第19回公演『隣人』 公演情報 劇団天然ポリエステル「第19回公演『隣人』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    劇団の目標であった下北沢出進、その公演が「隣人」。公演内容とタイトルの関係は意味深で、観終われば、あぁそうなのかという納得の頷き。
    公演の底流には大きなテーマが横たわっているが、表層的にはドタバタ喜劇仕立てにして、まずは観客を楽しませようという狙い。

    差別社会への警鐘か…大きな言葉ですくい取ろうとすると、物語の網の目から大事なことを見落とさないように観る。しかし本公演は、シーンを愉しむことで肩肘張らず、その場面ごとの面白さが網目と網目として繋がり、細部を通して全体を観ることができる。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、畳、緑・緋毛氈に雛人形(3段)が飾られているが、何故かその間は隔絶している。細竹(籐)屏風、脚立、座布団などが置かれている。

    劇団「寂し部」の公演という典型的な劇中劇のセット。
    いつもであれば、遅筆でありながら掛け持ち仕事で原稿が遅れぎみになるところ、今回は3日前に脚本が出来上がった。もっともアニメの原稿が遅れているという最悪な状況ではあるが…。マンガ雑誌社からの催促をかわし劇団稽古を観にきた。ところが主演男優が降板したいと伝えてきた。公演を行うか中止するか、開演時間が迫る中、スタッフ・キャストの右往左往が面白可笑しく描かれる。

    主演男優の代役として劇団スタッフが務めることになったが、その男、実はオカマ(LGBT マイノリティ)で化粧・女装している。舞台に立つにも化粧は落とさないという。また台詞も覚え切れていない。一方、相手の姫役も一世を風靡した女優であったが、今は泣かず飛ばずの状況。メイン2人の関係も最悪の状態で、とても公演できるようではない。それでも劇団「寂し部」の面々が創意工夫、奮闘努力の末…。

    オカマの婆ちゃんが芝居を観に来ることになるが、自分の性癖を知られたくない。受け入れてほしい訳ではない。ただ嫌われたくないだけ、という台詞が生々しい。新聞でマイノリティに関する特集があったが、そこでは受け入れてほしいと書かれていた。すでに祖母は知っていたが、黙っていたようだ。それでも受容出来ない葛藤が切ない…ひ孫が抱けないのね、とポツリ。他人からは生き苦しく思える生活や環境であっても、温かく掛け替えのない仲間。社会通念や常識で皮が固くなる前の子供の柔らかな手で包む様な公演、好きである。

    脇筋としてマンガ雑誌のオタクのようなファンが、自分の思いとは違う物語の展開に憤り、またマンガ脚本遅延の腹いせに、「寂し部」の楽屋を荒らす。最近アイドルとの関係、距離を巡り殺傷事件が話題になった。色々な問題性を盛り込みながら、それでも楽しめ泣かせる「隣人」公演は見事。自分の身近にも居そうな人たちを隣人と親しみを込めてタイトルにしているところが巧い。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/03/11 12:57

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