肝っ玉おっ母とその子供たち
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
さすがです。
泣きそうになりました。
夏の夜の夢
青年団リンク・RoMT
サンモールスタジオ(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/03/11 (土) 14:00
価格3,500円
RoMT流で魅せた150分。長時間、海外戯曲専門の劇団を見るのは初めてでしたが、どれも時間だけ過ぎていくこういうファンタジーな気分で見えたすばらしい内容でしたね。
俺の女たちが店を潰そうとしている
“STRAYDOG”
池袋GEKIBA(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★
なすのさんを見たかっただけなのに。
あんなに人を詰め込むなんて、もう少し遅かったら背もたれなしだったと思うと背筋が凍る。
The Dark
オフィスコットーネ
吉祥寺シアター(東京都)
2017/03/03 (金) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
2004年初演の英演劇であり、突然の停電に見舞われた
お隣さん同士の3家庭を描いた作品。題は「停電」と
「心の闇」をかけているようです。
とにかく出てくる人が全員何かに後悔し、追い込まれている上、
どこかで絶望しており、いい意味で苛立ちを感じることが多々
あるでしょう。
ネタバレBOX
典型的なひきこもりの息子ジョシュを持つ老夫婦のジャネットと
ブライアン、
ビデオレンタル店を営み、近所からはもっぱら「幼児性愛者」だと
噂される中年男のジョンとその老母エルジー、
ひどい育児ノイローゼにかかっている、1人目の子供が夭折している
若夫婦ルイーザとバーナビーといった3組が主人公ですが、
どいつもこいつも自己中心的で自分がいかに軽く扱われているか、
どれだけパートナーのせいで不幸なのかを喚き散らすという塩梅です。
隣同士なのに、お互いを全く知らない、また込み入ってるんだろうなと
感じても関わらないというのが、英国のみならず、日本でもみられる
「砂漠」となった現代の姿をよく表してるのかなと。
そもそもの舞台が、子供たちが夜になると路上で騒ぎ立てる、また
警官もさほど取り締まりに熱心ではないようなところなので、あんまり
上等な場所ではないんだろうなと予測できるんですよね。
そんな3家族を突然の停電が襲います。うろたえ、懐中電灯やろうそくを
探しに家の中、そして隣家を訪れる中、
引きこもりのジョシュに対する老父ブライアンのひそやかな殺意だったり、
誰にも頼れず、過度の育児疲れから愛していたはずの我が子の死を一瞬
願ってしまうルイーザの不安といった、ドロドロした思いが顔をのぞかせます。
それは強い光の下、物陰からじわっと染み出してくる闇のようでした。
実はこの作品、一家を動機不明のまま全員惨殺した父親の話を開始早々
ニュースで流すといった展開にしてて。
だから子供が殺されるとか、3家族が狂気に導かれて凄惨な殺し合いを
演じる流れになるのかなと暗い予想をしてたんだけど、一線は守った感じ。
ただ、何度か本当に最悪の展開になりそうな場面はあって、舞台をはらはら
しながら見てました(苦笑
とにかく他人に無関心極まるブライアンをはじめ、胸糞悪くなる人物が
多くって、ジョンとエルジーのまるでかみ合わない、無神経だけど漫才
めいたやり取りが無かったらイライラしっぱなしだったかなと思う。
ただ、終盤あたりから徐々に笑える場面もチラホラ。ブチギレたジャネットが
ジョシュの部屋のPCを木っ端みじんにぶっ壊すとことか。
ラストも、ブライアンが何らかの発作で昏倒して暗転…というショッキングな
オチだったので、最後までどこかに連れ回されたいという人はぜひどうぞ。
少年期の脳みそ
玉田企画
アトリエ春風舎(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
初演も観ましたが、やっぱり面白いですね!
ネタバレBOX
卓球が今程人気がなかった時代の、夏合宿で来た高校卓球部の宿の様子にめんどくさいを振り掛けたような話。
鮎川桃果さんの微妙な表情の変化が素敵でした。相楽さんが超メジャーになった今、次は鮎川さんの番です。頑張ってほしいと思います。
Rabbit Hole
Rabbit Hole
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/03/09 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★
平凡と思えるような夫婦の暮らし、確かに数ヶ月前までは幸せな家庭であったが、ある出来事を境に変わってしまう。過去に囚われた妻、未来に思いを馳せようとする夫、その心の持ちよう、葛藤が周囲の人々との関係の中で澱のように沈殿していく。
ピューリッツァー賞受賞、ブロードウェイでトニー賞受賞した原作、その日本初上演の翻訳劇は日本の情景・状況へうまく取り込むには難しいようだ。
(上演時間2時間 途中休憩10分)
ネタバレBOX
舞台セットは、神戸夫妻(原作はコーベット)の宅内。上手側はリビングルームでソファー、TVがあり、その奥に子供部屋のような別空間。下手側はダイニングキッチン、冷蔵庫が置かれている。全体的に白基調の調度品のイメージから空虚な感じが漂う。
梗概は、4歳の一人息子が8カ月前に交通事故で亡くなった。その息子(事故)が忘れられない妻、何とか前向きに生きようとする夫、その悲しみに対する夫婦が持つ感情に違いがあり、捩れた関係になる。それを修復しようとお互いを思い遣るが、その行為が自分本位になるところもあり、より深く相手を傷つけてしまうという悪循環に陥っている。
1部で妹の妊娠が発覚、自分の兄の死を巡り、亡くなった息子への思慕はより鮮明になると同時に、悲しみの感情をコントロール出来ない苛立ち。
2部で交通事故の加害者少年(高校生)を自宅に招き、その胸中を聞く。少年も事故のとこを苦しんでいたようだが…だんだん高校生活の楽しさも語り出す。
息子の思い出を仕舞い込みたい思いと、そう出来ない行為(子供が映ったVTRを観るなど)の矛盾。そこに2人の心の悲しさを埋めきれないやるせ無さが見える。
原作、アメリカという国を舞台に絶望と喪失感をリアリティに描いているが、人間ドラマの嘆きは国が違っても普遍的なものである。しかしその観せ方、演劇という見世物になれば文化の違いを意識させても良いと思うが…。描く内容は理解できるが、その感情表現としてはどうか?日本人の感情として数ヶ月でここまで露骨な会話が成り立つか。その話題に触れないよう気を使う。その重圧・閉塞・絶望・喪失感が先に立つような気がする。
また視覚として、加害者の衣装「学生服」が端的に違和感を覚える。
次回公演を楽しみにしております。
STORE HOUSE Collection No.9 アジア週間
ストアハウス
上野ストアハウス(東京都)
2017/02/24 (金) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★
台湾 『Zodiac(ゾディアック)』
八の字にした二面映像幕に客席、ロビー、バックヤード等を後景として映し出している。その世界観はどちらかと言えば非日常空間・宇宙を思わせる空想空間を投影しているようだ。そして、その幕を捲り上げると….。
(上演時間1時間30分)
ネタバレBOX
舞台セットは、映像幕があるシーンと幕を捲り上げたシーンとでは違う。
幕を捲り上げた奥スペースには、日常という平凡な空間(机、扇風機、雑貨等のパーソナルスペース)が出現する。
説明によれば、「Zodiac」とは、1960 年代アメリカで一人の連続殺人鬼が名乗っていた“名前”である。その正体は謎に包まれており、送られてくる犯行予告や暗号文も人々の関心を集め、大きな話題となった、という。
Shakespeare's Wild Sisters Group の『Zodiac』はこの人物に着想を得た二人芝居だ。一人は殺人鬼を、もう一人は彼の周りの様々な人間を演じていく。多くのやりとりが組み合わさり、まるでパッチワークのように“彼”という存在が浮かび上がってくる。彼は“現実”と“想像”、“正常”と“異常”の境界線を飛び越え逃げてゆく...というもの。
時間と空間の隙間に落ち込む、もしくは挟まった人々を描いたもの。その表現は少し抽象的であり、分かり難い感じがする。
次回公演を楽しみにしております。
STORE HOUSE Collection No.9 アジア週間
ストアハウス
上野ストアハウス(東京都)
2017/02/24 (金) ~ 2017/03/05 (日)公演終了
満足度★★★★
日本 『PARADE』
パレードということであるが、上演前からガムラン音楽のような音色が…。丘へのピクニックという説明である...人びとは丘に立っていたが、今その記憶は曖昧だ。例えば、森の中で木の葉を踏む音を聞きながら、波打ちぎわで絶えずかき消される自分の足跡を抱きしめる行為のようなものだ。人々の姿も、丘の形状も思い出すことはできないが、現実はいつだって曖昧のままそこにある、と。
歩くという一律的な動作とその行為をする目的の曖昧さが対照的に描かれている。
もっとも自分は別の印象を持って観たが…。
(上演時間1時間15分)
ネタバレBOX
公演が始まるとキャストが無表情で客席通路から登場する。そして素舞台を歩き回る。時に足踏みし足音が大きくなる。不安・不穏のようなピアノの音色。全員が異なる自由な服装だが、リュックザックを背負い帽子を被っている。動作も歩き回るだけだが、スロー、アップテンポと自在である。疲れ互いに助け合いながら上る。そして頂で抱き合って喜ぶ姿、その肌を叩きあって乾いたパシッという音が響く。
自分は、戦時中、それも原爆投下された街の住民を想像してしまう。日常の穏やかな生活が原爆によって阿鼻叫喚、焦土と化した街並み。熱風で服を脱ぐ、叫ぶというトランス状態を経て”生きている喜び”を感じお互いを労わる。そんなイメージを持った。
この公演は、台詞らしい台詞がある訳でもなく、身体表現に込められたメッセージを自由に解釈し、舞台上で繰り広げられる世界観に自分の思いをイメージし当てはめて楽しむことが出来る。何かを表現する、その身体を通して可視化してイメージを膨らませる。
身に着けている服・小物、髪といったファッションは演技、ダンスパフォーパンスは異界のものではなく、日常と繋がりのある展開を提示してくる。音楽と身体表現のコラボ、その聴覚・視覚的な調和には必ずしも言葉(台詞)がなくても物語を紡ぎ出せると。
案外、事前に説明文を読まず、自分の感性に浸り無常の喜びを噛みしめたいところ。
次回公演を楽しみにしております。
第19回公演『隣人』
劇団天然ポリエステル
OFF OFFシアター(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
劇団の目標であった下北沢出進、その公演が「隣人」。公演内容とタイトルの関係は意味深で、観終われば、あぁそうなのかという納得の頷き。
公演の底流には大きなテーマが横たわっているが、表層的にはドタバタ喜劇仕立てにして、まずは観客を楽しませようという狙い。
差別社会への警鐘か…大きな言葉ですくい取ろうとすると、物語の網の目から大事なことを見落とさないように観る。しかし本公演は、シーンを愉しむことで肩肘張らず、その場面ごとの面白さが網目と網目として繋がり、細部を通して全体を観ることができる。
(上演時間1時間40分)
ネタバレBOX
舞台セットは、畳、緑・緋毛氈に雛人形(3段)が飾られているが、何故かその間は隔絶している。細竹(籐)屏風、脚立、座布団などが置かれている。
劇団「寂し部」の公演という典型的な劇中劇のセット。
いつもであれば、遅筆でありながら掛け持ち仕事で原稿が遅れぎみになるところ、今回は3日前に脚本が出来上がった。もっともアニメの原稿が遅れているという最悪な状況ではあるが…。マンガ雑誌社からの催促をかわし劇団稽古を観にきた。ところが主演男優が降板したいと伝えてきた。公演を行うか中止するか、開演時間が迫る中、スタッフ・キャストの右往左往が面白可笑しく描かれる。
主演男優の代役として劇団スタッフが務めることになったが、その男、実はオカマ(LGBT マイノリティ)で化粧・女装している。舞台に立つにも化粧は落とさないという。また台詞も覚え切れていない。一方、相手の姫役も一世を風靡した女優であったが、今は泣かず飛ばずの状況。メイン2人の関係も最悪の状態で、とても公演できるようではない。それでも劇団「寂し部」の面々が創意工夫、奮闘努力の末…。
オカマの婆ちゃんが芝居を観に来ることになるが、自分の性癖を知られたくない。受け入れてほしい訳ではない。ただ嫌われたくないだけ、という台詞が生々しい。新聞でマイノリティに関する特集があったが、そこでは受け入れてほしいと書かれていた。すでに祖母は知っていたが、黙っていたようだ。それでも受容出来ない葛藤が切ない…ひ孫が抱けないのね、とポツリ。他人からは生き苦しく思える生活や環境であっても、温かく掛け替えのない仲間。社会通念や常識で皮が固くなる前の子供の柔らかな手で包む様な公演、好きである。
脇筋としてマンガ雑誌のオタクのようなファンが、自分の思いとは違う物語の展開に憤り、またマンガ脚本遅延の腹いせに、「寂し部」の楽屋を荒らす。最近アイドルとの関係、距離を巡り殺傷事件が話題になった。色々な問題性を盛り込みながら、それでも楽しめ泣かせる「隣人」公演は見事。自分の身近にも居そうな人たちを隣人と親しみを込めてタイトルにしているところが巧い。
次回公演を楽しみにしております。
根も葉も漬けて
やみ・あがりシアター
中野スタジオあくとれ(東京都)
2017/03/09 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
言葉の冒険がとてもシュールな感じで実践されると同時に、欲望三部作の第三部として食欲が扱われている。(追記2017.3.25:01:38)花四つ星
ネタバレBOX
開演前に流れるBGMは沖縄から桜前線の如く北上して日本の亜寒帯最南部で終わる。
ちょっと気取った言い方をすれば、今作は、シュールレアリズムと実存主義の21世紀ポピュリズムというヴァーチャルに載ったふりをした知性そのものである。ポテンシャルとしては、華五十○の作品なのだが、ポピュリズムの真っただ中に居る大衆には理解できまい。そのギャップ故に四つ星とした。若手劇団の中で最もポテンシャルの高い劇団の一つであることは間違いない。
その証拠と言ってはなんだが、明転したファーストシーンの佇まいは、若手の役者が演じているとは思えない程、雰囲気を醸成している。
また、シナリオが進行してゆく中で物語がサスペンスの様相を呈するのだが、その表現は時空をかっとぶと同時に、其処に故郷と迷宮としての東京が立ち現れる点で正確である。その一端を挙げれば、空疎なメディアと生命のやり取りそのものの食の対比がある。この対比を通して、普段このような判断をしない人々に対しても問題の糸口をキチンと投げ掛けている。そして、このことによって我らの生そのものを問い掛けてくる。
それは、現実の世界で生き、生活し、様々な情報判断をすると言うよりは迷っている多くの人々の姿そのものであると言って良かろう。無論、作家はその辺りの事情は重々承知の上でこのようにシュールな方法を採っているのである。
だが、同時に「売れてから言え」と現実の芸道で生きる覚悟を盛り込んでいる点でも、つか こうへいの熱海殺人事件の名科白ではないが「今、義理と人情は女がやっております」を彷彿とさせて面白い。「根こっきり 葉こっきり」で華が無い訳だが、その花を食べる故郷によって芸人の生命が再構成される所に欲望三部作第三部としての今作の位置がある。
Rabbit Hole
Rabbit Hole
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/03/09 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★
日本初演という作品。
ネタバレBOX
ピューリッツア賞受賞作品という謳い文句で大体の傾向は見える作品だったが、予想の範囲を超えなかった。大体、アメリカのような世界最悪のテロ国家が何故そのようであるか、という問いを立てるとすれば、その答えの一部を示している作品ではある。大方の日本人はアメリカに対して好意的であるように思われるが、アメリカこそ、最も身近で具体的に日本人に対して害悪を齎している張本人達であるというのが自分の認識だ。以前にも何度も自分がアメリカ人と論争をした話やその結果は書いているので繰り返さないが、アメリカを活性化させている一部のとても優れた移民たちは兎も角として、アメリカの大衆というのは愚衆と言い換えて良い。それはアメリカナイズされたことにも気付かぬ日本会議のメンバーや二元論をデカルトレベルに於いてすら考え抜かなかった知的怠惰の実践者たる諸人物達と変わらない。
レッドカーペットだの、トロフィーだのにどんな意味があるのか? それを今、我々は考え直してみる必要があろう。問題は内実だからである。いつの頃からかアカデミー賞も、ピューリッツア賞も形骸化してしまったように思うのは自分だけではあるまい。
そんな賞を取ったからということを売りにして公演を打つことは、果たして本当に小劇場演劇にとって意味のあることなのだろうか? 自分は違うのではないかと考える。今作を拝見して思ったのは、殊に夫役は、♂としての男が、♀としての女に対して非在であることの哲学的意味を問う事なしに、アメリカ社会の欠点である自己主張のみを描き出すことに結果的にはなってしまっていたことである。良い演技とは、役を生きている演技だろう。だが、今作で夫が演じていた演技は洋の東西を如何に演じるか? という視座で構築されていたように思う。女性陣はそれなりに自然に見えた。
快楽の谷
劇団 背傳館
インディペンデントシアターOji(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★
エロゲーというと矢張りサブカルというジャンル分けになるのだろう。今作は、それを制作する立場にある者達についての物語である。
ネタバレBOX
サブカル発信者の多くが、描かれている人々のようなタイプだろう。というのも自分は若い頃出版社で編集をしていたので初めに担当した劇画作者たちは、いわばサブカルの代表選手のような所があり、その現場をつぶさに見た経験からそう思うのである。多くの作者が人間関係が苦手なので、マイナーで狭い世界で何故自分はこんなにも苦しまなければならないのか? とか、自分の苦しみを何とか解決する為に、或いは狂わずに生きてゆく為に己を少しでも対象化しようと必死であった。中には無論トンデモナイ才能を秘めた連中が確かに居た。天才と称して良いと思うような人々である。然し乍ら、多くの才能が時代を先読みし過ぎていたり、時代との接点が弱かったり、自己アピールが下手だった為に無名に終わった。時には、その孤独が探究した世界が余りにディープに過ぎ、他人には理解されなかった例もある。これも関係そのものを座標軸として捉えられるような視座さえ持っていれば、コミットの仕様もあっただろうが、彼らの多くはそのような視座を持たない。結果、人間関係の円滑な生活も築けず、仕事も中々金にならずに永遠のマイナーというスパイラルに閉じ込められてしまうのである。
果てはこのような現実から紙一重の差で逃れる為にこそ、今作で描かれているような根性焼きなどに縋ることになる。
終演後、主催者と話すチャンスがあったので、この辺りのことを訊いてみたのだが、主催は、異化を狙ったのと言う。然し、通常異化は、作品内に単なる二項対立のみならず二項対立に何らかのアウフヘーベンを必然と感じさせる要素を加え、観客が作品を弁証法的に観ることを余儀なくされるような構造を成立させた上で構成しなければなるまい。この点、大いに工夫の余地がある。
鬼泪 〜激情編〜
カプセル兵団
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2017/03/04 (土) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
パフォーマーの女性の1人が巨乳で、ダンスやアクションをする度に揺れるんで注目してしまった。
以上!
・・・・・・えーと
ご贔屓劇団カプセル兵団の公演
今回は集団as ifの飛び道具山田亮がカプセル初参加
さて、劇場に入ってみると前説が始まっており、10人ほどが舞台上に並んでいる
で、亮くんがいじられていた
主宰吉久「as ifを代表しておもしろいことやってよ」
亮「ものまねします、ガンダムのアムロがドラゴンボールのセルと戦っている間にアンガールズの田中さんが巻き込まれたところ」
で、きちんと笑いを取れるのはすごいやね
劇中でも亮くんとカプセルの親和性には驚いたよ
ネタバレBOX
お馴染み「今回のアニメ&特撮」
マキバオー、ぬーべー、ガンダム、剣心、北斗の拳、ドラゴンボールなど
6年前に観た時に非常に好きだったエピソード
主人公の「言霊師」が都の人々に語る
主人公「大きな要塞の色々なところで爆発、そこから戦闘機が飛び出してくる、『ああボクはまだ帰れる所があるんだ、こんなに嬉しいことはない』云々」
この物語で人々から金をもらおうとしたが袖にされる。
人々「作り話、ウソの話に金が払えるかよ」
主人公「くそう、1200年すれば版権が凄いことになるのに!」
これが今回も有って非常に嬉しかった
旧友に会ったようだった
第19回公演『隣人』
劇団天然ポリエステル
OFF OFFシアター(東京都)
2017/03/08 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
前回の約束通り初の下北進出を果たした天然ポリエステル。この後も下北上演が決まっていると聞いているが、先ずはおめでとう、と言いたい。花四つ星
ネタバレBOX
いつもは、原稿が遅れに遅れての劇団員、客演の奮闘をスラップスティックに描く劇団で、そのパワーと何とも言えない温かさが固定ファンを作り、結果下北進出を果たしたものだと考えている。天然ポリエステルの持つはっちゃけた温かさは、観客の支持を受けた、結果下北進出は当然のことと思う。
さて、今作の話に移ろう。今迄の公演では、先ほども書いたように原稿が遅れに遅れての劇団の右往左往を描いた作品だった訳だが、今作は、一応3日前に原稿は上がっている。常識的には無茶な話であることは重々承知だが、今までのこの劇団の設定の中では原稿が3日前に上がるというのは大したことなのである。奇跡と言って良いかも知れないほどだ。物語は時節に合わせた雛祭りに関わる。だが、主役を張る役者が当日ラインで出演拒否を通告してきた。全員集まって鳩首会議ということになる。下手を打てば公演中止! タダでさえ金欠病漢書の集まりである小劇場演劇関係者にとって公演中止による賠償は半端でなく重い。だが、最悪、このことは覚悟しなければならない。チケット代払い戻し+交通費ということである。公演中故ネタバレはここまで。
ルート67
劇団あおきりみかん
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
ルート67はどこかの国の国道である。
ネタバレBOX
或る理由で、この国道を守ろうとする勢力があり、経済的な理由から発展を標榜してこの道を壊そうという勢力がある。一方、この道路そのものを愛する人々が居て二つの勢力に紛れ込む。
このルートを愛する人々の間では噂噺が流れている。3日後に始まるルート67消滅計画を阻止できるレースが、国の主催で行われるというのだ。ルート67を走り優勝した者だけが、ルート破壊を阻止できるという噂だ。走り屋達は、これにのった。レース模様が演じられる中、この国道を守ろうとする勢力の動きが適宜挿入される。この道を守る訳は実に個的な理由なのだが、民主主義が個の総体であるならば、これは原点である。この原点に在る存在と政治との現実的関係を描いた上で、原点たる個々人の弱さが対峙する権力なり、権威なりとの相克を、弱い者達の努力、決して諦めないという行為・行動が意味する所で真っ直ぐ描いた秀作。これは観るべし。笑いもふんだんに盛り込まれ笑いながら泣き、泣きながら笑うことができる。
THE BEE
劇団海星館
横浜市立大学金沢八景キャンパスサークル棟C棟101(神奈川県)
2017/02/11 (土) ~ 2017/02/12 (日)公演終了
満足度★
前回公演同様、客に見せる(魅せる)意識が薄いかな。
もっと面白いものを作るといった欲求が欲しい。
びっくり箱
アーティストジャパン
三越劇場(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/17 (金)公演終了
たわいも無いものがたりをホッコリ観たい方におすすめ。
根も葉も漬けて
やみ・あがりシアター
中野スタジオあくとれ(東京都)
2017/03/09 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
劇団初見-
好感度が高いカラーの劇団。
あと二、三回観れば嵌るのかな・・
加藤睦望さんのキャラを掴み損ねてしばらくの間は集中できなかった。
お笑い・お色気担当だったのかな!?
ネタバレBOX
仕事帰りでぐったりしている身には、あのループはしつこすぎる。
夏の夜の夢
青年団リンク・RoMT
サンモールスタジオ(東京都)
2017/03/10 (金) ~ 2017/03/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
井上みなみさん目当てで観に行ったけど、とてもカジュアルな仕上がりで楽しかった。中野志保実さん他、皆さんもめっちゃ良いです。
仕事帰りにつき、途中で眠りに落ちそうになったので、もう少しコンパクトだった方が働き盛りには助かるが、お勧めです。
ネタバレBOX
ダンス・振付、歌唱、塚越さんの突拍子も無い演技(笑)-等、ある意味演劇らしい可愛らしさが在る作品。
親愛ならざる人へ
劇団鹿殺し
座・高円寺1(東京都)
2017/03/02 (木) ~ 2017/03/12 (日)公演終了
満足度★★★★
ほぼ2時間。珍しく2度観劇した。鹿 at 高円寺は『山犬』(だったか)以来の2作目。イベントらしいのが鹿番外編的な公演には合うんでねが・・と今日は思ったさァ。
ネタバレBOX
なみチケ(劇場発行割引チケット4枚綴り。有効期間は年度内)の使いみちがこれ以外なく、異例の2度観をした。もっともこうなる可能性も入れての購入であったしバージョンも「天真爛漫な妹」と今回は「破天荒な妹」と分けて観ることができた。
観直すことで不明だった事が明らかになった箇所もあり、嬉しい誤算・・というか、とにかく新鮮に観る事ができた。バージョンの違いが大きく、一組の俳優の入れ替えの自然な変化というより意図的なキャラ付けがある。ただ、細部で微妙に異なるのはバージョン違いと同時に回を重ねての変化もあるだろう(着ぐるみ=ひっとくんの動きがえらくシャープになったり)。
座席は横長の向かい合った対面で(通常の組み方より席数5割増し位?)、私は前回が入口から遠い側のほぼ最下手・上段、今回が入口から近い側のほぼ最上手・最下段と、真反対の席であったのでその違いも大きかった。
両日とも当日券で条件悪し。二度目の観劇は最下段で目線が人物の腰より下、足を付けた床から、40センチ位の台上がステージなのは良いが、こちら側は反対側より一段高い上に、「観客ご招待用の丸テーブル」があり、披露宴の場面になるとパンフに書かれた番号で呼ばれた観客が着席し、そうすると私の席からは舞台中央の芝居の大半が見えなかった。
が、全体としては、表裏から観る事による「発見」があり、満足であった。
「カリスマ・ウェディングプランナー」(オレノ)のピアノ演奏が生である事、プラン通りに行かない披露宴の成り行きに演奏をしながら一々失望の演技を地味にやっている所など。出ハケの通路が目の前なので役者の顔のファンデーションの乗り具合までわかる。
さて奥菜恵である。後先にも大人計画『キレイ』での自由奔放な姿(上演10年以上経てDVD映像で見ただけだが、十数回は見た)しか知らない。映画、ドラマすら観てない。この舞台(2000年)では売出し中の初々しいアイドル顔が天真爛漫かつ破天荒に主人公ケガレを演じていたが、きっとこの体験は彼女にとって大きかったのだろう・・そう想像させられる、殆ど再現に見えた今回の舞台だった。
結婚式を明日に控えた夜、かねての夢「両親への手紙を読む自分」の実現の前に、肝心の「手紙」が書けない。・・ちなみに彼女は心の声が駄々漏れで、芝居でも「実はそれ、ダダ漏れ」だった事が判明するくだりもあるが、とにかく「夢」以外のことは無価値に等しいとばかり、あけすけな傍若無人な毒を吐く。そこが奥菜恵だ。
ついに朝を迎えてしまった彼女は、目を血走らせ獲物を狙う猛獣の顔で「夢、夢・・」と呪文のように唱え、時を待ち構える。尋常でない彼女を、周囲はフォローともスルーともつかない微妙な距離に置いて、式は進行。妹の「歌披露」という彼女には全く不要なサプライズもやり過ごし、ついに迎えた「感動的な手紙」はいかにも凡庸であったが、そこで終われば主人公にとっても、語り部(ウェディングプランナー)にとってもハッピーエンドであった。ところが「私も手紙を書いてきた」と懐から封書を取り出したるは、母。父そしてまさかの新郎から、いずれも彼女の「自己中」ぶりを憎たらしく指摘するという「逆襲」であり、「夢を邪魔する敵」に悪態をつきまくる彼女を渦の中心としてブーイングそして乱闘の嵐が吹き荒れる、という顛末。
母親の手紙は、不肖の娘への愛情が滲み出たぶっきらぼうな文面、父は男という存在の不憫を嘆きつつそこに小さな幸福を見出す喜びを語り、新郎は旅先のオランダで出会った彼女と東京の彼女では天地の開き、将来を思えば憂鬱にもなるがそれでも添い遂げてみせると結ぶ。
主人公は予定外の展開に戸惑い、不満をぶちまける。
この分らず屋なリアクションが、彼女に相応しいものに見える事がこの芝居には重要である。奥菜恵でなくば、難しいだろうと思われた。
彼女の夢が瓦解した後にも、新たな芽吹きがあり、静かな出発がある・・とキレイにまとめられたのも、解毒力(それは即ち容姿・華という事になるか)を持つ彼女ゆえ、に思われた。
(この先の文章を読み返した処、眠気に抗いつつ書いた模様、支離滅裂。バカ長いが意を汲みつつ書き改む。)
メッセージらしきものがある。主人公のこの台詞、「嫌いなところを言い合える家族のほうが、いやいやながら笑顔を作るような家族よりよっぽどマシじゃない!?」(という趣旨)、これは親族による結婚式にはあり得ない「ディスり」の手紙に彼女がキレた事に発した場内大乱闘のケツで、場内を水を打ったように静まらせる言葉だ。「だけどあなたたち、本当に言いたいことを言い合えてるの?」と、ほぼ客席に反転した体勢で言う。
彼女の普段の素行が問題の「手紙」を書かせたのだとすれば、これらの一連のやり取りを肯定評価する事は、彼女自身が自分に正直に(自己中に)生きているゆえに相手をして「正直」ならしめた意味も含めて己を最大限肯定する言葉だ。「夢」を持った事による苦悩と相見あう、己を鼓舞する言葉と言えるだろうか。もっともさっきまで、鬼の形相で自分のイメージを壊す人間を睨み付けていながら、突然何?歯の浮く事を言って。。というご都合主義な雰囲気も過るのだが、また彼女が自己中でなくなったら彼女ではなく、彼女が「そうせざるを得ない」何かを解消しないままにしおらしくなる不自然も過りはするが、突如の飛躍台詞には何故か演劇的説得力があった。
その言葉には現実を映すものがあり、日頃自分が痛切に感じ取っているものにブリッジされたからだろう。
架空の世界の中で完結される事をドラマを味わう者は欲する(無意識にも)し、「作る」意志も完結へ向かおうとするが、(この芝居も例外でなく)演劇は現在を含み込んで出来上がる。逆に、排除できない「現実(劇の外の世界)」と組み合って成立するのが演劇だ。
「言いたいことを言い合えてない」今、とは従わねばならない義務の領域が、自由の領域を侵食しているという事だ。
この事はさまざまな次元で生じている現象だが、奇異さにおいて突出するのが安倍首相絡みのあれこれだ。
安倍は悪口(自分への=笑笑笑)を決して許さない人だが、そんな無理筋が、あろう事か周囲が身を引く格好で罷り通ってしまっている。うるさいから一時的に避難(自粛)、「君子危うきに近寄らず」とは道理のありそうな言葉だが、危ないものは逃げずに捕獲して安全確保をする事が必要な所、そうなっていない現実がある。
安倍が人に「言わせようとしない」事は多々あるが、ある時間を切り取れば対象は一つだ。別の時間にも、それを言ってはならないという、恒常性、普遍性がない。いつどこでもとなればまだ抗議のしようがあるが、安倍は相手の指摘に「疑わしきは罰せず」に反する事が人倫に悖るかのように反駁し、「言わせない」。だが他の場所では同じ指摘は通用する。この違いは安倍が敷いてしまう治外法権な「空気」にある。空気はもちろん安倍一人では作れないが、安倍が強烈にそれを気にする人である事により、それは醸成されるのだ。(政権支持率が更にこれを助けている事も否めないが、そろそろこの国も支持率や視聴率、その他重要なデータの信憑性を疑って掛からねばならない日に備えねばならぬかもしれない)
自民党案による憲法改正が成れば義務と禁忌は生活の大部分を占めるようになる。
かつて途上国などの開発独裁政権は冷戦の下、人民の自由と権利を制限したが、富を引き込む目的において国民と一定利害を共有した面があったと思う。
だが安倍政権は外資を招き易くし、国に必ずしも雇用や富をもたらさず、国内産業や環境や健康をも危険にさらしてただ「米国(のある勢力)」の顔色を窺う事でそれと引き替えの「何か」を得る事が国益であるかのような論理を、(それと説明する事なく)浸透させている。自分たちを選んだ国民よりも米国や企業のほうが、彼に利益をもたらすと考えているのだとすれば、やはりこれは奇異な現象だ。この奇異な事態に、気づくだけの冷静さを持たないために敵愾心を焚き付け、格差は簡単に縮まらず次第に不遇の原因は己自身にあるとの論を飲み下させ、生活に追われるよう追い込み・・。
奇異な事態に気づいた者を管理し取り締まるために法律によって禁止事項を増やしていく。今でさえ、別件逮捕や微罪逮捕、長期拘留。
今や本当の「国益」についての議論も、「言えないこと」の一つになってしまったかのよう。せめてこれらが「国民自らが招いた事ではない」と、示す事ぐらいが後世に残せる事であるかも知れず。暗澹とした所で、おしまい。
この芝居に元気をもらったなど、口が裂けても言えない。言葉を埋めたくなる隙間にこそ、賛辞が贈らるべし。(とかなんとか)