こまごめとなりの観てきた!クチコミ一覧

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ねもと

ねもと

COLUMBA

STスポット(神奈川県)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度

笑えない笑い。
フライヤーの夢の話に惹かれて、STスポットを訪れた。

石神夏希(脚本家/演出家)は、客を笑わそうとして自分が笑ってしまっている。
言ってしまえば、それに荷担している役者の仕事も、ちょっと許せない。
何も共有することはできないし、共感することもない。ごく悪い意味で。
久々に観劇を後悔した作品となった。

PPTは、大変楽しかった。
中野成樹と石神夏希の掛け合いで幾分面白みを理解できたが、
そこは絶望的に共有できないのだな、とも認識できた。

ネタバレBOX

中野成樹も指摘していたが、パーツとしていろいろなモノが出てくる。
その種のばらまきは、決してカタルシスとか収束とかを目指してはいない。
それはそれで潔いのだけど、徹底的に共感が出来ない。
中野は「逆に面白い・格好いい」的なニュアンスで評価をしていたけれど、
猫も杓子も「逆にいい」では、ちょっとなぁ、と思う。

「石神夏希のやりたいことやってる」のを満足できる人なら納得できると思う。
少なくともこの作品に説得力の欠片もなかったので、僕は好みません。
祝/弔[祝─駅前劇場側]15日本日千秋楽

祝/弔[祝─駅前劇場側]15日本日千秋楽

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

駅前劇場(東京都)

2008/09/04 (木) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

見えない綱の向こう側。
野坂実の魅力は、曲乗りのような話の転がし方だ。
約束された最後を感じさせず、ギリギリの綱渡りに目を見張る。
それを見出せたのが、『NINPU妊xxx婦SANJO』であった。

今回思うのは、見えない綱渡りをいかに楽しむのか、である。
二劇場同時公演で登場人物が行き来するという状況下において、
「祝」で行為A、「弔」で行為Bが行われたとする。
A・Bともにそれぞれの主体性を帯びることもあろうが、
AがBのために行われたり、その逆のことが行われることもあるだろう。
結果として、多少の粗が見えてしまったりもする。
粗が見えることにより、逆に綱渡りの安全さ(結末)が見えたりもして。
誤った推論かもしれないが、一つの作品としてのクオリティは、
結果として低くなっているのではないか、と残念に思うのである。
端的に言えば、ちょっと強引な設定が多かったかな、と。

ああ。長々と書いてしまった。
要するに二劇場同時公演は、お祭り的要素が強い。
「祝」から「弔」を想像させるのは、興行的に言えば魅力はあるが、
作品的な魅力に直結するとは限らないのではないか。
それは、野坂実の力量の問題ではなく、興行スタイルの問題だ。
一つの問題として提起したい。
(そして、「弔」が見たくなったことも付け加えておきたい。
 やっぱり、いろいろ気になるじゃんか)

ネガティブな印象ばかり書いているが、作品として納得はできている。
納得できたのは、観客の感情を一身に集める人間がいたからだ。
「祝」の巧さは、この人のキャラクタでカバーしている点にある。
脚本的に巻き込まれ役として、上手く味付けしているだけでなく、
それを素材のよさが、さらに引き立てているように思えた。
それが誰なのかは、ネタバレにて。

ネタバレBOX

場をうまい具合に成立させた、関根信一。
中性的で稀有な存在感は、観客の注目を集めやすかったと思う。
割と強引な設定も、ごまかしきれる強さも感服した。
「祝」は彼/彼女のためにあった。
トカゲを釣る-改-

トカゲを釣る-改-

スロウライダー

新宿シアタートップス(東京都)

2008/09/02 (火) ~ 2008/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

Invitation.
スロウライダーには、何度も戦慄させられてきた。
一見まともに会話ができる変態たち。荒唐無稽さを説得するロジックの強さ。
笑えない瞬間でのくすぐりの数々。背筋を寒くさせる抜群の音響センス。
前回とは一転し、本道に戻ってきた感もあり、軽い震えを覚えた。

ホラーというカテゴリーで語られることが多いスロウライダーだが、
“人間の面白み”という点から見ても、群を抜いている。
ふとした自己顕示欲とか、切実さとか、それらの表し方がたまらなくよい。
今回は、特に役者が素晴らしかった、と付け加えておきたい。

日常から少しズレた世界への招待。
喜んでお受けしたい、と、「トカゲを釣る」は思わせる力があった。

ネタバレBOX

金子岳憲と日下部そうのやり合いは、なげぇって思うくらい密である。
それぞれの切実さがガチっとぶつかり合っていて、見応えあった。

切実さと言えば、中川智明。彼の小気味よさがくすぐったい。
真剣が故に行動が異常になる、というのをさらっとこなすあたり怪優。

遠藤留奈の仕事ぶりも特筆に価する。
カギュウとして出てきた場面、ではなくて、最初の食べられる前の女性の方。
顔なんか見えなかったけど、最初の場面をぎゅっと締めたのは彼女だった。
脇の脇まで仕事のできる役者がいると本当に安心できる。

怪談 牡丹燈籠

怪談 牡丹燈籠

花組芝居

あうるすぽっと(東京都)

2008/09/03 (水) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

落語をききたい。
怪談牡丹燈籠と言えば、六代目三遊亭圓生である。
特に「お峰殺し」。あのじわじわくる人間の怖さ。
小学生の時分でも「女の嫉妬は怖いなー」とか思っていた。

それにしても、加納幸和は要約の巧さは一品である。
記憶をおぼろげに辿ってみても、要所要所は押さえてある。
これほどに長い話をざらっと舐めるのは本当に大変な苦労である。

だがしかし、知る者に言わせれば、味わいたい部分が流れてしまう。
そして、長い長い上演時間150分。
帯に短し襷に長し。まことにじれったい。
何と言うか、薄味で美味しいコンソメスープをずっと飲んでいる気分。

とにもかくにも。
これを観劇したら、ぜひ圓生のCDを聞いていただきたい。
耳だけで聞く、というのが、また別の怖さを呼ぶことでしょう。

ネタバレBOX

小林大介の伴蔵が、惚れ惚れするくらい素晴らしかった。
小物から大物、悪党への変換が、徐々に魅力を引き立たせる。
若手出世頭の風格さえ漂う。

加納幸和のお峰をもっとじっくり見たかった。
実にぴったりな役だと思うだけに、ちょい出しはもったいない。

丸川敬之の伴蔵は、その軽さが爽快であった。
クライマックスの仇討ちまで少しふわふわしているのが微笑ましい。
が、もっとカッコつけてもいいんだぜ、とも思うのである。
[EKKKYO-!]  冨士山アネット・快快・劇団山縣家・ピンク・夙川アトム・FUKAIPRODUCE羽衣参加!

[EKKKYO-!] 冨士山アネット・快快・劇団山縣家・ピンク・夙川アトム・FUKAIPRODUCE羽衣参加!

冨士山アネット

ザ・スズナリ(東京都)

2008/09/02 (火) ~ 2008/09/03 (水)公演終了

満足度★★★

お望みの……。
ショーケースは観る方も演る方も諸刃の剣である。
端的に言えば、「意外な幸福」と「お望みの不幸」といったところか。
そして、大概が「不幸寄りの普通」くらいで、終わってしまう。
相乗効果を生んだところを一度も見たことがない。

そういう意味で言うと、今回もやはり同じことであったと思う。
はっきり言って、『EKKYO-!』の参加メンバーの面白さの時点で、
ある程度の成功は約束されたものだと思っていい。
しかしながら、作品間での何らかの化学反応は皆無であった。
まあ、いつものことだと言ってしまえば、それまでのことだけど。

劇団山縣家とFUKAIPRODUCE羽衣との出会いは収穫であった。

ネタバレBOX

・夙川アトム
(TVで観るように)まったくブレない芸風は、安心感すら覚える。
もっとドキドキさせてほしいくらい安心でいっぱいであった。

・ピンク
コミカルを取り込んだダンスって、少し恥ずかしい。

・劇団山縣家
3人いるだけで、場の空気がゆるゆるになる。家になる。
「家族で劇団をやる」というだけでネタなのに、妥協がない。
亀取りのエピソードは、秀逸の一言。

・快快
テクストと身体と映像が、単体で存在してしまった居心地の悪さ。
いつもなら高まってくる部分がすっと落ち着いて終了。

・FUKAIPURODUCE羽衣
バカバカしさに妥協がない。テクスト・歌・身体。もうバカ!
誰一人愛せないキャラクタを取り揃えたことに震えた。

・冨士山アネット
相変わらず、ダンスだけでも見ごたえがあるなぁと思うのだけれど、
物語が感じられてこそのテアタータンツ。
ホストとしての最低責任は果たしているだろうが、全く物足りなかった。
真剣恋愛

真剣恋愛

劇団競泳水着

王子小劇場(東京都)

2008/08/28 (木) ~ 2008/09/03 (水)公演終了

満足度★★★★

本物の作り物
“トレンディードラマ”という言葉から想像される、台詞・行動・出来事。
なるほど、その枠の当てはめ方というか使い方というか、ブレがない。
観る側も、その流れに乗ってしまえばしめたものだ。
あとは清涼感のあるエンディングまで確実に運んでくれる。

これだけエンタテイメントに終始してくれると、肩の力が抜いて観られる。
フィクションを描き続けることで、意外なリアルが立ち上るような感覚もあり、
実に王道的な物語の作り方をしてるなぁと、思わされた。

設定や物語の粗も散見されるが、もはや問題にすべきではないだろう。
そこは十二分に、役者が(時に強引な)説得力をもって世界を構築している。
役者の強度も、この芝居をカラフルなものにしてくれている。

ネタバレBOX

各所くすぐったくて笑ったり、本当におかしくて笑ったり。
ちなみに、いちばん可笑しかったのは石油王と結婚した女優の話。
家族の肖像

家族の肖像

サンプル

アトリエヘリコプター(東京都)

2008/08/22 (金) ~ 2008/08/31 (日)公演終了

サンプルのサンプル。
「サンプルは、本当に“サンプル”なのだな」と思いながら時間を過ごした。

非理想的で、歪んでいて、しかしどこか現実的な現代家族の姿。
作品には、それっぽい暗喩が散りばめられている。

と同時に、サンプル自身のサンプル化が際立った作品だったとも思う。
松井周の得意とする台詞回しやくすぐりどころがふんだんに使われており、
ほとんどネタ見せのような状況だったといってもいい。
物語が見たいな、と舞台を見下ろしながら、少し思わされた。

ネタバレBOX


人間の外見は入れ物で、中身は入れ替え可能という話は、興味深い。
興味深いが、どこか手垢がついている感はぬぐえない。
手垢がついているなりの提示の仕方もあったろうが、
最終結論として持ってこられたので、逃げ場なし、の状況であった。

個人的に、“家族”は特に興味のあるテーマとして捉えている。
が。サンプルの提示に終わった今回は、「なるほど」の一言に集約される。
ボクコネ

ボクコネ

タカハ劇団

駅前劇場(東京都)

2008/08/14 (木) ~ 2008/08/17 (日)公演終了

満足度★★

バカの足りなさ、泣きの浅さ
“バカSF”というジャンルに属する物語があるらしい。
要するに荒唐無稽な物語なのだろうが、それを論理的に語るから余計
バカバカしさが増すという、そういったものである。

そこから見るに、『ボクコネ』。確かに荒唐無稽は荒唐無稽である。
設定の強度を感じるのは、主人公だけだ。もう言い切ってしまう。
既視感を覚える世界、何となく知っている知識、ステレオタイプの人物。
バカをやるにせよ、泣きをやるにせよ、既存の枠から飛び出さぬ感じは、
いささか閉口であるし、失望したと言ってもいい。
安牌すぎやしないか?

たぶん、旗揚げ作品とのことで、今の作風とは違うのだろう。
次作を楽しみに待ちたい。

ネタバレBOX

宇宙に行っても引きこもりというのは、実に面白いと思う。
結論から言っても、引きこもりのままという選択も評価してもいい。
おかげさまで、彼は理由もなく宇宙で飛び立たぬままだが、
それはそれで、現代らしい選択なのだろうと思う。

人物がバカをやる時に、バカが人物に厚みを持たせてはくれない。
バカバカしい提案を誰がやっても同じことなのである。
「とりあえず人物配置をしました」感が歯がゆい。

肝となるゆずこ婆さんである田中沙織。
意味ありげなエピソードを重ねても、フラットにアサッテな印象が強い。
前半のバカが後半のマジの振れ幅になりきっていないのか。
星影のJr.

星影のJr.

庭劇団ペニノ

ザ・スズナリ(東京都)

2008/08/14 (木) ~ 2008/08/20 (水)公演終了

満足度★★★★

教育って?
ああ、どこまでも挑戦的なカンパニーである。

パンフに挟まっているタニノクロウからのメッセージ。
これを取りあえずは飲み込んで、少年の目線を追ってみる。
だが、しかし、私たちは少年になれはしないのだ。
その過激なまでの教育を受ける少年を見守ることしかできない。

確かに言えることはひとつ。
私はこんな教育を受けてもいいかな、と思う。
あとでしっかりみっちり補習をさせてくれるならば。

ネタバレBOX

少年役のラヴェルヌ拓海は、帰国子女で来日2年目。
読み書きの勉強の真っ最中にある。大人たちがそんな彼を教育する。
大前提を提示されることは、道標となるとともに、狂った磁石にもなる。

舞城王太郎の「みんな元気。」をどこか思い起こさせる。
「家族なんて入れ替わりかのうだっつーの」
まあ、もちろん意味合いも違うわけだけれど、あえて引用したい。

役割の交換という実に演劇的手法を、信じる少年。
大人たちは何故、交換を行ったのか、行わざるを得なかったのか。
少年はどうして交換を信じ込んでいるのか、疑うことをしないのか。
そこに、どこか悲哀を感じてしまうのである。
美少女Hの人気(追加公演決定しました)

美少女Hの人気(追加公演決定しました)

範宙遊泳

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2008/08/07 (木) ~ 2008/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★

美しき屁理屈。
これほど距離感の掴みにくい作品は珍しい。
屁理屈を元に世界を構築していく面白さだけではなく、
屁理屈な世界なりのルールの提示のあり方は、説得力がある。
そう、何故か地に足が着いているのだ。

俳優陣は荒削りなれど、一所懸命の屁理屈ぶりに舌を巻く。
すっかり作品の理解者であると言うより、作家の煙に巻かれている。
ここにも作家と俳優陣の微妙な距離感が功を奏している。

学内よりも外で理解者を探すべきではないかと思う。
今後の幅広い活動を期待したい。

ネタバレBOX

正当な行為としての(?)ストーカーを描く話、と言うよりも、
ストーカーを肯定する屁理屈の美しさがこの作品の肝だろう。

常識人(被害者)が困惑した上で、屁理屈を受け入れる。
しかし、そうした途端に屁理屈は、別の興味を見つけてしまう。
その移り変わりは、非常に興味を持つことができた。
美少女Hの片割れ、加藤真砂美の仕事ぶりに好印象。

またもう一方の美少女Hについても触れなければならない。
これはまた「隠す」という屁理屈の好みそうな行為がある。
素顔を徹底的に隠すという戦略は、暴力的なまでに美しい。
生憎

生憎

劇26.25団

王子小劇場(東京都)

2008/08/07 (木) ~ 2008/08/12 (火)公演終了

満足度★★★

躁。しかし、色濃く闇。
会話劇にしては、異常なまでの躁状態で話は進んでいく。
一見、空っぽに見える明るさは、深い闇に裏打ちされたものに見える。
逆に言えば、闇を意識させすぎるきらいがあり、過剰な感もある。
おそらくそこは好き嫌いの問題。

ただ、闇っぽさはこの団体の根幹にある部分なんだろうと感じられる。
なるほど、「普通の不在、普遍の存在」という看板に偽りはない。

ところどころの言葉選びの気持ち悪さも徹底していて、◎。

それにしても、長尾長幸は印象が一定しない希有な存在だ。
今回は、マイケル・ジャクソンにも負けぬ博愛を感じた。
……いや、全然、皮肉とかじゃなくて。
いま注目の俳優の一人として記憶されたい。

ネタバレBOX

閉鎖空間を舞台にした作品の中でも、目を見張る秀逸な設定。
どこかリアリティのない人物が多いにもかかわらず、
「有り得そう」な設定で押し切り、結果として世界が立ち上がっているのだから、
これは設定の成功と言い切ってもいいかもしれない。
僕らの声の届かない場所

僕らの声の届かない場所

空想組曲

王子小劇場(東京都)

2008/07/31 (木) ~ 2008/08/04 (月)公演終了

満足度★★★

チャーミングに純愛。
真面目で真っ直ぐで詩的なラブストーリーにぐっとくる。
牛水里美の意外なまでに落ち着いたチャーミングさと、
狩野和馬の計算し尽くされた不器用さが、観客の心を掴んで離さない。
実にチャーミングな純愛物だったと思う。

美術もその世界の構築に一役を買っていて、見事であった。
佐吉祭の中でも随一の出来では無かろうか、と感心。

キャラクタ、台詞といった部分に、落差の大きさを感じ取った。
言うなれば、丁寧に作られた部分と、粗雑に作られた部分だ。
作り込まれた部分は嘆息するくらいだが、そうでない部分は落第点だ。
真っ直ぐな作品づくりだけに、力の入れ加減まで見えてしまっている。
そこまでをチャーミングというのは、流石に難しいと思う。

ネタバレBOX

抽象画から物語が生まれるというのは面白い発想だと思う。
それこそ波長が合う人にだけ伝わるという感覚は、どの創作にも通ずること。
実に普遍的で、手垢がついていそうな感もあるのだが、
そこをあえて真っ直ぐ押し切った純情さは、凄いなと思わされた。
血が出て幸せ

血が出て幸せ

クロムモリブデン

新宿シアタートップス(東京都)

2008/07/29 (火) ~ 2008/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

約束された時間に、意外な距離感。
舞台が始まった瞬間から、約束された時間が始まる。
近年、腕の立つ傭兵のような活躍ぶりが目立つクロム俳優陣だが、
間違いなく、本家でのプレイが一番輝いている。本当に楽しそう。
小ネタの一つ一つがたまらなく大好きであります。

何となく風刺性の強さだったり、最近なぜか各地で見るメタっぽさだったり、
いろいろ感じるところはあれど、クロムはクロム。不満はないのである。

ただ、TOPSの後ろまでそのパワーが意外と伝わってこなかったことは驚き。
パワー集団だと思っていたのに、その事実に、本当に意外すぎて驚いた。
音響ももう少しがっつり仕込んだ方がよい気もする……。もったいない。

ネタバレBOX

まさか、伊東沙保でクロム的な時間がスタートするとは思わなかった。
あまりにもハマりすぎていて、「劇団員?」と見紛うほど。
今回、一番モンスターだったのは伊東沙保だったと思います。
またクロムで観たいです。
休憩室

休憩室

弘前劇場

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/07/25 (金) ~ 2008/07/27 (日)公演終了

満足度★★★

切れ目。
職員室の中の静かなドタバタ劇。ただ、そこに嫌な切れ目がある。
そう感じさせたのは、不自然に場面が途切れる瞬間が多かったからだろうか。
どうも意識が繋がっていかない感じを受けてしまい、もやもやした。
長谷川戯曲の哲学とも違うような気がするし、そこは気にかかった。

それでも、青海衣央里が中国人妻を演じきったのは見事の一言。
やはり、弘前劇場は俳優陣の層の厚さが魅力の一つだ。

次作は新作とのこと。期待に胸震える。

ネタバレBOX

キノコ採りはキノコの場所を教えないっていうエピソードは有名な話。
たぶん、青森に限った話でもないでしょうね。
うちの祖父も八甲田山系で遭難するくらいキノコ採りが好きでした。
閃光

閃光

reset-N

王子小劇場(東京都)

2008/07/24 (木) ~ 2008/07/28 (月)公演終了

満足度★★★★

壁。
メタ構造の作品として非常に好感を持って見ることができた。
私演劇というスタイルもスリリングな状況下を作るものとして効果的だろう。
(ウィキペディア的な知識程度の自分からすれば、と注釈をつけるが)
ヌーヴェル・ヴァーグと呼んでもいい作品ではないかと思う。

ただ、一つ大きな問題がある。
物を作った経験のない者が、諸手を挙げてこの作品を受け入れる状況を
僕は想像することができなかった。
創作者の深い共感を呼んでも、未創作者に「あるあるネタかよ」と
吐き捨てられてしまう状況を、この作品の成功と呼ぶことはできないだろう。
そもそもあるあるネタがこの作品の魅力なんかじゃないと思う。
その壁を飛び抜けるだけの何かを見せてほしかった。
(僕は創作経験者としてこの舞台を見たことを記しておきます)

それにしても、このあとに夏井孝裕はどうするんだろう。
冷房が効きすぎていたわけではないだろうが、ちょっと寒気がした。
そして、次作をこれほど渇望する作品も珍しい。

ネタバレBOX

作家の作品へのコンタクトという興味深い状況を生かし切れていないと思う。
(夏井の言うように、生かし切れるなんて作品がそうそう無いにしても、だ)
「もったいない」とか「夏井さんならもっといける」とか勝手な思いが交錯する。
SISTERS

SISTERS

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2008/07/05 (土) ~ 2008/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★★

物語の引力。
圧倒的な引力を感じる、静かな狂気の舞台。
戯曲・演出・俳優・スタッフワーク。すべてにおいて満足できることは珍しい。
1年間のイギリス留学前に、まさに渾身の一作であった。看板に偽りなし!

情報を小出しにし、徐々に謎を明かしていくやり方はぐいぐい引力を感じる。
ゆるゆると流れ出した物語が、スイッチとともに濁流となる。
濁流に呑み込まれていく感覚は、ぜひ味わっていただきたい。

ネタバレはくれぐれもご注意を。

ネタバレBOX

インセスト・タブーは、それだけで物語の装置として面白みがある。
長塚はそれに甘んずることなく、“姉妹たち”の物語へと消化した。

如何せん長さは感じるが、要所要所にキメてくるから、何となく許せてしまう。

劇的な言葉遣いのせいか、いささかぎこちなさを感じる松たか子だが、
狂気を閉じ込める表現だとしたら、見事としか言いようがない。
また、ここは演出の仕事としても評価すべき部分だろう。

スタッフワークに関して、触れないわけにはいかない。
まさか、ホテルの一室がジャブジャブになるとは思わなかった。
この舞台の妄想力を助ける美術は、比肩するものはない。
地味ながらも場面場面に見事なまでに的確な照明も印象的だ。
アンタも喜びなさいよ

アンタも喜びなさいよ

バナナ学園純情乙女組

桜美林大学・町田キャンパス 徳望館小劇場(東京都)

2008/07/13 (日) ~ 2008/07/15 (火)公演終了

満足度

そのぬるさに覚悟はあるのか?
中屋敷法仁の脚本をぬるくやったらあかん、ということは、
賢明な諸氏ならお分かりいただけるかと思う。
あの叩き売りしているような言葉の数々を、まっすぐにぜんぶ
抱きしめる必要性はないのだ。

それに真っ向から(立ち向かう必要もないのに)立ち向かう。
そのぬるさが、乙女の純情と言うのならば、止める理由はない。
こちらもぬるーくついていくまでのこと。
だから、退屈だけはさせないでほしい。頼む。

野田裕貴の働きは、前回の菊池佳南に引けをとらない。
男っぷりというか女っぷりというか、ともかく上がってて驚いた。
更に研鑽を重ね、吉祥寺シアターでも輝かんことを願う。

最後に一言。
こんなに“おもしろい”★ひとつの芝居はどこを探しても存在しない。
彼女らの名誉のため、それだけは強く言っておこう。

ネタバレBOX

前回以上にやっつけ仕事の脚本に、もはや感動すら覚える。
アンチカタルシスでも狙ってんのかな……。
確かに、ここでしかできないことを中屋敷はやっているんだろう。

というか、この団体は継続団体なんだね……。
もう、何がやりたいのかいよいよ分からん。すげーな。すげーよ。
恋人ができないが、もういい

恋人ができないが、もういい

箱庭円舞曲

OFF OFFシアター(東京都)

2008/07/12 (土) ~ 2008/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

爽快な裏切り。
そう、いつものことなのだ。いつも騙される。
そのクールなタイトルと裏腹に、そこにはホットな舞台がある。
その爽快な裏切りを認めざるを得ないのだ。

どこか冷めたようなキャラクタたちが温まってくる頃には、
客席も温まっているという状況には、毎度のことながら凄いと思う。
キャラクタが徐々に繋がってくる感じは、やはりいいものだ。

箱庭の惜しいのは、「あと10分短ければ」と思うところ。
それを説き伏せる説得力は、残念ながら感じられない。
その熱さをすっと引く巧さはあるのだから、早晩解決できる課題だと思う。

ネタバレBOX

ポストパフォーマンストークで、ゲストの中屋敷法仁が指摘した、
「登場人物が会話していない」というのは、まったくもって同感。
どうでもいいと思いながら怒られる時とかあるものね。そこんとこリアル。

最後にOFFOFFシアターの外に開く窓を開ける場面。
街の雑踏の音が流れ込む時、舞台が一気に本物になる。
卑怯だけど、それだけの積み上げがあったということでもある。
審判員は来なかった

審判員は来なかった

ペンギンプルペイルパイルズ

シアタートラム(東京都)

2008/07/10 (木) ~ 2008/07/20 (日)公演終了

満足度★★★★

謎捨てて、祝祭あり
いつものPPPPのくすぐりの部分だけを抽出したようなお祭り騒ぎ。
だから、謎なんて一切ない。強いて挙げれば、スポーツのルールくらい。

その分、俳優陣を存分に楽しむことはできた。
PPPPの3人はもちろん、片桐仁をはじめとした客演陣の濃密さは、
それぞれのチームワーク、個人技、どれをとっても一級品であった。
そして、カーテンコールの時に改めて驚かされることになるのだ。
「これしかいなかったけ?」と。
密度は人だけで埋めるものじゃないと、否応なく頷かされる。

謎がなくとも、倉持戯曲の強さを感じることができたのは収穫。
でも、PPPPファンとしては、次回作は謎をちりばめてほしい。

ネタバレBOX

盆をぐるぐる回すのは単純に楽しい。
複数の役の入れ替わりそのものや、それさえもネタにしてしまう面白さ。
本当にお祭りだったんだな、と実感。
みみ

みみ

東京ネジ

アトリエヘリコプター(東京都)

2008/07/10 (木) ~ 2008/07/17 (木)公演終了

満足度★★★★

まっすぐに。
現在と過去と空想を織り交ぜた少女的なファンタジー。
語弊があるかも知れないが、実に女性作家らしい作品である。

そういった作品には、ある種の辟易もあったりするものだが、
この『みみ』に関しては、まっすぐに受け止めることができたように思う。
それは、まっすぐ純愛だったから、ということなんだろうか。
まっすぐなものは、まっすぐに受け止めたいものです。
多少耳が痛くともね。

ネタバレBOX

各々が無理のない配役であり、その気遣いは見事だな、と感じられる。
所属の佐々木なふみ、佐々木富貴子に関しては言うまでもなく、
大塚秀記の空気感、ど真ん中すぎる清水那保の少女っぷり、
アンチリアルの若者頭・堀越涼の違和感を消す色男役などなど。
もはや言うことはない。

開いたエンディングだったのも好感が持てた要因かと。

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