バッカスは生きている!!
劇団バッカスの水族館
ナンジャーレ(愛知県)
2018/12/07 (金) ~ 2018/12/09 (日)公演終了
満足度★★★★
4本のコントオムニバス。既成2本、創作2本。
今年は名大祭コント公演が無くて残念だったので嬉しかったな、楽しかった。
1つ注文つけるとすれば、客演が多かったので、舞台でキャスト紹介して欲しかったな。
各話の感想をネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
「嘘とニ萬とDVD」
嘘と2万円とDVDが等価になって三竦みになる構図が面白みだけど、そこに辿り着いてからが面白いので、ちょっと前段が長すぎかな…もう一工夫欲しかったかも。冒頭の客弄りの現実感も何気に面白かった。…ところで 場所と状況でヒバカリを想起したの私だけ?
「イエロー会議」
名古屋各区のイエロー達の個性が楽しい。区ごとに時事ネタ的な隆盛やブランドがあったり、瑞穂区(親方)はやっぱりボスの存在感満点のTHE イエローだし、緑区は短髪なのにムダに髪を掻き上げて違和感を誘い、千種区は特に妙な仕草の積み重ねが面白い… 「拳で!」がなんか妙に気に入った。
ネタ的にやってることが単純なだけに、ちょっとした振る舞いの積み重ねで笑いのフックを増やしていくのは大事だなと実感しました。
そしてキャスト総力戦になるのも何か可笑しくって、特に舞監 蜷川さんまで引っ張り出してくるの楽しかったよ。
「3日会わざれば刮目して」
全く無関係の人々が…空気を読んだが故にまるで旧知のように集い 窮地に陥る構図は面白い。
出オチかと思われたマッチ棒君(誰?)の…飛び道具としての引き出しが思いのほか多彩で、全作通して最もぶっ飛んでいましたね。
「P3/4」
明らかに本来の目的を逸脱した非合理の極みなのに、なぜだか戦術は洗練されて見える不条理さが面白味。小気味良く勢力が二転三転する駆け引きの応酬が堪らない。1人残して3人が踵を返す切り返しの妙、舞台なのに電脳世界からの反撃…そこまでの既成概念をことごとく ひっくり返してみせる、やはりそこにこそ笑いが生まれる!と膝を打つ。争う対象がくだらないほど滑稽さが際立つねぇ。
アガリスクの台本が面白いのは勿論だか、テンポと間に負うところの大きいネタだから、しっかり活かしきった演出と役者に拍手を送りたい。佐藤さんのふてぶてしさが良い味。
仕方ないから働くか
試験管ベビー
千種文化小劇場(愛知県)
2018/11/30 (金) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
人は何故に働かねばならぬのか… 社会的モラトリアムの間に得られなかった「働く目的や動機」を模索する…切羽詰まった就活生2人のドタバタコメディー。この1年で怒涛の様に入団した新人の中で一番勢いのある山岡黛佳さんと中島風歌さんのイメージを… そっくりアテ書きした感じの対照的W主演。
生きる支えをどこに求めるか… 必ずしも仕事である必然性は無いけれど、どうせならやりがいある仕事であるにこしたことはない。就活そのものよりも…周りの人との関わりでそれを見つけた2人が微笑ましい。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
でも…動機は見つけたけど、結局 職は見つからなかったヒカリちゃんの顛末が妙にリアルでしたね〜。
さて、今回は小芝居がふんだんで、他の役者の見せ場もいっぱいでした、多役オンパレード!
以下、雑感。
・ウスイサチコの大型犬トラウマ… そもそもの着ぐるみのデカさも半端なかったけど、襲った大型犬の退治シーンが試験管ベビーには意外にグロくて、手品の様に引き摺りだされる犬の臓腑が鮮烈。あの犬、客出しに居て欲しかったな(笑)
・ブラック職業あるある は全般として…エモい展開から一転 闇をみせる演出が多くてツボにハマる。
例えば…
・保育士の優しさから一転の…女社会の恐ろしさ。更にはDV彼氏、その和解から更に妊娠破綻に落ちていく…という繰り返す緩急がすごい。…→
・良いお婆ちゃんを装って、新人介護士の心の闇を引き摺り出したサイコパス感。えっらく長い尺を使って恐怖を煽った演出が好き。最後に「気持ちイー」で終わるの怖い。
・看護師の集団優しさ暴力が…見た目はメッチャカッコいいドラマ風なの笑う。→
・試験管ベビーのオーディションを受けるとあんなんじゃないかと想像させる かこさんのバイオレンス面接(笑)
・今回は開場時から仕込まれていた Itsuki Jobs Kondo! らしからぬスタイリッシュさに胡散臭さの味付けは… やはり…のオチでしたね。…→
お客様参加システムは… お客様洗脳システムに(笑)
近藤さんの演技がいかにもで笑う。
・夏の新栄トワイライト以来の真野凛さんが、怪しげなセミナーの洗脳師?(驚きの衣装)や、声が怖かった(た~かはしさ~ん⤴︎)ボス保育士、ホストに癒しを求める姉御肌看護師等…驚きの多彩な役での活躍が楽しい。
・三芳さんの店長、怖い… 黙祷!のパワハラぶりに笑う
みんな、小芝居が終わると無表情で出ていくの…可笑しみが深いね。
『ソウル市民』『ソウル市民1919』
青年団
三重県文化会館(三重県)
2018/12/01 (土) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
舞台は日本植民地下のソウル…文具店を経営する裕福そうな「篠崎一家」宅。
物語があるでなく… 登場人物が発する主張があるでなく… とりとめもない会話と出来事がひたすら流れていく。しかし… 人々の日常を温かく描写してほっこり…って…感じではない不穏さが潜むのだ。いや、篠崎一家にとっては紛れもなく何のこともない穏やかな日常なのだが… その「普通」が寄って立つ常識… 価値観が決して不変なモノではないことが透けて見える感じかする。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
簡単に言ってしまえは、… 善良な(つもりの)支配者意識。
確かに篠崎一家の朝鮮人への振る舞いは…当時としては先進的で善意に溢れているのだが… やはり随所に滲み出るのが優越意識、上から目線、保護者的な自負。
一方で欧米人に対して「自分達を猿だと思っている」… と差別に不平を漏らす二律背反ぶりなのだ。
これが…結果を知っている歴史的背景、現代の意識の元でならハッキリと分る差別・支配の構図も… 果たして当事者だったとしても、胸を張ってその問題点を指摘できるだろうか。…そして翻って、今の社会を… 自らの今の在りようにすら疑問を抱かせる。事は国家間の関係に留まらない… 一社会における格差、夫婦・親子・家族内における支配の構図等も…また然りだと思える。ドラマチックで無いが故にとても強度のある「偽りを感じさせない日常描写」で本質に迫ってきた気がした。
この2作の展開・構成はとても酷似していて、世代や人が入れ替わっても まるで一日千秋の如くなのだが、「ソウル市民1919」では…家の外で高まる三・一運動を重ね合わせることで …より明確に支配者意識を浮き立たせている。それが返って、穏やかだった…先の「ソウル市民」での同じ意識をモヤモヤと炙り出す。穏やかな状況の中に潜み、育まれている危険で差別的な思想を思い返せる仕組みで、通しで観られる機会は貴重でした。
カモナマイハウス
てんぷくプロ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2018/11/29 (木) ~ 2018/12/02 (日)公演終了
満足度★★★★
とある家で… とある兄弟を取り巻く奇妙な住人達。彼らは一日千秋の如く同じ芝居の稽古(?)を繰り返す… そんな不条理な世界の背景が徐々に明かされ、有機的に繋がって… 遂には兄弟の半生の内面まで克明に映し出していく。それが面白可笑しく演出される。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
幼少時から物語を作って遊んできた空想癖のある兄弟。生み出されたキャラ達は、兄弟の想像力ゆえか… なんとこの家で具現化され… しかもボツになって作品として世に出れないと…この家に留まり未完の物語を紡ぎ続ける… 弟が作家になった今もなお。
一種の無間地獄地獄だが、当の本人達はとても楽しげ。
まるで地縛霊のように姿を現し、舞台の人口過密甚だしいのに… 兄弟には見えても来訪者には見えないという設定も楽しい。目の前にあるものに反応しない芝居って、結構、難しいんじゃないかな。…謎の金星人、妖怪爺、自由奔放な母と奇妙な愛人達、厳格な叔母、等々 … そして新入りの花嫁と仲の悪いその妹… 様々なキャラ達は実在の人物をモデルにしたようでいて、どこかぶっ飛んでいて、古参のキャラほどマンガ染みているのも後々意味を成す。
結局、各々のキャラの成り立ち… その性格の演出のロジックに、同一人物に対する「兄弟の異なる視点と想い」が隠されているのが面白く、キャラの謎が一人一人解き明かされるごとに、兄弟の半生が肉付けされていくというシナリオがとても味わいがある。そして、とても恵まれているとは言えない「兄弟の生い立ち」を…複雑に組み合わせて具現化した異形の者達が、いつしか互いを「家族」と呼ぶのがとても心地良い。
弟の押し掛け婚約者の若い娘に… その異形の姿が見えるようになる瞬間が大好きです。娘が率直な気持ちを表し、兄弟が娘の気持ちを受け容れた瞬間… 彼女は「家族」となった。
その感動から一転、家を埋め尽くすキャラ達を目の当たりにして…滑稽に狼狽しながらも…娘が一人一人着実に受け容れていく過程が可笑しいやら心を打つやら。
そして最後…弟が娘を受け容れて吹っ切れたのか…娘がモデルのキャラ「花嫁」が、作品となってこの家を旅立つ(嫁ぐ?)ことになる。
その最後の最後… 別れの演出が、七ツ寺屈指の大仕掛けで、大団円を醸す。切なさの中に幸せを感じさせました… くうっ。
本作 家族が主題ゆえ、全ての登場人物に魅力が満載。特に…
押し掛け女房ハルミ…普段なら男前を演じる きくちまや さんが、気丈さの中にえらい可愛いさを内包させるギャップ萌え。パジャマと巨大ヌイグルミな。えっ? 私物?
金星人ミズシオさんも、超異質な出で立ちに…あざといぐらいの幼児的な愛らしさ…そして万事がやけにそそっかしいなぁ…と訝しんでいたら、役が「5才児がモデル」と話の中で明かされて、納得のはっちゃけぶりでした。くワズのあの役と同じ人とは思えん。
おにぎりばくばく丸さん、変わらずの存在感も外せない。
シンガーなのに歌おうとすると止められる前半が楽しかった。てっきり、歌うと「ボェ〜〜ェ」ってなるのかと思ってた(笑)
芝居中でも…一際豪快にカルボナーラを啜る音が流石でした。
役者お久し振りの花嫁 原みなほさんも1年分堪能。お姿、眩しかったよ〜。お得意の小道具達も第2の役者と言える至宝。あのカルボナーラは七ツ寺にまた新たな伝説を生んだ。帰り道、腹減ってしょうがなかった、勘弁してほしい(笑)
INDEPENDENT:18
INDEPENDENT
in→dependent theatre 2nd(大阪府)
2018/11/22 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
今年も充実の時間でした。好みでいうと、「穴」が最推し、次点が「仕事の流儀」 、その後は「引くな、引くなよ」、「貝独楽行進曲」、「母とおかあさん」、「薔薇の手紙」… と続いていく感じかな。勿論、それ以外も芝居のレベルの高さは存分に楽しませて貰いました。
一部の作品の感想をネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
[e] 穴
くたびれたおっさんの回想が紡ぐ…無駄にエネルギッシュな青春の発露が面白おかしく語られる。
懐かしい… でも甘酸っぱい高校時代の破天荒な大土木事業…それだけでも面白味が深いトンデモ事変ですが、その続きの「今」が…また神秘的ですらあって、全地球規模を感じさせる拡がりになっていく… SF感すら漂うのが、… おっさんには堪らなく響くのだ。
「穴」と呼ばれた彼は…いったい何者だったのか、もしかしたら…故郷を求める地底人ではないのか?、そんな妄想まで掻き立ててくれた。…そして、不意に現実に引き戻すギャップのあるオチの見事さよ。しかも全ての妄想を否定しない粋な計らい。
[f] 仕事の流儀
遂にINDEPENDENTに創作落語が登場。落語風味にDネタということで、名古屋の人は稲垣僚祐さんの「夢と魔法の国」を思い浮かべたかもしれない。もちろん切り口は異なるが… 後味は同じ心地良さを感じさせてくれる。現代的な職種に組み合わせた「古風な職人気質」とのギャップの面白み、強面の父が娘には弱いという定番のアンバランスは観ていて微笑ましい。
一方でタイトル通りのパロディを使ってこなかったのは意外でしたが、大人の事情でしょうか、それとも囮だったのか。そして、ある意味予定調和だが、スパッと切れ味の良い落語ならではのオチ。これは察することが出来たとしても思わずニンマリだ。
そして最後の最後に仕込まれたINDEPENDENT出品作品に相応しい舞台の仕掛け、思わず歓声が漏れる。どこまでも心憎い幕切れでした。
[d] 引くな、引くなよ
冒頭は…状況がまったく読めない… 最初は「補導員」が「万引きした少年」を尋問している?… って想像を思い浮かべながら観始めましたが、やはりそこは安易な想像の枠にはハマらない。
前半の会話自体は…まったく他愛もなく 微笑ましくすらあったのですが… 徐々に透けて見えてくる背景、色濃くなっていく犯罪行為の疑い。微笑ましかった筈の空間が… 一皮剥くごとにシリアスの度を深め、彼女の一人ボケツッコミが可笑しげに響くほどに、更にその影に潜む彼女の心の傷が浮き彫りになっていく。どうしようもなく傷ついているのに、ふざけ半分に癒しを求めて、もっと傷つく。本来なら歓迎すべからざる訪問者に…オ~イと手を振って応える姿が、人にとって何が一番辛いのかを感じさせて、泣き笑いするしかない。
[j] 貝独楽行進曲
ほぼ全編で絶え間なく続く緊迫感は全作中随一。そして ひたすら深い相愛に包まれる男女の…決定的なところで噛み合わない今生の別れの証言。冒頭の男の言葉が観客の脳裏にずっと影を差しながら、女のあまりにも切ない嘆きと…男への思慕を見続ける展開。非の打ち所がないその愛の言葉の連なりに…1つだけあった何となく違和感のあった…ある生理現象を指す言葉が…やはり最後の最後であり得ない勘違いを生む元となっていたことが分かる。
正直、お互いの愛の言葉が輝けば輝くほど、その誤解の落差は凄まじく… これが舞台でなくTVだったら、「マジか~」と声に出してしまったに違いない。
傍から見れば…すれ違いとか勘違いとかで済む次元には思えないものの、一瞬のアイコンタクトの難しさ…と呑み込むべきなのだろうか。…ただ、往々にして、人は対象物から望むモノを読み取ろうとするという。男が女に感じていた深層心理、男に根差す自己否定感… とか背景の妄想も湧く。
それにしても…不謹慎極まりない発言になるが…、悲劇って美しい…と思わせる凄みのある舞台だった。
[a] 母とおかあさん
1人芝居の「ルール」から自分で作り出してしまう高い独創性。役の切り替わり… 普通の1人芝居なら切り替わる空気を察する感触を味にするところを、ゲーム性の高いルールに仕立てて意外性を楽しませる。そして…自分で作っておいて…それをヒョイッと飛び越える柔軟性が痛快。
そして笑い優先のお話かと思いきや、イマジナリー・フレンドならぬイマジナリー・マザーを患う病んだ背景描写や、他愛もない出来事をドラマチックな最後に繋げるさり気ない仕掛けが、劇作としても貪欲でした。…見た目に反して(?)、中身ギッシリ。
さて最後に私は謝らねばなりませぬ…
日曜にクシャミしたの私です<(_ _)>
まさか…まさか…それを咄嗟に…しかもあんなに絶妙に拾うなんて正直驚きを隠せないし、やらかした私もまさしく救(掬?)って貰えた気分です。…そして他の観客の皆さんは「川久保伝説を目の当たりに出来てラッキーだった」ということでご容赦ください<(_ _)>
それにしても臨機応変さが凄いね。途中で「お姉ちゃんの紙」が2枚飛んだのが気になっていたら、案の定、最後に紙が無くなって一瞬止まる間。…これが本当にトラブルだったかは分からないけど、むしろ思わせぶりに過ぎる時間が別の解釈を想像させて面白かった。
即興劇もこなしそうなお人。作品というより、この方を観に来るコトそのものが娯楽になりそうな逸材でした。
SDN2018 『ハマったら出られなくなりまして』
無名劇団
浄土宗應典院 本堂(大阪府)
2018/11/22 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
姉 由紀の葬儀の為に帰郷した妹 幸子。姉と違って何でもできる優等生…人も羨む人気者だった筈の幸子が抱える意外な自己喪失…心の闇。避けてきた過去の記憶に曝され、危うくなっていく過程が… 面白い演出と… えっ?となる結末で彩られる。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
思っていたより鬱展開で、興味深い精神性が描かれていた。
全体の雰囲気として一番興味深かったのは小学生時代の演出。由紀の造形作品からそのまま抜け出して現れた…生き物をモチーフにした姿。しかも極彩色だったり、蜘蛛とかミミズとかキモイ系も混じって彩られているのが印象的で、単なる過去の事実ではなく… モヤモヤした感情を纏った"記憶"って感じで、鬱な世界に落ち込んでいく作品世界にとても合っていましたね。
そして核心の「ハマる」という部分なんだけど、本作、実は8月ぐらいに大阪観劇した際に入手した仮チラシで興味を惹かれたモノだったのですが… この時のあらすじはちょっと本番と趣きが違ってて、オタクの臓腑を抉るような空気があった。
だから、「ハマる」って、てっきりオタク趣味のことだと想像していたのだが、これが何とも意外性がある面白い方向に裏切られた。
母の愛情のほとんどが…「出来ない子・姉」に注がれる中、欠乏した母の愛情を埋めるように…周りの評価に貪欲になる幸子。頑張れば頑張るほど「あなたは一人で出来るから大丈夫…」と母に放置される悪循環。
更には…一転、姉が芸術面で世間に圧倒的な評価を受けるに至っては、ただでさえ無意味だった「出来る子」のプライドすら下落する不幸の連鎖。いやぁ、この子の名が「幸子」というのが、また皮肉だよ。
結果として自分に貼り続けざるを得なかったレッテルの数々にどんどんハマっていき… 「分相応」を一切許容することができなくなってしまった精神性… 見栄の空虚さが何とも憐れ。…まさしく自ら墓穴を掘って沈んでいく演出が強烈だった。最後の最後まで…母に自分を曝け出せなかった業の深さも辛い。
そして、そして… ソレだけで終わらないところ… もっとハマってたヤツがいたというのが本作の秀逸なところで、…実は幸子の最大の理解者・信奉者が、幸子の暗部を増長させていた… 幸子の数々の不幸な事件の鍵を握っていた… そして今回が特に… という歪んだ愛情のサイコホラー感…その切れ味が鋭かった。自慢気な語りが非常に効いてたなぁ、怖いっ。…なお、有料パンフ(ノート凝ってる!)の方で… 「仮チラ時の話」から「本番仕様の最終稿」に変遷していく過程が克明に書かれていたのが興味深かったです。こういうの晒してくれるのって珍しい。
さよなら鹿ハウス
OFFICE SHIKA
HEP HALL(大阪府)
2018/11/22 (木) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
OPのハイエースで既に感傷の絶頂、モーションの一体感も良く、喜怒哀楽が濃縮されていきなりエンディングかと見紛う。そこからゆっくりとその意味を噛みしめてゆく青春ロードムービーの味わい。
『超速!大陸横断鉄道!』
劇団FUKKEN(腹筋善之介演劇研究会、略して「腹研」改め)
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2018/11/23 (金) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
「昔懐かし鉄道暴走モノ」の態で、様々なパロディ的なお遊びがぎゅっと満載。所々、これまた懐かしさ溢れる空想科学的なトンデモ設定が舞台を賑わす。
一方で日本の貧困問題を揶揄したり、少女の奇行に…貧困層の生きる手段を投影したりと…社会派のピースも散りばめられているが、シナリオの本筋は割とストレート… 本作の醍醐味はむしろ演出にあった… というかそもそもの発想に!
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
カメラ(観客視点)が動けないなら、役者達をそっくり動かしてしまえ…と言わんばかりのマスゲーム感溢れるパフォーマンスが生み出す360°全方位立体感。
平面空間だけじゃないからね、驚くべきことに上下にも回ったからね(笑)
アクションが感じさせてくれる「G」から… 素舞台にも関わらず、列車が浮かび上がって見えてくるのが分かる。
あとね、音楽が何やら映画を見ている様な空気にしてくれて、音楽の空間支配力も感じさてくれました。
総じて…3Dアトラクション演劇、そんな空気の濃い作品でした。
なお、異様な死体操作(傀儡?) がちょっと唐突でイメージ湧きにくかったかな。
エネミー×エネミー
ノアノオモチャバコ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2018/11/23 (金) ~ 2018/11/25 (日)公演終了
満足度★★★★
原作はイプセン作「民衆の敵」。その翻案作品として、現代…というよりは近未来的な産業の要素(観客には真偽が判断できないもの)を取り込んだところに、この作品のミソがあると思う。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
原作では、田舎町が町興しに活用した「温泉」を工場の廃液が汚染している事に気付いた医師が、職務上の倫理感と正義感から温泉の利用中止を進言するものの…町の重大な不利益になることから、遂には彼が救おうとした町民からも敵視されていく… という筋書きで、本作でも大雑把な骨子はそれに沿う。
しかし、原作通りの「廃液汚染」であったなら、公害の歴史を知る身として容易にそのリスクが実感できるところを… 本作ではそれが「SUN」なる正体不明のエネルギーであり、しかも土壌から精製される…という訳の分からなさがポイントに思える。つまり、リスクの真偽がまったく実感できない。
勿論、町の体制側の「SUNが安全であるロジック」が全く根拠レスで…如何にも悪役な作りではある。しかしその一方で、SUNの毒性を主張する研究者側(SUN開発者)もまた非常に胡散臭く描かれている。形だけ、レポートが出てくるものの具体的な内容は語られないし、何より…当のSUN開発者であるにも関わらず、何やら非常に楽しそうにみえる。…ここら辺は研究者の性(サガ)と感じても良いのだが、根拠を語らず… 町の産業の生命線である「ミサキトマト(SUNの毒性を含む産物)」の廃棄のみを代替なしで主張する姿には…一種 暴力的な感触もあって、言ってみれば拙速な風評加害の感じも否めない。しばしば揶揄される「似非科学」も想起しました。
だから…原作に沿った展開の主流に対して…もしかしたら何か他に仕掛けがあるのでは???…と思わせる疑念が常に付きまとっていて、非常にモヤモヤしながら観れたのはミステリー的に面白かった。謎の心理学者タカナシの存在も…同様の不確定要素として、とても利いてたな。
つまりは、… 現実の世界であれば… リスクの真偽なんて、そうそう分かりはしない。どんなに誠意のある動機に基づく主張だとしても、相応のプロセスを経なければ伝わらないし、逆に鵜呑みにするべきでもない。そういった「リアルな体験」の風味が原作と一味違う所と想像しました。(原作を読んでいないのであくまで想像。)
当初、SUNの根幹としてミサキ町の土壌そのものの危険性を窺がわせていたところから、それに反して「他の土壌でもSUNは精製できる…」と言い出したところで、ちょっと真意が謎めいたが …(さすがに単なるSUN濃度の問題とは思えないのだが…)、最終的に自らも汚染されていた研究者カオルコの衝撃的な最期の演出で、理屈を捻じ伏せていった感覚がある。
目の前に見えるリスクを受け容れろ…ってイメージの迫力のシーンなのだが、…しかし…やはりそこに至っても根拠は見えない。あくまで感情で押し通そう感じが… ちょっと一流の研究者のソレとは違うな…という後味を残しました。
それとも… 研究者ゆえ、結論が出ていない主張は明かせない… という趣旨だったとすれば、…トラブルシューター足りえない研究者の悲哀…って感じもしますね。
元が社会派原作なので解釈に偏った感想になりましたが、演出上の面白さも色々豊富。大勢のキャストがストップモーションで動き出すシーンは… なるほど絵画を思わせる流石の訴求力です。
第9回公演「お前とお前は帰ってよし」
The Stone Age
TORII HALL(大阪府)
2018/10/05 (金) ~ 2018/10/08 (月)公演終了
満足度★★★★
タイトルを観て「行こう」って決めた公演。勝手にコメディかと思ったら全く違った。
登場人物すべて、過去と現在の苦しみとか痛みを抱えてて。
最後まで話さなかった、優子の父が最後に叫んだセリフに涙腺決壊です。
泣けました。めっちゃ泣きました!
スカイハイツへようこそ
南森町グラスホッパーズ
谷町空庭(大阪府)
2018/12/22 (土) ~ 2018/12/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
気がついたら、このスカイハイツ 入居のしおりを弟から隠した姉 退居の方法 今弟は、目の前にいる ここは何 事故の後の弟を知らない 手術中に逃げ出した 死んでいて また別れが怖い 乗り越えれば出られる 乗り越えなくてはならない事は、ユキ サトミ ソウタ それぞれにある。「自分の場所 自分が見える 相手が見える 見えたら大切にしよう 自分と同じだけ大切にしよう」 乗り越える事に繋がる。
スカイハイツは、閉じ込めた記憶 心を助ける場所 少し誰かと関わり 見える自分。特別じゃなく誰にでも起こる事 迷う事、時々迷い込んで自分や相手を見る場所と時間が在っても良いのではないでしょうか。私もしばしば現実から逃げ出し、観劇スカイハイツに迷い込んでいる同じだ。自分の足で立つ 自分の場所 自分が見える 相手が見える 見えたら大切にしよう 自分と同じだけ大切にしよう。
ネタバレBOX
気がついたら、このスカイハイツ 入居のしおりを弟から隠した姉 退居の方法 今弟は、目の前にいる ここは何 事故の後の弟を知らない 手術中に逃げ出した 死んでいて また別れが怖い 乗り越えれば出られる 乗り越えなくてはならない事は、ユキ サトミ ソウタ それぞれにある。「自分の場所 自分が見える 相手が見える 見えたら大切にしよう 自分と同じだけ大切にしよう」 乗り越える事に繋がる。
スカイハイツは、閉じ込めた記憶 心を助ける場所 少し誰かと関わり 見える自分。特別じゃなく誰にでも起こる事 迷う事、時々迷い込んで自分や相手を見る場所と時間が在っても良いのではないでしょうか。私もしばしば現実から逃げ出し、観劇スカイハイツに迷い込んでいる同じだ。
女が目覚める あんた誰。ここは何処でしょう。紙飛行機が飛んでくる スカイハイツへ かえでより 気がついたら、ゆきちゃんの部屋に、帰らないと。隣?。そうじゃなくて 窓の外見たら どうやって帰ったら。知らない。帰らないと嫌われる。心配じゃなくて。ゆきちゃん 飲物頂戴 あまーいやつ。別れようって言われたの えーん 帰りたいよう ゆきちゃんも そう思うでしょう 泊めて 寂しい また来るからね ごちそう様でした。(めも 出ていく ゆき)// (ピアニカ)ソウタ何吹いているの。隣に人が来た タカハシ サトミさん ファイル1 飛び降りた ファイル2 3 表札が消えた 勝手に食べ物も増えている、彼氏に振られたって ソウタだけでも 帰れたらいちな。姉ちゃんはここに来た理由わからないの 本当に来た理由解らないの。// 入居のしおり 退去方々 乗り越えて下さい。カエデさんに質問 やってみよ 何を乗り越えたらいいの カエデさんの事教えて。最上階 紙飛行機で返信 (ゆき)が読み飛ばした (ゆきをヤブにらみするサトミ)。上行こ行こ 3人で ソウタが二人が出た後 棚を探す。
戻る(疲労) 行こ行こ 戻る(ぐったり) ソウタ行こ行こ。ムリ // (ぐったり)カードでババ抜き 筋肉痛 2週間連続。二人はどうしてここに来たの 何を乗り越えたらいいのか 姉ちゃんは、だいぶ前に来た弟のソウタは、会社で体を壊して辞めた 林檎と林檎ジュースを売った カートで見知らぬ人から買うわけがない 乗り越えなければいけない事 どこか逃げているのだと思う。 ユウ君と別れる時に言われた 「返せない」向き合うのが怖くて逃げたの。私 ユキちゃんに謝ってくる // ここはいったい何処だと思う 夢 現実 死んでいる 出ていくのが怖いんだよ。コンコン 姉ちゃんなのか 隠したの? 入居のしおり 今日もどうせ出来っこないと思ってた? ソウタは何を乗り越えたら ここから出られると思う。手術中に 逃げ出した お前が現れた。ここは何処だと思う 紙飛行機の手紙を渡す早くここを出て行かないと ここは私の想像の世界。返すよ(入居のしおり)// あー つまんない 早く仲直りしてよ 私もうすぐ帰るよ (お互い想い合うのが解った) ユキちゃん サトミは、帰っちゃうよ (バイオ
リン) 一緒に弾いてくれるの。じゃ 私踊る ジングルベル ジングルベル ヘイ 楽しい 昔は こんなに、頼りに成る姉を演じる必要もないんだ 姉ちゃん 僕は生きているよ 事故 リハビリもした 信じてくれる やっと帰りたいと思った。じゃ ソウタ 先に帰っとくな。私も行こうかな。僕も自分の足で立たないと 気付かせてくれてありがとう また会おうね じゃ。1人か いつも回りに誰かいて、自分の足で立つ 自分の場所 自分が見える 相手が見える 見えたら大切にしよう 自分と同じだけ大切にしよう。
調子に乗れ!
オイスターズ
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2018/11/15 (木) ~ 2018/11/19 (月)公演終了
満足度★★★★
いつもながらの超発想で展開する不条理空間に…いつもと一味違う演出要素が組み込まれて、様々な「調子に乗る」を味わうことができました。
アノ人たち気になってしょうがなかったし(謎)、そして藤島さんには何度も殺されました(笑)、むっちゃ怖いでホンマ。
DDDD -デス屋で働くデーモンなダーリン-
劇団アルデンテ
アトリエ・ゼロ(岐阜県)
2018/11/16 (金) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★
青天の霹靂、突然 突き落とされた闇の中に輝いて見えたモノは…更に漆黒の闇だった。思い遣りのベールに包まれたエゴのぶつかり合いや…人の想いの飾らぬ本質が…対照的に舞台に踊り、剥き出しになっていく。そして一人… 異なる視点で事態を眺め暗躍するモノに…投影されている何者かを感じた時、何ともシニカルな気分になれた… 後味惹くねぇ。
私はつい心理面や人の闇を窺ってしまうけど、…カッコよくて、コミカルで、キモくて、エロい… 様々な楽しみもてんこ盛りの舞台。
「トリビュート」~4つの楽曲から着想する短篇集~
劇団太陽族
四天王寺スクエア(三重県)
2018/11/10 (土) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★
思ったよりバラエティに富んだ味の短編集。ビートルズへの造詣が無くてもとっつきやすいコミカルなところから… 途中で大幅に舵を切る。特に最後は、世相を反映した…と簡単に一括りできない…暗喩の効いた発言もあって、解釈には深読みが必要そう。いずれも当時の世相や歌詞の意味も分かって観ることができれば、味わいももっと深いのだろうね。使われた曲の歌詞の和訳を検索して少し眺めただけでも、ちょっと感じるところがあった。
月見里教授と箱
劇団芝居屋かいとうらんま
御浪町ホール(岐阜県)
2018/11/09 (金) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
本作品の中で飛び抜けて強い印象を残す…「教授の箱の中身」が現れるシーン。この芝居の全てが このシーンの為に用意されていたのだ…と思える鮮烈さでした。
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
何度となく重ねられた教授の声でのモノローグが…実は夭折した妻の言葉であったという大どんでん返し。自ら「空っぽ」と称していた教授の中を埋め尽くしていたモノの正体… その深さと重さに…久し振りに比喩でなく落涙してしまいました。
老いた頭の中に…なお鮮烈に蘇るウェディングドレス…「2人の絆」と「2人を別つモノ」…という真逆のWミーニングとして利かされたリボン… そしてそれがラストシーンにまできっちり枝葉を伸ばす。ちょっと綺麗すぎだろ…とまで思ってしまうエンディングでした。
ちょっとこの流れだけ…やたら鮮烈過ぎて、他の要素とのバランスとしてどうなんだろう…って逆効果まで心配してしまう位でしたね。
「長く生きれば生きるほど…馬鹿になっていく」という冒頭のモノローグから、老いや痴呆を想像させる出だしだと感じていましたが、実は教授の知性の高さ故に、言うほど「老い」は伝わって来ていませんでした。だから、ちょっとギャップを感じていたのです。でも…これは誤読…というか妄想かもしれないけど、実は教授は… 妻との色々なことは「老い」で忘れてしまっていて、…でも無意識の判断や行動に根ざすものとして頭に残っていた状態だったのかな… それがあのシーンで蘇ったのかなと思っています。それだったら「老い」も腑に落ちて ギャップも埋まるのですが、さて(;^_^A
それにしても、「謎の人」と教授の会話は…コミカルに仕立てられているけれど、禅問答じみていて、とても深淵でした。導く立場であったはずの教授が…いつのまにか立場が逆転して、謎の人に導かれていく… 気付きを与えていく謎の人の振る舞いが…実に良く、「では… あなたの、たった一つの、箱でございます。」と言って大仰な礼をしてみせる姿にぞくぞくしました。
猿渡サイドの話も、教授の研究を窺わせたり、サスペンス物として面白かった。猿渡の狂った感じや教授の為人を現す「会話の妙」として序盤の牽引役。猿渡の箱の中身もなかなか興味深くて良かったのですが、如何せん妻の話がインパクト強すぎて、… それとバランスする程の演出上の強度が、猿渡側には足りない様に思えたのがちょっと惜しいところ。
篠崎と日向は… 教授の35年に渡る「余生」を意味あるモノと感じさせてくれる味付けとして、とても良かったです。…あと、日向がとても良い娘だったのと、全体として妻路線の話の方が強かったというのもあって、それとの結び付きとして、日向が… 教授に妻を思い起こさせる為人をしている…という重ね合わせがあっても良かったんじゃ…とかも妄想しますね。
クリスマス「聖しこの夜と」
The Stone Age
TORII HALL(大阪府)
2018/12/22 (土) ~ 2018/12/22 (土)公演終了
満足度★★★★★
大晦日の夜に自首した男、平田信 平田を17年間かくまい続けた女、斎藤明美。 物語は自首の前日大阪 奇跡は起こらない 。笑いと苦しみとバカ騒ぎ 色んな想いが詰め込みのクリスマスイベント 良かった。
ネタバレBOX
大晦日の夜に自首した男、平田信 平田を17年間かくまい続けた女、斎藤明美。 二人の最後のクリスマスの夜の物語。平田信が、自首する時の2人の心 実行犯の1人として 自首した際に虚言だと思って追い返されたニュースが記憶にあります。
17年匿って 自首 別れ サリンを撒かないで していない 冤罪 神を間違えた 旅行先 海外 行けない 飛行機乗れない 大阪地下鉄 中央線 高井田から 自転車中央大通り 大阪城が見えてくる 新幹線の切符 俺は君の何。大切な人。結婚届 ネットで取れる 何年かかるか 結婚しよう おばあちゃんになってる 神を間違えた 悪い事はしていない。自首 本当にいいの 冤罪になるかも。 30分に詰め込まれた 別れを目前に 女と男の想い合う現実感の物語。普通の人が、どこかで間違えて、大きな犯罪の一翼を背負って罪を犯しおてしまう。隠れて逃げて。物語は自首の前日大阪 奇跡は起こらない 。
ライヴ と 一人芝居 ジャックと豆の木
笑いと苦しみとバカ騒ぎ 色んな想いが詰め込みのクリスマスイベント 良かった。
ハンザキ
演劇組織KIMYO
名古屋市東文化小劇場(愛知県)
2018/11/01 (木) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★
派手な演出やダイナミックな舞台美術が目玉の劇団ですが… 今回もそこらに手抜かり無しですが、そこよりもむしろ目を惹いたのが妖怪の佇まいと動き。地味だけど繊細で飄々と事を成す。特に件(くだん)の身のこなしは秀逸。ここで秀でる事で他の派手さとのメリハリも効く。
そして主人公 山彦に向ける妖怪の眼差しの暖かさ、必死に最善の選択肢を探り…苦渋の見極めを計る山彦の成長、双方から溢れる想いが素敵でした。そして、終盤、信じるモノへの懐疑と戦う新平の姿が、黒歴史をモチーフとした本作において、欠かせないものに思えました。
カノジョまでの距離、そのあらゆる線分の長さ
Pinchi番地
ナビロフト(愛知県)
2018/11/03 (土) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★
設定の年代以上の懐かしさを感じさせる青春群像劇… それでもしっかり現代の社会形態にハマっていて、それゆえ返って人間の変わらぬ精神的営みも感じさせる。
ロードムービー仕立ての演劇…曰く「ロード演劇」も、…決して単純な流れではなく、2つの時間軸/旅を絡ませる趣向で飽きさせない。(私の気付きではないが、推カケ☆批評塾の語る会で、『過去と現在のパーティで、1人だけ人を入れ替えて時間の識別を容易にしたり、車の向きで時間軸を切り替えたりの工夫が、分かり易さに繋がっている。』との意見があって腑に落ちた。)
以降、ネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
そして遂に2つの時間軸が重なって、ちひろとまひろが同時に舞台に存在したシーンにもドキドキしました。
また、全般的に中堅役者陣の手慣れた演技が素晴らしい。
それでいて若手との噛み合わせも良く、まひろ役の森万尋さんはリアルの高校生だそうだが、とても活かされていたと感じる。すごく馴染んだ感じで人間関係や挙動がとてもリアルに伝わった。(もちろん、彼女自身の演技力の成果であることも疑いない。)
さてタイトルが暗示する様に…「人間を隔てるモノ・距離」が物語のモチーフになっている様で… 物理(地理)的、心理的、時間的、そして生死を分かつ境界までもが様々な"カノジョ"との間を隔てる。
恵太からのちひろへの距離がメインモチーフになっているが、群像劇仕立てのため、性別年齢に関わらず… 関係性を取り沙汰される多くの相手が、皆、タイトルで言う「カノジョ」であるように思えた。
一方、群像的な拡がりゆえに観る側の興味が発散したり、どうしても個々に深掘りする時間が足りなくて、…観る側がどう取っ掛かりを得られたかで印象はだいぶん違いそうだ。取り敢えず私は、各人が抱える様々な負い目の有り様なども合わせて、コミュニティにおける青春そのものを…ありのまま見せられた… そんな印象で受け取りました。
「距離」にフォーカスし、テキストの投影やイスの配置等でそれを可視化していく試みにはだいぶん興味を惹かれましたが、何となく「遠い」か「近い」かの二極しか伝わってこず、微妙な距離感としては、結局役者の演技に依存してみえたのがちょっと惜しいかな。
タイトルの雰囲気から、すごく理屈っぽいところも期待していたけど、基本的に感傷の世界がほとんどだったのは少し残念。冒頭で行われる「イス取り」的演出が印象的で、チラシ絵にも繋がりそうだったので、そういうのをもっと活かしてもらった方が好みだった。
最も印象に残っているシーンは、アイドルひなたんが、黄泉比良坂に現れた母と誤認して自分に抱きついてきた まひろを…見ず知らずの赤の他人であるにも関わらず… 抱きしめ返すところ。
なんたる抱擁力、そして自認する自らの使命に殉じる覚悟の大きさよ。
小ネタとして、りゅうのすけの駱駝演技、生けるカーナビ、口裂け女ばりの久美の追走シーンは気に入ったところですね。
そして最後に… 1つ設定に深淵さが感じられたのが… かよの盗癖。
本人曰く、周りに忘れられてしまったモノを救う行為…なのだが、…他の登場人物の人となりとはかなり異質で、だからこそソコに大きな意図があるのではないかと思う。実際、亡き夫に固執し続けた久美が…かよとの関わりの中で、故人との適切な距離感を見出したように見えた。ただし、かよ自身は何の自覚もできないままに、久美が勝手に気づき納得した展開が面白く…故に観客にもその行為の解釈は委ねられている感じ。ただ、久美は再び夫に手紙を届ける行動に踏み切る結末なので、私が感じたことは的外れだったかも。 ま、久美の行動が衝動的で一貫していない可能性もあるけどね。
ワンラブスーサイド
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
南山大学名古屋キャンパスHB2教室(愛知県)
2018/11/03 (土) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★
今年も当たりを引いた学祭公演。振れ幅多様な短編群に、代替りしても楽しませてくれる予感が溢れました。
各話の感想をネタバレBOXへ
ネタバレBOX
【続き】
「魅せられて」
舞台上に「飛び道具」しかいねぇ!… 奇人変人が飛び交いボケを放ち続ける大空中戦。それを1人で受け止めるツッコミ役ヒロインの頑張りも目立ちましたね。普通の会話劇とは異なるツッコミの呼吸への課題はあるものの、…何となく演劇にしては漫画的な新鮮味を感じました。背後に書き文字が見える(笑)
ハイテンポの展開に不条理劇の味わいもあって、掴みの演目としての役割を充分に果たしていましたね。
ただ、ひたすら斜め上を行き続けた展開ゆえ、…選択肢の少ない最終局面で…返ってオチが予想できちゃったのが少し惜しかったですね。最後に更に突き抜けた…ここぞという隠し玉が欲しかったところでした。"
「ハナのかぞく」
最後にじわっとタイトルが利いてくる… 老犬ハナの家族の物語。逆説で繋げるセンス。
ハナの視点で…少女シホの家族の中での様子が語られるが… 違和感を少しずつ散りばめて、壊れた家族の姿を浮き彫りにしていくプロセスがミステリーじみていて好みの展開。
関係悪化の両親、ハナの延命/安楽死判断の2つの話を… 漠然と別物として眺めていたら、不意にシホが放った「分からないと思った?」というセリフが…「ハナに対するもの」と「シホに対するもの」のWミーニングになって重なり合い、2つの話を繋ぎ合わせた。そこまで割とぬるめに眺めていた私の心にビビッと響いて、ドキリとしました。
そこから安易に夫婦が和解したりしないのにも重みがあって… 翌朝、母がなけなしの決意で掛けた「オハヨウ」という言葉に…父が一旦 目を伏せ… そこからゆっくり視線を上げ始めた刹那に…溶暗して終わる余韻がとても良かったです。
「パラダイス・ロスト」
衝撃的な価値観で展開する物語は極めて鮮烈。
未来に希望を見出せない…昨今の世相を如実に反映した主人公ケンジを…更に巨大な邪悪さをもって呑み込む「自殺ガールズ」の存在感は凄まじいの一語に尽きる。取り憑いた彼女達の可愛らしい外見から吐き出される悪口のギャップは、大きな落差をもって対象に毒を滲み渡らせる。生前から狂気に取り憑かれた3人の価値観…生の感覚を楽しむ為の遊戯… 死の一歩手前で生を謳歌する危険な遊びが…更に一歩を踏み出してしまうまでの流れは明らかにサイコホラーのそれ。
描かれはしなかったが…まだ遊びのつもりだったのに… アスカに漆黒の闇に引き摺り込まれたミキとサナの最期もちょっと見てみたかった…恐いもの見たさ。
いやぁ… それにしてもアスカの狂気は本当に鮮烈だった。
「私は世界中の誰よりも生きている…」
なんて痺れる辞世の呟き。
締め括りとしてはしごく真っ当な「生きていたい…」という結びが、作品として取り繕っていると思えてしまう程、ピークでの鮮烈さは素晴らしかったです。
そういや…いつの間にか主人公がケンジからアスカに切り替わってたなぁ。
まさしくアスカがケンジを喰っちゃってた感じだ。"
ワナビーエンド
ヌトミック
愛知県芸術劇場 小ホール(愛知県)
2018/11/02 (金) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
芝居の実空間は何の変哲も無い場所の筈なのに、独特な言葉の刻みと身体表現が、繊細な駆け引きと不思議な精神世界の深みへといざなう。「音楽的な演劇」を標榜するもミュージカルとは全くの異質、ラップとも一線を画す。地点っぽさもあるが刻みと重ねが別物。
肉体のパフォーマンスも独特で、言葉以上にモノを言ってました。
言葉も音も動きも…体験して初めて伝わるタイプ。