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三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

本当に面白かった。
ちょっとないほど、面白かった。

セットも衣裳もメイクもなし。
あるのは、物語に寄り添うように演奏される、エレクトーンのナマ音だけ。

きちんとしたものがあれば、それだけでいいんだよね。
でも、その、きちんとしたものを、つい見失いがちなんだよね。

三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

朗読劇はたまに見るのだけれど、開演前にはいつも「聞くだけなら、ラジオでもテープでもよいのではないのかな」などと思いながら、毎回その舞台性に負けて(つまるところ、舞台の役者と観客が向かい合い、反応し合うことの醍醐味に快感を覚える)帰宅の途に着く。
今回も同様だ。
役者は衣裳も来ていないし、舞台装置もない。でも、存在するという、ごく単純な事実が声に身体性を持たせて、その都度異なる感情のハーモニーを作るのだなあ、と思う。

特に今回は、それを強く思った。

ネタバレBOX

作品の性質は全く違うのだけれど、どれも、うまく余韻を残し、幾らかの悲哀と希望を感じさせてくれることでは共通する作品だ。

解説では「システム」「杉山さん」「対の人形」の順だったので、その進行だと思ったのだけれど、「対の人形」からのスタート。どうしても、オムニバス形式だと、最後の作品の余韻を引きづりやすいのは否めない。
でも、これ「対の人形」が、最後だったら、結構、舞台の印象は変わっただろうな、と思う。「対の人形」が、淡々と、えぐいくらいの人生そのものの残酷さと底知れぬ数奇な運命の在り方を、物(2つの人形)に託して綴っているのに対して、他の2編は生きていくこと瞬間瞬間の残酷さを描くにとどまり、どちらかと言えば話は軽快で、時折ユーモアさえ交えていく。
それほど、「対の人形」は重い。
そこに希望が見いだせるのは、お互いに気づかなかった双子の姉妹の最後の邂逅、そこに登場する妹の孫娘の未来と、妹の娘の思い出があるからにしか過ぎない。

姉は今度5歳の時に別れた妹と会った時には、そっくりだから必ず気付くはずだと思っていた。しかし、気付くことはなかった。姉と妹の容姿を大きく分けさせたものは、何だったのだろう。それはあのもうひとつのきれいな人形に対する欲望だったのか。

「対の人形」はもともと小説だとおっしゃっていたから、作品としても古いのかもしれない。そこで順番が前に来たのかな。順番については、いろいろと考えられるけれど、「対の人形」の招いた胸の痛みが、最後まで響いた。その意味では、最後がよかったのかもしれない。

今、ちょうど昼の舞台上演中。「対の人形」の話は、かけおちのところまでいったかな。
66-ロクロクー星が丘編

66-ロクロクー星が丘編

東山遊園株式会社

星ケ丘ボウル内特設会場(愛知県)

2017/10/13 (金) ~ 2017/10/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

名古屋でロクロク観れました☆
観客席があっただけで劇場っぽいと思ってしまうのは相当円盤ライダーに毒されているからでしょうか(爆)
そこは流石円盤ライダー、劇の中で流れる音楽もライトも何もなく俳優さんの身体のみで熱い体験をさせて貰えました!

ネタバレBOX

星が丘ボールさんの倉庫?を綺麗にしたような場所が今回の会場でした。
大きなしゃちほこが2体飾ってあります
飾ってあると言うか仕舞ってあります。

冒頭5人のチームワークで一気に物語の世界へ。しゃちほこを揺らせて戦うシーン面白かった!棒に刺さる市川も笑いました。
渡部さんはいるだけで安心する空気になりますが、今回の劇ではよりリーダーと言うか温かい人柄が出てるように感じました。
後半の秋葉とのシーン、渡部さんの一言で会場全体空気が変わり、一気に泣ける、、と思ったら舟橋が(爆)
渡部さん秋葉への涙と舟橋への笑いでものすごい表情になってました、ロクロク東京バージョンもみているのでわかりますがあれ演技なんですよね。何度観ても信じられません。名古屋の俳優さんも凄かったですが
円盤ライダー3人は際立ちますね。脱帽でした。
最後の仲間達の応援シーン、このロクロクが一番感動しました。
ノー・サイド NO SIDE

ノー・サイド NO SIDE

トツゲキ倶楽部

小劇場 楽園(東京都)

2017/09/12 (火) ~ 2017/09/18 (月)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/09/12 (火) 19:30

価格3,800円

SF編、人情編、コメディ+総括編という構成の妙により体感時間は90分程度。で、個人的には1編目の眼からウロコでありながら「それを言っちゃあおしまいだよぉ」な理屈(ネタバレBOX参照)に大いにウケる。「あーごもっとも!」と同時に「そこは見て見ぬふりをしてよぉ!」みたいな……(笑)
次回公演は初の原作もので江戸川乱歩に挑むそうでどんなアプローチをするのか今から楽しみ。

ネタバレBOX

タイムスリップした時に自転し公転しさらに銀河系内を移動している地球上の同じ地点に現れるというのは確かに不思議だ。タイムスリップ作品は天動説に基づいているのでは?
【残席僅か!】ドラマトライアル

【残席僅か!】ドラマトライアル

Prayers Studio

Prayers Studioアトリエ(東京都)

2017/09/29 (金) ~ 2017/11/05 (日)公演終了

満足度★★★★

楽しい時間を頂きありがとうございました。
今後の可能性を感じるイベントでした。

ネタバレBOX

当イベントは、演劇を通して人の真理をつかむよい機会でしたが、
すこし頭の整理ができず、カオス状態がつづいています。これって私がやりたいこと?
最初は本編だけ見るだけでと思っていましたので、本編終了後そのまま帰るつもりでしたが、
この機会(自ら考え話し演じること)の重要性が少し分かったような気がします。
それは事に気づくこと。人が何を考え行動しているかを理解すること。
そして感情というものが何かが分かること そしていつの間にか知らない何かになれること。
それはとても人にとって重要なことだと思います。
それに気づけば 人はより幸せを感じるでしょう。 人とグループの成長が生じます。
このような機会を多くの劇団の皆さんがおこなっていただければ幸いです。
観客の立場から 演技する立場で 感じること 理解できることを共有できるでしょう。
新しい何かを生むときには パートナーの理解と共有が必ず必要となるでしょう。
それは組織におけるチームワークのようなもの
それは将来エンターテイメントを生み、それを育成する 大きな財産と得る機会になると思います。
できるだけ多くの方々が リアルに 人を知り その人になる 機会を得ること。
それは生きる意味を知ることかもしれません。劇団の皆さま、参加された方々、どうもありがとうございました。
三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★

最近にしては珍しく、最後のあいさつでSNSでの拡散についての言及がなかった。
座長の久間勝彦さんも観客も高齢なことが理由だろうと思っていたがcorichにはすでにたくさんの感想が書かれていた。
老人畏るべし!
朗読劇は(私も含めた)老人にとって子供に戻ってお母さんに本を読んでもらうようなものなのだろう。お母さんとしての理想は観客が全員寝付いてしまうことかもしれない(笑)。

第一声をどのくらいの音量で始めるかはリハーサルで決めているのだろうが観客が入ると違ってくるし、天候にも左右される。今回はちょっと小さすぎた(静かにさせる作戦なのかもしれないが)。徐々に大きくなっていったと思ったがこちらの耳が慣れたのかもしれない。
また「まんが日本昔ばなし」のおばあさんのような調子には違和感があった。

完全に独立した話ではあるが
第1話は観客が求めるところをちょっと外したもの、
第2話は雰囲気重視で少しもやもやの残るもの、
第3話は100%腑に落ちるもの
という構成になっているのではないだろうか。

第3話はちょっとまとまりが悪いと思った。2バージョンあって、ギリギリで長い方を採用したのかと想像してしまった。お話は王道もので終演後気持ちよく家路につけた。有田佳名子さん演じる女子中学生が彼女のピュアなイメージにピッタリ重なって、見とれ聴きほれてしまった。

全3話を通じて長野耕士さんの存在感は圧倒的だった。バリトンボイスには痺れてしまった。ただ、他の方も含めときどき語尾が怪しいところがあったかな。

一色知希さんのピアノの磨かれた音の粒は朗読の言葉の隙間を埋めるように流れていた。BGMの抑えた演奏なのだが詩的で知的なところはBill EvansかKeith Jaretteを思い起こさせる(ちょっと盛ってます)。早速家に帰ってEvansの"My Foolish Heart"を聴いて心を満たした。
もっとも初回なので何か所か言葉とぶつかるところがあったが、達人はすでに楽譜に修正を書き込んでいるはずだ。

三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

 朗読劇である。この所、朗読劇は当たりだ。今回は、短編小説を朗読劇として演出した「対の人形」が第1話。第2話「システム」と第3話「杉山さん」は、最初から脚本として書かれているが、何れの作品もその質の高さで群を抜いた作家の才能を示している。舞台はシンプルだが可塑性が高く、演出、役者陣の演技も良い。生演奏が効果的に用いられている。必見の舞台!(花5つ☆)

ネタバレBOX

而も3作とも、全くタイプの異なる作品なのである。第1話は一種の説話で、坊さんの説話としては、出来すぎであるが仏教説話の傑作としても読める作品でつくづく因縁というものの摂理を知らされる。第2話「システム」は、天界のシステムを扱ったSFだが、内気な主人公の、それ故に見付からなかった彼女との出会いに、祖父への、また、彼女となることを宿命づけられた彼女候補の祖母への温かい思いやりと優しさが描かれた秀作、天界の担当者とのユーモアたっぷりの会話も見逃せない。第3話「杉山さん」は思春期の女子の男親への反発を、再婚する母や義父と直ぐ仲良くなった弟、事情を弁えてサジェスションもしてくれる祖母を仲立ちに、義父との間に徐々に良い関係を築いてゆきながら、そのことを義父が倒れるまで言えぬまま失くしてしまった娘の心情を綴って見事。たった2日間しかない公演で17日が楽だが、必見の舞台だ。
奇想の前提

奇想の前提

鵺的(ぬえてき)

テアトルBONBON(東京都)

2017/07/21 (金) ~ 2017/07/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/07/24 (月) 14:30

座席F列8番

価格4,000円

父・江戸川乱歩、母・鵺的の間に生まれた嫡男と言えるほどに両者の遺伝子を受け継いだ感覚。
月蝕歌劇団の新作(乱歩ネタ)のあらすじをTLで目にして「乱歩って作家を少年にするよなぁ」と思って間もなくのこれだったので「あ、高木さんも少年にされたな……」と。(笑)
序盤で二組の親子関係のねじれっぷりと「ある関係」で浮かんだことがアタリだったことがアフタートークで判明したり、あの人物はもしかして?というのも終盤でアタリだったり、「あるアイテム」が「やっぱりそれですか!?」だったりで頬が弛みっ放し。
終盤でのねじれた親子関係に関するちょっとした笑いの後の短い会話が「鵺的流親子関係」っぽくてこれにもニヤリ(ホロリ?)
高木さんによれば「江戸川乱歩の作品がすべて史実であった世界」の物語だそうだ。うん、なるほど。あ、あと「あの映画」も史実であった世界では?(広い意味ではその映画も「乱歩の世界」ではあるのだが)

ネタバレBOX

娘に対して「あんたなど産んだ覚えはない」と言う母親の弁は比喩というか絶縁の表現的なものと思っていたら、本当に記憶になかったという部分には笑ったが、娘の命名エピソードを思い出して語った時に姉が「貴女がそれをあの子に話していたら(関係は改善されていたかも)」と言うのは鵺的っぽいなと。
また、クライマックスのスぺクタルのさなかで熱気球が登場するのは往年に乱歩ファンとして嬉しいというかツボを突かれたというか……。
スーパーストライク

スーパーストライク

月刊「根本宗子」

ザ・スズナリ(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/10/15 (日) 14:30

初めて 月刊「根本宗子」を観ました。ずっと興味はあったけど去年の本公演も観に行けず今年の本公演は必ず!と思って、スーパーストライク!フライヤーに書かれた紹介文読んだときは ほんとにそれこそ観たい!のスーパーストライクでした。
4人芝居観るのも初めて。ああいうセットの舞台を観るのも初めて。なにもかもが初めましてでした。
4人の登場人物全員が自分に重なったりするところもあって泣きそうになりました。感情が爆発してる舞台は観てる側の私の感情をも動かしてくれるからだいすき。2時間あっという間すぎて本当に本当に楽しくて切なくて面白い作品でした!!!
もう一回観たい!!!!

ネタバレBOX

私は完全に桃子ちゃんに共感したけど、4人が大集合して感情大爆発させたときは まりちゃんへの見方も変わったし 色々絡まった複雑に見える愛だけど、南くんのおかげでなぜか楽しくおかしく見えたりした。
南くん、観てるこちら側でさえも好きになりかけた笑笑「ティンダー」とか全然知らなかったけど記憶から離れない、、笑笑
場面場面で某ミュージカルの
パロディっぽくなったの本当に面白かった!楽しかった!!最高!

南くん嫌いになれないし、自分自身も人間関係って人より劣ってるからコミュノートとか作ってるの全然怖く思わなかったなあ、、

部屋のセットも一人一人のキャラクターが現れてるみたいで可愛かったなあ(^ν^)
三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

2時間で三編の朗読劇。「運命」や「神の配剤」といったテーマを、TSTらしい温かい物語に仕上げており、朗読の上手さも相まって、大変面白かった。役者の表情を見るのも楽しいし、ピアノの生演奏も絶妙だった。

三編の様々な結末

三編の様々な結末

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了

満足度★★★★

3作品とも優しさと悲しさのあふれる朗読劇でした。3つの作品の中で「杉山さん」が一番心に残りました。良い時間を過ごすことができ満足した気持ちで雨の中家路に向かいました。

死神と9月のベランダ

死神と9月のベランダ

東京カンカンブラザーズ

ザ・ポケット(東京都)

2017/10/11 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

笑ったり泣いたり、切なくなったり・・・演者の方たちの芝居も圧巻でした。

ネタバレBOX

木田さんの芝居はゾクゾクしました。
夏の「解散」以来ファンの美村伊吹さんが違った雰囲気、でも素敵で益々好きになりました。
Re:quest!on

Re:quest!on

妖精大図鑑

シアターシャイン(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

少し長い船旅を経験したことがあるが、その期間、船内ではカードゲーム、ダンス、ミニシアターなど色々な催しがあったが、それを思い出すような宇宙(火星)旅行であった。
宇宙船の出発(兄と弟1)と到着(兄と弟4)を除くと、宇宙船内では20ステージ観られるというショートストーリーの綴り。ダンス、歌、コントが中心であるが、どれもエッジが利いており楽しめる。特にダンスパフォーマンス(被り物もあり)は新体操ならぬ”身体創”という造語が相応しいような、シーン毎に物語性を感じられる秀でたもの。
ちなみに、宇宙旅行は90分であり、上演時間そのものである。

ネタバレBOX

セットは、上手・下手側にほぼ対称に段差のあるスペース。横階段を上る正面壁に丸窓。舞台中央には四角いマンホール(縦孔-「安全第一」の標語あり)のようなもの。けっして広いスペースではないが、計算しつくしたムーヴメントで魅了する。ソロまたはアンサンブルという形は変わるが、全ての動きに意味があるように思わせるところが上手い。そしてダイナミックに繊細にという動きが色々な感情を表現しており、キャスト(ダンサー)達はシーンに応じた感性を知覚して踊っているかのようだ。

少し気になったのが、舞台効果としての照明が弱く印象に残らないこと。例えばミラーボールを抱えた演技などは小宇宙空間を思わせるようで素晴らしかったが、それ以外は…。
もう一つは、丸窓内での表情が見切れになっていたのではないかということ。自分はほぼ中央に座っていたから両丸窓内の演技(表情)が観えたが、当日は満席で増席していた。その隅席から対角位置の丸窓内は観えないのではないか。

当日パンフとともに「演目、キャスト名・役名」が書かれた一枚紙が配布されたが、そこには「このあてども無い宇宙を旅する冒険者達へ、ささやかながら手がかりをお送りします」とある。この気配りがあればなおさら窓内を観せてほしいような…。

次回公演を楽しみにしております。
aster

aster

創作集団Alea

劇場HOPE(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★

映画「桐島、部活やめるってよ」を連想するような公演。
本公演は、少しずつ家族の微妙な関係に波紋が広がっていくさまを描いているよう。その生活に潜む歪さ、不穏な空気感を炙り出そうとしているが…。
(上演時間1時間45分)

ネタバレBOX

舞台セットは、和室(縁側)、中央に丸卓袱台、奥に変形の衝立、下手側にレンガ壁と花壇。舞台上部は暗幕と放射状の白地で、何となく鯨幕を思わせる。全体的に歪み、不安定な感じである。先の放射状は当日パンフの中面イメージで、テーマ”絆”を表しているのだろうか。

まず登場人物は、家に居るのは本当の家族か、擬似家族・居候なのか、その関係性が不明確である。その奇妙さは、終盤に明らかになってくるが、それは登場しないダイスケの自殺に起因する。その原因も説明されるが、それまでの伏線も感じられず、設定の説明不足のようだ。また登場しない不在の人物造形不足が、話の面白さを引き出せていないのが残念だ。出来れば、登場人物一人ひとりとダイスケとの関わりを描き、周囲の人によって人物像を立ち上げる必要があったのではないか。
例えば、映画では桐島は最後まで登場しないが、観ている途中からどんな人物か気になってしょうがないという気持にさせる。本公演でも不在の人物をもっと気にさせるように持っていければ、違った印象の物語になったと思う。

気になったのは、千葉修・結衣夫妻の中年の息子・太郎の不自然さ、ダイスケ(この家に居たと思われる)とその弟(別に住んでいる)の関係の希薄なこと、4カ月前からの行方不明(失踪か?)に対する警察への相談事、自殺後の遺体処理、そしてダイスケと結衣の関係、その結果結衣の精神異常をきたしたという自責の念の描きが弱いこと。

物語(脚本)の説明は弱いように思うが、逆に演出効果は良かった。特に波紋・揺れるような流線形の照明、水が滴り落ちるような心細さ、不安にさせる音(ピアノの単音)の響き。照明・音響が全体の雰囲気をザワザワ落ち着かせず、不穏な空気感を助長しており実に巧みだ。
タイトル「Aster」は何気なく舞台の隅に…ラストのスポットライトが余韻を与える。

次回公演を楽しみにしております。
死神と9月のベランダ

死神と9月のベランダ

東京カンカンブラザーズ

ザ・ポケット(東京都)

2017/10/11 (水) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

映画音楽「唐獅子牡丹」…♪義理と人情を秤にかけりゃ 義理が重たい男の世界♪と歌われていたが、本公演、自分では理屈と感情を秤にかけたら”感情”の揺さぶりの方が上回った。
演劇らしい現実離れした設定であるが、人が持っている優しさ、厭らしさが端的に伝わる公演である。タイトルから明らかなように死神は登場するが、「死神」と「死に神」という表記では印象が違ってくる。物語は人と死に神の関係の変化、地域という風景の移ろいが感じられるヒューマンドラマである。1997年から2017年という20年間に亘る時間軸の長い物語であるが、時代を区切り(演出の工夫)分かり易く観せている。
(上演時間1時間50分)

ネタバレBOX

背景は、1997年、2000年、2007年、2017年という区切り。大阪の泉州地方の某町で地元でスーパーを営んでいる家族の居間兼事務所といった場所を出現させている。
セットは、中央にソファー、上手側に机と外へ通じる扉、その奥に二階へ上がる階段。下手側に窓、ソファー、その上部に別空間のベランダを設える。

物語は、関西空港が出来て町の開発が進み、従業員がこのスーパーの合併話を勧めているところから始まる。展開は先に書いた年代を順々に暗転で進め、それに伴って登場人物の演技や衣装も変化してくる。構成は時代ごとのトピックを描くことで全体を繋げていく。

理屈と感情の世界…。
まず理屈…本筋である「死神」の存在、その自体の在り方をどう解釈すればよいのか難しい。この地域の担当する死神は2神(浅村拓海、小田切優奈)、人の目に見えることから一時的に死人の身体を借りる、という憑依しているような描き方。成長することのない死人が死神の”力”によって記憶を無くした時代を生きている。死神が生きている女性と恋をし死の世界へ誘うが…。また長く行方知れずだった鷹山真二が一時的に記憶喪失になっていたが、死神との関係を期待したが何もなし。主筋の「死神」の描き方に広がりがないこと、不十分、説得力がないのが残念。
もっとも、主宰の川口清人氏は、当日パンフに「突っ込みどころが多々あることも十分承知しております。それでも(中略)人の優しさや温かさ、懐かしさなどを感じていただければ幸い」と書いている。その意からすれば理屈より感情を優先させても良いだろう。

次に感情…時代毎の挿話が良かった。例えば、長女の難病治療(骨髄の提供)のために二女を産む親(祖父も含め)のエゴ。その姉妹のそれぞれの立場での苦悩と真心(妹のために死に神(拝む)ような)。児童施設育ちと裕福な家庭の子の優劣・差別意識などのエピソード、さらには施設の子を優先し実子の気持は後回しを思わせるような場面は泣ける。

公演は本筋、脇筋が逆転していること、挿話の面白さがうまく絡んでいないところが残念であった。それでもリンドウ、キンモクセイという花の香りがするような、そんな余韻が素晴らしく、感情が理屈を上回った。

次回公演を楽しみにしております。
ユリディス

ユリディス

劇団Player's World

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

 J.アヌイ原作のユリディスだが、翻訳物の厭らしさは余り感じない良い訳だし、兎に角、長い作品なのである程度カットせざるを得ない部分をカットして齟齬の無い脚本に仕上がっていたとは思う。

ネタバレBOX

シェイクスピア作品のよういな長科白が多いのだが、役者がカムことも殆どなく、その意味では難の少ない公演であったが、ユリディスが恋に落ちる原因となったオルフェのヴァイオリン演奏のシーンでは、もっと形態模写をキチンとすべきである。とても大事なシーンであるから、オルフェ役には、実際のヴァイオリン演奏をさせておくことは無論必要である。演出は、其処までキチンとやっておくべきだろう。駅のカフェの上手隅に何も言わずにずっと座っている旅人(死神)なども登場する作品であるだけに、こういった細部の造形に拘らなければ作品のリアリティーが担保できない。
 まして、今作を今上演する必然性は、余り感じられない作品である以上、上演するからには、通常の上演以上に作品としての質を高める必要があると感じるのだ。
 作品の肝は、オルフェとユリディスの純愛と、世間というものの実体。その鬩ぎ合いから生まれる風評が、純愛の成立を脅かす時、皮肉にも死だけが、この純愛が孕むに至った矛盾を解消するということだが、このアイロニカルな結論を導き出す為に、権力や権威が如何に純粋を潰してゆくか、そして弱き者、即ち肝心な時に肝心な決断を己の精神に従ってできなかった者が、如何に人生に飼い馴らされ隷属してゆくかが描かれる。
 然しながら、このような解釈をする日本人が一体どれほど居るのだろう? その意味で、余り必然的な上演とは言えないと思うのだ。ブレヒトではないが、今日の世界を演劇は再現できるのか? という問いをキチンと自分達自身に発信し続けたいものである。
柿喰う客フェスティバル2017

柿喰う客フェスティバル2017

柿喰う客

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/10/04 (水) ~ 2017/11/05 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/10/15 (日) 12:00

座席1階A列

価格5,800円

柿喰う客フェスティバル2017は
「流血サーカス」「八百長デスマッチ」「無差別」「極楽地獄」の4作品。
1ヶ月のロング公演で現時点で土日は完売の日も多く、この日はチケット発売日に
速攻ゲットした最前列の「極楽席」で「無差別」を観劇。
ちなみに極楽席は特典で缶バッチと出演者1名の直筆メッセージ入りのポストカードが付く。
初柿喰う客だったが、評判のいい人気劇団らしく80分という短い時間に凝縮された
素晴らしい内容でした。
初劇団なので、毎回こうなのかは知らないのですが、カーテンコールがなく、
終演のアナウンスが流れパラパラ拍手という流れが少し拍子抜けでした。

瘡蓋の底(かさぶたのそこ)

瘡蓋の底(かさぶたのそこ)

タカハ劇団

小劇場B1(東京都)

2017/09/27 (水) ~ 2017/10/01 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2017/10/01 (日) 14:00

座席1階B列

価格4,000円

ロ字ックの小野寺ずるが出るというだけの理由で観に行った初タカハ劇団。
密航船の中で心理戦を切り返す5人の男。
母の還暦祝いの事で争いを繰り返す3姉妹。
この2場面が交互に繰り返される展開だが、この2場面が最後に1つにつながる
内容は正直、途中で読めてしまった。
それでも、十分に面白かったし、何より役者さん1人1人が素晴らしかった。

ユリディス

ユリディス

劇団Player's World

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

冒頭、オルフェがヴァイオリンを弾くシーンが数回あり、吹き替えでの音楽が流れましたが、実際にヴァイオリンを弾かなくても、もう少しヴァイオリンの演奏が流れるといいのに感じました。
やっぱり外国物ですね、日本人の感覚とはかなり違いますね。
ユリディスが何回も生き返る感覚にはついていけませんが、すごい恋愛ですね。
セリフの語りや演技はみなさん上手ですね。
あっという間の2時間30分、楽しませていただきました。

ユリディス

ユリディス

劇団Player's World

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2017/10/12 (木) ~ 2017/10/15 (日)公演終了

満足度★★★★

声優事務所所属の俳優さん中心の劇団だそうですが、さすがにいい声の台詞だなあとハッとするような箇所が随所に。オルフェとユリディスの物語は、昔見たコクトーの映画や『黒いオルフェ』『地獄のオルフェ』なんかが頭に残っていて、このアヌイ版を観るときに、その記憶がちょっと邪魔になった感も。

ネタバレBOX

今回たまたま興味をもって拝見したのですが、帰宅してからちょっと気になって1956年の劇団四季版のことを調べたら、ユリディスを演じたのが友人のお母様だったことが分かり、びっくりです。

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