ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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シェイクスピア「十二夜」

シェイクスピア「十二夜」

チョコレートカンパニー改めディ・ショコラーデ

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/04/12 (木) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★

シェイクスピアと四つに組む
 アラサーの女子二人が、シェイクスピアと四つに組んで、役者の身体性を試したいと言う。四つに組む覚悟や良し。それは言葉と身体性の演劇的結婚を目指すということか。だが、どうやらそういう具合に、分かったようなもの言いで、演劇を定式化している自分たちを、自分たち自身で茶化す、謂わばナンチャッテ精神のようなものをも併せ持つ様子である。かなりのレベルを期待できそうだと感じる。
 結果的に、期待が裏切られることはなかった。小田島 雄志訳の特性をキチンと活かし、シェイクスピアと四つに組んだことによって舞台に深みが、増した。
 それは単に貴族・紳士階級を主人公とし、位低き者たちを従とするような、単純な図式ではなく、何時、何処ででも主客転倒が可能な道化をもう一つの頂点として配置していることからも明かである。
 その構造は、幕あき直後、道化の揺する小さな器具に合わせて舞台上の総ての人物が翻弄される有様のフラクタル構造に端的に予知されている。

ひまわり

ひまわり

望創族

劇場MOMO(東京都)

2012/04/11 (水) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★

広い層に楽しまれそうだ
 設定は、ファンタスティックな部分を織り込みながらも、人の世出で生きるときに守らねばならぬ、とされる法的正義と情を対比させることで、我が国の伝統的枠組み、義理と人情のベースの上に置いたため、安定感のある舞台になっている。
 また道化役を演じていた役者たちが、それぞれの場所で、為すべきことをきちんとこなしていたのもプラス評価だ。
 シナリオも分かりやすく、科白もきちっと通っていた。広い層に楽しまれる舞台になっていた。

春を忘るな ご来場ありがとうございました!!!

春を忘るな ご来場ありがとうございました!!!

ウンプテンプ・カンパニー

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2012/04/09 (月) ~ 2012/04/16 (月)公演終了

満足度★★★

言の葉
 芝居はメタレベルで展開する方が面白い。梅が、紅梅の精であることは、その名、途中でのヒントなどで、演出の定石通り直ぐに気付いたが、彼女が、狂言回しなら、フィジカルとメタフィジカルを繋ぐ言語的なアプローチに不徹底があるように感じた。
 それは、シナリオに余計な解説が多すぎて興を殺ぐこととも同義である。この辺り、創作の基本だろう。

たくらみと恋

たくらみと恋

雷ストレンジャーズ

劇場HOPE(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

流石 シラーの戯曲
 科白が緊密で格調高く、対比も利いていて見事だ。俳優陣のレベルも高く、納得の行く水準であった。キャスティングも良い。俳優達の質の高さは、格調高い科白に演技が負けていなかったことにも現れている。自然に感じられたのだ。

たくらみと恋

たくらみと恋

雷ストレンジャーズ

劇場HOPE(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

流石 シラーの戯曲
 科白が緊密で格調高く、対比も利いていて見事だ。俳優陣のレベルも高く、納得の行く水準であった。キャスティングも良い。俳優達の質の高さは、格調高い科白に演技が負けていなかったことにも現れている。自然に感じられたのだ。

ロング・アゴー

ロング・アゴー

劇団ING進行形

タイニイアリス(東京都)

2012/04/06 (金) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

シチュエイション
 内容を取り違えるととんでも無い話になってしまうだろうが、冒頭シーンを見るだけで、この作品が扱っている主題は明らかだ。唯、問題は、現在も進行形であり、収束の兆しすら見えないので、このような形にしたのだ。
 ダンスにも、また、ゾンビか幽霊のような動きにも、ねじ曲がった指にも、滅びた村から、緊急を知らせに走る若者の聞く蠅の羽音のような音にも、地名にも、何もかもが、現在、この国で進行している破滅的な情況を表していた。
 ダジャレや下ネタに、必然性が無いのは、問題だが、ダンスや動きそのものには、大きな意味があった。前回のジャンヌ・ダルクより、随分、進歩した。その点を評価したい。

OTOGI

OTOGI

touch my brassiere? company

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★

風穴開けよう
 中盤迄、これでもか、という感じでダルイ感じを出されて、ドラマツルギーが分かっているのか、それとも、演出か、と判断に迷った。演出だったようで安心した。実際、この国は、夢を殺してしまって長い。国内にいる若者の閉塞感たるや、耐え難いものである。こんな情況を決意一般でひっくり返せるとは思わないが、風穴を開けようとの気持ちは、大変良く伝わってきた。

ファウスト

ファウスト

モナカ興業

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2012/04/04 (水) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度

噛み過ぎ
 先ず、脚本だが、原作の切り取り方に問題があるように思った。ゲーテの「ファウスト」と言えば数ある名作の中でもぴか一の作品だと思っているのだが、その最初のハイライトは、メフィストとの契約の場面だろう。無論、卓越した個人としてのファウスト提示は大切である。その上で、いざ、悪魔と契約を交そうという段になって、最初ファウストは怖気づく。確か、原作ではそうなっていたはずだが、そのくだりが、少し弱かった。
 更にファウストを演じたのは女優であったが、その必然性が見られない。また、メフィストフェレスを表すのに、多人数を用いていたが、用い方に難があった。
 第Ⅰ部終盤のワルプスギスの夜の描写もおざなりで、想像力を刺激されることが無かった。
 また初日と雖も、噛むことが多すぎたのも難点だ。照明、音響、舞台美術や劇場選びにも難があった。
 総じて、ファウストに挑むには、未だ力不足と言えよう。

遠吠岬は夕曇り【ご来場ありがとうございました!】

遠吠岬は夕曇り【ご来場ありがとうございました!】

劇団ぺブル(ペブル・グラベル)

中野スタジオあくとれ(東京都)

2012/03/30 (金) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

ホームドラマ
 どこにでもある定食屋の、TV番組でやっても良い様な雰囲気の中に、何をどのように盛り込めるか。かなり実験的なこともやっている、力のある劇団だ。だが、実験が全然浮いていない。例えば、言語破壊すれすれのことをやって、シナリオそのものへ疑問符を投げかけているのに、、同時に、言語の背骨を外す滑稽に繋がっている為に、言語破壊は、表面上、その真の意味を隠しおおせているのである。緊密な論理と、シナリオの良さを見抜く力を持った俳優陣に支えられた結果、表現が自然で丁寧である。そのことが、わざとらしさを排除し、人生の深い所まで表現を届かせている。この劇団は、小さなもの・ことに大きな意味を込めることに成功した。いい意味で一種の型を持ちえたと言えるだろう。個々のメンバーの更なる深化と、重層化を願う。

下賤の天 ~白浪は蒼天に咲く~

下賤の天 ~白浪は蒼天に咲く~

カラスカ

TACCS1179(東京都)

2012/03/28 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

義賊
 日本左衛門は、鼠小僧次郎吉のような義賊だ。頭脳明晰、剣もめっぽう強い。が、そんなことは、おくびにも出さぬ。
 時は元禄と行きたい所だが、そうは問屋がおろさない。元禄とは真っ向から対立する、享保である。有名な倹約政策の時代だ。将軍は、吉宗。もとは、紀州の出である。史的には四男であった彼が、五代目紀州藩主を継ぎ、更には将軍にまで上り詰めたのではあるが、親、兄弟の早世を、物語では、彼による暗殺と匂わせ、エンターテインメントの世界観に組み換えている。更に因縁浅からぬ尾張藩主、吉宗とは正反対の開放政策を取った歌舞く殿、宗春との三つ巴で描く痛快娯楽時代劇だ。史的事実をエンターテインメントに換骨奪胎し、民衆の恨み、つらみを隋所に噴出させながら、こなれた殺陣と推理小説のようにスリリングな論理展開で飽きさせない。無論、思いがけないどんでん返しも仕込んである。
 幕開きの不如意も、劇が進行する中で納得できる仕組みだ。エンターテインメント制作の手足れと言えよう。

鬼界ヶ森

鬼界ヶ森

劇団め組

吉祥寺シアター(東京都)

2012/03/29 (木) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★

泣かせる科白
 先ず、劇場が面白い。吉祥寺の駅から歩いて4~5分の距離だが、舞台のタッパが高く、当然のことながら、客席は、どこから見ても見やすい。演出家と劇場の法的な詰めは面倒だろうが、自由に空間を使えるなら、空間的には、非常に面白い作りになっている。ある意味、江戸時代の歌舞伎小屋の風情があるのだ。
 こういう劇場で、時代劇というのが、良い。殺陣も中々こなれており、アクション面でも飽きさせない。更に、隋所に非常に本質的な科白が鏤められており、泣かせる。惜しむらくは、混迷の時代に翻弄される人々の無念と、現代を生きる我々の感じている不条理が、イマイチ連関を欠くことである。この劇団は、時代劇を演ずることが多いようだが、今後、現代とのリンクを、演目とどうビビッドに絡めて行けるかが、成功の鍵になろう。深入りせずに、エンターテインメントとして楽しむだけなら、充分に楽しめる。

ALL UNDER THE WORLD

ALL UNDER THE WORLD

燐光群

笹塚ファクトリー(東京都)

2012/03/19 (月) ~ 2012/03/26 (月)公演終了

満足度★★★★

実験
 賛否両論のある舞台だろう。意味の解体を乱数を使うような方法も用いつつやっているので、演劇に意味を求めるタイプの観客には、評判は悪かろう。然し、今迄、燐光群の上演して来た作品の系列にずっと通底する方法のマンネリ化を避ける為、或いは、そこから、一歩踏み出す為に、坂手は、このような形で箍を外したのではないか。何れにせよ、少し長い目で見た時、この作品は、彼の作品系列のターニングポイントとして記憶されるようになるかも知れない。
 少なくとも、このような抽象思考に誘い、或いは、素にチャレンジしつつ、観客と相対する剃刀のような鋭さに迄、これらの断片を断片のまま、昇華できれば、更なる展開が見えてこよう。観客の自由な思考が試された作品でもあった。

Vector(ご来場ありがとうございました!)

Vector(ご来場ありがとうございました!)

613

劇場HOPE(東京都)

2012/03/24 (土) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

理科系でも分かりやすい
 題材の取り方が、先ず良い。命と研究者倫理という極めて本質的な問題をテーゼとして貫き乍ら、現代的視点で普遍性を語り得た。無論、シナリオ、演技、演出、キャスティング、舞台美術、照明、道具方らもこれに応えて良い舞台作りをしている。理科系以外の観客にも、良く理解できるように仕掛けを施している所も、とても自然で、レベルが高い。更に、方法的にひねくりまわし過ぎておらず、直球に近い所で勝負しているのが、爽やかである。適度なユーモアも鏤め、現実的な要素も取り込んで飽きさせない。これからが、楽しみな劇団である。

HELP!-『ハツカネズミと人間』より

HELP!-『ハツカネズミと人間』より

ユニット TOGETHER AGAIN

劇場MOMO(東京都)

2012/03/15 (木) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★★

バランスのとれた良い舞台
 作品自体、如何にもアメリカらしい特性を漂わせることに成功しているのは、演出の巧みさだろう。露骨なレイシズムや、蛮行を平気で行うような力の正義、その情況下で、苦労を強いられるマイノリティーの有り様が、俳優陣の自然で、気配りの効いた演技によって昇華されていた。
 随分、久しぶりの公演ということであったが、ブランクは、感じさせない。これからまた、年1本のペースで活動を再開する予定だと言う。期待している。

掏摸―スリ―

掏摸―スリ―

サイバー∴サイコロジック

OFF OFFシアター(東京都)

2012/03/14 (水) ~ 2012/03/18 (日)公演終了

満足度★★★

入り方がちょっと
 導入部、余りにぺダンチックでダサい。これで純文学と言うのは、文学的認識が浅いのではないだろうか。それに、主人公は、ちっとも悪ではない。寧ろ、それに徹することができずに悩む所が、余りにもありきたりで、そのことが、観客の失意をかったのではないか。悪らしい悪は、一人居た。だが、それはフライアーで言われている父ではない。掏りの演技も未熟であった。にも拘わらず、主人公の顔が、中盤から終盤になってどんどん良くなっていった点、良い役者になる可能性はある。個々の俳優のこれからに期待する。

『一方向』 -真壁茂夫×韓国人俳優-

『一方向』 -真壁茂夫×韓国人俳優-

OM-2

d-倉庫(東京都)

2012/03/19 (月) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★★

解釈
 もう少しラディカルな作品に仕上がっているのかと思っていたが、演出家のアフタートークを聞く限りにおいては、それほど、意識的では無いように感じた。無論演出をつけていないかに見せ掛けて、実は、人間とは、意味を見付けだそうと試みる動物であることを、個々の観客に認識させる為の罠であるかも知れないのだが。
 基本的に科白は、一切なし。叫び、歌、効果音、ギター曲、有名な終戦時の放送などが音の総てである。それでいて、意味は、かなり明らかに思えた。「一方向」のタイトル通り、俳優は一つの例外を除いて、一方向から反対側へ動いたし、そのことは、単純に、時間の流れを想像させた。その分、俳優陣の持つ身体性、基礎力の高さは良く伝わってきた。これらの要素を通して、観客は勝手に解釈すれば良いのである。それが、演出家からのメッセージであろう。

ドグラ・マグラ

ドグラ・マグラ

劇団霞座

アートスタジオ(明治大学猿楽町第2校舎1F) (東京都)

2012/03/01 (木) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

流石、演劇専攻の学科を持つ大学の演劇部
 原作のテイストを汲みながら、推理を中心に据えて構築してあり、学生劇団としては、間違いなく全国でトップクラスだろう。また、描かれた内容の中心で問われていることが、研究者の倫理であることは、現在、生起している、原発問題の中核を成す問題であり、時代感覚も鋭い。舞台美術、照明などにも、様々な工夫がこらしてあり、この舞台から、プロとして巣立って行く人もいると感じた。演技でも、迫真の演技ができた役者が居た。このまま延びれば、プロの一流になれるだろう。ここではあえて、その役名を挙げないが、目の表情などは、特に素晴らしかった。今後を期待している。

荷

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2012/02/24 (金) ~ 2012/03/04 (日)公演終了

満足度★★★★

簡単に言葉を吐けない
荷 
東京演劇アンサンブルが、武蔵関にあるブレヒトの芝居小屋で、今回上演したのは鄭 福根作 坂手 洋二演出 の「荷」だ。
描かれたのは、1945年8月24日、舞鶴沖で爆沈した浮島丸事件を巡る日韓関係である。恥ずかしい話だが、評者は作品を見る迄、この事件の内実を知らなかった。うろ覚えに知っていたのは、浮島丸事件という名称だけである。恐らく、読者の多くがこの件に関して知っていることは、自分と大同小異ではあるまいか。この国では、「選良」に都合の悪い事実、情報は隠されるのが常だからである。だが、この件を、事件と呼ぶのは、間違いだろう。これは、日本の「選良」が、自国民に対してと同じように他国の亜細亜人に対して犯した犯罪だからだ。だが、「選良」以外の日本人が、他国のアジア人に罪を犯さなかったというのではない。多くの日本人が、罪を犯した。従って、現在、日本人として生きている我々にも看過できない、民族の倫理的問題を扱った重い作品だ。
評者がこのように断ずるのは、3.11以降も、この国で猛威を揮う「選良」の悪辣は、戦中と本質的に一切変わっていないからである。彼らの薄汚い自己保身と瞞着、また選良の利益の為に今、捨てられている弱者。即ち、子供、女性、障害者、被差別者、下層階級。その構造が変わっておらず、民衆の側からの有効な反撃が、オルタナティブな形で現れることが無いからである。それは、我々日本人の恥そのものだと感じられるのだ。
ネットでは、読まれる文字の量も限られる。また、ネタバレは避けたいので、詳しくは述べない。この舞台で描かれているのは、戦争直後と数十年後だが、これは、過去の作品では無い。当に、今、この国で起こっている現実であり、人としての恥を知る人間ならば誰一人見過ごすことはできない、私の問題である。最後、荷は宙吊り状態に置かれる。然し、これこそ、観客に向けた鋭いメッセージであった。

ワンダース・インベーダー

ワンダース・インベーダー

ジャイアント・キリング

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2012/02/17 (金) ~ 2012/02/21 (火)公演終了

満足度★★★★

知的
ワンダース★インベーダー
 シナリオ、音楽、新旧の価値観とギャグの処理、時間と空間の相違等を、ドラマを構築する際の要素としてキチンと認識し、且つ上手に構成している。これらの処理の手際の良さが、物語の展開を頗る自然に運ぶ縁になっている。非常に知的な舞台構成だ。
 シナリオライターが、演劇に必要な、また演劇を成立させる要件を良く知っていることと演出家が、舞台でそれを現実化する技術を持っていることの証である。男・女、若さ・老い、過去と現代、リアルとヴァーチャルなどとの対比が見事である。これらの対立こそが、ドラマを生み、成立させる。舞台を作る側は、想像のきっかけを与え、観客がそれを補完して舞台芸術が存在し始めるのだが、その当たり前のことをキチンとこなしている劇団は、残念ながら少ないのが現状である。それに引き換え、劇団ジャイアント・キリングは、各々のファクターが知的に按配され、劇の展開に無理が無い。その結果、俳優達の演技も自然で、そのことが更に筋の展開に必然性を齎すというプラスのスパイラル効果を生んでいる。効果音や曲の選択に見せるセンスの良さも知性の高さを感じさせる。
 更に言うならば、諸要素を統括する視点はあくまで現代にあると言う点を評価すべきだろう。登場人物の設定を見ても、ゲーマーVS過疎のムラ社会という所から始まっているのだ。この対立軸に双方の側から其々のアプローチがあるわけだが、アプローチに於ける腑分けに仕方には、並々ならぬ力を感じる。
 これら総体の上に、困難で閉塞的な時代状況を越えようとするテーゼが、作品の筋を通している。そのテーゼを、人間は遊ぶ動物だ、と言い換えても良い。今更、挙げる必要も無かろうが、ホイジンガやロジェ・カイヨワの著作、日本では、後鳥羽法皇の編ませた梁塵秘抄の一節、“あそびをせむとや生まれけむ”が余りに有名である。
 この困難な時代、人間の最も本質的な要素を用いて、時代を切り開こうとする姿勢に未来に対する覚悟を見、好感を覚えた。

コルトス脳信号

コルトス脳信号

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新宿シアター・ミラクル(東京都)

2012/02/10 (金) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

所見
 この劇団、演劇をやってゆく上で大切な要素を2つ持っている。ひとつは、苦悩、もうひとつが、論理の徹底だ。最近の日本に珍しく、自分の表現したいものを持った劇団だ。したがって、描かれる世界が架空であっても、妙なリアリティー^を感じさせる作品に仕上がっている。今後、益々良い劇団になるよう期待している。

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