頼感、団結とかとは一線を引いている。出口の見えないトンネルから抜け出せず、もがきつつ終ったという感じ。強い不快感は無い。だけど、ちょっとだけパンチが柔かった。

終演直後は結末について戸惑ったものの、子供のまま大きくなって、父親と歩みを共にする事なく過去を振り返った事や未来の希望を悟った娘は一瞬で散る。時間が経った今はあっけらかんと終らせたあの結末でも少し納得。

多分他所では見られない、松尾さんの頑固一徹親父や岩松さんが普段使わないような台詞を口走っているのが妙に面白かった。しかし、岩松さん、毎日宮崎さんに抱きついてくるくる回して身体大丈夫だろうかw
おどくみ

おどくみ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2011/06/27 (月) ~ 2011/07/18 (月)公演終了

満足度★★★

ちょっと昔のホームドラマ
昭和末期から平成初期のお弁当屋兼お惣菜屋さん一家を巡る話。

「学習院」というブランドに縁のない自分としては、何の学部があるのか全く知らないけど、即「皇族」「宮内庁ブランド」「上品そう」が漠然として出てくる程度で、劇中の家族同様、軽口の冗談話程度の関心で日々過ごしていた。
ということで自己中心で考えれば、長男(剛)が学習院大、長女(郁美)は医大生、母親が料理上手でしかも綺麗って、かなりポイント高い一家ですw。
家長のパパ(幸広)の、家族を大事にする思いと、お気楽で元祖TVっ子のほほんぶりが「あ〜いるわ〜」と人んちの家庭生活の匂いが想像出来た。
世代的に兄妹と同時代を過ごしていたので、兄の物事が上手く運べずくさくさする感じ、妹の叔父を巡るやり取りに気持ちが嵌ってしまった。

天皇が絡む話といえば井上ひさし氏の作品が思い浮かべるが、あの人の天皇とは(青木さんが反骨精神とかは追求してないと思うけど)権威や威厳とかが対比するかのような緩さだった。自主映画で世間からはみ出す様な作品を作る事を追求し、それらの事象を舞台の上で見せた事はいいと思うけど、そこまで「アナーキー」とはなっていない気がした。
毒性が薄く「国立ですのよ」という印象。
皇室マニアの酒田さんの最後の台詞から、時代の流れ的にあの時は未来に夢や希望がいいイメージでまだ想像出来てたからかな。
まだ現役だから良くするように努力するけどさ。

役者さんも全員上手くって、楽しめたし良かったけど、向田邦子作品を薄い味付けにしたような印象だった。

ネタバレBOX

だらしない親類(次男の二郎)、それをほっとけない母親、その思いを汲み取っている長男(幸広)。その感情をすんなり理解出来る分、自分も親世代に近づいたと自覚する。
関係ないが、幸広お父さんは夏場は高校野球中継に夢中になってそう。

次男が絡んできて離婚して家族崩壊するパターンかな、と危惧したけどあの家族流の解決の仕方に少しホッとした。
石綿君は見た目、御学友(正確には全く違うけど)ともいえる人間性の良さが垣間見えたが、人それぞれ表面の見えない部分ではいろいろ葛藤や悩みもあるわけで。その辺はやんごとなきお方にも共通してるのかな。この作品見たら「それそれ!そこ!」とか思うのかな。・・流石にこんな軽い口調ではないだろうが。

舞台良かったけど、「お毒味」=偉い人に関わる重要な仕事という思い込みが強く、今作を見た限りではそれを絡めて巡り巡った家族の話という感じだったので、薄味の向田邦子作品を見た様な後味。
幽霊たち

幽霊たち

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2011/06/14 (火) ~ 2011/07/03 (日)公演終了

満足度★★★

紫煙が似合いそうな舞台
見ている最中、翻訳台詞の硬さと話の不思議さに話が淡々と進む分
ついていけず、思わず緊張。原作読んでた方が良かったのかな。
終始、薄暗い森の中にいるみたいな不安感があった。

話が進むにつれ退屈でシンプルだったはずの依頼に疑問が生じ、やがて引き返せない事態まで行くブルー。
不条理芝居の工夫は役柄を色で判別、時折ダンスしているかの様な何気ない動作の配置や動きが面白かった。
そして蔵之介氏の姿勢の良さに感心。男優陣がダンディで絵になる。
映像と併せて視覚が研ぎすませる舞台だった。
しかし、自分には難し過ぎの感。

ネタバレBOX

冒頭の部分「後に妻となるオレンジ」って台詞があったが、何気にハッピーエンドだった。
おもいのまま

おもいのまま

トライアングルCプロジェクト

あうるすぽっと(東京都)

2011/06/30 (木) ~ 2011/07/13 (水)公演終了

満足度★★★

どう言ったら上手く伝わるのか…
一幕と二幕反復芝居。もちろん結末は違うけど。

様々な選択肢の中から現実を受け止め、無意識の中、気をしっかりして見ないとアフロ記者達の行動に巻き込まれそう。
レイトショー映画見た様な怖じ気もあったが、それまでの緊張した空気とは対比する様な笑わせる行動で幾分空気が変わって、ちょっと楽になった。
硬派だけど根底はシンプルな舞台。
見終わった後、曇り空の中から木漏れ日が見えた様な気分だった。

ネタバレBOX

あの時の選択をこうしていれば、もっと人生変わった生き方をしていたのかもと、ふつふつ思う事が出てきたのは自分も齢を取った証拠なのだろう。まあ、賢かったか、愚かだったかの選択の葛藤は今後も出てくるだろうけど、そんな事はもっと先に考えればいいか。

チラシ紹介文の通り物語は進み、記者2人の登場で夫婦2人の築き上げてきた状況が一変する。実子の死亡原因は事故か事件か。事件なら誰が殺したのか。これに目を付けたのがスクープ連発していた記者2人。違法スレスレで執拗に調べまくった結果、虐待を疑いその証拠を探るべく、かなり手荒い方法で夫婦の家に土足で入り込みエグるように証拠を探して行くが次第にエスカレートしていき…。

もー、暴力を受けているときの佐野さんの表情と悶絶具合がほんと痛そうで、思わず顔を背けたくなる。で、ほぼ縛られっぱなしのえりさんと佐野さん。前半と後半の夫の趣味が発見された時の、2人の感情が何とも…特に後半、夫の性癖に対する妻の吐露の状況はちょっと気まずいけど笑えた。
縄抜けの術は今後、幅広い意味で生きる過程にいかしたい。・・いかせるかな・・?

記者の2人は前半と後半、どちらもアフロで!イニシアチブを取るけど、快楽と本音と欲望が大部分を占めてるように見え、スレスレで生きてるような感じだけど、それで満足なんだろうな。非道だけど。
後半の選択に、爽やかではないけどそれまでの不快感は消えた。

これからの夫婦2人の日常生活が平穏でいけばいいなと思ったが、大変なんだろうな。えりさんの優しく前向きな表情が印象的。
物語全体を幼子の声が響き渡り、知らぬ間に何かに操られていた様な気分だった。
CLOUD -クラウド-

CLOUD -クラウド-

青山円形劇場

青山円形劇場(東京都)

2011/06/23 (木) ~ 2011/07/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

ゴミ袋+風船×PC=誰かの頭ん中
↑のタイトルはイメージです。
舞台上に蜘蛛の糸ならぬ雲の糸と透明風船、アレはいろんな人のネットをみている頭の中身?思想?抽象?
見終わった後、決して恐怖とかでなく潜在意識の奥底からぞわぞわした。
なんか中毒性のある芝居だった。

男5人の舞台は渋くて素敵。イタバシとウサミの差し入れや無茶ぶりは、毎回日替わりなんだろうかw。

ネタバレBOX

舞台上に無数のバルーン、その中からオガワが出てくる。見上げた先に一本のコンセント、まさしく蜘蛛の糸ならぬ雲の糸のよう。
生活の良きな物から悪しき物まで全てはネットで購入、実在したものは全てデータ溜め込み日常の一部としてクラウドへ保存。

世の中、自分に似た人は何人か居ると言うが、早々逢えるもんではない。が、これだけ生活必需品としてネットが入り込んだ世の中に生きていると、PC上で容易に似た自分史に出逢えるかも。無関係な他者から見れば、全くもってどうでもいい。それが冒頭のバルーンかと思うといろいろと感じる部分が強く出て、心がざわつく。

オガワとエンドウの幸福、哀しみ、怒り、懺悔、孤独、欲求etc・・
エンドウがネットに書きこめない、繋がらない瞬間の人生の証が無い絶望感とオガワへの憎しみ。
神か悪魔かよくわからないけど、アマリという存在の導き方。

スズカツさんの「揺さぶられる」という一語に納得。
過去作の「LINX」にも通じてて、クセになりそな作品!

それにしてもドラッグっていろんな種類が有るんですねぇ…。

さすらいアジア

さすらいアジア

壱組印

ザ・スズナリ(東京都)

2011/06/22 (水) ~ 2011/06/29 (水)公演終了

満足度★★★★

等身大の猿ドラマ?
人間に憧れる猿、猿に近い人間、どちらからも俯瞰した様な奇妙で滑稽な話。正直分らない部分も多々あったけど、劇中歌が一寸皮肉めいてた。
役者さん全員チャーミングで土井さんの歌声が聴かせてくれる、素敵な声だった。
毎回、舞台上の大谷さんの見てるとこちらも幸せな気分にさせられ、楽しそうな表情に毎回やられちまうんですが。
深くて哲学的、が、そんなに考え込ませず笑わせてくれた猿芝居でした。

NOISES OFF/ノイゼス オフ【俳優の怪我により25日夜、26日の公演中止】

NOISES OFF/ノイゼス オフ【俳優の怪我により25日夜、26日の公演中止】

シーエイティプロデュース

あうるすぽっと(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/26 (日)公演終了

満足度★★★

芸能裏舞台、お腹が空いたら鰯を注文で
ロビーに原作者の日本で上演された舞台のポスターが展示されてましたが、結構上演されてるんですね。掲示されたポスターで幾つか観劇した舞台がありました。

劇場全体を使い、ゲネプロから本番、千秋楽と劇中劇「ナッシング・オン」を3回見る事に。登場人物のせいでいろいろ内容が変わってしまう過程に思わず笑ってしまう。翻訳劇じゃ無かったら三谷幸喜作品がこのテイストに合っていそう。また舞台制作の実情をよく知っている人達なら、もっと楽しめるんだろうな、とも思った。

チームワークが良いと思わせる役者さん達が全員素晴らしくって、特に小島さんのクールなコメディエンヌぶりと藤木さんがキュート、佐藤さんの崩れてく様とソンハさんの天然ぷりに笑ってしまう。
テンポよく進むけど、小道具はあっちこっちに移動してるし、劇中の役者やスタッフ入り乱れて最後のカーテンコールまで細かいお芝居。ほんとに無事終って良かったw。
ただ、初見が千秋楽観覧であんな舞台見せられた日にゃ、アンケート用紙にいろいろ書きなぐりそうな自分w。
お腹空いたら、本能的に鰯料理を選んでしまいそうな舞台でした。

でも楽しんだけど、面白かった!と力説する程まではいかず…。

ネタバレBOX

セクシーな場面や、泥棒登場シーン等に使われたBGMがまたベタな選曲でついにやにやしちゃった。
千秋楽のカーテンコールで演出助手の彼女のお腹にもびっくりしたけど。何ヶ月公演だったんだ!?

翻訳物だけど、浴場を欲情とかの言葉変換はどうやっていたんだろう。
やっぱり、「ナッシング・オン」まで台本が有ったんだろうか。
全ての言葉と全体像を見せる意図もあったのか、ドタバタのリズム感が昭和のコメディ劇を見ているようで、ドタバタさをもう少し端折ってても良かったのでは?なんか詰め込み過ぎに見えてそれが惜しい、と思った。
偉そうですいません。

チケット発売後から続々とアフタートークの日程内容がでてたけど、出来れば発売前に発表してほしかった。アフタートークの出演者の話によっては舞台で「?」と思った事が「!」と理解出来る事もあるんだから。平日仕事で休みや時間調整しながら観劇してる習慣の者としてはその辺は不満。
雨

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2011/06/09 (木) ~ 2011/06/29 (水)公演終了

満足度★★★★★

東北弁に馴染みが無くても面白さは伝わる。
ロビーで山形キャンペーン絶賛開催中でした。

江戸っ子の金くず拾いから東北の平畠の紅花問屋の旦那に成り済ます羽目になり、成りきろうとするが…。
とある場面の亀治郎さんの二役と最後のシーンは流石歌舞伎役者、思わずかけ声掛けたくなる迫力で。何でも出来る人なんだな〜。
最後のドキドキするような気の利いた展開から、ドンデン返しが皮肉な幕切れまで計算された話でした。
井上作品ではおなじみの洒落っ気のある踊りと歌は牧歌的に聞こえ、優しい印象。舞台中央席で見ていたので、ラストのステージ一面に広がった紅花畑は見事な風景でした。

ネタバレBOX

御城代の為、紅花栽培は必須。紅花屋の女房おたかさんが策士!紅花のようにとげのある一枚上手な女性だった。でもって家老や識者達も結構残酷。江戸っ子風に言うならば「上手い事やりやがる」って言いそう。

大店の亭主になりきろうとする徳。釜六と花虫殺しから、ほころび加減が加速し、味方に付けたかった手代や百姓達にも疑われる。
結局、自分を殺したのは自分という結末が何とも哀れ。

今更ながら井上作品の素晴らしさに感動。
THE SPOT

THE SPOT

KKP

天王洲 銀河劇場(東京都)

2011/03/09 (水) ~ 2011/03/14 (月)公演終了

満足度★★★

震災振替公演
前作公演内容とあまり変化はなかった気がするけど、毎回趣向を凝らした映像、光と影の調和、アナグラムの扱い方は今回も健在。

地震の影響で一時中止となり、今回振替公演。いろいろあるにせよ気楽に舞台を楽しめる幸せを噛み締めた。

てな事書いてた矢先に、東京最終日…なんというか、とりあえずしっかり治してまた公演出来ますように!

ネタバレBOX

話芸が好みなので、一坪の王様と壺の落語は聞き入った。素直に面白かった。
コクーン歌舞伎第十二弾 盟三五大切

コクーン歌舞伎第十二弾 盟三五大切

松竹/Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2011/06/06 (月) ~ 2011/06/27 (月)公演終了

満足度★★★★

魅せる演目
劇場入って、提灯が見当たらなかったのがちょっと淋しかった。

全体的に美しいが重苦しいシェイクスピア悲劇みたいな印象、チェロ演奏がその世界を嘆美で現代劇な世界に変えていた感じで、魅せる歌舞伎だった。都合良く絵図面や百両が手に入る過程は、歌舞伎的な話の展開と思ったw。
騙しと恐怖で正気を失い、怒りを爆発させるでなく内に秘め、雨の中、桟敷を無言で彷徨い歩く橋之助丈がカッコ怖く、迫力があった。
小万と三五郎カップル、立ち振る舞いが綺麗で可愛かった。またこの二人の共演があったら見てみたい。なかなか難しいと思うけど…。

因果応報やら刃傷沙汰、優美さとか見とれる様な演目も良いんだけど、コクーン歌舞伎はもうちょっと元気がある演目をやって欲しい。再演ものはもう良いんじゃないかな。といってタイトルがすらすら出る程、歌舞伎を見てないんですが。すみません。

ネタバレBOX

源五郎の人が好いのか騙されて、その挙げ句下男が主人をかばい、正気を失っていく様が怖く、小万の首をそばに置きお供え飯を喰らう表情と行動が何とも恨みがぽっくって・・それでも小万の首は帯に包み大切に懐に入れてる行動とか見てると、やっぱり一人の女を愛おしく想っていたんだな、と分かる。
粋な芸者の小万が母となり幼子を扱う振る舞い方、源五郎に切られる無常の落差。
三五郎は親孝行と忠義が報われず、二人の関連が分かった時点で何とも悲しい結末、悲惨なのに根っからの悪人がいないなんとも道理のいかない話。これが歌舞伎ってやつなのか・・自分、まだまだ見る修行が足りんのね。
最後、舞台が廻りそれまでの生きていた人、亡くなった人が走馬灯のように現れては消え、しかし人生を謳歌している様な表情に少しホッとした。
討ち入りの声が勘三郎丈でしたが、三味線とチェロの一角でじっと舞台を見ていたのが印象的でした。
下男役の国生丈は、まだまだ頑張れって感じw。

堪能したけど、次の演目は元気に劇場出て行ける題材にして欲しい!
アトムへの伝言

アトムへの伝言

劇団扉座

紀伊國屋ホール(東京都)

2011/06/15 (水) ~ 2011/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

いろんな「情」
紀伊国屋ホールで最終日に見ました。
ロボットに差別用語や危険行為はプログラミングされていない。だけど、人間と接する事でロボットなりに成長と苦悩があり。とある事がきっかけで責任負って師匠と漫才する場面は泣き笑いするしかなかった。
研究者チームのロボットへの心意気と生真面目っぷりな行動がまた可笑しさを誘い、世間との孤立感が見えるようで切なくなった。
軽そうに見える劇調の中で、笑わせて、問いかけて、終いにゃ考えさせる。だけど辛いとは思えず。むしろ温りがあり、これが劇団30年分の底力なんでしょうね。
会って久しい友人からの手紙を読み返した後の様な、懐かしさを感じ見て満足、良かったです。

それにしても、亀屋芸能社めちゃくちゃ昭和テイストな興行会社だった…。
柳理科子が一番ロボット風味が強い容姿だったなー、まさに今!21世紀の顔って感じ。
漫才の一部分は下ネタが厳しくて苦笑いするしかなかった。アドリブ?もあり笑わせてもらいました。

ネタバレBOX

偉大な博士の指示の元、研究者チームがカッパロボットを開発、漫才プログラムを度々バージョンアップさせ本職の漫才師と諸々あった後、コンビを組む事になる。
差別用語や人間を傷つける行為は入力されていない。だが、ヒューマノイドロボットという事で機械人間だけど感情があり。
とある事がきっかけで人間を傷つけてしまい、博士の指示でロボを木っ端微塵にしなくてはならず。
だけど、そうならないように自制し、曖昧さで加減出来るのも人間、この二重構造さが今の日本人の姿にダブって見えてしまった、ちょっと考え込み過ぎてるけど。
鉄腕アトムに匹敵するような自己犠牲が働いて、心を持っていないはずのカッパロボの心がわかった研究者と必死に逃げさせようとする研究員。地雷を鳴らさなくてもその後が容易に解る幕切れと、研究者チームの空を見上げる表情に最後の最後まで、いろんな涙が出てきて困った。

海老乃家ラッパのお笑いへの強情と恩情。
芸能会社社長親子の人情や厚情。
大衆芸能の情緒と事情。
研究者チームの情熱と心情。
ラッパとカッパの温情と深情。
いろんな「情」を感じ取れる舞台でした。

終演後、ロビーに出演者さん達集合してたんですねー。知らなかったーちょっと残念w。
天守物語

天守物語

少年社中

吉祥寺シアター(東京都)

2011/06/03 (金) ~ 2011/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★

和風エンタメ
クチコミの好評価と劇団HPの作りの綺麗さに驚き、最終日にチケット取り獅子頭さんと常に目が合う位置で見てきました。

古典作同様に残酷さもあり、切なさもあり、踊りで始まり踊りで終わり、総じて夢のような絵巻物を、小劇場ならではの迫力で見たひとときでした。

ネタバレBOX

生きる世界が違う二人が出会い、戦が絡み。人間の狂気と憎悪は生きる執念深さにも見える。あの地震がなければ、切ない幕切れで済む感想だったろうが「苦しくても生きる」という台詞に複雑さと希望とが入り混じり、これからの道標の方向次第を考えたら心が苦しくなったが、決して悲観してはいない。

鷹は本当に鷹っぽかった。気になった点は姫の心象はもっとあって良かったかも。亀姫も妖艶というより、幼さの印象が強かった。

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