ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について

淵、そこで立ち止まり、またあるいは引き返すための具体的な方策について

カムヰヤッセン

ワテラスコモンホール(東京都)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

 仲の良い母子家庭で38歳になる息子が母を殺した。花5つ星

ネタバレBOX

犯人も母殺害に関しては早くから犯行を認めているが、頗るつきに優しく見えるこの息子が、母を殺害する動機が腑に落ちない。担当する刑事は3人。その誰もが、この点に疑義を抱いているが、登場する役者は3名。総て刑事役である。だが、犯人役として4人目の役者はそもそも存在していないのだ。その代りと言ってはなんだが、犯人の代役として登場するのは、車椅子である。母を殺害した後、心中しようとした男は、足と言わず、腕と言わず、自分で刺して自殺を図った。その所為で取り調べは退院直後の48時間である。警察での留置期限は、通常丸2日と法で定められているからである。
 物語はこの48時間の間に行われた犯人と刑事との、また刑事同士取り調べ方法を巡る対立を通しての若手刑事の成長物語でもあるが、実際の取り調べ場面では、刑事2人、犯人1人の構図が最後まで貫かれ、浮いた役者1人が犯人の科白を語る形を採る。が、決して車椅子には座らない。この非在こそが腑に落ちないこと、即ち訳の分からないことXの象徴だからである。別の言葉を用いれば謎ということもできよう。いずれにせよ、刑事たちは真実に至る為に、この尋問と裏付け捜査を進めている訳である。
 さて、車椅子には犯人が座っていると想定される中で、劇は進行する訳だが、この非在への集中によって緊張感が途切れることが一切ない。何となれば、この非在こそ、想像力を投影する場そのものであるからである。この演出の素晴らしさは、最初から在った設定で、矢張りこの非在を巡って作劇されたという話も合点がゆく。
 更にこの”場”へのアプローチの仕方が刑事間で問題視されるのだ。というのも3人の刑事のうちの1人が、取り調べ中、己の事件解釈を犯人に強要し、調書をデッチアゲている点があり、先輩刑事が、注意しても中々己の非を認めたがらない。散々、諭しても理解しないので、一番の先輩に当たる刑事が、誘導強要している事例をカマを掛ける形で仕込んで見せ、その結果を証明してみせることで、若手を論破する挙に出る。こんな方法を採りたくないので、それまで抑えていたのだ。何となれば、精神的に傷を負わせることは、暴力的な怪我を負わせるより遥かに重い傷を、肉体にではなく魂に負わせるものであることを先輩は知っているからである。いずれにせよ、後輩刑事も、その後の様々な先輩たちからの働きかけに己の未熟を漸くにして知り、成長してゆく。こんなサブストーリーも見事に織り込まれ、改心した刑事の説得によって初めて犯人も腑に落ちる説明に至るのだが、犯人が、頼ろうとした社会的救済システムでの窓口対応の杜撰さや、認知症に陥ってさえ、残り続ける人としての母に誇りと存在の間の奈落、その奈落を、母を理解するが故に、共に爪を引っ掻けながらずり落ちてゆかざるを得ない状況に追い込まれた、心有る人間(犯人)の苦悩を描いて秀逸である。
「シン・浅草ロミオ&ジュリエッタ」

「シン・浅草ロミオ&ジュリエッタ」

劇団ドガドガプラス

浅草東洋館(浅草フランス座演芸場)(東京都)

2017/02/18 (土) ~ 2017/02/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

11年目に入ったドガドガ+の新春公演。(ネタバレ追記2017.2.21 )

ネタバレBOX

舞台は浅草吉原。時は江戸、五代将軍、綱吉の時代。生類憐みの令をだし、犬公方と呼ばれたことで有名な将軍だ。様々な生き物のうちでも特に犬を大切にしたのは、彼の干支が戌年であったからだという。何れにせよこの吉原に於いては世俗の権力もそのままでは通用しなかった。武士であっても刀を持ち込むことは禁じられていたし、籠に乗って吉原に入ることもご法度であった。この吉原で権勢を揮っていたのが弾左衛門である。弾左衛門とは、亡八者、六道の外れ、河原者など士農工商に属さぬ被差別者を牛耳っていた統領である。この弾左衛門には、女信長と仇名される美しく強い娘、じゅりえが居た。一方、赤穂浪人、毛利 小平太は赤穂家中最強の武士であった。この二人が運命的な出会いをするが、郭の者が武士に懸想することはご法度であった。これを破れば傾城の世界と尋常な世界との黙約が破れる為、弾左衛門は断じてこの恋を許す訳にはゆかないのである。だが、障害があれば恋が増々燃え上がるのは必定。運命は、この二人を見逃さなかった。然し、恋を成就させれば恋人を奈落に着き落とすことになるのも必定。二人は悩みに悩むが、討ち入りまでの間はじゅりえが小平太に技を伝授するという形で夜毎会う。然しながら、いざ討ち入りとなれば、小平太は武士の本懐を遂げ、成就すれば切腹は免れない。闘争の過程で火が付けばその目が狼の目と変じる所から人呼んで狼目男(ロメオ)とは彼の通り名であった。一応、今作でメインストリームを形成する二人の名が、若い恋人の悲恋を描いた「ロミジュリ」に関連付けられているのみならず、今作では多くの登場人物名が、様々な文化的遺産、歴史などと密接に絡んでいる。弾左衛門の姓は、今作では犬神だが、歴史的には浅草である。だが、犬神となっているのは、犬公方との関わりを表していようし、サブストリームで自ら破瓜を為す気の強い女郎を演じる品寅はその気性の気高さを表す品に東洋の猛獣の王、虎を掛け更にフランク・シナトラを掛けている訳だし、品寅の先輩格に当たる看板花魁大鳥居(オオドリイ)はヘップバーン、後輩でライバルでもある花魁は得比寿(エルビス)プレスリーに掛かっていると同時に浅草寺の弁財天の七福神仲間である寿老人や恵比須とも掛かっていよう。大鳥居にした所で、神社の鳥居に掛かっていると読める。更に、この朝日楼の女将は、その名を毬鈴(マリリン)という。無論、モンローだ。朝日楼は名歌に出てくる女郎屋の名である。また深読みすれば、虐げられている女郎たちの名は、日本の宗主国であるアメリカに対する庶民の歯軋りと取れなくもない。まして、ここは吉原である。権力が無暗に手出しできぬエリアでもあるのだ。そこで、最も虐げられた者達が自由の声を挙げることは必然である。
 女の意地や差別・被差別と弱者たちの置かれた立場をさらりと忍び込ませることで作品は、単なるエンターテインメントに終わっていない。先ず、赤穂最強の武士狼目男に剣技の手ほどきをするのが、じゅりえであること。小平太より強いじゅりえが恋の炎故に心中の道行を選ぼうとすることが若く美しい二人の恋に似つかわしく、故にこそ、この愛は実に美しい。この美しい恋が、狼と犬の遠吠えで象徴的に表現され、一幕と二幕の印象的なシーンと交感すると同時に、ファーストシーンと二幕の頭のコレスポンダンス(交感)も歌って踊れる劇団というコンセプトを目指すドガドガ+のコンセプトに見合う所迄若手が成長していることを作・演出が認めたということでもあろう。



SUBLIMATION-水の記憶-

SUBLIMATION-水の記憶-

護送撃団方式

萬劇場(東京都)

2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★

香港に在った九龍城塞は僅か3ヘクタールの土地に推定5万人の人間が住んで居たとされる巨大な建築蝟集体である。

ネタバレBOX

土地が狭い分、上へ延びて行った。結果、至る所継ぎ接ぎの蝟集体になった訳だが、独特の水配給システムが構築され、上層階へも給水が為されていた。ジャンボジェット機が、この蝟集体の真上を低空で通過し、水は、温度の変化に応じ固体の氷、液体の水、気体の蒸気と三体に変容するが、タイトルの昇華といい、スチームパンクに絡めた物語の展開といいジェット機の騒音といい、曖昧化する要素の中にある法則性を見付けることで、本筋を見つけ出すことは容易いのだが、狭いエリアに非合法、権力も容易に立ち入れない治外法権的エリアでもあったこの地域でも、治安維持や外敵んい対する防御の必要から自治組織が生まれてくるのは必然であったし、その中で恋が生まれることもまた必然であった。そこに、インフラ基盤の王とも言える水が絡んでくる。当然、地域で暮らす人々の心象変化や口コミによる情報伝達中に仕掛けられた罠などによる情報操作もある。為政者サイドからの分断、破壊工作も警戒レベルを超えて喫緊の問題になっている。これらの諸要素をどこか廃工場を思わせるような混沌たる舞台美術が見事に形象化している。小屋の形状から、座る位置によって物語の見え方がかなり変わるだろう。この点も押さえて早目に席を確保することをお勧めする。
全段通し 仮名手本忠臣蔵

全段通し 仮名手本忠臣蔵

遊戯空間

シアターX(東京都)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

花5つ星 必見!
 2011年中津川での初演から毎年朗読形式で上演されてきた今作だが、

ネタバレBOX

今回は、初めて台本を持たず、演劇形式での上演である。構成・演出・美術は、遊戯空間を主宰する篠本 賢一氏。シンプルだが、工夫の行き届いた美術に、今回は下手に和楽器、上手に洋楽器のチェロを配した生演奏で、実力のある演奏家たちの作品内容に合った音曲を聴きながらの観劇である。今回は、声の良い役者を集めることにも意を用い、シンプルな舞台装置故に、多彩な彩を盛り込み、象徴や観客のイマジネーションを生み出す種を提示することで抽象的でありながら、実に雄弁な舞台を作り出している。役者陣のレベルが高いこともあり、武士道の理の持つ残酷さに対して、人の情の多用な襞が浮き彫りになり、いやがうえにも観客の魂に食い込んでくる。音曲・照明の効果的で頗るセンスの良い演奏・技術が更にこの効果を絶大なものにする。
 オリジナルテキストが人形浄瑠璃の為に書かれたものであり、史実としての赤穂浪士の討ち入りがあった約50年後に、本当は武家体制批判として書かれた作品であるから、わざと時代をずらし、場所も鎌倉に移してあったりするし、登場人物の名なども無論、史実を類推できるが、実名は使われていない。まして、歌舞伎の演目として全十一段のうち、演じられる段は、実は余り多くなかった。全段通しは、遊戯空間が朗読形式で毎年演じてから、少しずつ広がってきているのだ。更にジャニーズではないが、歌舞伎の場合は、時代、時代の花形役者を引き立たせる為に、実に多くのアドリブが入ってしまって、全体としての統一に問題が生じることが多い。これらの弊害を避ける為に、遊戯空間では人形浄瑠璃オリジナルのテキストを用いているのである。実際、江戸時代の科白で語られるので、最初は少し戸惑う向きもあろうが、ついつい引き込まれて見ているうちに、数百年の時の差が言葉に与えた変化は問題でなくなる。そんなことより描かれている内容の普遍性が、演者・演出・効果などの統合によって観る者の内部にカタルシスを起こし、実に感動的な浄化を成し遂げてくれる。必見の舞台だ!
ギンノベースボール

ギンノベースボール

ラビット番長

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/02/15 (水) ~ 2017/02/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

 古希野球というものがあるという。

ネタバレBOX

今作はそんな古希野球の選手たちを中心にした話であるが、そこはラビット番長の作品だ。野球を通して人生の楽しみ、人間関係の機微、苦しみや苦労、そして傍から見たら苦労と思えることであっても本人が納得づくでその苦労を引き受けたなら、そこには苦労とは別の価値観が生じているという、人間としての深さなどが、作演出を担当し、キチンと人生を生きている座長の懐の深さ、温かさをも表していると言えよう。この劇団の長所は座長のみならず、劇団員が皆成長・進化・深化を遂げていることだろう。その結果、作品にどんどん深みが増していると同時に、古希を迎えた人々の日常に否応なく潜む、“死”を通してみてさえ“生きていて良かった”との感慨が観る者にも与えられるという演劇の王道を歩み始めた。今後もますます成長し続ける劇団だろう。
 褒められたからといって良い気になる劇団ではないが、今後ますますの精進と人間らしさをキチンと生きるという難題に向かってチャレンジし続けて欲しい。
俺とお前とアイツでファンキー

俺とお前とアイツでファンキー

劇団ステラビア

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2017/02/11 (土) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

垢抜けない所が魅力になっている不思議なグループ。

ネタバレBOX

オムニバスに近い挿話の全体が緩やかに一作品を形成しているように感じさせる点でもユニーク。
主人公は、とし・ゆう・しんの仲良し三人トリオだが、いつも授業などそっちのけで、自分たちがビッグになる夢を追っていた。が、3人が3人とも夢を夢見るばかりで、その夢を実現する為に具体的な努力もしたことが殆ど無いので、夢の根拠を一切持たぬまま社会人となった。然し、当然のこと乍ら挫折する。人の良い者は、詐欺商法に引っかかって言われるままに要りもしない物を高額で買わされ続ける。一人は、器量の悪い女性がタイプなのだが、そういう女性に出会うと、歯止めが効かなくなって、通常男女間にある暗黙の了解事項を飛び越えて、いきなりキスに走ることが災いして彼女を作れないことがトラウマになっている。最後の一人は、夢見ていた自分の実力が幻影でしかなかったことを、どんどん後輩に追い抜かれて、己はシュレッダー係に迄落ちることで納得させられ、プライドも人間性もズタズタに引き裂かれてしまう。そんな中、学級委員をやっていた早弁だけは商社マンになって輝いていた。3人が3人とも何か困ったことがあった時に、自分達を助けてくれたのは早弁だと思っていたのだが、実は、互いを利用したりもしてエゴイスティックな行動などもありはしたが、互いに互いを助け合って来た側面もあったことが明かされる。まあ、置いてきぼりを食った3人の人生のペーソスと情けなさを、泥臭い手法で描く作品だが、この内容にこの手法がマッチしているのがグー。最後には3人にも一抹の光が示されるが、それは観てのお楽しみだ!
六本木少女地獄

六本木少女地獄

劇団 Sakura Farm

学習院女子大学 やわらぎホール(東京都)

2017/02/10 (金) ~ 2017/02/11 (土)公演終了

満足度★★★★

 原作は女子高生が書いた作品だ。

ネタバレBOX

身体が劇的に変化し、自分でも何が何だか分からないというような戸惑いを抱える時期にある少女たちと言い換えることができるかもしれない。何れにせよ心理学者の祖父を持つ少女と姉の首枷から逃れてきた少年が六本木で邂逅する、という設定で始まるのだが、様々なサイズの楕円が、彷徨う子供達、人々に投影される演出は、時に天使の頭上に掛かる輪のようにも見え、とても美しい。流石に女子大のセンスを感じる。
 ところで、物語のテーマは、不安定な少女たちの想像力が生み出した幻影を心理学者が繙き、現実に対峙させて大人への一歩を踏み出させるという内容だと捉えられるが、こういう通常の論理は幾度もひっくり返され、遂には姉と六本木少女の母子関係が語られたり、母と子の入れ替わりに至ったりもするので、姉弟を六本木少女の幻想が生み出した想像上の存在と看做すこともできよう。ただ、この幻影が想像妊娠を契機として成立する幻影だとすれば、生み出された幻影もまた幻想によって実際には居ない父親を理想の存在として造形したりと、冒険譚や未だ見ぬ国への旅などではなく、産む性である女性の、人間の創造に関わっている所に、女性が自らの身体をうざったく感じる視座があるのかも知れない。
探偵物語1980

探偵物語1980

劇団東京ドラマハウス

明石スタジオ(東京都)

2017/02/09 (木) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

なかなか考えさせる、期待以上の作品であった。 

ネタバレBOX

 表現することの意味は何処にあるか? 無論、受け手に楽しんでもらうということがある。だが、それ以外にもいくつものことがある。その一つに、自分の問題として考えて貰う、ということもあるだろう。今作、そういう部分も含んだ作品だと考える。というのも自分自身考えさせられたからである。
いくつかとても大切だと思える科白がある。「この街で指を落とす人間は二通りある。ヤクザと工員さんだ。ヤクザは騒ぎ立てるが、工員さんは偉い。黙って痛みに耐えている」旋盤工が親指を落とした、その指は結局くっつかなかった。その時、ヤーコーの多い蒲田の医師が言った言葉だが、当時その工場に勤めていて、現在はヤクザの少ない地域に就職し労組に参加しようとしていた社員の証言である。
 自分自身、蒲田の隣の糀谷に何年か住んで居た。髪を長くしていただけで、スナックに行けばからまれた。風呂屋へ行けば風呂桶は、油が沁み込んで到底使いたいとは思えない代物だった。そんな町でヤーコーとは不思議に喧嘩にならなかった。自分に金が無かったせいもあるかも知れぬ。それに自分が当時遊んでいたのは、新宿だったということもあろう。だが、蒲田が身近な街であったことに変わりはない。そして当時、街場の飲食店が新宿に次いで多かったのが蒲田である。新宿は、堤が稲川会を使ってのした街の一つ、蒲田は覇権を堤と競った五島が、東急系列の電車を通した街でもある。渋谷に事務所を構えていた安藤昇が五島を脅迫した廉でパクられたことも忘れてはなるまい。安藤組は大幹部の花形満が、素手で敵対していた組事務所に交渉に赴き銃殺された事件を契機に組を解散したが、渋谷に本拠を持っていた関係で東急とは縁が在ったのかも知れぬ。(これは地縁の関係という意味だ)
何れにせよ、現実にはこのように様々な関係が交差してくるのが世の中なのである。そして、この関係には命が掛かるのも事実である。だが、殆どの日本人が、この程度の基本的事実を事実として認識することができない。この事実こそ重大である。話が逸れた。追記は後送する。
クライングメビウス

クライングメビウス

劇団虚幻癖

Geki地下Liberty(東京都)

2017/02/08 (水) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★

 輪廻する場は、ピタリと重なっているという前提で永劫回帰論が展開する形。

ネタバレBOX

偶々何かの偶然で二つの世界が交差した瞬間、異世界のカメラマンをしている男と娼婦を生業としている女が邂逅する。一瞬の出来事であったが、男は女を写した。女も男を見、何かを感じた。
 ところで、この男女には浮浪者身を窶した神と堕天使が異次元通信の可能なノートと筆記具を渡して、ノートの性質と用い方、それぞれのプロフィールを教えた。ノートは1日に1ページしか書くことができず、書かれた文字は相手に届くと同時に書いたノートからは消える。また、文字数を勝手に増やすこともできない。必ず一マス一文字。而もページは日を追う毎に小さくなる。二人はこの通信を通じて互いの世界を知ってゆく。が、男の世界は平和ではあるものの、平和の毒が蔓延しており、麻薬を常用する者、嫉妬や劣等感に狂い他人の破滅を画策する者、何事も無いかのように傍観する者たちで溢れており、この現実に絶望した者たちは、負のスパイラルに陥って、明日を夢見ることもできない。
 一方、女の暮らす世界は、為政者の腐敗に抗した民衆が革命を目指して内戦状態が続いており、政府、革命勢力双方権謀術策が、更に相互不信を起こし始めていた。女は足の悪い母や革命運動リーダーらの生活費を捻出する為に身をひさいでいたのである。
 こんな状況の中、政府サイドの殺し屋が女に懸想、子を産ませようとする。彼は種無しと考えられていたのだが、彼女だけは妊娠させることができる、と好都合なことになっている。何れにせよ、異なる世界で生きるこの男女は母子だった、ということになっており、妊娠中に、足の悪い母の企みによって胎児は殺されてしまった。その生まれ変わりが件の男であり、現在は成人してカメラマンになっているという訳だ。
 何れにせよ、この男と同じ世界の彼女が、嫉妬心に駆られて、異世界の彼女が書いた文章を読み、恋人を刺してしまう。これらの狂言を仕組んだのが、浮浪者に身を窶したサタン、神はいつもの如く、人を生かすべきか滅ぼすべきかの判断をする為に観察しており、サタンにしてやられる。
 物語として、以上の説明は自分が想像力で補った部分があるのだが、それぞれの挿話を更に徹底した方が面白くなるだろうし、カメラマンが女の写真を撮った時、目が合ったと言っている科白自体おかしい。何故ならカメラマンはファインダーを覗いているのであるから、一瞬の邂逅の際にはファインダー越しに彼女を見ていたのであり、彼女が消えた後裸眼で彼女を探した訳で、その時、彼女は異世界へ戻ってしまって見える訳もなければ、目と目が合うことも在り得ないからである。このような細部をキチンと無矛盾で書き込まなければ良いシナリオにはならない。
 演技に関しては、序盤・中盤の求心力が弱い。これは、浮浪者達の性格づけが、暗示されていないことにもあろう。こういう超常的存在をそれとなく感じさせることや、終盤の展開への布石としておけば、舞台が締まるのである。
 また、二つの世界の住人達の棲み分けを明かすタイミングと仕掛けについても、神・サタンとの関係と絡ませて更なる工夫が欲しい所だ。
Melody

Melody

TEAM 6g

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2017/02/08 (水) ~ 2017/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

 メインストリームにいくつかのサブストリームが自然な形で合流し、巧みな伏線の用い方や、演技力の高い役者陣の好演で、丁寧で印象的な舞台に仕上がっている。舞台美術もしっかり作られており、会場に入った途端、劇が良いものだというのが分かる。一例を上げれば、上手側の壁に丸窓が切ってあるなどである。四角い窓に比べて遥かに手間暇と高い技術が必要な洒落た形なのである。
 シナリオが良く練れており、演技、演出、舞台美術、照明、音響何れもグー。スタッフの対応も親切で、チケット処理も合理的である。
 初日を終えたばかりなので、ネタバレは後で発表するが、観に行って損の無い、心に沁みるいい舞台だ。

戀女房ー吉原火事ー

戀女房ー吉原火事ー

占子の兎

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2017/02/05 (日) ~ 2017/02/08 (水)公演終了

満足度★★★★

 1911年4月9日に発生した吉原の大火に材を取って描かれた今作。

ネタバレBOX

吉原と根岸を対置する構図で持たざる者と物持ちを対比した作品だが、無論、鏡花らしく人の創る憂き世の哀れ、儚さ、酷さを堪えて生きる吉原の人情や、男女(浦松重太郎・お柳)の深く真摯な愛と重太郎の実母、重太郎の妹樫子とその婚約者、岩造など根岸の傲岸不遜で近代かぶれ、体裁と家紋にがんじがらめにされながら、エリート気取りで軽佻浮薄、而も冷酷な屑どもを比較して描く。
第一の見所は、お柳が、吉原の花魁たちの墓に乱暴狼藉を尽くした岩造一味に鉄槌を下した頭たちを宥める場面で啖呵を切るシーンか。当に江戸っ子の心意気ここに在り、と思わせる名台詞。すっとこどっこいをぎゃふんと言わせ、心が晴れると同時に男社会で女伊達を張るお柳の覚悟のほどを見事に見せつけるシーンである。第二に、重太郎の妻となっていたお柳が、根岸を離れる際にもう一度啖呵を切るが、惚れた男の為に我慢に我慢を重ね、高いプライドを折って土下座して迄頼んだ願いを無下にされての無念、観ている観客の腸が煮えくり返る思いになる。終盤、浦松の婆と吉原を焼き尽くした赤い老魔者とが、人界と魔界で交感し合いながらお柳と重太郎を責め苛むが、鳶の頭らの助けもあり、遂には魔物に打ち勝つ大団円に持ち込み幕。
トランプの差別的発言や、沖縄に対する或いは、在日の人々に対するヤマトンチューの差別発言が問題になる昨今、差別・被差別、強者・弱者をバイアスの無いというより弱者の側に立とうとし続けた鏡花的視点で見直してみる必要があろう。
キャンプ荼毘

キャンプ荼毘

ひとりぼっちのみんな

STスポット(神奈川県)

2017/02/02 (木) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★

 JKから25歳までの素の女の子たちの物語。花四つ星

ネタバレBOX


七年ぶりに集まった元演劇部員の面々は恩師の葬礼に来ていたのだった。今でも女優をやっているマイマイが、自分の思念をJK時代の自分に具現化することでJK時代女子高の演劇部顧問であった新卒イケメンの教師への報われなかった愛や、他の部員とのドロドロした関係が露わになってゆく。
然るに、マイマイ以外の女子は、彼女の入っていけないお祭り騒ぎを演じており、挙句の果ては、顧問とマイマイ以外の総ての部員はセックスをしていたという話迄出てくる始末、更に果てしのないのは、この期に及んで尚女の子同士が誰が一番の勝者であるかを争っていることであった。こんな喧噪の中、未亡人となったのは19歳の演劇部後輩。而も彼女は夫のそのような性癖を知っており妻以外とは最も長く顧問と付き合った女が総てを告げても「知ってます、それが何だと言うんですか」と切り返されてしまう。当然、妻には夫と一時的に関係してもその恋が結婚という果実として稔らなかった先輩たちへの侮蔑がある。その事実を認識するが故にマイマイの幻想は増々強固に、妄想を収斂させ現実の妻を否定し、自らが妻の位置を得るまでの幻視に陥るが、同時に25歳すねかじり、ヴァージンの自称女優と自らを茶化してみせる。(作品中では、これは他の部員が彼女を茶化す形で表現されているのだが)
演劇が歌舞くことを本義とする以上、演劇作品としてはまだこれからという点もあるが、歌舞く為には先ず己を知らねばなるまい。旗揚げ公演でこういった作品を作れることは、その意味で極めて大切なことだと考える。こういう勇気を今後も持ち続け、まっすぐ観、噂話に右往左往する人々とのギャップを正確に知って絶望せず、バイアスなしに自らの掴んだものを原資に表現に携わってもらいたい。
「ガドルフの百合」

「ガドルフの百合」

HyouRe Theatre Company

SPACE EDGE(東京都)

2017/02/03 (金) ~ 2017/02/04 (土)公演終了

満足度★★★

 倉庫のような空間での上演である。

ネタバレBOX

一人はダンサー、一人はマイマー、そしてもう一人が作・演出で多少身体パフォーマンスもやる。宮澤 賢治の三作品(「ガドルフの百合」「雨にも負けず」「四又の百合」)をコラージュして出来上がった今作、科白部分は当然あるのだが、マイマーの発声は滑舌が悪いばかりでなく、至る所怒鳴っているだけのような発声でげんなりである。作・演出担当は流石に身体表現が若干他の二人に比べて劣るものの、まずまずの出来。作・演をやっているのならプロデュースもやっているのだろう。キャスティングをしっかりやること、それをしないなら発声練習をキチンとやらせるべきだし、しないならば科白はつけるべきではない。少なくとも演劇情報サイトに載せているのだから。如何にボーダーレスとは言っても、安易に垣根を取っ払って異なるジャンルの表現者が集まって一緒に何かを作りました、では通らないことくらい分かって当然である。デルモをやっているメンバーが居たり、子供にパフォーマンスを教えたりするメンバーも居るようだが、余りにカルチャーセンター的ノリで、マジに演劇をやっている人々に失礼である。
 一応、時間論を持ち出して哲学的なポーズをとっているが、身体に落とし込む葛藤も感じなければ、彼我の差の中で針金状になるような実存や虚体の深刻さなども一切ない。
【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

稲村梓プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2017/01/31 (火) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

Gチーム2度目を拝見。無論ハナマル5つ星!! タイゼツべし見る!

ネタバレBOX

それにしてもチャイコフスキーの曲の使い方が上手い。オープニングでは徐々に盛り上げてゆき、明転した所でマックス。その音響に負けない部長刑事の迫力とテンション。熊田、大山、万平役も其々役を生きた。殊に初日未だ表現の難易度の高さにやや役に入り込んでいなかったように見えた大山は、格段の進歩を見せた。この4人の素晴らしい連関を通してつかの描きたかったこと、人間の地を這うような生き様の中でも、人は矢張り幸せを求め、日々の営みが例えどのように苦しくても、明日に繋げていこうとする健気な傷つき易い心と魂を抱えた存在を見事に映し出して普遍性に到達し得たと考える。
 ところで、役を生きることができる役者は役者として一流だろう。その意味で今作で重要な役を演じている4人は総て一流の仲間入りは果たしたのではないか。然し次のステップもあろう。それは超一流である。では超一流の役者には何ができるのだろう? 現在、自分にも一つの回答はある。だが、他にもあるだろう、否あって欲しいと考えている。今回Kチームは残念乍ら拝見していないのだが、力のある役者揃いだと思う。こんなに良い役者さんたちと観客の一人として有り得べき役作りを考えていけたら幸いである。

蛇足:チャイコフスキーの使い方終盤も勿論素晴らしいことは言うまでもにゃい! 蛇とにゃこの戦いでは、どちらの勝率が高いのかにゃ?
路地裏海賊譚 カコノユクエ

路地裏海賊譚 カコノユクエ

アトリエ・センターフォワード

シアターX(東京都)

2017/02/01 (水) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★

アメリカに蹂躙された中南米を彷彿とさせる。憲法違反と論理的思考ができる者なら誰でも考える、集団的自衛権を中核とする安保法制によって日本及び日本人が、アメリカの指揮下で他国人を殺し、殺されるのみならず、テロ対象国としても狙われる可能性が高くなる一方の昨今、描き方によっては人々に自分の頭で考えることの重要性を訴える作品にもなり得たであろうが。

ネタバレBOX

 9.11と聞いて何を思い出すだろうか? 殆どの人は、アメリカのあの事件だろう。然し、同じ9月11日アメリカが裏で糸を操りチリでピノチェト率いる軍がクーデターを起こし、南米初の民主的選挙によって選ばれた社会主義政権が倒された。1973年のことである。その後、今作で描かれたような恐怖政治体制が敷かれ多くの無辜の民が拉致、投獄、監禁、拷問、レイプなどの果てに惨殺され、多くの遺体が未発見のまま現在に至っている。遺体が見つからない原因に、米軍援助の軍機などに載せられた人々が高空から突き落とされて死んだ、という経緯があることも忘れてはならない。
 然るに今作では、その裏で糸を操る者の姿が一切描かれていない。内容的には、アメリカに蹂躙された中南米諸国の実情があることがハッキリ類推できるにも関わらずである。物語なら物語で良いのだが、陰謀論ではなく実際に行われてきた事実であるのだから、キチンと書き込んで欲しかった。何度も科白に登場する現実はもっと複雑で云々というのも、作家の逃げにしか聞こえない。
 無論、人間は弱いし脆い。然しながら、表現する者の正道が弱者の側に立つことである以上そして今作もまたそのような傾向を持つ作品である以上、分かっていることは分かっていることとして観客に提示しても良かったのではないか? と考える。
 所々、気の利いた科白もあるし、必要な舞台道具が天井から下がってくる演出も面白い。演技については、前日、熱海殺人事件を演じたアズタハルサを観たばかりで、こちらの演技が役を生きていたのに比べてしまったので余り高い評価はできない。
【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

【ご来場ありがとうございました!】熱海殺人事件「売春捜査官」

稲村梓プロデュース

サンモールスタジオ(東京都)

2017/01/31 (火) ~ 2017/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

チームGを拝見..文句なしの星5つ!

ネタバレBOX


 いい女である。誰? って主演の稲村 梓だ! チームGを拝見したが、主要な四役者が皆上手い、存在感がある、役を生きている。唯一人、今回のシナリオでおそらく脚本家の余りキャラクター作りをキチンとしなかった大山 金太郎の役作りの難しさが災いしたように感じられた他は。今回のシナリオバージョンは自分が初めて経験したものであった。多くは、大山は三流の犯罪者という形を前面に出しているシナリオを用いていると思うのだが。今作のシナリオでは、他の3人はキャラが立つシナリオであるのに対し、大山のそれは、重石になるように仕組まれており、その役を生きる為には、存在から滲み出すもので観客を納得させなければならないような難しさを要求される。その意味では、4人のキャラの内、最も難しい役だっただろうと考える。無論、それぞれの役に難しさがあり、他の三役はキャラを立て易いと自分が感じたまでのことで、何れの役者の演技も素晴らしいものであった。
 更に、演じた全員が、原作者つかの、はにかみや在日としての苦労、苦悩そして意地をも理解していることから来る作品読解の正確な掴み、社会的弱者の側に立とうとする姿勢、その真の意味での高潔が、弱者も持つダンディズムを貴人のそれへと変容させており、“芸術とは売春の趣味である”と述べたBaudelaireではないが、伝兵衛が警視総監に言った最後の科白の中にある「経歴に加えて下さい、趣味、売春と」に交感するイメージを喚起させるのだ。見事な舞台である。
誤解

誤解

アルシェ提携公演

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/01/23 (月) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

  1回目の観劇。

ネタバレBOX


 今作、初演は不評だったようである。恐らく当時のフランス人には理解を超える作品だったのだろう。だが、カミユは気付いた。東欧で起きた事件を契機にこの物語を紡いだのだから。ピエノワールの面目躍如といった所だ。
カミユの書いた哲学的な書物で有名なのは1冊、「シーシュポスの神話」だが、無論、通常の意味での救いはない。今作も同様である。通常の意味での救いなど何処にもないのだ。然し、現代社会に於いて難民化した人々を襲うのは再難民化、再々難民化という負の連鎖の危機であり、実際に四度目以上の難民化を経験した人々すら存在している。そのような状況にあって尚生き続けるのであれば、この事件を起こしたマルタと母のような人々が再び現れない保障は無い。また彼女たちが味わったような深い絶望と失念に研ぎ澄まされた生き残り哲学が生まれないとの保証もないのだ。
パレスチナ人の苦境を作り出したシオニストとシオニズムを支持する欧米のグロテスクなイデオロギーには、公正、公明、公平もない。そのことが、難民を追い詰め、絶望が彼らの背中を押して取り返しのつかない所まで追いやるのだ。現在、世界の多くの場所で、今作で描かれた事件の背景にあるもの・ことが現実化している。その問題の深刻さを理解できない日本で、今作を今上演することには大きい意味があろう。
誤解

誤解

アルシェ提携公演

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2017/01/23 (月) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

 昨夜に続き2度目の観劇である。

ネタバレBOX

兎に角、目が離せない。照明、音響の効果も良い。無論、カミユの原作も良いのだが、僅か丸1日の出来事を描いてこれだけの問題を提起してくる作品はザラにはあるまい。発表当時より、今の時代の方が今作の意味する所が解り易いのではないか? というのも、カミユはアルジェリア育ちの白人であるから、フランスに戻ればピエノワールとして差別され、アルジェに戻れば支配階層として忌み嫌われる。アイデンティティティー確立に苦労せざるを得ぬ立場だ。
日本で言えば、在日の人々、アイヌの血を引くマイノリティーや沖縄のウチナンチュー、シマンチューなどのマイノリティーのデペイズマンを想像してみる時、我らにもその辛さ、苦しみの厳しさに近いもの・ことが想像できると言えるかも知れない。更には公害、原発人災の被害者も似た立場に置かれていると言えよう。
マルタの科白にあるように、公正を欠く条件下に置かれた人間が(予め決定された)マイナス要素から自立するのは容易なことではない。それは、マリアが夫の死を型どおり嘆くこととは次元の異なる苦しみである。のちにサルトル・カミユ論争で決定的となる人間存在の根底に関する二人の認識の差は、今作に端的に表れていると見ることができよう。その分、各俳優の演技論にも本質的な差異を如何様に劇化するか? という問いとして現れてくるであろう。恐らく正解はない。在るのは唯闇夜で目が効かず触覚や嗅覚聴覚や味覚など視覚以外の感覚を総動員して正しい方向を模索しようとする原存在の不定と何ら支えも無く宇宙に漂うエパーブとしての存在、それを屹立させようと足掻く精神の葛藤である。
唐十郎×シェイクスピア

唐十郎×シェイクスピア

MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン

明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール(東京都)

2017/01/29 (日) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

 今作は、演劇人、詩人、文学者としての唐 十郎展の関連企画として2016年10月に1度だけ上演されたものに若干作品を加えての上演で、形式は朗読。

ネタバレBOX

上演作品は、順に「焼き鳥屋のハムレット」「リチャード三世」「口説き屋ロミオ」「蜂のタイテーニア」。テキストは岩波書店発行の「劇的痙攣」所収の「シェイクスピア幻想」だ。
 単に朗読というより、リチャード三世では、脊椎カリエスを患ったような彼の歪な体型の形態模写や、ギター、ハーモニカ、モンゴルの楽器であろうか、金属片を口に挟んで音を出す楽器、その他水音を表現する擬音発生器などが活躍する。後半、練習時間が無かったのか、一人だけ噛む役者が居たものの全体として非常にレベルの高い作りであった。殊に西村 俊彦、山田 志穂(劇団民藝)の役を生きるような表現が素晴らしい。
 また、演じられた四作で、起承転結の形式を踏む構成と発想も良い。このような公演がまたあるならば是非出掛けて行きたい公演である。
 
唐十郎×シェイクスピア

唐十郎×シェイクスピア

MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバン

明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール(東京都)

2017/01/29 (日) ~ 2017/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★

 今作は、演劇人、詩人、文学者としての唐 十郎展の関連企画として2016年10月に1度だけ上演されたものに若干作品を加えての上演で、形式は朗読

ネタバレBOX

。上演作品は、順に「焼き鳥屋のハムレット」「リチャード三世」「口説き屋ロミオ」「蜂のタイテーニア」。テキストは岩波書店発行の「劇的痙攣」所収の「シェイクスピア幻想」だ。
 単に朗読というより、リチャード三世では、脊椎カリエスを患ったような彼の歪な体型の形態模写や、ギター、ハーモニカ、モンゴルの楽器であろうか、金属片を口に挟んで音を出す楽器、その他水音を表現する擬音発生器などが活躍する。後半、練習時間が無かったのか、一人だけ噛む役者が居たものの全体として非常にレベルの高い作りであった。殊に西村 俊彦、山田 志穂(劇団民藝)の役を生きるような表現が素晴らしい。
 また、演じられた四作で、起承転結の形式を踏む構成と発想も良い。このような公演がまたあるならば是非出掛けて行きたい公演である。
 

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