最新の観てきた!クチコミ一覧

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ランニングホーム

ランニングホーム

ステージタイガー

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2016/06/02 (木) ~ 2016/06/06 (月)公演終了

満足度★★★★★

人の数だけドラマがある。暖かいドラマが…。
「人の数だけドラマがある。」
一つの出来事を、登場人物それぞれの観点から切り取り、時間軸を遡りながら切り取り、見せてゆく…。
何気ない、人を思いやる何気ない気持ちが、心にズシーンと届いてきます。
とっても見せ方が上手いな、と思いました。
観劇後、心が満たされ、癒される、そんな舞台でした!

追伸、ステージタイガーさんの舞台に現役はちさんが出演され、遜色ない演技!ちょっとうれしかったです!
ハチさん含め、最近、学生さんがいろんな舞台にご出演されているのを拝見すると、応援したくなりますね!

追伸その2、折角、先行予約で申し込んでおきながら、それで安心してしまい…、振り込むのを忘れ…、キャンセル扱いに!
危うく拝見できない所でした!危ない危ない!
振込は忘れずに!

らいおんの憂鬱

らいおんの憂鬱

ザレ×ゴト

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2016/02/04 (木) ~ 2016/02/08 (月)公演終了

満足度★★★★

笑いに隠された鋭い問題提起
本筋は(近)未来に実現しそうな宇宙旅行中の出来事である。その時から更に先の時代から或るミッションのために派遣されてくる人の活躍...ストーリーはループするような感じでそのラストシーンは観客の好みが分かれそうである。
基本はコメディであるから小ネタにも伏線を張り巡らせている。近未来要素を少々詰め込みすぎちゃったよパワフルファンタジー、面白かった。

ネタバレBOX

300年先の世界からやってくる...その時代では宇宙環境が変化しており、「太陽」という存在がなくなる。いつまでもあると思っている環境、物質、生物などへの警鐘が鳴る、そんな問題提起を含む内容である。その大きく重いテーマを笑いという渦の中にかき消す。硬質に描くことが出来る内容であるが、そこは柔軟にすることで、観客一人ひとりが向き合う問題としてしている。

舞台美術は、中央にサークル、その輪郭に沿って左右に可動する三角形の台座状の装置。舞台奥を少し高い位置にし、別次元(場所)をイメージさせる。そこは紗幕で蔽い鮮明に観えない分だけ距離感を表す。基本的にはサークルにある三角形の台座を動かし、操縦席やその他の室内演出をする。時空間移動を伴うが、分かり易い展開になっている。

ストーリー中の挿話は、現代の社会問題そのもの。
話は、300年前の宇宙(観光)旅行している宇宙船が危機的状況になることを知り、未来からその救助のために派遣されてくる。表層的には、その救助の過程における旅行客・乗務員の人間模様が描かれる。その危険な状況に陥る原因は、宇宙海賊船による緩い襲撃、宇宙環境(隕石など)による衝撃である。元々、海賊船の乗員がその労働対価に見合う賃金、労働条件の改善を求めるため、船体の機材(エンジン等)を売却し給料に充てる。実社会のブラック企業を糾弾するかのようだ。
もちろん、環境問題も透けて見える。

さてラストシ-ン...宇宙船からの脱出における新婚夫婦、親友、乗務員仲間などの人間模様が中心に描かれてきたが、その話がループするようで、悲喜劇が錯綜して終わる。この展開を悲劇にして余韻に浸るか、喜劇にし安堵して帰路につくか、観客の好みが分かれる。

総じて若い役者で構成されており、躍動感があり勢いがある。また演技力に差が見られずバランスが取れていたと思う。その一方、役のキャラクターに個性がなく、誰もがどの役を演じても同じに見えるかも...。

次回公演を楽しみにしております。
無名劇団第23回公演「無名稿 機械」

無名劇団第23回公演「無名稿 機械」

無名劇団

浄土宗應典院 本堂(大阪府)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

横光利一さん
チラシからの想像と、内容は異なっていましたが面白かった。
柊さんが案内とかしていたので、今回は出ないのかと思っていたら、しっかりと出ていたことに驚きました。
島原さんに一番感情移入したかな。
横光さんの本を読みたくなりました。全然しらなかったけど。

あと、開演前に高校生らしき人が、開演前の暗転にテンションが上がるといってたのに共感。
これから始まる芝居、どんなんやろって期待膨らむし、現実から物語の世界に入っていく、あの感覚ほんまに好きやな。
初めて観劇したとき、急に人が立っててびっくりしたのが懐かしい

保健体育B【終演しました!ご来場ありがとうございました!】

保健体育B【終演しました!ご来場ありがとうございました!】

20歳の国

駅前劇場(東京都)

2016/04/27 (水) ~ 2016/05/01 (日)公演終了

満足度★★★★

エロスと青春のバランス感覚
私の「一度の観劇でのキスシーン目撃回数1位」を、あっさりと更新する勢いの本作だったが、不思議にいやらしさを感じず、不快にならなかった。「本当に始まるのは唇以外への場所への口づけからだ」と山田詠美は著書『マグネット』で書いているが、それが本当だとすれば、唇へのキスというのはただの助走にすぎない。20歳の国「国王」を名乗る作・演出の竜史は、そうした、エロスを設計するバランス感覚が秀でている。キスそのものよりも、腰をなでる手つきの方を、よほどセクシーに見せてくるのだ。だから、ぱっと見の生々しさに辟易することなく、穏やかな気持ちで大量のキスシーンを浴びることができたのだろう。

20歳の国はいつも、一方通行の片思いなどの人間関係の組み方が巧い。相関図などの説明ナシで観客にパッと関係性を掴ませる脚本の技量は見事。スタンダードな青春群像劇だけに、場面転換のやり方などがストレートすぎるところもあるので、技巧を凝らす余地は大いにあると思う。

ネタバレBOX

ホモソーシャルなカラオケ屋の男たちの中で、メイコ(長井短)がモノのように扱われるのが、あわれだった。遊び場の少ない、地方都市の高校生たちの姿がリアルに描かれていたが、登場人物たちが17歳よりもっと大人になったら、より複雑に感情の入り乱れた性愛群像劇になりそうだ。今作でも、教師や店長、小説家など、大人の世界も徐々に垣間見えてきて、これからの作品もぜひ観ていきたい。
「登場人物の中で付き合いたいのは誰ですか?」「登場人物の中で友だちになりたいのは誰ですか?」などの項目がある公演アンケートもおもしろい。
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

壱劇屋

インディペンデントシアターOji(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★

パントマイムでつくるコメディ
オープニングシーンをきっちり作る、小劇場的なイントロダクション。こりっちに「観てきた!」を書くと、このオープニングを上から撮影した映像がもらえるというのは、制作側が観客とのつながりを創出し、喜んでもらいたいという工夫を感じる。

しかし作品では、台本の言葉が軽いのが気になった。言葉遊びは、遊びだからこそ説得力が必要で、「四面楚歌」というキーワードにも必然性がなく、ただ貼付けられた設定でしかないように感じられたし、コメディとしての強度も低かったように思える。ストーリーの骨格が言葉遊びに負けてしまっている印象を受けた。パントマイムなど、俳優さんたちの見せ所は多かったし、アドリブのような掛け合いはリズムがよかった。音と光の明滅する激しい演出は、幅広い客層にはもしかしたら刺激が強いかもしれない。

レドモン

レドモン

カムヰヤッセン

吉祥寺シアター(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度

説得力が見出せず
人間の主人公がレドモンの妻を持っていることを、後ろめたいと思っているのか、本当は大切なのか、最後までわからなかった。後者だと信じたいと思って観ていたけれど、主人公のあらゆる言葉、行動に説得力がなくてわからなかった。

ヨーロッパでの移民排斥運動、日本での在日韓国人へのヘイトスピーチ問題などが白熱する中で、差別や隔離の問題はこれからもっともっと、私たちの暮らしに切実に迫ってくる問題のはずだ。でも、この作品を観て、そうした問題を一緒に考える気持ちにはなれなかった。「作家」は、観客に現実を教えて啓蒙してやる偉い人間などではなく、社会の矛盾や人間の薄汚さに敏感な弱い存在だと思うし、だからこそ、彼らの生み出す言葉は観客に響く。今作のような、底の浅い家族観と異人種への差別・隔離描写では、作品で描こうとした真の問題意識は伝わってこなかった。詳しくはネタバレBOXをご覧下さい。

ネタバレBOX

主人公は新聞記者という職業柄、本音と建前を使い分ける必要があるのだが、その設定に無理があったのではないだろうか。なぜ娘を置いていくのか。しかも塾の担任に預けて。それって身勝手すぎないだろうか……? 子どもを置いていくほど、妻を愛していたようにはまったく見えない。厚生省の女と、レドモンの男との関係の描き方もよくなかった。セックスしないまま(=レドモンの証拠であるしっぽを見せないまま)、情報の漏洩をさせるのはハニートラップの化かし合いにしてはリアリティがなくて少し冷めてしまった。
ラストシーン、天上に吊られた舞台美術が降りてくると、両親に置いてゆかれた娘(人間とレドモンのハーフ)と、初恋の男の子(人間)を隔てる柵になった。柵は、アウシュビッツに張り巡らされた鉄条網を模していた。でも、それだけの重みも人種差別の切実さも感じられず、安全圏からそれっぽいモチーフを並べて社会問題に取り組んだようにしか見えず、残念だった。
椿姫

椿姫

カンパニーデラシネラ

シアターX(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/31 (木)公演終了

満足度★★★★

花の命は短くて
マルグリット役の崎山莉奈は、ボブヘアーの美しさが目を引いた。娼婦は赤か黒のドレス、髪は長いものをまとめあげるのがオーソドックスでいいと思っていたが、青いドレスでボブヘアーのマルグリットは、かよわさよりも、自立したきっぷの良さを感じることができた。一人だけ、台詞のないダンサー(鈴木奈菜)がいて、体の張り、芯のバランスが際立っているなと思ってあとで調べたところ、Noismの研究生という経歴を持っていた。椅子を引き合う冒頭の振付けが印象的。身体能力を、あからさまに見せつける感じがないのに、強靭で美しい。古典をみごとに、若い俳優の体に落とし込み、スタイリッシュではかない『椿姫』を作り上げていた。

椿の花の降りしきるラストシーンでは、思わずこの言葉が脳裏をよぎった。「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」。しかし、若さを心に焼き付け、恋の憧れを永遠のものにするには、いちばん美しい瞬間に死ぬことがひとつの方法なのである。そういう説得力が、本作にはあった。

しんじゃうおへや

しんじゃうおへや

yhs

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2016/03/12 (土) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

冷静かつ情熱的な小林エレキ
死刑執行の現場に落ちていたシャツのボタンから、謎が紐解かれる様子が興味深かった。死刑囚役だった小林エレキの、常軌を逸した状態の名演はすばらしかった。抑えと爆発のバランスがとてもよかった。

刑務官たちは、演技がやや過剰で、熱さがくどい部分があった。刑務官にも葛藤があるのは伝わるのだが、それを強い語調の演技で表現するのは、しつこくて、観客のスムースな理解を阻害してしまうように思える。

ネタバレBOX

電気屋が幽霊に怯えるシーンはちょっと長かった。ブスいじりのネタも、ちょっと私は受け入れにくかった……。
特に筋書きとして気になったのは、部屋に侵入された女が玄関の外へ逃げ出さなかったこと。玄関を開けたら見知らぬ男が部屋の中にいて、なぜ逃げずにそのまま部屋の中に入るのだろうか? みすみす殺されにいくようなもので、いかにも不自然な行動ではないだろうか? これは彼女を殺人の被害者にするという設定ありきの描写に思え、興を削がれてしまった。

アフターイベントのホンコンやきそばの争奪戦ジャンケンは、賞品紹介も含めて本当におもしろくて、北海道に行ったらぜひ(勇気がいるけど……?!)買ってみたいと思った。
赤い竜と土の旅人

赤い竜と土の旅人

舞台芸術集団 地下空港

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★

音楽劇としての意味、ウェールズとの交流の意義
主演の片足の少年(村田慶介)の演技、歌声ともにすばらしかった。貴種流離譚の一種かと思ったのだが、彼が片足であるということが、本編にそれほど影響していなかったのが残念だ。もっと、片足の設定に因果めいたものを持たせることができただろう。

台本の前半に歌が集中しており、後半の見所はぜんぶアクトでおこなわれていたので、音楽劇としては少し物足りなかった。音楽については、ラストのテーマソングをもっと雄大に聴かせるように盛り上げることはできたのではないか。
全編にわたり、物語はとても楽しめたのだが、村人たちの台詞、アクトがややのっぺりと、ありきたりだった。ありきたりというのは「台詞以上」のことを何も伝えられていないという意味である。台詞の言葉以上の深みがない。寓話が現実を越えていない。現実のその先を照射して、考えさせないと「寓話」として見せる意味がなく、遠い国のおとぎ話で終わってしまうのだ。そこに本作の限界を感じてしまった。そのためにはエンディングで主人公たちに「待つ」だけでなく積極的な選択をさせてもよかったかもしれない。体に穴があくという描写から、放射能汚染による差別を描くこともできたのではないか? 人々が窯の力を捨てられなかった強欲さ(核の利便性)と、原爆による殺戮(核兵器)を、もっと描きわけられたのではないか。死の恐怖と故郷をなくす悲しみは別物のはずで、そこがこの物語のさらなる発展の余地だと思う。

ウェールズ国立劇場との連携プロジェクトの意義は深く、すばらしい。このような海外との結びつき方もあるという例を知ることが出来て、私自身も大変勉強になった。作品については厳しいことを書いてしまったが、とても期待していて、舞台芸術集団 地下空港の創作への真摯さはじゅうぶん理解できたと感じているし、これからの作品もぜひ拝見したいと思っている。

スケベの話~オトナのおもちゃ編~

スケベの話~オトナのおもちゃ編~

ブルドッキングヘッドロック

ザ・スズナリ(東京都)

2016/04/09 (土) ~ 2016/04/20 (水)公演終了

満足度★★★★

官能とは想像である
「ここがわからないと物語の流れが分からない」部分がすべて外されたジェンガのような作品。観終わっても、フラストレーションが解消されずにもやもやが残る。でも、実社会でも、どう考えても不倫しているけど証拠だけがないとか、付き合っていたことをおくびにも出さずある日突然社内結婚して周囲の度肝を抜くカップルとか、なぜかものすごい嗅覚を持っていてみんなの秘密を全部知ってる地味系女子がいたりする。それくらい、人間のエロティックな部分は謎に満ちていて、明かされない。だから、この物語のあらすじが全部わからないのは、ある意味で当たり前なのだ。官能は想像すること。もっと知りたいと思うこと。わからなくてじれったいと思うこと。それこそが、喜安浩平のつくりたかった世界なのではないか。そう考えると、この『スケベの話〜オトナのおもちゃ編〜』は、きわめていやらしい遊び心に満ちた、タイトルどおりの作品だったように思う。

しかし節度を感じたのは女優陣の品の良さである。色っぽさを全面に押し出す場合、いやらしさが鼻について興ざめすることがあるのだけれど、そうならないギリギリの、まさに果物のいちばんおいしい部分だけを並べたような、ため息が出るほど美しく制御された演技だった。

舞台はいつの時代か、どこの国かもわからない軍隊の上層部の話。軍の中での駆け引きは、忍び寄ってくる戦争のため……? そんな時でも愛欲を捨てられない人間のどうしようもなさ。ナンセンスなコメディに見せかけて、実は人間の業の深い深いところに、タッチしようとした作品ではないだろうか。

緑茶すずしい太郎の冒険

緑茶すずしい太郎の冒険

(劇)ヤリナゲ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

誠実で新しい才能
主人公の妊娠がわかる冒頭の場面のようなコミカルさ、ドーナツ化症候群というテーマのシリアスさのスイッチの切り替えが、抜群にうまい。胎児が母に話しかけてくることや、胎児同士の会話など、演劇的な魔法を舞台上で見せる手際のよさにも感嘆した。出生前診断というきわめて難しいテーマに、誠実に向き合っていたと思う。

先日、東洋経済オンラインでの記事で「子どもを産むことに覚悟がいる時代」(http://toyokeizai.net/articles/-/115149)という平田オリザの発言を読んだ。実際、数十年前、たった数年前よりはるかに、子どもを産み育てることはコストと覚悟がいることになってしまったと私も痛感する。そうした自然な人間のいとなみにも、斜に構えて安穏としてはいられず、覚悟をもって挑まなければならない。ヤリナゲの新しさとは、そうした時代に政治状況や社会問題、倫理の問題を「自分ごと」として捉える新しさである。従来、ある特定の人たちの(この場合は、知的障害を持って生まれた子どもの親たちの)切実さだった問題を、いかに誠実に自分ごととして引き寄せるか。作・演出の越寛生は一歩一歩、踏み込んでゆく。ハイバイ・岩井秀人の作品のように自分の人生をモチーフにするわけではないが、すべてを「自分ごと」として捉え、想像する能力が抜群なんだろう。脚本の言葉の鋭利なセンス、俳優がそれを口にした時のイメージのふくらみ方、進行のテンポの良さも魅力である。

足りない部分があるとしたら、主人公の母親が、かつて第一子(主人公の姉。ドーナツ化症候群を患っている)を生んだあとにどのように葛藤したか、それをもとに主人公に何か果たせる役割があったのではないか。

バッドエンドの衝撃は凄まじいが、きちんとこの世の絶望を描いている。個人の問題を扱っていながら個人の感傷に留まらず、普遍的な人生の問題に取り組んでいる。ひとの生きる姿の奥深さにリーチしないものは、エンターテイメントではないと私は考えるけれど、今作は「笑えるエンターテイメント」を超えた、芸術につながる「演劇作品」だった。

越寛生の作品は、人間の汚い同調圧力、「世間一般」とされる狭い尺度を浮き彫りにする。彼はけっして、問題を俯瞰したり諦観したり、解説しようとしたりしない。ただ、誠実に悩むのだ。その姿は、果たしてわれわれは、こんな狭い尺度で測れる世界にいていいのか? どのように世界と向き合えばいいのか? と問いかけてくるようである。

ネタバレBOX

登場人物のネーミングセンスも独特で良いし、頭にペットボトルを装着する演出も(既視感はあるものの)かわいらしかった。主人公の頭のペットボトルにだけウーロン茶が少し入っていたのだが、その理由は最後の最後でわかった。地蔵のジゾコは、水子供養のイメージとも重なる。意図したものかは不明だが、作品が呼び寄せた幸運なのかもしれない。

緑茶すずしい太郎の父親である教師(既婚。つまり不倫)は、主人公が妊娠した時に、異様に喜ぶ。それが「(奥さんとの間には子どもができないので悩んでたけど)自分の精子に問題がなかったことがわかったから」という、自分本意な身勝手さが、さらりと伝わる描写でものすごく良い。おそらく不妊症である妻が登場した場面も、妻自身の葛藤、嫉妬が、説明されることなく巧く透けていて技術を感じた。
東京ノート

東京ノート

ミクニヤナイハラプロジェクト

吉祥寺シアター(東京都)

2016/03/24 (木) ~ 2016/03/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

2016年の『東京ノート』
21名の俳優が舞台上を駆け回り、フォーメーションを組み、高速で台詞の矢を放つ。まさにミクニヤナイハラ流の『東京ノート』だった。
これまで何作もミクニヤナイハラプロジェクトの作品を観ているが、これほどの大人数が登場するものは初めてだった。しかし彼女の演出は薄められるどころか、よりダイレクトに、痛切に2016年という時代を貫くものになっていることを実感した。

彼女の独自の身体・台詞の演出が、本家の青年団・平田オリザ演出の「間」を成立させるのか、という問いに彼女は「成立はしません。成立なんて目指さないです。青年団のファンは怒るでしょうね。でもいいんです。駆け抜けます。そんなに「間」が欲しけりゃ戯曲を読めばいい!」と、答えていた。(演劇最強論-ingインタビューより。http://www.engekisaikyoron.net/mikuni_yanaihara/)
しかし本作を観ながら私は、90年代初頭、平田オリザが初めて現代口語演劇の同時多発会話劇をやった時は、観客たちから同じように「何を言ってるのか聞こえない」と言われたのだろうな……と想像した。そういう意味で、矢内原版『東京ノート』は、まぎれもなく現代口語演劇であったと言っていい。

しかし、そんなカオティックな演出が持ち味の矢内原美邦だけれど、重要な台詞は「全部聞こえるように」緻密につくられていたと私には思えた。「離婚しそうになっている夫婦」「家庭教師と元教え子」「絵を寄贈したい人と学芸員」などなど、いくつもの人間関係が美術館という場に集まっている。その状況は、観客には伝わったはずだ。逆に、それさえ伝われば、あとは聞こえた言葉をつなげて、イメージの中で観客自身が泳げばよいのだ。

単なるスペクタクルに留まらない、圧を持った空間構成に、俳優たちもよく応えていた。台詞と動きの分担で2つの集団がひとつのシーンを演じた、学芸員がカメラオブスクラについて語った場面は見事だった。「ブリュッセル」「福島」など今聴くとドキッとする地名の出てくる台詞も多い。1994年に書かれたとは思えない言葉の数々が、超高速で迫ってくる。映像も華やかで、日の丸を模したラストの場面などは、こんなに直接的でいいのかと思えるほど政治性を帯びていた。しかしそれよりも、そうした苛烈な映像と俳優の身体のコラボレーションの美しさを見せることの方に、作り手のプライドを感じたのだった。

ネタバレBOX

矢内原が新たに書き加えた場面では、家庭教師と教え子の場面が秀逸だった。「あのあとね、子どもできたんですよ」「うっそ」という台詞のあとに、動きをリフレインしながら「あのあとね、自殺しようとしたんですよ」「うっそ」という場面が入った。自殺しようとしたくらい、男に捨てられたことを恨んだ女子学生の気持ちが、これまで観てきたどの『東京ノート』よりも、切実で美しく表れた瞬間で、心から感激した。平田オリザ演出で慎ましく押し隠され、それによって真実味を持たされてきた感情。それらをすべて爆発させても、人物たちの感情は拡散されて雲散霧消するどころか、むしろ凝縮され撃ち込まれてくることがわかった。すばらしいリライトだった。
この声

この声

オイスターズ

穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース(愛知県)

2016/03/12 (土) ~ 2016/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

ゾンビ、ゲシュタルト崩壊
以前、演劇のワークショップで、中学生の女の子たちと一緒に作品づくりをしたことがある。若い娘たちの理不尽にぶっ飛びまくる会話に、たじたじになったものだ。時折きゃーっと笑っては、次の話題に移り、めまぐるしく行ったりきたりしているうちに、何の話をしていたんだかわからなくなって、しかし出来上がった作品は、たいそうおもしろい……。そんな経験を思い出した。

冒頭、女子学生から唐突に繰り出された「ゾンビ」という言葉が、何度もこねくりまわされ、キャッチボールされ、あられもなくゲシュタルト崩壊していく様子がグロテスクだった。もはや、その様子自体がゾンビ的とすら言えた。稽古場で、若い俳優に翻弄され途方に暮れる年上劇団員の顔が目に浮かんだ。そう思うと、美術室から出られないあの教師がゾンビにも思えてくる。鎖がジャラッと鳴るラストシーンは、不気味な後味を残し、観客の胸をざらつかせた。

「学校の美術室」という設定は、観客が誰しも持てる共通のイメージを喚起して補わせることがたやすく、コンパクトな舞台美術でもさみしさを感じない。たくさんの劇場で上演されてほしいと感じる作品だった。

ネタバレBOX

劇中で女子学生が歌った「お寿司の歌」はセンスのかたまりだった。音源が物販されていたら、ぜったい買っていた……!! なんとかしてもう一度聴きたい。ほら、これを読んでいる皆さんも聴きたくなってきたでしょう? お寿司の歌……。
君がくれたラブストーリー

君がくれたラブストーリー

シベリア少女鉄道

赤坂RED/THEATER(東京都)

2016/06/10 (金) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

有りだな
相変わらずの、作風で笑わせる。今回のネタ、これをこう使ってくるかぁと感心してしまった。面白かったので、これは有りだろ。以外とセリフは記憶に残るということは理解した。

「闇-YAMI-」「光-HIKARI-」

「闇-YAMI-」「光-HIKARI-」

劇団fool

萬劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

両方観てほしい
初めて観に行った劇団。まず、オープニングのプロジェクトマッピングの完成度に驚かされた。小劇場でここまでできるとは、感心してしまった。物語は、いわゆるPRGの魔王側、勇者側の話で、光と闇で対になっているの。それぞれの立ち位置(?)を変える手法は珍しくないが、単純な面裏という視点ではない。双方で同じシーンを入れているが、他方を見ているかどうかでイメージが変わって来る。両方観たかどうかで評価は大きく違ってくる。トータルでは、判り易く纏まった「光」、全体的に重く意味深い「闇」という印象でした。

ミツヲ

ミツヲ

ハレボンド

明石スタジオ(東京都)

2016/06/09 (木) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★

盲目少女の悲話と姉妹のブラックコメディ
最近観る舞台で配られるプログラム。役者の経歴やフリートークは掲載されているけれど、肝心の役名が書かれていないケースが増えてきた。見終わった後、「○○役の××という役者」と舞台感想を思い浮かべられないのは残念。実は今回の舞台も、役名と演じた役者の名前と顔が一致するのは、盲目少女を演じた知人の高坂汐里のみ。ん~、後日に書く感想としては、実に書きにくい(苦笑)

タイトルにあるミツヲ。舞台に出てくるのは、3人のミツヲである。
両親に先立たれた姉妹(実は、姉は数年前に死んでいるお化けという事が、舞台後半で明らかになる)。良い子になりなさいといって姉にしつけられる妹は元ヤンキーから今では更生し、今では姉妹で不幸な人を自宅に招いてもてなすのを日課としている。そこに偶然やってきたNHKの集金人は、この家に掛けられたいた良い言葉で有名な相川ミツヲの問い言葉カレンダーを見て彼のテレビ番組が始まることを姉妹に伝え、自らも彼のスタッフの一員となる。さて、この姉妹の元に招かれた盲目の少女マサミと付き添いで彼女を慕うチンピラのミツヲ。そのマサミは近々この姉妹が保証人になって目の手術を受けることに。しかし、彼女が盲目であることを良い事に今まで彼女はブス、自分はハンサムと正反対なことを言っていたチンピラ・ミツヲはうろたえ、結局救いを求めて相川ミツヲのスタッフに。しかし、、相川ミツヲの教えに疑問を持ち、スタッフに後頭部を殴られて・・・その姉妹の更生した妹は、同じく更生した昔のヤンキー仲間だったミツヲとの結婚を姉に反対され、死なないお化けの姉をバラバラにして海(川?)に沈める。
問題は、盲目のマサミ。手術を終え目が見えるようになった彼女は、今まで一緒に過ごしていたチンピラ・ミツヲを探すが、どこにもいない。そして、彼女は例の姉妹の妹と、今では不幸な人をもてなす生活。そんなある日。記憶喪失になった盲目の男性がやってくる。姉妹の妹が驚く中、彼の口からチンピラ・ミツヲの口癖「ベロリンチョ」という言葉の出るのを聞いて、彼を抱きしめ泣き崩れるマサミであった。


この舞台の中心は、姉妹と、盲目の少女&チンピラの4人と胃って良いだろう。正直、相原ミツヲやそのスタッフたちの演技は未熟であるし、演出的になにかもう一工夫ほしかった。
映像にしろ舞台にしろ、動物を出すか何らかのハンディキャップを持った人物を出すと感動と涙を引き出せるというのが一種の常識となっているが、今回の舞台は盲目というハンディキャップを取り上げており、結果として結末で目の見えるようになった女性と今まで世話をしていた男性がどのような形で対面するのかが感動の度合の分かれ目になった。その意味では。この女性役である高坂とチンピラ役(役者名がわかりません)の二人の演技が物を言った。最終場面で会場の多くの観客が泣いていたのは、演技だけでなくハンディキャップを扱った工夫の重なりから感動した結果。こうした感動の常套手段を安易に使わずに観客を感動させられるかが、この劇団に課せられた課題であろう。
個人的には、終盤の高坂の演技には拍手を送りたい。

宮川サキ一人芝居全国ツアー2016

宮川サキ一人芝居全国ツアー2016

宮川サキ

下北沢 Reading Cafe ピカイチ(東京都)

2016/04/24 (日) ~ 2016/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

オーナー(赤星昇一郎さん)オススメでハズレなし!
3タイトルのひとり芝居

カフェの店員、おかん、モダンtimes

客前で衣装を着替えメイク

役に入るところもおそらく演目のひとつなんでしょう

久々に面白いひとつ芝居が観られた

打ち上げまで参加できるとは(笑)

アベベのベ 2016

アベベのベ 2016

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★

大傑作の予感
ブラックジョークから現象的なギャグまで「これでもか!」と笑いが盛り込まれた楽しい100分。

ネタバレBOX

2021年、都内某所のコンビニが舞台。現在の東京都の最低賃金を著しく下回っており、創り手の将来への強い危機感が感じられた。
惜しむらくはメインテーマである日本国憲法がコンビニの話から離れたところで、いささか説諭的に語られたこと。法学部の学生の改憲への疑問はもう一歩踏み込んで欲しかったし、凶悪犯罪が実は減っている話はもちろん憲法と無関係ではないが論点がずれた気がした。
コンビニ労働と憲法の繋がりがビビッドに描かれれば、大傑作になる可能性を秘めていると思った。
時代絵巻AsH 其ノ八 『臙陣~えんじん~』

時代絵巻AsH 其ノ八 『臙陣~えんじん~』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2016/06/09 (木) ~ 2016/06/13 (月)公演終了

満足度★★★★

真田丸
タイミング的にも歴史が弱い私にも分かりやすかったです。
劇としては、始め声は弱く、所作や衣装の乱れ気になりました。
前方向いて親方様との台詞、中途半端に振りかえったり戻ったりを繰り返すのは頂けません。声が弱くなりますし、動かないことで重みが増すのに残念です。歌舞伎で勉強して下さい。
全体的には、小劇場としてはとても迫力あり締まった部分もあり良かったです。また拝見したいと思いました。

アベベのベ 2016

アベベのベ 2016

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2016/06/08 (水) ~ 2016/06/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

店員哀史
日本のコンビニは役者やお笑い芸人の卵で成り立っているのかなと思いました。

ネタバレBOX

憲法改正の国民投票の前日、2021年7月10日(土)の、コンビニファミリーサンクスバックヤードの話。

役者さんたち、あなた方は搾取されていたのだなと思いました。

店長候補という名ばかりのバイト、時給の個別差問題、サービス残業がある一方での休憩中の権利主張、時間切れ食品の私物化、こんなことで社会と初めて接する人がいることが悲しいです。

そこに、ちょこっと憲法改正問題が絡み奥深くなりました。国家権力を縛るのが憲法の趣旨であり、個人と人の違いという台詞は心に響きました。

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