図書館の自由に関する戦線 ~北の大地・クマ死闘編~ 公演情報 ENBUゼミナール「図書館の自由に関する戦線 ~北の大地・クマ死闘編~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    図書館に熊っっ!!
    「図書館の自由に関する宣言」を知っているか?色々なことを考えさせてくれる、充実の60分。ENBUゼミの在校生公演とのことで、演出の求める事と役者の技量とのギャップでフワフワした部分は目につくものの、物語の中身はすこぶる刺激的。作・演出の谷さん目当てに見に行って間違いなかったなと思いました。役者として生き残るのは大変厳しい世界だと思いますが、多くの方が末永く活躍されると良いなと思いました。

    ネタバレBOX

    まず何より 「図書館の自由に関する宣言」を初めて知り、驚きました。表現の自由と知る自由を守るために、社会的圧力に左右されること無く、いかなる差別もあってはならず、誰もが図書館利用に平等の権利を持っているのだという宣言。こんな確固たる理念を掲げて図書館は在るのだということ、劇中に要所で引用される言葉にとても勇気づけられました。

    物語のあらすじを書こうとしましたがうまくいきません。本質は物語の筋よりも些細な会話の中にちりばめられているな、うまいなぁと思いました。北海道のとある図書館。巨額の税金を費やして、利便性の高い構造になっているが、利用者は少ない。館内の飲食の出来るカフェスペースに集まるのは、毎日新聞だけ読みに来るおじさん、喋ってばかりのうるさい女子高生、マックを食べ始めるOL、ギャルママ、おばさんホームレス。そこへ熊が入ってくる。逃げ惑う図書館の利用者の何人かは餌食になり、残された人達は生き残るためにどうするか知恵を絞り、やがて熊は射殺される。 勿論、大真面目に語るべきは熊とどう戦うか、熊からどう逃げるかが本質ではないので、そのバカバカしさを大いに楽しみました。1人死ぬたびに、「ヒグマをなめちゃいけない。」とつぶやくように説明台詞がなされるブラックユーモア、さすがだと思います。

    この短い物語の中に、全国の図書館が利用者増に向けて色々な取り組みをしていること、図書館統廃合の厳しい現実、民間委託による司書の非正規化、更には山を切り開くことで熊が餌を求めて里まで降りて来るんだという指摘まで表現されます。もりだくさんのメッセージなのに、全体の雰囲気は非常にライトで笑いにあふれたドタバタ劇に見えるからすごい。熊が乱入してくるなんて有り得ない設定は不条理劇ですが、笑って笑って考えさせられます。

    私達には憲法があって、25条生存権では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。これは別に衣食住に困らなければ良いってことじゃないと思います。ここで言われる「文化的」には、芸術や本によって精神的な充足を得る権利があるのではないか。そして権利は守られるものではなくて守らせるものだということです。物語の終盤に、人間の都合で作った図書館によって里に降りてきた熊を殺すのは気が咎めるが、かといって自分は死にたくないという状況で司書の1人(非正規)が、私が行くと立ち上がります。そして止めようとする上司(正職員で公務員)に「公務員風情に何がわかる!ライブラリアンとして図書館を守る責任がある」というような意味合いの啖呵を切ります。あぁ、これはまさしく権利を守らせるための戦いなんだなと実感しました。そして結局なりゆきのまま熊が射殺され、それぞれに熊が入って来る前とは違う関係性が生まれたラストシーンは何だかとても寂しく見えます。その寂しさは、日頃「どうせ頑張っても何も変わらない」と諦めさせられる現実と重なるからでしょうか。「私達はどんなに努力しても、理不尽な暴力(社会的圧力)に合うんだから無駄だ。」と諦めるのは悲しい。せめて自分のささやかな幸せ、図書館の自由くらいは守りたいなぁと思いました。

    2

    2012/12/13 12:20

    0

    0

  • コメントありがとうございます。物語を自分に引き寄せて解釈してしまう癖があり、自分よがりの誤解のある感想だったら嫌だなと思っていましたが、谷さんの思いが片鱗でも共有できたのなら嬉しいです。そして、あれ、マジなんですね~。観劇後、家に帰ってネットで調べて、「マジかっっ!」って言いました(笑)図書館を舞台に改めて1本、すごい見たいです。これからも、ガッツンガッツン、谷さんの頭の中身を、作品通して垣間見せて下さい!!

    2012/12/16 23:30

    ENBUゼミの公演なのに、こんなに色々、僕の本・演出をということでご来場頂けた方が多くて、ちょっと正直びっくりしています。平日2日間のみだし、成果発表的な意味も強い公演だから、足は遠のくと思っていたのですが……。ありがとうございます。

    そして諸々、細かい意図や目指したとこ・やりたかったことが伝わったようで、とっても嬉しいです。あくまでENBUゼミの授業の一環、生徒への指導が中心である公演で、時間・予算・その他いろいろ制約もあり、しかしその制約の中で精一杯やった結果がこれですので、ご意見は真摯に受け止めております。

    でも図書館、面白いでしょ? 自由に関する宣言とか、あれマジなんですよ? 僕も今回、あらためて知って、内容のアツさにびっくりしました。奴らマジで図書館で世界に平和と平等をもたらすつもりですぜ。しかもガチで手取り12万みたいな司書さんもいるみたいです。敬服。ふだん図書館にはお世話になりっぱなしなので、また改めて題材にして、一本書いてみたいです。

    ご来場、ご感想、どうもありがとうございました。また別の公演でもお会いできますよう。

    2012/12/14 02:29

このページのQRコードです。

拡大