ユリディス 公演情報 劇団Player's World「ユリディス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     J.アヌイ原作のユリディスだが、翻訳物の厭らしさは余り感じない良い訳だし、兎に角、長い作品なのである程度カットせざるを得ない部分をカットして齟齬の無い脚本に仕上がっていたとは思う。

    ネタバレBOX

    シェイクスピア作品のよういな長科白が多いのだが、役者がカムことも殆どなく、その意味では難の少ない公演であったが、ユリディスが恋に落ちる原因となったオルフェのヴァイオリン演奏のシーンでは、もっと形態模写をキチンとすべきである。とても大事なシーンであるから、オルフェ役には、実際のヴァイオリン演奏をさせておくことは無論必要である。演出は、其処までキチンとやっておくべきだろう。駅のカフェの上手隅に何も言わずにずっと座っている旅人(死神)なども登場する作品であるだけに、こういった細部の造形に拘らなければ作品のリアリティーが担保できない。
     まして、今作を今上演する必然性は、余り感じられない作品である以上、上演するからには、通常の上演以上に作品としての質を高める必要があると感じるのだ。
     作品の肝は、オルフェとユリディスの純愛と、世間というものの実体。その鬩ぎ合いから生まれる風評が、純愛の成立を脅かす時、皮肉にも死だけが、この純愛が孕むに至った矛盾を解消するということだが、このアイロニカルな結論を導き出す為に、権力や権威が如何に純粋を潰してゆくか、そして弱き者、即ち肝心な時に肝心な決断を己の精神に従ってできなかった者が、如何に人生に飼い馴らされ隷属してゆくかが描かれる。
     然しながら、このような解釈をする日本人が一体どれほど居るのだろう? その意味で、余り必然的な上演とは言えないと思うのだ。ブレヒトではないが、今日の世界を演劇は再現できるのか? という問いをキチンと自分達自身に発信し続けたいものである。

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    2017/10/16 16:57

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