鈍色(ニビイロ)のヘルメット 公演情報 KUROGOKU「鈍色(ニビイロ)のヘルメット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人の記憶の曖昧、人心の移ろいを思わせるような…三島由紀夫割腹事件から来年で50年。この公演は1968-69年を中心にした学生運動を主軸に、当時の時代状況を高らかに謳った群像劇のようであったが…。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、タイトルにある鈍色を背景に、上手側にバリケードを思わせるパイプ椅子や長テーブルが積み上げられている。違和感は卓袱台が置かれていることで、後々に別場面で使用するであろうことは容易に分かる。中央に階段があり、上ったところは演説場(実際 演説もする)を思わせる。もちろん階段の上り下りの動作は躍動感を生み、学生運動の動的場面を支えている。

    梗概…1968年から69年にかけて起きた全国各地での学生運動、その中心として東大・日大闘争で集まった学生の主義主張と行動を描く。特に東大・安田講堂籠城事件を通してこれからの日本の行く末、己の生き様を問う姿はある意味、時代を越えて考えていることだろう。
    この公演は時代状況や情況を歌で表しており、その選曲は巧い。上演前から♪シュプレヒコールの波 通りすぎていく♪(世情)で学生運動の高揚・陶酔した雰囲気を出し、その後学生の1人が東大安田講堂での攻防で心に負った傷、その日々に流れる(或る日突然)、そしてラストの登場人物全員による(翼をください)等、さらに電車が高架を通るような騒音など聴覚という演劇の特長を生かした演出は見事。

    物語は時代・時間を順々に展開しており分かり易いが、構成的には頭でっかちのようだ。始めは学生運動の高揚・緊迫感あるシーンの群像劇であるが、東大安田講堂闘争鎮静以降は、ほぼ根本順平(スヅキハヤツ サン)と恋人の広瀬桜子(伊藤はるかサン)の2人芝居になる。しかも順平は安田講堂闘争で機動隊員への火炎瓶投で焼死させたかもしれないという恐怖と自責の念から無為な日々を過ごしている。そのため会話というよりは桜子の今後の生活不安・焦燥や順平への愛情確認という心情吐露といった光景。伊藤さんは熱演しているが、やはり学生運動という群像劇に比べると印象が弱くなったのが残念だ。また安田講堂へ機動隊が突入する前日に脱出した城戸義朗(古俣晨サン)、その後自己確立できたのかも気になる。

    さて三島由紀夫割腹自殺が1970年、同年には大阪万博が開催されている。この公演の学生運動は1968~69年であり、現在の状況に似ているような気がする。来(2020)年は東京オリンピックが開催されようとし、一方今でも震災や事故等で苦しむ人々がおり、また貧富の格差拡大など時代状況の明暗のようなものを思わせる。自分は世代的に少し若いが、実に感慨深い作品だと思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/02/23 11:15

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