グッバイ・ルサンチマン 公演情報 劇団サラリーマンチュウニ「グッバイ・ルサンチマン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    人の生き甲斐と街の存在、その関係を上手く繋いだ人情劇。何となく居そうな人物、そして数は少なくなったが憩いの場である銭湯、その身近な存在から生まれたものとは…。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台は、ある作家の講演会から始まる。衝立の前に演台が設けられ、少しの移動で風呂屋へ場面転換させる。演台はそのまま風呂屋の番台になり、左右の出入り口に男湯女湯の暖簾が吊るされる。

    梗概…吉崎透はアンチリア充の作家である。その彼の所に突然、女性が押しかけてきて同棲生活が始まる。吉崎は彼女との満ち足りた生活で、作家としてのクリエイティビティを見いだせなくなった。一方、近所の玉の湯は、売上の減少傾向が続いており存続の危機に。
    この公演、人間の存在(暮らし)は街(場所)によって明らかになり、逆に街は人間の営みによって活性化・繁栄するという相互関係を分かり易く描いた作品だ。登場する人物は身近に居るような人々、そして展開する内容は、今の日本の一面を切り取ったような出来事をコミカルに描く。それは人間関係、地域性、そして活性化に繋がり観客の同感を得ていくようなもの。

    吉崎を利用した女(YouTuber[ユーチューバー])、彼を信奉するファン、銭湯の息子、その妹にしてビジネスウーマン、銭湯で働く訳あり男、怪しげな集団に属する母と引き籠り息子、その仲を取り持つ姉、地方出身の大学生など一見無関係な人々が交錯する。それぞれの人が抱えている問題は、典型的な今問題であろう。人を利用し安易な手段での売名行為、追っかけアイドルファン、行き当たりばったりの経営者、利益優先の合理主義者、リストラ、カルト信奉者、引き籠り、遣りたいことが見出せない若者などの代表例。

    キッチリとした関係性で紡ぐのではなく、それぞれの独立した暮らしや境遇を散りばめながら、地域・街という括りで人々をまとめる。その場所が銭湯・玉の湯である。今、銭湯の数は減少し憩いの場が少なくなってきている。人は1人ひとり違い、独立した生活をしているが、1人では生きていけない。公演では個(性)人の特性を尊重しながらも、集いという纏まりの大切さも訴えているようだ。

    基本的には、みんな善人というか普通の人々で、その人の温もりを感じる。色々なバックボーンの人を登場させたことで話が散らばったように思うが、それだけ問題意識が広範なのだろう。”街(銭湯)”の人々の物語も面白かったが、もう少し絞り込んだ関係性で緊密・濃密な芝居も期待したいところ。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/02/23 11:16

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