レドモン 公演情報 カムヰヤッセン「レドモン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度

    説得力が見出せず
    人間の主人公がレドモンの妻を持っていることを、後ろめたいと思っているのか、本当は大切なのか、最後までわからなかった。後者だと信じたいと思って観ていたけれど、主人公のあらゆる言葉、行動に説得力がなくてわからなかった。

    ヨーロッパでの移民排斥運動、日本での在日韓国人へのヘイトスピーチ問題などが白熱する中で、差別や隔離の問題はこれからもっともっと、私たちの暮らしに切実に迫ってくる問題のはずだ。でも、この作品を観て、そうした問題を一緒に考える気持ちにはなれなかった。「作家」は、観客に現実を教えて啓蒙してやる偉い人間などではなく、社会の矛盾や人間の薄汚さに敏感な弱い存在だと思うし、だからこそ、彼らの生み出す言葉は観客に響く。今作のような、底の浅い家族観と異人種への差別・隔離描写では、作品で描こうとした真の問題意識は伝わってこなかった。詳しくはネタバレBOXをご覧下さい。

    ネタバレBOX

    主人公は新聞記者という職業柄、本音と建前を使い分ける必要があるのだが、その設定に無理があったのではないだろうか。なぜ娘を置いていくのか。しかも塾の担任に預けて。それって身勝手すぎないだろうか……? 子どもを置いていくほど、妻を愛していたようにはまったく見えない。厚生省の女と、レドモンの男との関係の描き方もよくなかった。セックスしないまま(=レドモンの証拠であるしっぽを見せないまま)、情報の漏洩をさせるのはハニートラップの化かし合いにしてはリアリティがなくて少し冷めてしまった。
    ラストシーン、天上に吊られた舞台美術が降りてくると、両親に置いてゆかれた娘(人間とレドモンのハーフ)と、初恋の男の子(人間)を隔てる柵になった。柵は、アウシュビッツに張り巡らされた鉄条網を模していた。でも、それだけの重みも人種差別の切実さも感じられず、安全圏からそれっぽいモチーフを並べて社会問題に取り組んだようにしか見えず、残念だった。

    0

    2016/06/13 23:04

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大