満足度★★★★
義賊
日本左衛門は、鼠小僧次郎吉のような義賊だ。頭脳明晰、剣もめっぽう強い。が、そんなことは、おくびにも出さぬ。
時は元禄と行きたい所だが、そうは問屋がおろさない。元禄とは真っ向から対立する、享保である。有名な倹約政策の時代だ。将軍は、吉宗。もとは、紀州の出である。史的には四男であった彼が、五代目紀州藩主を継ぎ、更には将軍にまで上り詰めたのではあるが、親、兄弟の早世を、物語では、彼による暗殺と匂わせ、エンターテインメントの世界観に組み換えている。更に因縁浅からぬ尾張藩主、吉宗とは正反対の開放政策を取った歌舞く殿、宗春との三つ巴で描く痛快娯楽時代劇だ。史的事実をエンターテインメントに換骨奪胎し、民衆の恨み、つらみを隋所に噴出させながら、こなれた殺陣と推理小説のようにスリリングな論理展開で飽きさせない。無論、思いがけないどんでん返しも仕込んである。
幕開きの不如意も、劇が進行する中で納得できる仕組みだ。エンターテインメント制作の手足れと言えよう。