Opus No.10 公演情報 OM-2「Opus No.10」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     完全なディストピア作品。

    ネタバレBOX

    現在日本の右傾化の主体は、無論、聞く耳を持たず、観るべきもの・ことを見ず、発言すべきことを発言せずに口を噤む日本国民自身の民意によって齎されている。この結果、近い将来に起こり得る核戦争によって齎されるディストピアが描かれていると捉えた。
     物語の中では、現状を曲がりなりにも支えてきた枠組が日本国憲法で示されると同時に、自分の目で見たものは見たと認識し、聞いたことは聞いたこととしてこれまた怪しければ自ら向き合い、常に自ら立証し得る事柄のみに根拠を置いて、己の頭で考える主体が示される。無論、その主体は他とは異なる。それが完全ではないと判断され、己の特異性が自然を裏切ったとしてファクトを主張するも、事実を事実として認識し、そのことを主張し得る夢を語ると、彼は他ならぬ見ざる・聞かざる・言わざる結果、自らの頭では決して考えることをせぬ国民に虐殺されてしまう。
     身の周りでは、それまで辛うじて成立していた屋台骨が無惨に砕かれ、遂には核戦争が勃発してしまった。降り注ぐ核種は、丁度放送終了後のTV受像機のちらつきのように世界を覆い核の冬を齎した。その直中で人々は、食べ、飲み、出産している。間近に迫った、核汚染による惨たらしい死に向かって。僅か旬日、飲み食いを断つだけで我らヒトは死の憂き目に遭うからだからだが、死のみが救い。何故なら生き延びることは、目から、鼻から、耳から、口や尻や性器から出血するのみならず、目は飛び出して落ちかねず、最早医療のケアも期待できないまま、唯地獄の痛みにのた打ち回った挙句息耐えることだから。風が吹く、風が吹く。更なる汚染を運んでくる。
     このような未来は、冷静に現在の日本を検証する限り、可也リアルな未来だと考える。トランプは使える核兵器を本気で開発したがっている訳だし、冷戦終結に繋がったINF廃棄条約の破棄と宇宙軍構想、小型核兵器開発等々は、中国・ロシアの対抗を更に急速にまた過激にすることは言を俟たない。このような情勢下での日韓関係悪化と米朝関係の進展は何を意味するか? 仮に朝鮮半島統一ということになった暁に、その政治体制はどのように変化するか? 在韓米軍が引き上げることになったら、その時日本は、アメリカの最前線として新たな冷戦下、中露と向き合う不沈空母の役割を負わされることになろう。既に集団的自衛権は既定路線、反対派を抑え込む為の法は整備され、適用され始めている。政府は、嘘・隠蔽・証拠隠滅廃棄と書き換え、秘密保護法、更にフェイクと共謀罪等々の他、溜池規制迄言い出しているのは、自然災害よりは、日本が戦地になると見越してのことだろう。国民の再洗脳もメディア、官僚、政治屋共の思うが儘のように見える。既に己の頭で考える習慣もなければ、キチンと話し合う気も無い国民については、その根底から倫理が崩れ去ってしまったことも明らかである。後は為政者の扇動に従って盲従する他あるまい。判断の根拠は其処にしかないのだから。このような状況の進展の結果、今作に描かれるようなディストピアが出来することは想像に難く無いのである。観劇した方の多くが気付いたことを期待したいのが、終盤、女性が着ている着衣が何であったかである。

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    2019/02/23 12:06

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