こまごめとなりの観てきた!クチコミ一覧

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すてるたび(公演終了)

すてるたび(公演終了)

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2008/11/15 (土) ~ 2008/11/25 (火)公演終了

満足度★★★★

白昼夢か、それとも人生か。
前田司郎の思うような展開にほくそ笑む。なるほど、紛うことなく変な夢だ。
彼がしつこくテーマとしてきた「生と死」が、今回も根強く見えている。
人生を旅に例えるだけなら安易だ。
しかしながら、ニッチなところを攻めるのは流石の五反田団クオリティ。

4つの椅子で、情景を浮かび上がらせるのはチープだけど、凄い。
「チープだけど」という枕詞がつくのは、五反田団として正しいんだと思う。
今までとは少し違った見せ方が新鮮であった。

それにしても、黒田大輔に五反田団は似合いすぎる。

ネタバレBOX

子作り神社(酷い名前だ…)の穴(まあ、椅子なんだけど)を潜る所など、
どこまでも飛躍していく感があって、温泉に辿り着く所など秀逸。
まあ、暗喩と言えば暗喩なんだけど。

しかしながら、ラストにかけて、ちょっと失速。
なんか、脱力というよりは失速の感がある。
息切れというか、まとめにかかりつつ散らかそうとしたというか。

結局、有機的な繋がりに欠けるものになってしまった感が否めない。
不条理とは言え、繋がりは大事。
トランス

トランス

中野成樹+フランケンズ

STスポット(神奈川県)

2008/11/07 (金) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

多田の巧妙。
多田淳之介は本当に意地の悪い演出家だ。
フランケンズに施した“目隠し”という枷を見て、改めて思わされた。
そして、それがあらぬ効果を生み出すのだから、困ったものである。

まあ、あらすじは上演前に多田によって語られてしまうのだが、
それでもなお、見るべきものがあるというか見せつけられるというか。
多田の読解力には舌を巻くばかりである。

フランケンズの面々も、どこか中フラの印象を残しながら(喋り方とか)、
多田フラならではの面白みを出しきれていたことに満足。

演出家を入れ替える公演が、どこの団体でもあっていいと思う。
今回の企画で、「うちも!」と思う団体があるといいなぁと思うことしきり。

ネタバレBOX

手法についてもう少し詳しく。
登場人物3人のところに4人を当てることにより、離人症の表現が面白くなる。
1人を2人で、3人を1人で、と台詞の分割・結合は留まるところを知らない。
最後のどんでん返しに次ぐどんでん返しで誰が正常なのか判らなくなる
場面への効果的なアプローチとなっており、圧巻の一言である。

そして、ベタな配曲も読解力の賜物。実に馬鹿馬鹿しくて結構。
『リズム三兄妹』 / 『はやねはやおき朝御飯』

『リズム三兄妹』 / 『はやねはやおき朝御飯』

岡崎藝術座

こまばアゴラ劇場(東京都)

2008/10/30 (木) ~ 2008/11/10 (月)公演終了

満足度★★

残らぬ体験。
『三月の5日間』を見逃して以来、岡崎藝術座を欲する気持ちを持っていて、
今回念願叶って、ようやく拝見が叶った次第。

世の中のあらゆるリズムに執着するリズム三兄妹。
その設定の妙が物語として大きな展開を見せることは、ほとんどない。
例えばキャラクタの面白さも、発展性はなく、そこにあるだけである。

生活に密着した身体表現の馬鹿馬鹿しさは、面白おかしいが、
別に徹底的に馬鹿馬鹿しい感じもしないし、特筆すべきことはない。
そりゃあ、内田慈の独白は、ずーんとくるけど、何もかも語ってしまっている。
じゃあ、何が残るんだろう。
1アウト・ランナー1塁、ショートゴロ、6-4-3ダブルプレー、3アウトチェンジ。
そっか。次の回に移ってしまうのか。
じゃあ、次に期待します。

いつか見る青い空

いつか見る青い空

弘前劇場

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/11/07 (金) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★

一服してがねが?
30周年を迎えた弘前劇場、待望の新作。
男の格好良さ・不器用さ、そのまわりの女たちを描く、ハードボイルドだ。

長谷川孝治の戯曲は哲学的な側面を多く見せてくる。
普段そんなこと話さないだろって面を見せると、そこに茶々を入れたりする。
そのバランス感覚がなかなかに冴え渡っている。

何よりも、今回は長谷川等。
ずっしりどっしりとした津軽衆の親分肌を見せつけられた思いだ。
何もそういった役回りはマーロン・ブランドや高倉健だけのものではない。
津軽には津軽のハードボイルドがいるということだ。

題名は福士賢治が喧嘩の加勢に出ようとするところを止める場面での一言。
椅子に座って背中で語る、「一服してがねが?」
気障じゃない格好良さが伝わるだろうか。

ネタバレBOX

やはり、今作で特筆すべきは最初と最後の場面の緊迫だろう。
福士と田邊克彦の静謐ながら鬼気迫る対峙は見応え充分。
語られぬところを読み取るのも、長谷川戯曲の楽しさでもある。

これはもう余談なのだが、弘前劇場の人材流出が激しい。
『地域と演劇 弘前劇場の三十年』を拝読して初めて知ることとなった。
弘劇は、長谷川の方針なのか、退団の発表等は特にしない。
一ファンとしては、淋しい限りである。
テキサス芝刈機

テキサス芝刈機

クロムモリブデン

青山円形劇場(東京都)

2008/11/06 (木) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★

モチーフという足枷。
傭兵集団・クロムモリブデンに相応しい円形初陣を想像していた。
が、早い段階で戸惑いに変わり、それをリカバリできずに終演を迎えた。
空間を圧倒的に支配する劇団員のパワーが、空しく拡散していたように思う。
TOPSの時に何となく危惧していたことが具現化してしまった。

しかしながら、劇団員ひとりひとりの魅力を確認できたことは事実だ。
先程と矛盾するようだが、それぞれのパワーをばしばし受けることができた。
いつもは、集団と個人のパワーが両立する。今回は両立しなかった。
たぶん、そういうことだと思う。

物語はモチーフがくっきりとしてしまったので、手放しで楽しめなかった。
別に現実の事故を笑いという形で昇華することに異論はないし、歓迎する。
ただ、具体的なイメージがあればあるほど、“飛ぶ”ことは困難になる。
少なくともこまごめはうまく“飛ぶ”ことはできず、彼らを見上げていた。
青木秀樹の言葉を借りれば、「早かった」のかもしれない。

ネタバレBOX

物凄く希望を描いたこの物語を否定する気はさらさらない。
綺麗事でも構わないし、何よりも達観した目線じゃないことに好感を持てる。
それはクロムモリブデンの魅力なのだろうか。こまごめには判らなかった。

5年後、この作品を上演した時に、また思うことがあるかもしれない。
つまり、レパートリーとしての強度を持つことができるかが、鍵だ。
今はその判断を留保したい。
プラスチックレモン

プラスチックレモン

アマヤドリ

吉祥寺シアター(東京都)

2008/10/31 (金) ~ 2008/11/05 (水)公演終了

満足度★★★

20回公演の孤独。
いよいよ、ひょっとこ乱舞がわからなくなってきたな、と思う。

雰囲気としては踊らなかった『水』に似ているのだけど、もっと静謐だ。
静謐というか空虚だ。その空間が途方もない宇宙に見えるような空虚だ。
恐らく狙い通りだと思うのだけど、会話やモノローグひとつをとっても、
乾いて冷たい風が通り抜けるような感じを覚える。
間違いなくそこに熱さはない。

一種の昂揚感が舞台を支配していたひょっとこには、もう会えないのか。
ひょっとこで笑わなくなって久しく、簡単に胸躍らなくなって久しく、
でも、後から思い出すと素晴らしかった気がするのも事実だ。
やっぱりひょっとことしての延長線にあるんだとは思う、今作でも。

第20回公演に観られたのは、祝祭ではなかった。それだけは言える。
こまごめは、今公演を「20回公演の孤独」と題してみた。
広田で素敵な宇宙じゃないか。それでいいじゃん。

……うまいこと言えないな。それくらい戸惑ってはいる。

ネタバレBOX

失礼を承知で、劇団員2人について申し上げる。

笠井里美が素晴らしく素晴らしかった。間違いなく揺るぎなくヒロインだった。
いずれ、そういったポジションに来るだろう来るだろうと思っていたのだが、
たびたび残念な思いをさせられてきた(よく喉をつぶしておられる)。
今回、いよいよ重要な役所を堂々勤めておられて、感慨無量(勝手に)。
ポスト伊東沙保、なんて言ったら怒られるかも知れないが、
少し前のひょっとこにおける伊東沙保のような役割になったのではないか。

今回、斎藤陽介に注目させられた。
いまいちブレを感じて安心感がなかった彼に、正直安心させられた。
彼の魅力である“軽みのある真面目さ”が、体言できたように思う。

この2人、これからのひょっとこ乱舞のキーパーソンであり、
劇団の未来を背負う存在であると断言したい。
要注目。
ハローワーク

ハローワーク

国分寺大人倶楽部

王子小劇場(東京都)

2008/10/30 (木) ~ 2008/11/03 (月)公演終了

満足度★★★

愛に愛に愛に愛に愛に愛に愛に溢れてる。
その妙な明るさにどうにも戸惑いを覚えた。
露悪系と見ていた国分寺大人倶楽部の変貌ぶりに、である。

人間への優しさに溢れていて、蔑ろにされる者などいない。
一人ひとりの描き方も前作と比べたら実に丁寧なものだ。
なんか妙に明るい愛に溢れているのだ、要するに。

これも、天然・河西のなせる業なのか。
また、次作を観ざるを得ない。

ちなみに、おまけは見ていません。

ネタバレBOX

夢のシーンとかも、まさに救われぬ者への愛。
救うという感覚も愛なしじゃ成立しないし、露悪は救わない。

恋人のシーンなど、競泳水着を観ているのかと思った。
それもメタでやっているのではなく、ベタにマジでやっている。ぽい。

職場での人物の姿(舞台)、自宅での人物の姿(映像)という対比は、
なかなか面白いんだけど、その着想の面白さに留まった感がある。
恐らく、キーとなる童貞役の生活を見せたいがために、試みたのでは?
もう一度試して欲しいとも思う。

でもまあ、カーテンコール後の的外れで喜劇的な映像をどう捉えるかだろう。
愛から漏れてしまった者(漏れたと考えた者)を、見せたかったのだろうか。
はてさて。
サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

アトリエ・ダンカン

東京グローブ座(東京都)

2008/10/17 (金) ~ 2008/10/26 (日)公演終了

満足度★★★★

激突の饗宴。
笹井英介と加納幸和、18年ぶりの両雄激突。
この事件は目撃せねばならないと思い千秋楽に馳せ参じた。

なるほど、三島由紀夫の戯曲はまさに音楽。
両雄が競うように歌う様は、圧巻の一言。完全に飲み込まれた。
またの競演/共演/饗宴の機会を願うばかりである。

女形と非女形のギャップをどう埋めていくかは悩ましいところ。
この両者を並び立たせるというのは、音楽としてなかなかに難しい。
調子よく響くこともあれば、不協和も生まれたりもする。
特に音楽的な三島戯曲では、そういった部分が顕わになった印象だ。

呼吸機械

呼吸機械

維新派

さいかち浜 野外特設劇場 <びわ湖水上舞台>(滋賀県)

2008/10/02 (木) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

昂揚感に耐えうる強度。
最近観劇を控えていたのは、この遠征のために充電していたから。
というわけでもないんだけれど、結果として今月一本目。

琵琶湖畔にある屋台村、水上舞台。まず、その雰囲気に飲まれる。
なるほど、これが「維新派を体験する」ということだろう。

満を持しすぎると結果がなかなかついてこないものだけれど、
想像の115%のスケールと想像の85%の物語といったところ。
足して100%の満足度。これ以上望むことはないでしょう。

そこでしか共有できないもの。やはり強いですね。

ネタバレBOX

115%のスケールについて。
借景という方法は、そのスケールの大きさを作品に取り込めるずるさがある。
そのずるさは、景色をコントロールすることができて初めて出来ることだ。
そこは流石の維新派、琵琶湖がすっかり作品世界のものとなった。
湖面に向かって沈んでいく舞台があり、そこに群舞がある

85%の物語について。
1940年代から50年代にかけての東ドイツが舞台の少年たちの成長譚だ。
ただ、スリリングな展開としては「nostalgia」の方が遙かに上である。
物語としての展開より、演出的な効果に偏った印象を受けてしまった。

初めてだから、二回目だからということではなく、ということについて。
群舞は相変わらずの迫力だが、音としての気持ちよさがなかったのが残念。
前回は目と耳に残る感じが強かったのだが、今回は目に残った感じ。
ただ、最後の水音は流石に耳の底に響いている。
シャープさんフラットさん

シャープさんフラットさん

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2008/09/15 (月) ~ 2008/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

【ブラック】何となく見える光明。
ダブルキャストの楽しみは、ジレンマにある。
一チームを見た後のもう一チームであればなおさらのことだ。
そして、個人的なベストチームを組んでみたくなるのも、また一興。
存分にジレンマを楽しむ回となった。甲乙つけがたい。

ブラックチームは、大倉孝二のドライな感じが全体を支配。
そのせいか、意外とラストに光明が見えたりもする。
脚本に違いがあるとは言え、ここまで違いを感じられるのは驚き。
芝居というのは、本当に主演で決まりますね。

ネタバレBOX

恋人役の小池栄子。思わぬ安定感で舞台にアクセントを与える。
同じ役を分け合った新谷真弓と比べても甲乙つけがたい。
対照的な2人だけに、もはや好みの問題であるだろう。

別の意味で甲乙つけがたいのは、河原雅彦とマギー。
塔島役寄りが河原、父親役寄りがマギーといった印象。
どっちかがどっちかの役をやればいいじゃんか、
なんて言いたくもなるが、それはそれで楽しいのだ。

こまごめとしては、どちらかを観るならホワイトをチョイスしたい。
The Diver

The Diver

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2008/09/26 (金) ~ 2008/10/13 (月)公演終了

満足度★★★★★

甦生。
源氏物語千年紀に合わせて制作したわけではないらしいが、
アニバーサリー・イヤーに相応しいオマージュ作品。
ただし、カウンター的な解釈を持ち込むところは、野田秀樹らしいところ。
「源氏物語」をこういった形で蘇ってくるとは、むむむむむ、である。

ご存じの通り、『THE BEE』と同じチームでの制作である。
期待通りの緊密で濃密な舞台が展開されることは、保証したい。
キャサリン・ハンター、水底にいるような声が印象的で◎。
そして、空気をびりっとしめる野田秀樹。ああ、怪優だ。

ネタバレBOX

「源氏物語」+能楽「海女」+現代日本で実際に起こった事件をモチーフに、
深層/真相に演者も観客もDiveしていく印象を受ける。
光源氏に否を突きつける野田秀樹の解釈は、結果として1000年後の世に、
「源氏物語」を生きた作品として立ち上げることに成功している。
これだけでも、充分に価値のある仕事だ。

現代能楽集、侮れない企画である。
シャープさんフラットさん

シャープさんフラットさん

ナイロン100℃

本多劇場(東京都)

2008/09/15 (月) ~ 2008/10/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

【ホワイト】苦悩が閉ざされた場所。
否応なく作家当人の思わせる半自伝的な物語だ。
本当であるか嘘であるかということは抜きにして、目を離さずにはいられない。

最近、作り手の苦悩を見せる作品に、触れる機会が多い気がする。
その中でも、随分深々と潜り込んだ作品であるようだ。

キャスト・スタッフの仕事に非の打ち所はない。
これだけのクオリティで出されたからには、背筋を伸ばして観るだけだ。
2時間40分の覚悟を持って観に行かれたし。

この悲喜劇は、簡単なカタルシスの方向に行くことを許さない。
どこか物語から放り出されるようなラストに、呆然としてしまった。
(たぶん、3時間くらいを想定していたからだと思う……)

ブラックも観劇します。

ネタバレBOX

どこか鉛のような重さを考察すべく、前作『わが闇』と比べてみる。
『わが闇』は、井戸に潜っていくような深さを感じながら、最後に明るさが見えた。
対して、『♯さん♭さん』は、そんなに潜る感覚はない。
だが、ちっとも浮かび上がる気配が無く、夜の海の底にいるようだ。
半自伝的物語というつくりがそうさせるのだろうか。
そういう意味では、こちらの方がよっぽど闇を抱えているように感じるのだ。

サナトリウムという場所もそういう空気を作らせている。
どうしてサナトリウムと感じもしたが、意外なコントラストが興味深かった。

三宅弘城は、緩急で観る側を震わせる。実に憐れで素晴らしかった。

さらに特筆すべきは、新谷真弓の役所ではないかと思う。
三宅との緩と急とのバランスは、実に見応えがあり。
不幸な雰囲気の役柄をやると、上品な色気すらある。新たな発見だった。
續・河をわたる

續・河をわたる

菅間馬鈴薯堂

王子小劇場(東京都)

2008/09/19 (金) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★

化石の妄言。
正面を切って、真っ直ぐな台詞を、共演者に、また客席にぶつける。
相当量の声を出しているのだろう。喉に不安を覚える役者も散見される。
何をもってリアリティとするかは、人それぞれの意見があると思われる。
ただ、僕には、随分と化石のような演劇を見ている気分に襲われた。

キャラクタやストーリーに関して言えば、もはや手垢がつきまくっている。
ならば、その役者から滲み出る味を味わうことが目的となるだろう。
そこに耐えうる役者と言えば、稲川美代子、西山竜一くらいだろうか。
あまりにも力量不足であるとしか言いようがない。

観ている方が恥ずかしくなる演劇は、なるべくだったら御免蒙りたい。
それが、自分の心持ちが捻じ曲がっている結果だとしても、譲れない。

ちなみに、あらすじとは違った物語であるとご報告しておきます。

演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

東京デスロック

リトルモア地下(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★

【発情期】夏目、発情す!
ドン・キホーテを小一時間、夏目慎也ひとりで演じきる。
クソ長いドン・キホーテの話を小一時間でやるのは小気味よい。
ただ、エピソードの積み重ねが単調で、思ったより早く飽きが来る。
それでも、ラストは間違って感動しそうになること必至。

そして、どんどんカッコよく見えてくる夏目慎也。
これも多田淳之介のいう「嘘」の一つなんだろう。
やはり、「嘘」は演劇にとって欠かせないファクターだ。
そうでなければ、発情してる夏目が必要以上にカッコよくはならない。

ネタバレBOX

ドン・キホーテって、70章超の構成なんだ。長いはずだ。
恐らく物語上絶対に関係ない話をうだうだ話されているのだろう。
ラストに、「シェリー」に合わせて章タイトルがロールするのだが、
まあ、それだけでお腹いっぱいになること請け合いである。
そして、間違った涙が流れるかも。

多田の作品解説において、嘘や見立ての話があった。
ドン・キホーテが風車を巨人と見立て(てしまっ)たのは、
観る側にとってみれば、演劇的な約束と同じことなのだ。
読み替えれば、壁に体当たりしてる夏目慎也を、どう見るかって話。

一連のシリーズは、演劇の根っこの部分を見つめ直すいい機会だと思う。
演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

演劇LOVE2008 ~愛の行方3本立て~ 

東京デスロック

リトルモア地下(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★

【倦怠期】愛しかない。
作・演出の意向により、何も書けない。
それに、意地悪でも何でもなく、書かないことが愛だと思うから。
としてしまうのはつまらないので、抽象的な話でも。

これほど舞台への愛を感じる作品もない。
愛という言葉は、執着という言葉に置き換えられる。
それは、自分が客席に在ることへの執着だ。
そんな踏み絵があの場にはあったのではないだろうか。

演劇を体験することに関して、深い井戸に潜って考えさせられた。
非常に静謐な50分だったと言えよう。

ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉

ちょっとした夢のはなし〈演劇と映画〉

中野成樹+フランケンズ

STスポット(神奈川県)

2008/09/18 (木) ~ 2008/09/21 (日)公演終了

満足度★★★★

遠き過去に日は落ちて。
なるほど、家族でドライブをするという派手さの欠片もない話だ。
それでも、グッときてしまうのは、自分の過去と共振するからだろうか。
共振というか、既視感というか、心臓が記憶していることを思い出す感じ。
抽象論に終始してしまうが、それこそ普遍性と呼んで差し支えあるまい。

オオカミ男という大学生チームとの仕事ということで少し不安もあった。
だが、何のことはない。確かにそこに家族はあった。

演劇上演後に映画もあるが、こちらもひと味違った視点が感じられて◎。
一粒で二度美味しい仕様になっていると思う。

STで短々とした仕事を観る小一時間は、小さくも確かで幸せな時間だ。

ネタバレBOX

「車から降りなさい」って、怒られたことがある、気がする。
酷く怖かった記憶の一つだ。
祝/弔

祝/弔

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

OFF OFFシアター(東京都)

2008/09/04 (木) ~ 2008/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

加速するドタバタ。
「祝」に続いて、ふっと線香の匂い香る「弔」へ。

なるほど、ドタバタの加速は「弔」の方が面白みがあるように思う。
混乱の絡まり方やら収束のさせ方など、「NINPU」を思い出させた。
そして、「祝」での不満が解消されたのは、間違いなく彼らのおかげだ。
彼らに関しては、ネタバレにて。

二本観て、やはり一本だけでは消化不良になったろうと思う。
しかし、二本観たからといって、充足感が何倍にもなったわけでもない。
1+1が2.2くらいにはなっているから、十分だと思うのだけれど。

劇場使用や作品等の“状況を使い切る”難しさは並大抵ではない。
心からお疲れ様でしたと、申し上げたい。

ネタバレBOX

「弔」のキーマンは、猪股俊明と久米靖馬である。

「祝」の時に、父役である猪股が出てきた瞬間に、
「あちらの方が観たいなー」と意識が逸れてしまったのは、事実である。
その錯乱ぶりを堪能できたのは、眼福であった。

そして、久米靖馬の火傷っぷりに感動。
出来る人というフリがある中での火傷は、見事の一言。
「NINPU」からの出来る人キャラのイメージがガラッと崩れた。
芸術的な積み木崩しであった。
葡萄

葡萄

THE SHAMPOO HAT

ザ・スズナリ(東京都)

2008/09/10 (水) ~ 2008/09/23 (火)公演終了

満足度★★★★

あからさまに葡萄、さりげなく煙草。
作中の時間で人物の印象が変わる、ということがある。
例えば、日比大介の笑顔一つをとっても、印象がころころっと変わる。
人物の切り取り方が誰をとっていても魅力的。そこが赤堀戯曲の白眉である。

葡萄の使い方が印象的であると同時に、あからさますぎる気も。
もう少し、意識化に葡萄を植え付けるやり方もあるのでは無かろうか。

それにしても、煙草が印象的な劇団だ。
その何気なさが非喫煙者にしても、ちょっと格好良く思えてしまうのだ。

ネタバレBOX

葡萄について。
ラブシーンに葡萄が出てくるとは思わなかったが、ううむ。
葡萄が出てくる場面が、2回あったと思うが、すべて間接的に性的なシーンだ。
そっかー、ううむ。
ネズミ狩り

ネズミ狩り

劇団チャリT企画

王子小劇場(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/16 (火)公演終了

満足度★★★★★

社会に振れ幅を。
“ふざけた社会派”? これは、半分正解で半分間違いだ。

何気ないテキストの一つ一つが社会的なキーワードになってるのが面白い。
今回の主テーマである少年犯罪以外にも、現代ニッポンの抱える問題が、
そこここに散りばめられている。

ど真ん中真っ直ぐのテーマに対し、様々な視点からのアプローチがあり、
観点を一本化しないという、カウンターカルチャーとしての姿勢がある。
主テーマに対し、全然逃げずにやりきっているのではないだろうか。

社会に振れ幅を持たせてくれる。そんな仕事ぶりに感服する。

ネタバレBOX

加害者と被害者を共存させる空間として、協力雇用主の営む店を選んだのは、
うまい具合にキャラクタやストーリーを回す効果があったと思う。
また、蕎麦屋さんという設定も、協力雇用主っぽくて悪くないのでは。
しかしながら、協力雇用主。初めて知りましたよ。お恥ずかしい。

本当に、「情」というものは難しい。正しいことなど何もないのだ。
それを「報」じるのだから、なお、事を難しくさせているのだろう。
それを共有する“世間”は、本当に計り知れない恐ろしさを持っている。

そして、ネズミの不穏さ。
次に狩られるのは、自分かも知れないし、あなたかも知れないのだ。
全身ちぎれ節

全身ちぎれ節

ピチチ5

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2008/09/12 (金) ~ 2008/09/21 (日)公演終了

満足度★★★

でっかい/ちっさい
装置のスケールのでかさはマジで凄い。
本当に久々に装置の面白さに笑わされてしまった感がある。
思い起こしてみると、マンションマンションも装置が面白かったし。
福原充則の想像力と、それについていく美術家がどてらい。

しかしながら、基本的な笑いは細々とした小笑いが散りばめられている。
星のホールのスケールに小笑い中心はちょっとしんどい気もする。
その対比が面白いと言ってしまえばそれまでなのだけれど。

福原充則、まだ計りかねる。

ネタバレBOX

銀河鉄道の代わりに登場してしまった、迷いねぶた。
正直、本家に負けてない迫力だったと思います。……なんでだよっ!

階段落ちは、やらないだろうなーって思ってたら、しっかりやりました。
なんかちょっと間抜けな感じも含めて、かっこよかった。

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