生きてるうちが華なのよ。
グワィニャオン
萬劇場(東京都)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
面白い
劇場内の案内などにゾンビメイクの役者が立っていて、インパクトがあった。小粋な演出ではないか。芝居は、二場に別れて途中休憩が7分。実は、この7分には訳がある。訳は会場へ行ってのお楽しみだ。
今回は、3団体のコラボレーションであるが、息も合い単なるコメディではなく、作品に人間の、或いは人間関係の深さを投影することで浅薄な物にならず、かといって湿ったりもせず、良い按配の作品に仕上がっている。実際、笑いあり、涙あり。楽しめる。
やくざ 大橋税夫
二人の会
ACT cafe(大阪府)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/13 (木)公演終了
満足度★★★★
楽しかった~
友人と二人で観てきました。こんなに和やかいいのかと思うほどのゆるゆる感、客席で始終笑いのこぼれる楽しいステージ、いやぁ~、ホントに楽しかった~
さぶ
劇団俳小
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2012/12/05 (水) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
ベテランのワザ光る
遅くなりましたが観ました。前回の少女仮面よりも話がずっと分かりやすく、人情味溢れる楽しさ、明快さがある運びで良かったです。長時間でしたが、こういう味を出していって欲しいと思います。以下
ネタバレBOX
さぶさんのキャラは面白く、栄二さんは後半からエンジンかかってきて空気がグンと良くなったと思います。斎藤さんや勝山さんといった俳小さんのベテラン陣が、良い味を出していてとても素敵でした。逆に中堅勢の方たちは、全体を下げてしまう気がしてしまい、もう少し空気を出せるように頑張って欲しいかなと感じます。娼婦さんたちは過ぎる気もしたけど狂気があるように見えた。戸をスライドさせる使い方は面白かったです。僕の回では、ラストで糊の壺が倒れ、中身がトロトロ出てきていました。段取りか本当かは分かりませんが、自然体で良かったと思います。ずっとそのままにしておくのは、大事な糊に対する反応としてはどこかおかしい。話は2時間20分とかなり長かったですが、思ったよりは短く感じました。観客の方はご年配の方も多く、劇団さんや戯曲の特徴でしょうか。女のズルさは嫌だなぁと思いましたが、良かった良かったと話がまとまり良く観れました。
15みうっちMade
Mrs.fictions
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2012/12/13 (木) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
fictions
チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。
ネタバレBOX
「とりあえず先は見えない」
30前後くらいの男5人が、引越し準備をしている変哲もない会話劇。急に終わったかと思えば、同じ劇を暗闇の中、全裸でやるという。
人生の未来が全く見えない男らのどこか冴えない雰囲気に、「暗闇」「全裸」のエッセンスを注入すると不思議なことに面白さが4倍増しに。着衣verの際のセリフが全裸verで活きてくるあたり、なかなか出来た作品。セリフ的に視界は明るくなるというか。
確かに、デジカメじゃなく使い捨てカメラで写真とんないとダメだなと。
「秋にまたない」
仲のいい4人組の中の女性が突如としていなくなり、残された手紙には○月×日に帰ってくるとの文字が。男3人は、希望のような諦めのような心でその日一日を不毛に過ごす…。
結構好き。姿を現さない女性に惹かれ続ける男の性というか、なにしてんだかって空気がいい。悲観的なくせに希望を捨ててないってね。湿ってるいい作品。あと、ラスト女が来たっぽい話のシメも。そこでトモ(津和野諒)がニヤってするのも。
「だらしなく人生は確かに続く」
人を殺しに行く男とその妻っぽい女性。駆け落ちして服毒自殺する教師と女生徒。木炭自殺を図る冴えない男3人と、失恋で首吊り自殺する女…。
みな、死ねず殺せず、生きていく。シンプルな作品だけど、BGMも手伝って、気持ちが楽になるよう。失恋女(木村ゆう子)の能天気な歌い方が特にいい。人間、一人はよくないってことかな。誰かがいないと。
「うちの屋根がでかい鳥に持っていかれた。」
遠藤みちる(関原あさこ)に告白したい真田の葛藤を、4人の真田で描く…。
「屋根が鳥に持ってかれた」と悩むみちるは、家族崩壊の悩みを抱えていて、それを引き出した真田(中舘淳一郎)の想いがちょっと伝わってって話。4人の真田って変化球なとこと、真田の告白ってストレートなとこのメリハリがもうちょっと利いてるとなお良かった。
「男達だけで踊ろうぜ」
高校野球地区大会決勝の控え室。自分もベンチに入りたいと懇願するマネージャーの岬(湯口光穂)。ヤクザに支配された街で、先輩方に服従するメンバーらは、女を入れないのは伝統だと突っぱねる…。
キャプテン(ひら凌一)が先輩方にボコボコにされながらも、甲子園出場を条件にマネージャーをベンチに入れることを約束していたことが判るというオチ。友情出演の面々のキャラが面白くて序盤は笑える。ヤクザな街に生まれた男の生き様ってとこで、もっと引き込んで欲しかった。いい作品と思うけども。
「ミセスフィクションズのメリークリスマス(仮)」
虚構な「ミセスフィクションズ」の楽屋と終演後を描く…。
ブルジョアな三姉妹(受付・中嶋含めて四姉妹?)のブルジョアなセリフと感覚がウケる。受付やって蟹工船思い浮かべんなと。
自己パロディの中に、想いみたいなのをすべり込ませる、ちょっと綺麗な舞台。実際、北川未来は、顔立ちがとても綺麗だった。
4人の作演でつくられた作品群。どれも「味」があった。今後も、この集団のこのスタイルが続いているといいなと。
フランスオペラの世界
東京室内歌劇場
北とぴあ つつじホール(東京都)
2012/12/13 (木) ~ 2012/12/13 (木)公演終了
満足度★★★★★
聴き応えありました!
第1部 仏蘭西オペラの名アリアを集めて
~15分休憩~
第2部 マスネ作品よりも名場面集
なんと18:34~21:00までの長時間でありました(全席自由)
よくある電光板での歌詞日本語訳は無く、
作品解説もしてくださった、和田ひできさんの日本語訳集冊子が付きました。
フランスというだけに情熱的な感じを強く受けたかなぁ(^^)
プリオシンの竜骨
BQMAP
シアターサンモール(東京都)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
無題551(12-294)
19:30の回(晴)。19:03会場着、受付でチケットがないと言われたけどよく探したら出てきたそうで…。ここは何十年ぶりだろう、記憶では21世紀FOXの公演だったはずで20年くらい前か…。最近、(意図せず)宮沢賢治ものをみていますが、原作はサボっていてまだ読んでいません。さすがに今夜、このお芝居をみて、読んでおいた方が、と思いました。グリーンを基調とした衣装の色使い、立体的な発掘現場のセット、天井に架けられた3本の布は肋骨か星の河か、正面には黒い夜空に星が赤くひかり、二人の少年はそれぞれの幸せを探し、そして別れる。歌もお芝居もよく、3人による絵画の時間もその出来栄えに思わず笑う…いや、微笑む。こちら初めて。19:30前説(場内アナウス、1時間45分)、19:35開演〜21:23終演。終盤ながれていた旋律は「主よ御許に〜」かな。Qチーム、少年たちの旅は心の翼に乗り夜空を駆け、太古の命の証が地から現れる。
ネタバレBOX
生者と死者とを隔てる切符、夢の中で少しずつ思い返されること。夜空を背景に、切なくて、それでも純真な少年たち。
15みうっちMade
Mrs.fictions
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2012/12/13 (木) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★★
6作品
前半3作品と後半3作品でテイストを変えてまとめられていたので、違和感や繋がりの悪さなどを感じることなく6作品楽しめました。
個人的には後半の作品が好きです。
Mrs.fictionsの3人の作家さんの作品を一度に見ることができたので、自分の好みも分かり、次の観劇の参考にもなりました。
今度は長編も見てみたいです!
「アマアマ 〜金平糖綺譚〜」 【ご来場ありがとうございました!】
劇団与太組
小劇場 楽園(東京都)
2012/12/11 (火) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
マイサンシャイン
Utervision Company Japan
世田谷ものづくり学校(東京都)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
ぜひセットで
三浦さん版は会話劇、小池さん版は表現劇といった感じなので
三浦さん版→小池さん版の順に観るとわかりやすくていいと思いました。
本当に原作が同じなのかと思うくらい真逆の演出なので、片方だけでなく
セットで観たほうが面白いと思います。
マイサンシャイン
Utervision Company Japan
世田谷ものづくり学校(東京都)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/16 (日)公演終了
満足度★★★
距離が近い♪
当日連絡が来たので、予定を何とか空けてBのみ観劇しました。
ネタバレBOX
空間が狭く距離も近い分、生々しさは伝わりやすかったです。壁の造形がよく作り込まれていて凄かったですが、よく見ると横の穴の方が大きかったのでそこから抜けられそうな気もしました。堀川組?のと比較するなら、こっちの男の方がリアリティと親近感がありましたが、女は声が綺麗だけどどこか棒読みぽかったです。向こうの女が出てくる時、扉を開ける人の手が見えてしまっていたのが残念でした。音楽は実際に目の前にいる人が演奏すると、肌で感じるものがあって迫力がありました。初回というのもあったので、よりよくなっていくことに期待です。
蛍、紫陽花、百日紅。
劇団はんなりふるぼっこ
【閉館】(東京都)
2012/12/06 (木) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
答えは?
「普通」を巡るストーリー、確固たる答えがないものを、いくつかのストーリーのアプローチで観せてくれて、「普通」とは?を考えてしまいました。でも、あくまでも自分基準なんですよね!?
12月のピエロ協奏曲
山下幼稚宴
相鉄本多劇場(神奈川県)
2012/12/12 (水) ~ 2012/12/18 (火)公演終了
満足度★★★★
ファンタジー
開演前に、説明係(劇団員)とマナーの悪い客(実は劇団員)と誘導係(劇団員)が全て歌声で会話するという、自称「茶番劇」が始まりインパクトありました。
[12月のピエロ協奏曲]ということで、現代劇かと思いきや、中盤になって「トキの国」と「ピエロの一族」等の設定がはっきりしてくる、不思議なファンタジー世界観でした。
ネタバレBOX
突然現れた王様の言われた通りに12人のピエロ族を探しに、地図の場所に行って、すんなり仲間にするというなんともご都合主義な展開が続くのは、陽気な歌の端々から伝わる能天気さから、違和感を感じさせません。
欲を言えば、心情を追う表現が皆無で全て唐突だったので、もう少し感情移入がしたかったです。
主役の栗原彰文さんは、夏の夜の夢のパックのように身のこなしがヒラヒラと軽く、人懐っこくてお茶目で賑やかでした。凄く輝いて、皆を引っ張っています。相本さん、石崎さんのキャラクター性がぶれなくて好きでした。四季出身者の脇坂さんの体の細さが際立っていました。中田さんの貴婦人っぽさは、ビジュアルも声もバッチリでした。
演技は山下さん以外全員、ずっとオーバーアクションでパワフルでした。歌はハモりパートも見られ頑張っていました、バレエやジャズのようなダンスが多々取り込まれているところがオシャレだと思いました。
音楽冒険活劇 ペール・ギュント
Theatre Polyphonic
d-倉庫(東京都)
2012/12/04 (火) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★
なんたる回り道
演技者でない人が歌う芝居を初めて観たが、それがストーリテラー的役割だったのだとしても私は違和感を覚えた。(聞こえにくかったし。オープニング以外は演技者に歌ってほしかった。)初めてペールギュントを観たが要約などからもっと壮大なものをイメージしてしまったことと過剰な期待を寄せたことで全体的にもの足りなさを感じた。一色は及第点。初物づくしだったであろうことを思えばよくやってる。やはりただものではない。これを機にさらに進化するだろう。
浮標(ぶい)
葛河思潮社
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/09/20 (木) ~ 2012/09/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
やっぱり面白い
1年以上前の初演も観たが、それでも面白い。見応えあり。あっという間の4時間。
役者が変わったことで、若々しさ(生)がクローズアップされた。
ネタバレBOX
4時間もの大作で、初演からそれほど時間も経っておらず、役者が一部変わったようだが、セット等には変化はないというので、ひょっとしたら前ほどの面白さを感じないのではないか、などと思っていたら、違っていた。
やはり4時間釘付けで面白かった。
役者が一部変わっただけでなく、演出(照明を含め)には、初演に比べてエモーショナルな印象を受ける。特に照明の効果は大きいのではないだろうか。
そのためか、泣けてしまうシーンが出てきた。
「泣けてしまう」ということは、この戯曲が本来提示していることと、どうなのか それでいいのか、などと上から目線で考えてしまったが、これも演出家の解釈のひとつであり、それを観客として受け取ることにした(偉そうな書き方だけど・笑)。
違和感を感じたわけではなく、台詞や演技が染みたのは間違いなのだから。
初演では、「静」「黒」のイメージで舞台全体が「死の影」に蝕まれていくように感じたのだが、今回は、「生」「色」であり、「動」であって、「死の影」はあるものの、それに抗う人々や、「死の影」が近づいていても「今、生きていること」を大切にしている人(たち)というものを感じた。
なんとなく、きらきらしているというか、そんな印象。
五郎の慟哭に似た台詞も、今は「こちら側(生)」にいるから、あがいている、と。
舞台のセットは前回とどうようで、舞台中央には「砂」が敷き詰められていた。「砂」は、どうあがいてもさらさらと指の間からこぼれ落ちていってしまう「生(命)」や、借金まみれの五郎たちが置かれている、足元の危うさ、足元を取られて歩きにくいという「生活」を見事に表しており、さらに戦争の匂いがかる時代も表していたのではないかと思う。
役者は、五郎の親友の赤井は、こちらのほうがしっくりきていたように思えた。
ちなみにこれが初演のときの感想。
http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=90524#divulge
「ストレンジャー イン ザ 騎士」
無頼組合
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2012/12/07 (金) ~ 2012/12/10 (月)公演終了
満足度★★★★
シリーズ佳境!
今回は特に70年代後半の東映アクション映画の雰囲気が色濃く漂う。終盤の銃撃戦のせいだろうか?
その銃撃戦もシナトラを流しながらというのがニクいねどうも。また、幕切れに衝撃の事実を明かすのはシリーズ初か?
待たれる次回♪
Knight of the Peach
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2012/12/05 (水) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
邪道ver.
「表層の正・裏面の邪」「行動の正・心理の邪」なオモムキ。また、正で残った疑問点に対する回答も含まれており、観る順がこれで良かったと思う一方で、逆順で観たらどう感じたろう?と思ったりも。
Knight of the Peach
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2012/12/05 (水) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
正道ver.
イヌ・サル・キジ(や鬼、キビダンゴ)は出てくるものの桃太郎がなかなか登場しないだけに中盤で4者が集まった時の「キターーーッ!!」感たるや!(笑)
それにしてもあの話をよくもまぁ「海賊風味」に仕立てたものだ、と感服。
カゼマチ
ゲンパビ
要町アトリエ第七秘密基地(東京都)
2012/12/06 (木) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
素敵でした。
「忘れる」ということ。観劇してから数日経ってやっと少しだけ整理できました。私は、忘れることを悪いこととは思いません。忘れるという字は「心を亡くす」と書きますが、「亡くす」は人に対して使う言葉でもあります。人が亡くなるということは、決して無になってしまうということではなく、なくなったことがその人の過去になり、忘れて、形を変えて心に残ることだと思うのです。
カゼマチで生きていた登場人物は、それぞれに複雑な想いを持っていたと思います。それぞれの忘れたいこと、覚えていないといけないこと、忘れてしまったこと、あったと思います。忘れていいです。それを「カテ」にして生きて、忘れたという気持ちだけ持って「やり直す権利」を存分に使ってやりましょう。私もその権利を使おうと思います。
ザ・ゾンビース・ライジング
FOURTEEN PLUS 14+
ハイビーム(福岡県)
2012/12/07 (金) ~ 2012/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
発想がおもしろい
完全ゾンビ化するまでの間に人間って本性が表れるんだろうな~
生徒や愛する人、友達を身をもって守りたいという行動に感動した。
逆にわれ先に逃げちゃったお偉方は情けないけど、自分がもし
そんな立場になったらどうするだろう?うーーーん。。
図書館の自由に関する戦線 ~北の大地・クマ死闘編~
ENBUゼミナール
シアター風姿花伝(東京都)
2012/12/11 (火) ~ 2012/12/12 (水)公演終了
満足度★★★★
図書館に熊っっ!!
「図書館の自由に関する宣言」を知っているか?色々なことを考えさせてくれる、充実の60分。ENBUゼミの在校生公演とのことで、演出の求める事と役者の技量とのギャップでフワフワした部分は目につくものの、物語の中身はすこぶる刺激的。作・演出の谷さん目当てに見に行って間違いなかったなと思いました。役者として生き残るのは大変厳しい世界だと思いますが、多くの方が末永く活躍されると良いなと思いました。
ネタバレBOX
まず何より 「図書館の自由に関する宣言」を初めて知り、驚きました。表現の自由と知る自由を守るために、社会的圧力に左右されること無く、いかなる差別もあってはならず、誰もが図書館利用に平等の権利を持っているのだという宣言。こんな確固たる理念を掲げて図書館は在るのだということ、劇中に要所で引用される言葉にとても勇気づけられました。
物語のあらすじを書こうとしましたがうまくいきません。本質は物語の筋よりも些細な会話の中にちりばめられているな、うまいなぁと思いました。北海道のとある図書館。巨額の税金を費やして、利便性の高い構造になっているが、利用者は少ない。館内の飲食の出来るカフェスペースに集まるのは、毎日新聞だけ読みに来るおじさん、喋ってばかりのうるさい女子高生、マックを食べ始めるOL、ギャルママ、おばさんホームレス。そこへ熊が入ってくる。逃げ惑う図書館の利用者の何人かは餌食になり、残された人達は生き残るためにどうするか知恵を絞り、やがて熊は射殺される。 勿論、大真面目に語るべきは熊とどう戦うか、熊からどう逃げるかが本質ではないので、そのバカバカしさを大いに楽しみました。1人死ぬたびに、「ヒグマをなめちゃいけない。」とつぶやくように説明台詞がなされるブラックユーモア、さすがだと思います。
この短い物語の中に、全国の図書館が利用者増に向けて色々な取り組みをしていること、図書館統廃合の厳しい現実、民間委託による司書の非正規化、更には山を切り開くことで熊が餌を求めて里まで降りて来るんだという指摘まで表現されます。もりだくさんのメッセージなのに、全体の雰囲気は非常にライトで笑いにあふれたドタバタ劇に見えるからすごい。熊が乱入してくるなんて有り得ない設定は不条理劇ですが、笑って笑って考えさせられます。
私達には憲法があって、25条生存権では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。これは別に衣食住に困らなければ良いってことじゃないと思います。ここで言われる「文化的」には、芸術や本によって精神的な充足を得る権利があるのではないか。そして権利は守られるものではなくて守らせるものだということです。物語の終盤に、人間の都合で作った図書館によって里に降りてきた熊を殺すのは気が咎めるが、かといって自分は死にたくないという状況で司書の1人(非正規)が、私が行くと立ち上がります。そして止めようとする上司(正職員で公務員)に「公務員風情に何がわかる!ライブラリアンとして図書館を守る責任がある」というような意味合いの啖呵を切ります。あぁ、これはまさしく権利を守らせるための戦いなんだなと実感しました。そして結局なりゆきのまま熊が射殺され、それぞれに熊が入って来る前とは違う関係性が生まれたラストシーンは何だかとても寂しく見えます。その寂しさは、日頃「どうせ頑張っても何も変わらない」と諦めさせられる現実と重なるからでしょうか。「私達はどんなに努力しても、理不尽な暴力(社会的圧力)に合うんだから無駄だ。」と諦めるのは悲しい。せめて自分のささやかな幸せ、図書館の自由くらいは守りたいなぁと思いました。