ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

『エンジェル・フォール騎士 ANGEL FALL KNIGHT』

無頼組合

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/30 (月)公演終了

満足度★★★★★

騎士シリーズ九作目!

ネタバレBOX

風吹・桐山の絶大な力に挑んで後悔しないダンディズムに痺れる。作中にも出てくる中国黒社会を描いた「男たちの挽歌」シリーズは自分も最も好きなヤクザ映画であるが、日本の形式的ヤクザ映画では決して表出されることのない、抗争の冷徹や組織を抜けることの意味、そして下剋上の非情が、矢張り人情に対置されている所が渋いのだ。ナイトシリーズも色々おちゃらけ要素を孕ませてあるものの基本的には硬派系の作品群である。今回で九作目、オハラの真の目論見や、風吹と仲間たちの壮絶な生き様も若干描かれて、作品層に厚みを増した。腐り切った権力者たちの用いる政治的、権力的、打算的な腹黒さも充分練られており、風吹たちが向かってゆく相手の強大さが嫌でも意識されるのだが、だからこそ、彼らのまつろわぬ姿勢が猶更格好良いのである。

ドラゴンカルト

ドラゴンカルト

劇団ショウダウン

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/01/27 (金) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

殺人というゲーム

ネタバレBOX


 現在アメリカの軍事リクルートスタッフは、ゲーマーにも触手を伸ばしていると言う。実戦配備されている無人機による攻撃にゲーマーは優秀な成績を収めるからである。無論、兵器自体の発達、遠隔操作の技術が格段に進歩したこともあって、数千キロメートルも離れた地域から「敵」を殲滅することができるのだ。実際に殺されているのが、女子供や障碍者、老人であるにしてもだ。
 そして現実に国家対国家ではないが、国家は武装集団を相手にするという名目で、マイノリティーや元々圧政に苦しんできた市民たちを相手に軍事行動を起こし虐殺を恣にしている。そんな世界情勢の中、我らの周りもきな臭い臭いが充溢してきた。
 死が、生活から離れ、病院の狭い空間の中に隔離されるようになってかなりの時が経ち、我々は死を身近に感じなくなっていると同時に、他人の死が我々の生活や感性に与えるもの・ことからも隔てられてきた。
 一方、エキセントリックで凶暴な感情は、あてもなく解き放たれているようにも見える。これら有象無象のエネルギーが在る方向を持ち集約させられたとすれば、今作に描かれたような事態も、実際に起こり得るのではあるまいか?
 カルトという意味ではかつてオーム真理教があった訳だし、思考というものの本質的属性はあるオーダーが決まってしまえばそこから先にはたった一つの展開しかないことなのである。それは尖鋭化だ。今作は、そのような不穏な空気を孕んだ現代日本の子供じみた病弊をいみじくも炙りだしているように思える。
メロン農家の罠

メロン農家の罠

桃尻犬

OFF OFFシアター(東京都)

2017/01/12 (木) ~ 2017/01/18 (水)公演終了

満足度★★★

  桃尻という単語を初めて使ったのは、橋本 治ではないか? 桃尻娘はシリーズ化して映画にもなった人気作。東大在学中に”とめてくれるなおっかさん背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く”というフレーズを編み出し一躍有名になった。タッパは80以上あるだろう。結構ガタイも良い。その彼の趣味は編み物。

ネタバレBOX

日本の古典を優れた現代語に訳しているので、水産高校出身で日本の古典をキチンとやったことのない自分は、彼の訳した古典で日本の古典の多くを学んだ。
 で、この劇団の名前は、橋本 治のセンスの良さを思い出しながら観に行ったのだが、日本の庶民は現在此処まで劣化したか! と思わされた。これでは、妹のみのりが絶望するのも無理はない。何となれば、ここには、近頃流行りの反知性主義が蔓延するニヒリズムと知的な連中がおいしい所を総てかっさらい、自分達の所へはトリクルダウンすら来ないことに対する反発や不信感が在るのであり、それを自分達の支配者にはぶつけられずに、自分達がかつて見下してきた人々にぶつける、いわば白井 聡の「永続敗戦論」が指摘したような問題点が見られるからである。自分流にいえば事大主義とprincipleの欠如が合体した日本人という民族の、極めて感情的・感傷的な特質の危うさを表しているように思う。そして、このような特質こそ、戦争に向かう政治を支え、戦争を支持してゆくのである。
 だが、演劇という形でその特質を観たならば、我々はその特質を合理性によって裁断し、合理性と知性そして倫理の下に再構成する必要があろう。息を吐くように嘘を吐く、安倍のようなアホを支持しない為にも。
ゴーラウンド

ゴーラウンド

法政大学Ⅰ部演劇研究会

法政大学外濠校舎 多目的室2番(東京都)

2017/01/10 (火) ~ 2017/01/13 (金)公演終了

満足度★★★★★

 原作は、ウクライナのアレクセイ・ライツキー。監視社会の中で作品の殆どは公演されずに終わったという。1993年に51歳で亡くなったというが、自分は初めて出会う作家である。

ネタバレBOX


だがこんなに優れた作家を探してくる法政Ⅰ劇、流石である。無論、今回も期待は裏切られなかった。実際、極東のこの辺りでは、息を吐くように嘘を吐くという内容の川柳が投稿されているらしいが、無論、ジャパンハンドラーの言うままに動く、植民地総理、安倍晋三という下司の話である。彼の虚ろな頭の所為で、迫りくる戦争の気配を実に正確且つ敏感に感じ取っている若者達のセンスの鋭さに思わず戦慄を覚えるような作品である。殊に避難民をこともなげに射殺するシーンの迫力は凄い。
 この凄味も、彼が学生時代はかなり上手いミュージッシャンで、プロとして食ってゆくだけの才能は無いと自覚できるだけの腕があった、ちょっとリアリスティックな視点を持つ学生という設定が効いている。
つまり極めてありふれ、まったりした学生の日常や、避難民の子供の食べ物の好き嫌いを巡る小さなそしてどこにでもあるようなふくれっ面、若い恋人同士の淡い恋のさや当て、それらを極めて自然に生き、其処に生まれる何気ない日常が続いて行く中で、宇宙探査の為の機器が撃ち落されたことをきっかけに、多くの庶民が皆を守らねばと戦士になり、或いは自分の為と言いつつ戦争遂行の当事者となり、互いに銃を向け合って戦い合うのみならず、遂には核戦争迄行う。
即ち愚かにも制御不能な状態に陥ってしまう。どんな結末を迎えることになるか? 誰もが明確に知り、その愚かさをも知り抜き乍ら誰も止めることができない。この恐怖と、そうなることを充分想像しており、尚且つ愚かな結末しか齎さないことを明確に認識しながら流されてゆく人々の哀れは殊更である。
ゴーラウンド

ゴーラウンド

法政大学Ⅰ部演劇研究会

法政大学外濠校舎 多目的室2番(東京都)

2017/01/10 (火) ~ 2017/01/13 (金)公演終了

満足度★★★★★

 原作は、ウクライナのアレクセイ・ライツキー。監視社会の中で作品の殆どは公演されずに終わったという。1993年に51歳で亡くなったというが、自分は初めて出会う作家である。

ネタバレBOX


だがこんなに優れた作家を探してくる法政Ⅰ劇、流石である。無論、今回も期待は裏切られなかった。実際、極東のこの辺りでは、息を吐くように嘘を吐くという内容の川柳が投稿されているらしいが、無論、ジャパンハンドラーの言うままに動く、植民地総理、安倍晋三という下司の話である。彼の虚ろな頭の所為で、迫りくる戦争の気配を実に正確且つ敏感に感じ取っている若者達のセンスの鋭さに思わず戦慄を覚えるような作品である。殊に避難民をこともなげに射殺するシーンの迫力は凄い。
 この凄味も、彼が学生時代はかなり上手いミュージッシャンで、プロとして食ってゆくだけの才能は無いと自覚できるだけの腕があった、ちょっとリアリスティックな視点を持つ学生という設定が効いている。
つまり極めてありふれ、まったりした学生の日常や、避難民の子供の食べ物の好き嫌いを巡る小さなそしてどこにでもあるようなふくれっ面、若い恋人同士の淡い恋のさや当て、それらを極めて自然に生き、其処に生まれる何気ない日常が続いて行く中で、宇宙探査の為の機器が撃ち落されたことをきっかけに、多くの庶民が皆を守らねばと戦士になり、或いは自分の為と言いつつ戦争遂行の当事者となり、互いに銃を向け合って戦い合うのみならず、遂には核戦争迄行う。
即ち愚かにも制御不能な状態に陥ってしまう。どんな結末を迎えることになるか? 誰もが明確に知り、その愚かさをも知り抜き乍ら誰も止めることができない。この恐怖と、そうなることを充分想像しており、尚且つ愚かな結末しか齎さないことを明確に認識しながら流されてゆく人々の哀れは殊更である。
劇王東京Ⅲ

劇王東京Ⅲ

劇王東京実行委員会

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/01/06 (金) ~ 2017/01/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

 1月6日のAブロックから始まった劇王東京チャレンジⅢも予選最終組のFブロック3団体の上演となった。Fブロックは、タッタタ探検組合、劇団人間嫌い、ニュートンズの3劇団が出場。準決勝に勝ち進んだのは、観客票で他を大きく引き離しトップをさらった”タッタタ探検組合“だ。

ネタバレBOX


 Fブロックの結果発表の後、準決勝での上演順が決められた。準決勝第一部は本日14時からA、B、C各ブロックの勝者と全団体の敗者中で観客票の最も多かった団体の作品が上演される。続いて19時半からは準決勝第二部。D、E、F各ブロック勝者と前年度の劇王東京が参加して開催される。決勝は1月15日18時からだ。決勝戦は、準決勝第一部の勝者VS第二部の勝者で行われる。
 さて、今回自分が拝見したFブロックの3団体について以下にレビューを記しておこう。
各レビューは上演順。因みに、各演目は上演時間20分以内、出演者3人迄。次の団体の開演迄の場転は数分以内。仮に上演時間が20分を超えた場合、1分超過する毎に、獲得した点数の10%が減点される。
「局地的な電極人」(タッタタ探検組合)
 2年程前から、体に強い磁力を持つ人間が出現するようになった社会で、偶々通りかかったS極の男とN極の女が引き付けあって公衆の面前でくっついてしまい、互いに離れようともがくが、磁力は極めて強く容易に離れられず苦労している所へ3人目の登場人物(女)が現れ、始めは磁力から自由な人間のように振る舞っていたのだが・・・、というちょっとシュールな悲喜劇。ネタバレは此処まで。何せこれから準決勝でもあるし。無論、笑える。
 而も、Wミーニングだと解釈するなら、極めて鋭いアイロニーをも含んだ作品であるが、それは、勝敗が付いた後で追記する。
「合コンしようよ」(劇団人間嫌い)
 大学に入ったものの、も女(もてない女)と互いに思い込んでいるらしい3人の女。3人のうちの1人の家で、も女卒業の為の特訓が行われるが。特訓教師役も本当はも女であり、生徒役の女も女なのだが、第三者的に構えていた女は、実はしっかり元カレ、今の彼がいた、という話で、新味はなく話としても当たり前過ぎる。が、19歳の女性作家が自分の周りや若い女性の最も大切な問題と向き合って作品を完成させている点で、今後も真っ直ぐ、もの・ことを観る視点を継続して成長して欲しいと思わせた。
「何者か」「feat」(ニュートンズ)
 作家自身「策士策に溺れる」と言っていたが、作品そのものより、創作態度にあざとさを感じた。歌舞くのも良いが、1団体だけ2作品を上演したというのは、矢張りこの企画の約束事を守っていないのではないか? と考えたので評価の対象外とした。
2020

2020

西尾佳織ソロ企画

トーキョーワンダーサイト本郷(東京都)

2016/12/22 (木) ~ 2016/12/24 (土)公演終了

満足度★★★★★

会場は壁が総て白、写真撮影用のスタジオとしても使えそうな長方形の空間で、床は海底にあるものを練り込んだような不思議な感覚の素材で作られ、パステルトーンの薄い茶系。(追記後送)

ネタバレBOX

開演前には、作家が子供時代を過ごしたというマレーシアという言葉が時折混じるおしゃべりが流れ、アルミ製の脚立が置かれた入口近くには、天板の丸い椅子が5脚、其の前方に段ボール箱が置かれ、部屋の奥には2・6テーブルが置かれている。このテーブルの端には矢張り段ボール箱、角にビニール傘が掛けられている。そしてこの2か所だけにスポットが当てられているのだが、これらの間にほぼ正方形のテーブルが置かれ、隅にペットボトルと袋に入ったパンなどが置かれている。
さて、演者が登場するとバターは、バターの木から作られるという話をするのだが、当然嘘だ。だが、これが夢で見た話だとされる。新たな才能の出現を感じる、ちょうど小学生の頃、クアラルンプールに住んでいたという作家の実体験を錘にしつつ、嘘と実際を夢を媒介として構築したり、子供の頃の思い出と悪戯(男子に触発されたりして)を先生に叱られたが、自分も似たような悪戯をしたことが白状できずに倫理的に悩んだり、
ZASHIKI・WARASHI

ZASHIKI・WARASHI

A.R.P

ART THEATER かもめ座(東京都)

2016/12/20 (火) ~ 2016/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

 シナリオ、演技、演出何れも良いし、全体のバランスもグー。殊に構成のしっかりしたシナリオに切れのある演出、キャラの立った演技、これらを盛り上げる音響、照明の効果もグー。舞台美術も控えめながら無駄が無い。良い作品なのに入りが良くないとか、取り敢えず追記は後程。今夜も急遽、何かプレゼントがあるそうだ。(追記後送)

八月のシャハラザード

八月のシャハラザード

学習院大学演劇部 少年イサム堂

学習院大学富士見会館401 演劇部アトリエ(東京都)

2016/12/21 (水) ~ 2016/12/24 (土)公演終了

満足度★★★★

 原作は1994年に初演された劇団ショーマ主催の高橋 いさを作品である。

ネタバレBOX

脚色・演出は、役者としても劇団血風過激団主催者、木島として出演している小澤 美慧。主人公の亮太は、所属する演劇部で溺れた人を演ずる為に海に出るが、大波に巻き込まれて遭えなく落命。三途の川をあわや渡る所であったが、現世に脱走。理由は、彼女であるひとみに一言別れの挨拶すらできなかったことが悔やまれて成仏できなかったからである。辿り着いたのは、葬式後にひとみを癒そうと演劇部の仲間が集まっていた部室。だが、彼の発する言葉も、姿さえ皆に認められることはなかった。だが、諦めきれない亮太にチャンスが巡ってきた。現金輸送車を襲った強盗川本が、仲間に裏切られた挙句腹部に銃弾を受けて死に近づいた為、彼の姿を見、声を聴くことができるようになっていたのである。
 あの世への渡しを担当する夕凪も協力して亮太の最後の望みを叶えるべく作戦が開始されるが、川本の復讐への思いは矢張り断ち切り難い。裏切り者の梶谷の背後には悪知恵の働く女、マキが居る。こんな攻防の中、ひとみが、裏切り者一味に攫われた。人質として取られたのである。果たして、亮太の思いは、川本の復讐心は、そしてひとみの運命は? 更に各々の思いと結末は!? 初日が終わったばかりなのでこの辺りで。あとは観てのお楽しみだが。明暗転の際、場転がスムースでシャープである。役者の演技も中々上手い。自分が殊に気に入ったのは、川本役、梶谷役。他の面々も中々良い。
鏡

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2016/12/16 (金) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★

 ファーストシーンでいきなり観客を驚かせ物語に引きずり込む演出、演技はとても良い。

ネタバレBOX

然し、会場でのアンケにも書いたように状況設定にはもう少し工夫が必要だと思われる。
テーマは、完全性とも取れるし女性が理想的なパートナーを選ぶことの難しさとも取れそうだ。無論、他の解釈も成立するだろう。
 完全に関してはプラトンの対話中にある「人間球体論」をイメージしたい。そのような完全を求めて彷徨っている主体を今作は描いたと解釈するのである。
 もう一方は、生まれた時、200万あると言われる原始卵胞で(卵子の素)、その後どんどん減っていくにせよ、可也の卵細胞を女性は持ち、我々ヒトと雖も遺伝子の命ずる所からは容易に逃れることができないという事実である。無論、これは男性にも言える。総ての生き物が遺伝子の乗り物でしかないという考え方すら成り立つのである。
雌雄異体である我々ヒトのうち、産む性である女性にとっては、生まれてくる世代に対する責任もより重大であると自覚されるであろうから、理想のパートナー探しはそれこそ命懸けであってもおかしくない。そんな突き詰めたパートナー探しとも取れるのである。
 出演している女優が次々に、この立場に転じてゆくのは、このような解釈なら、説明がつくし。
 何れにせよ、女優陣の熱演が目立つ舞台であった。
紛争地域から生まれた演劇シリーズ8

紛争地域から生まれた演劇シリーズ8

公益社団法人 国際演劇協会 日本センター

東京芸術劇場アトリエウエスト(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

 年末に上演されるこのシリーズも8回目を迎える。何とも感慨深いではないか。

ネタバレBOX

漸く日本の文化人も何とか世界に目を向けようとする時代にはなったか!? そうは言っても、普段評論が書ける方は兎も角、多くの演劇関係者がイスラムの内実については殆ど何も知るまい。「インシャラー」という科白でフランスのリセーアンが何故笑うのか? この程度の単純なことすら多くの日本人には分からない。更にハラルミートなどの宗教的タブーに関することも多くの日本人には分かるまい。自分は知らぬことを攻撃しているのではない。外部に目を開こうとしない多くの日本人の態度に対して批判しているだけである。既に日本には多くのムスリムが住み、日本人とも接触してきた。にも関わらず、彼らの価値観や人間関係のありようをアメリカ流のバイアスを掛けてしか見ない日本人が多数存在するように思うのだ。無論、そうでない日本人も自分の周りには多いが、日本人全体としてはマイノリティーであろう。
 まあ、ヨーロッパ人は、アメリカの大衆ほど単純ではないからムスリムに対して様々な対応を取るが、それでも“テロとの戦争”を標榜してブッシュがイスラム圏に仕掛けて以来、多くのヨーロッパ諸国でもイスラムフォビアが猛威を奮ってきた。今作の原作者イスマエル・サイディはベルギーで1976年に生まれたモロッコ系の人物である。ジハードは彼の三作目の戯曲である。現在までに205回もの公演が打たれ、観客の延べ人数は7万を超えるが、そのうちの4万人はリセーアンなどの若者である。一方で彼の笑いに富んだ作品は多くの世代に受け入れられているのも事実である。実際、突き付けている問題の深刻さ、鋭さを見事に笑いで緩和しつつ、キチンと問題提起をしている点で彼の優れた才能は高く評価されてしかるべきであるし、自分も原文で読んでみたい作家である。興味のある向きは仏語版を探して読んでみることをお勧めする。自分もこれからちょっと調べて読んでみるつもりである。
X'mas Party!!

X'mas Party!!

Prismore

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2016/12/19 (月) ~ 2016/12/20 (火)公演終了

満足度★★★★

 1本20分程の短編を3本芝居として上演した他、ピアノとギターの生演奏、更には女性陣によるダンスと中々盛りだくさんな100分。肩の凝らない内容だ。自分は、芝居が最も面白く感じた。無論、短編だから、オチや発想の奇抜さ、洒脱でピリリと薬味の効いた作品が良いのだが、年末の多忙な時、骨休めの気分が出ても良かろう。

テレビが来るぞ!

テレビが来るぞ!

劇潜サブマリン

千本桜ホール(東京都)

2016/12/15 (木) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★★

診療が長引き大幅遅刻
だったので、序の部分を拝見していない。従って評価は破急についてのみ。
何れにせよ、現代日本の為政者の嘘を炙り出すような、そしてそのために被差別者が利用されるようなグロテスクを描いていてグー。(追記後送)

ネタバレBOX

 主人公は、その母が著名な女優、タレントの娘。超のつくほど多忙な母が、そのことをものともせず、手作りの料理で娘を育てることが評判であったが、実はレトルトやチルドをただ温めるだけのことをしていたにすぎず、それでも多忙な中時間を態々割いて娘に「手料理」を作ってやっている、という本音がバレて失脚。マスコミの追求もあって、娘の目の前で自殺を遂げてしまった。
雪女ー密室の行軍ー

雪女ー密室の行軍ー

鬼の居ぬ間に

【閉館】SPACE 梟門(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

緊迫感のある舞台
 舞台は明治35年厳冬、日本軍は露西亜との戦争に向けて寒冷地での戦闘を想定した冬期軍事訓練を計画した。その舞台が八甲田山系である。予定では1月23日青森営舎発、1泊2日で田代新湯迄の20㎞を踏破する計画であった。然しこの年青森の積雪は例年を遥かに凌ぐ記録的なもので、参加した210名のうち199名が亡くなるという大惨事になった。所謂雪中行軍遭難事件である。(追記後送)

ネタバレBOX

 舞台は明治35年厳冬、日本軍は露西亜との戦争に向けて寒冷地での戦闘を想定した冬期軍事訓練を計画した。その舞台が八甲田山系である。予定では1月23日青森営舎発、1泊2日で田代新湯迄の20㎞を踏破する計画であった。然しこの年青森の積雪は例年を遥かに凌ぐ記録的なもので、参加した210名のうち199名が亡くなるという大惨事になった。所謂雪中行軍遭難事件である。
 今作はこの事実を下敷きに、雪女伝説を絡ませ、偶々遭難中に発見した雪小屋に避難した第三小隊7名と道案内の娘、第三小隊隊長の婚約者であった女を登場人物として構成されている。物語としては、生き残った主人公の岩木に、12年後穂積の婚約者であったキエが事の真実を問い質すという形をとっているが、岩木は、生還後、精神に変調をきたし、実家の座敷牢に閉じ込められていた。だが、12年後に脱走、遭難現場の雪小屋に戻って来たのである。その錯乱した記憶の原因を、当時の資料、生き延びる為に食べたとされる鹿肉を手掛かりに炙りだしてゆく。果たして暴かれた真実とは? 
時代絵巻AsH 其ノ玖 『草乱〜そうらん〜』

時代絵巻AsH 其ノ玖 『草乱〜そうらん〜』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/12/14 (水) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

伝説
 三代将軍家光の時代(寛永14年10月25日~翌年4月12日)に起こった島原の乱をベースに登場人物を伝説をベースに可也自由に取捨選択している。無論、伝説とは民草の願望の表現であり、力では無く記憶と願望そして切なる願いが形作る無形の表象である。(追記後送)

ネタバレBOX


 今作では天草 四朗時貞を豊臣秀頼の忘れ形見とし、彼を支える人物に夏の陣後鹿児島に落ち延びたとの伝説のある真田 幸村の孫、源次郎を据えている。のみならず、徳川幕府の各藩への弾圧(断絶、廃藩等々)によって浪人と化した旧豊臣残党を多く描いている。
同時に、敵の総大将である家光をも賢さ、狡さ、冷徹な判断を速やかに下す側面と共に度量の広いひとかどの人物として描いている点で、作家の力量を表してもいよう。このように筆者が判断するのは、敵を高めることによって、味方の人間性そのもののスケールが大きく強くなるからである。
裏の泪と表の雨

裏の泪と表の雨

BuzzFestTheater

ウッディシアター中目黒(東京都)

2016/12/08 (木) ~ 2016/12/18 (日)公演終了

満足度★★★

花三ツ星
 あいりん地区にあるお好み焼き屋が舞台だ。

ネタバレBOX

店主は、同志社を出ている。この地区には珍しい大学出。因みにあいりん地区とは釜ヶ崎を含むエリアであり、日本最大のドヤ街で東京の山谷、横浜の寿町を遥かに凌ぐ人口3万と言われるエリアだが、無論実態は不明である。歌舞伎町より狭いエリアにこれだけの人が暮らすと言われているのだが、基本は日雇い労働者であり、当然原発作業員として動員され、そのまま行方知れずになっている者も多いと考えられるが、戸籍が確定できる者は少ない為、労災や給与保証が為されなくても、最も底辺で泣き寝入りする者が多いのも実情である。だが、今作は、これらの状況をキチンと描いていない。分かる奴には分かるという感じで、釜の労働者には科白が当たられておらず、ただ、そのインセンティブの欠如と誰かに襲われた後の状況などが一コマのシーンとしてライトアップされるだけである。ここに、今作の問題点がある。
描かれているのは、このあいりん地区で育った兄弟が28年ぶりに再会することがメインなのだが、ちょっと家庭が複雑で両親の離婚時、兄は母について地元に、弟は父について長崎に住むことになった。この程度のことは、実際いくらでもある。釜のあるあいりん地区が、汚い小便臭い街という具合に描かれているし、決して清潔で小ジャレタ街で無いことは確かであるにしても、ルンプロとのダイアローグがなく、謂わばあいりん地区のプチブルだけの独白的表現になっている点が残念である。
一方、雨の雫が本当に滴ったり、飲み物を実際に飲んだりするリアリティーは中々のものである。また、ちょっと奇を衒った表現では、開演前、水着姿の女優が5分押しと書かれたプラカードを持って現れたのにはちょっとびっくりしたが、余り奇を衒うより、シナリオで物事の本質を対峙させて欲しかった。
竜宮 RYUGU

竜宮 RYUGU

Dance Entertainment REACH

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2016/12/13 (火) ~ 2016/12/14 (水)公演終了

満足度★★★★

ダンスはなかなかグー
 殆ど科白のないダンスパフォーマンスだ。

ネタバレBOX

会場入り口に透明なビニールシートを二枚観客の出入りできるほどの幅をとって、天井から平行に垂らし、水中へ入ってゆくような感覚を喚起すべく演出されている他、竜宮では、気泡が上昇してゆくときのような音が効果音として使われている。ダンスのレベルはまずまず。悪くない。ストーリー自体は知っての通り。だが、何故今今作が新宿で上演されなければならないのか? 現代との角遂が全くない。この現象は、日本の多くの「創作」に観られる現象であるが、この視点が無ければこういう題材を今の日本で表現する意味は薄れる。単に踊り易いとか、鯛や平目の舞を再現したいとかだけであれば、志が低い。F1人災によって危機に陥る竜宮の有様と浦島の時代を対比させた上で、玉手箱を開けた太郎が急に年をとる、という具合に少し話をいじっても良いようには思う。
Dressing/Dressing UP【本日いずれも当日券あります!13時U、16時U、19時D

Dressing/Dressing UP【本日いずれも当日券あります!13時U、16時U、19時D

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2016/12/08 (木) ~ 2016/12/19 (月)公演終了

満足度★★★

Dressing upを拝見
 新宿歌舞伎町のガールズバーで働くママ以下8名のホステスの開店前の一騒動を扱った作品。

ネタバレBOX

 今作の前に「Dressing」という作品があるから、その後日譚ということになるが、前作を観ていない人にも問題はない。
 さて、ママには内緒でJKが一人働いていた。高3、18歳である。ママには二十歳で通していたのだが、ひょんなことでバレてしまった。その彼女は友だちを失いたくない、との思いからチンピラに入れあげている友人を通じてJK専門のそのパシに貢がされていたのである。金を渡さなければ友だちとして付き合わない、と女子校の友人から言われるのが怖くて貢いでいたのである。この件は、ママがチンピラを脅し上げて片が付いた。他にも問題を抱えている子は居る。JDで就活をしているが、一社も内定が貰えない4年生。小劇場演劇で女優をやっているが、ノルマに押しつぶされそうな経済状態の子、潜入取材をしているルポライター、バックれてしまった娘の代役を頼まれた元NO.1 、伝説のスーパーホステスを師と仰ぎその呪縛から逃れられない女、そして現在のNO.1 らが客の前では見せない、女のはみ出した部分を描いたという。
 だが実際にこのような世界で起こっていることは、もっと汚くどす黒く救いが無いように思われて、余り入り込めなかった。
ワンダフルムーン

ワンダフルムーン

トツゲキ倶楽部

d-倉庫(東京都)

2016/12/07 (水) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

バランスの良い秀作
 トツゲキ倶楽部19回目の公演にして初のミュージカル。因みにオペラ歌手1名、ミュージカル役者1名、ゴスペル歌手3名が参加していて、自分は殊にオペラ歌手のシャウトする唱法に痺れてしまった。この方、リズム感も抜群で肝心な所で皆をそれとなく引っ張ってゆく。その声の素晴らしさもさることながらパンチの効いた唱法が素晴らしい。

ネタバレBOX


 シナリオもよくできたもので、何より設定が良い。時代設定は1969年。昭和44年だから高度経済成長期、場所は夫婦ともサラリーマンという典型的中流家庭の住む団地、希望ケ丘ニュータウン。朝出勤する時間帯も同じなら、乗る電車も同じ、給料だってどんぐりの背比べ。年齢も近い。子供が通う小中学校も同じである。何のことはない。退屈の典型でもある。そんな団地で死人が出た。発見者は腰を抜かしたが、妻が余り悲しそうなそぶりを見せない為「保険金をたくさん掛けていたの、ひょっとすると!?」だの「1か月ほど前に越してきた橘家も怪しい」等々との噂があっという間に蔓延する。
退屈シノギとはいえ、怖い話である。序の部分で歌と踊りを交えながら以上のような布石が敷かれている点も見逃すことはできない。破ではこの橘家の話が中心になるが、この家の娘は唖者である、が聾者ではない。父は交通事故で亡くなっている。母が医者に娘をみせる中で娘に何が起こったのかが徐々に明らかになるのだが、その過程で団地の様々な噂は、団地で亡くなった人の死因に疑問を持った刑事の聞き込み捜査も絡んで増々信憑性を帯びてくる。一応死因は事故死として片付けられたのだが、死体の傍に犬の足跡のようなものがあったこと。死体の尻に噛まれたような痕があったこと。団地の子供が事故時「何かが現場に居て植え込みの方に逃げた」と話していたと母が井戸端会議の折に話していたことなどが演じられ、観客は物語に嫌も応もなく引きずり込まれる。
さて、急である。噂が嵩じて橘家を追い出せとの話がまとまり団地住人が徒党を組んで橘家を襲うが。最後のドンデン返しは観てのお楽しみ。
演出・構成も上手く、歌を上手に物語に組み込んで実にスムースに流れ乍ら、日本人特有の事大主義と人情の機微も織り交ぜて非常にバランスの良い作品に仕上がっている。無論、演技も面白い。(役者同士が結構競っている様が、実に団地主婦たちの微妙な競争意識を表しているようで興味深いのだ)
舞台美術もちょっとユニークな作りだが、効果的である。無論、音響・照明などの効果もグー。ホントに初のミュージカルとは思えない。通常のミュージカルより芝居の要素が多いとはいえホントに大切なメッセージをキチンと含んだ秀作である。
夢にかける保険はありますか

夢にかける保険はありますか

劇団サラリーマンチュウニ

上野ストアハウス(東京都)

2016/12/08 (木) ~ 2016/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

総ての夢追い人に
 記念すべき第10回公演。元々、サラリーマン中心の劇団だが、今回は出演者全員がサラリーマンである。皆役者がやりたくて芝居が好きで好きで堪らない人々だ。
 描かれている問題は、当に彼ら自身の鏡。表現する者を目指す者皆が抱えている問題だろう。そんな彼ら、彼女たちだからこそのリアリティーを感じる舞台である。
(リピーター割 1000円。最終日夜公演にはまだ空きがあるそうだ。但し、行く前には劇団HPを確認のこと)

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 10年も付き合ってまた役者の夢を追う29歳の純二に愛想を尽かした彼女・さくらは離れて行ってしまった。その代りと言ってはなんだが彼の両親はちょっと変わった保険に入っていた。1年間、夢を追い続ける資金を保険金から出してくれる代わりに夢が実現しなかった場合には、保険会社の指定する企業に就職して貰う、という保険である。違約の場合は違約金を払わねばならない。
 劇団ホイップクリームの相棒優作がバイトに追われるのを尻目に、彼は今まで真に自分の夢実現に取り組んでこなかったことを悟り、保険会社の担当者からのサジェッションもあって様々なオーディションも積極的に受けるようになり、劇団経営のノウハウなどもセミナーで学んで随分成長してゆくのだが、その成果が見えるようになると彼のブログが荒らされたり、誹謗中傷が書き込まれたりするようになった。バイトの先輩・諸星が、犯人を突き止めようと様々な推理をし、遂には罠まで仕掛けておいたが。
 ところで、この保険会社も買収され、大手と組む為の駒に使われようとしていた。その前段階として、この保険会社が実は夢を食い物にして利益を上げる悪徳企業だとのバッシングを受けていた。その責任を取って社長は辞任した。だが、後釜に座った新社長・ジョニーこそ、乗っ取り屋であったことを見抜いた社長は彼に戦いを挑む。旧社長もこの保険会社の大株主であり、株保有率は20%。株主総会で新社長の企みを暴き、自ら取締役に立候補して承認されれば、新規に社を立て直すことも夢ではない。だが、旧社長には弱点があった。想定外の質問をされるとしどろもどろになり、言う事が支離滅裂になってしまうのである。ここで、社長を助けたのが純二であった。彼の特訓の成果が出て旧社長は、乗っ取り屋を失脚させることに成功した。
 一方、さくらは、ジョニーに結婚を申し込まれる迄になっていた。だが彼女は、純二のことを断ち切れていた訳でもなかったので、久しぶりに彼に連絡を取る。彼とじっくり話した上で最終的な態度を決める為である。
 1年が経ち、オーディションの結果が総て出ることになった。舞台関係はダメだったが、日本アカデミー賞に残りそうな作品の主役発表は未だだった。関係者が馴染のスナックに集まりお祝いの用意をしている所に入った電話は? 残念!  この時点で純二は役者を諦める決意を下すのだが、この会場へブログ炎上の犯人が分かったと諸星が駆け込んでくる。何と犯人は、主人公の親友・優作であった。保険会社の有能社員、相馬が人間として最低の行為だと批判を強める中、純二は、優作の傷をねぎらい“自分自身も親友と同じで妬み嫉みを持つ人間だ、お前はもう一人の俺だ”と彼を許す。
ドタバタの中、相馬が純二の違約金を支払い、夢を持つ人を応援する新規のベンチャーを立ち上げると言い出す。ここで社長が、この会社にも新規ベンチャーを支援するセクションがあることを示し、そちらで働くことを薦めてくれた。筆頭株主の会長には社長から話をしてくれるという。会長のOKも出た。元カノとのよりも戻った。皆、夢へ向けて新たな一歩を踏み出すことができて幕。

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