満足度★★★★
ゾンビ、ゲシュタルト崩壊
以前、演劇のワークショップで、中学生の女の子たちと一緒に作品づくりをしたことがある。若い娘たちの理不尽にぶっ飛びまくる会話に、たじたじになったものだ。時折きゃーっと笑っては、次の話題に移り、めまぐるしく行ったりきたりしているうちに、何の話をしていたんだかわからなくなって、しかし出来上がった作品は、たいそうおもしろい……。そんな経験を思い出した。
冒頭、女子学生から唐突に繰り出された「ゾンビ」という言葉が、何度もこねくりまわされ、キャッチボールされ、あられもなくゲシュタルト崩壊していく様子がグロテスクだった。もはや、その様子自体がゾンビ的とすら言えた。稽古場で、若い俳優に翻弄され途方に暮れる年上劇団員の顔が目に浮かんだ。そう思うと、美術室から出られないあの教師がゾンビにも思えてくる。鎖がジャラッと鳴るラストシーンは、不気味な後味を残し、観客の胸をざらつかせた。
「学校の美術室」という設定は、観客が誰しも持てる共通のイメージを喚起して補わせることがたやすく、コンパクトな舞台美術でもさみしさを感じない。たくさんの劇場で上演されてほしいと感じる作品だった。