
ほぐすとからむ
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2025/08/03 (日) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
最近、言語外の表現、身体表現もいけるようになってきてまして。
コンテンポラリーダンスとかも、以前ならきつかったんですが、今は割とすんなり楽しめます。
抽象的なのを感じるつもりだと、セリフもあるし物語性もあるしで、あらま、親切だなって感じなんですが。
だからといって普通の芝居だと捉えると、すっきりしない部分が残る感じ。
身体表現、抽象的な表現は、丁寧にきちんと見せる造り。
意外と笑えるくだけた表現も多かった。
生成AIへの踏み込みが足りない気がした。
使い込んでる、日常化してる人の感覚じゃなくて、こういうもんだろって感覚から組み立てられた表現だな、と。
何か斬新なものを見られるかと思ってたら、杓子定規と言うか、古典的な描き方だなって。

えがお、かして!
四喜坊劇集※台湾の劇団です!日本で公演します※
小劇場B1(東京都)
2025/08/14 (木) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
素晴らしかったです。障害者を扱ったものということもあり、かなりディープでヘビィな内容でした。正直、家族に障害のある人が見るときついセリフがかなりあるかな…と。その意味では別の意味でR指定な舞台かな…と。歌もうまくとても楽しめました。ただ、日本語字幕スーパーがちょっと直訳調のものがあり、そこは日本人がちょっと手を入れたほうがよかったかな…と。

あゝ同期の桜
Uncle Cinnamon
三越劇場(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/19 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
この作品を継続して上演していることはとてもよいとおもいます。作品については、特攻に志願してからの展開は緊張感がありいい演技と演出だったと感じました。
前半については、好みが分かれるかなとおもいます。まだ20歳にも満たない少年の他愛のないやりとりを表現しようとしたと想像しますが、そもそも特攻隊のはなし、最後にどういう結末かわかっているなかでのダジャレの多用はどう理解すればいいかなと(劇の原作?になった日記に書いてあったのかもしれませんが)
演出は、歌入りの音楽が使われていたり、演技の動きがミュージカルっぽいなと。
そうはいっても特攻にいく前に日記をつけていた少年のことを思うと胸が痛む作品でした。

伊能忠敬、測り間違えた恋の距離
アナログスイッチ
ザ・スズナリ(東京都)
2025/08/14 (木) ~ 2025/08/19 (火)公演終了

5月35日
Pカンパニー
吉祥寺シアター(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/18 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
2019年1月下旬北京、タクシー運転手のアダイ(林次樹〈つぐき〉氏)とシウラム(竹下景子さん)老夫婦が暮らす家。アダイは大腸癌の手術を受け、ストーマ(人工肛門)を装着している。使い捨てのパウチ(排泄物を溜める袋)の在庫を確認するシウラムには脳腫瘍が見付かっており、余命3ヶ月との宣告が。死ぬまでの間に持ち物を整理し、自分がいなくなってもアダイが生活できるよう準備してやらないと。その現実が受け止め切れないアダイは「まだ何か手があるんじゃないか?」と話を逸らす。医者の判断ミスだってあるし、まだ絶対死ぬって決まった訳じゃない。シウラムは死んだ愛する息子ジッジの遺品整理に手を付ける。彼が18歳で亡くなったのは30年前、1989年6月4日天安門広場だった。
開幕時、林次樹氏の演技が少し過剰な気もしたが、竹下景子さんを際立たせる為のアクセントなのだろう。竹下景子さんは完璧だった。70代の丁寧な動作の老女から、鬘と化粧を少し変えただけで40代の激昂する女性に。(歩けなくなる程弱り、記憶の混乱が起きるシーンの時だけもみあげにピンマイクが見えた。細かい拘り)。そしてカーテンコールでは嘘のようにスタスタ普通に歩く姿。何処までが演技なのか?全てが「ザッツ竹下景子」。たっぷりと堪能した。是非全く違う役柄でも観てみたい。
下手にある漆喰の壁に囲まれた亡き息子ジッジの部屋。蚊帳のように照明によって透けて見える仕様が効果的。30年間、生きていたそのままに保存された空間、それはシウラムの止まった時間。
失脚した毛沢東が劉少奇から権力を奪還する為に起こした文化大革命(1966年〜1976年)。その混乱に巻き込まれた当時の学生達は進学の機会を奪われた。学問よりも労働が奨励された時代。勉学に心残りがあったシウラムは息子のジッジに夢を託す。裕福ではない家で出来得る限りの教育を与え、アダイが2ヶ月分の給料をはたいて買ってやったチェロ。ジッジは優しい性格で勉学に秀で音楽の才もある自慢の息子。自分達が体験できなかった理想の青春時代を代わりに実現してくれている!そんな彼がある夜両親に告げる。「自分には音楽よりも今やるべきことがあるんだ」と。
当時、中国の改革に前向きだった胡耀邦(こようほう)、肩書は総書記だったが実権を握っていたのは鄧小平(とうしょうへい)。1987年民主化に理解を示したとして失脚させられ、1989年4月急死。胡耀邦に未来の希望を抱いていた学生や市民達が天安門広場に集まり千人規模の追悼集会を開く。その集会は終わらずどんどん中国全土から人が集まって来て3万人以上に。この流れに恐怖を抱いた鄧小平は戒厳部隊を送り込み武力で鎮圧。6月3日深夜から4日にかけて戦車の突入と機銃掃射により3千人から1万人が虐殺されたと言われる。この事件は国家的に隠蔽され、未だに誰も触れてはいけない禁忌。世界的に報道された事件だったが中国国内では誰もが口をつぐむ。事件についての情報や「6月4日」はネット検閲される為、人々は「5月35日」など隠語を使うようになる。
昔書かれたディストピア小説みたいだがこれが今の中国の現実。参政党政権になって治安維持法が復活した暁には日本もこうなるのか。

六道追分(ろくどうおいわけ)~第八期~
片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2025/07/24 (木) ~ 2025/08/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/07/31 (木) 19:00
片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」第33回ロングラン本公演『六道追分』第八期の剣チームによる公演ということで、長く続いてきたロングラン公演も、この八期をもって本当の意味で締め括りということで、それに私が1~4期まで観た後、長らく観てなかったが、この集大成を観れたということで、色々と感慨深いものがあった。
そうはいっても、物語の内容や核となる部分、悲劇的な終わり方は変わっていなかったが。
今回遣り手役が、金にがめつく守銭奴的で少し維持悪くて、狡賢い感じに演じられていて、それでいてそんなに威圧感や恐怖で支配するといった冷たさやサディスティックな感じ、人間味に欠けた感じには演じられていなくて、どこか小悪党感が否めない風に演じられていていたので、最初第二期で遣り手を演じられた薮田美由紀さんが今回も同じ役で続投されたのかと思っていたが、今回の第八期のパンフレットを後で見たら、遣り手役を演じられていたのは高橋綾さんという全然違う役者だったことに気付き、全然違う役者なのに、ここまで演技パターンが似通ってシンクロすることってあるものなのかと、只々、驚き、唖然としてしまった。
今回W主役の盗賊の頭領の鬼アザミ清吉役の江田剛さんと花魁お菊役の百合香さんは、良い意味でズラ感、どこかコスプレ感が否めなかった。
勿論他の遊女七越役の猪谷茉由さん、花里役の加藤瞳さん、松山役の乙坂みどりさんにしても、上に同じで、ズラを被ってる感じやコスプレ感が否めなかった。
そういう側面もあってか、鬼アザミ清吉役の江田剛さんとお菊役の百合香さんの茶屋での言い争いの場面で、緊張感が高まって手に汗握るというよりかは、どこか間が抜けていて、普通に笑える感じになっていて、これはこれで良いなと感じた。
自分が今まで観てきたロングラン公演一、小ネタやくだらないドタバタ、アドリブが微に入り細に入りあって、全然飽きず、疲れず、観ていて常に大いに笑えて、面白かった。
特に同心の章衛門役の水野淳之さんと共蔵役の桜木ユウさんの掛け合いの場面において、共蔵役の桜木ユウさんの顔が長いことをいじったり、同じく共蔵役の3枚目な顔の桜木ユウさんが決めた決め顔が2期目のトランプ政権と不和になったと取りざたされているイーロン·マスクに少し似ていることや、今はトランプとイーロン·マスクの関係ぶっちゃけどうなのといったかなり突っ込んだいじりもしていて、大いに笑えた。
九次役の昇希さんは見た目はイケメンとは程遠いどころか、どちらかというとブサメンだったが、鬼アザミ一味のきゅう(感じが出てこないので、すみませんがひらがなで書かせてもらいます)次郎を崖付近で追い詰める場面での、本格的な殺陣や手に汗握る感じの切迫感を醸し出していて、さらにキレがあって動きが素早い感じといい、見た感じより、実際にかなり俊敏な感じも見て取れて、人はやはり見た目によらないものだと見直した。
激しく素早い動きや、役人的な目的の為なら手段を選ばない怜悧で横柄、慇懃な態度な感じに演じられていて、今まで九次を演じられていてきた役者の中でも多少の妥協さえしない感じ、優しさや隙がない感じが、九次の性格や行動とフィットした感じになっていて、印象に残った。
禿のお琴役のあいねさんは、今年の11月で17で、今はまだ16歳と実際の少女が演じられていていたということで、今までこの役を演じてきた人たちの中で、かなりリアリティを感じさせる自然で初々しく、素直で純真な感じで演じられていて、良い意味で、演技されているというより、自然体な感じに心動かされた。
尼さんの念念役の種村昌子さんは、良い意味で普通に真面目で融通が効かなくて、どこか浮世離れしていて、どこか達観して、落ち着き払ったお坊さんな感じが自然と醸し出されていて、僧服も含めて、似合っていて、役と完全にフィットしていた。
どこかとぼけた感じで、弟子の珍念役の谷口敏也さんの繰り広げるアドリブや小ネタにも、時々戸惑いながらもちゃんと即応して返していて、凄いと思った。
ただし、珍念を演じる谷口敏也さんに拮抗できたかというと、どこか谷口さんの存在感があり過ぎたのもあるとは思うが、念念を演じる種村さんが存在感が薄く見えた。
谷口敏也さんは、珍念だけでなく、磯七、亡八も演じているが、磯七の際はコミカルで優しい感じ、亡八の際は遊女を折檻したり、殴る蹴ると容赦がなく、少しも共感が得られないクズ男として演じていたりと、演じる役によって器用に表情や言動、行動、声の大きさや雰囲気を変えていて、役者でここまでしっかりと細かい部分に至るまで演じ分けることができる役者がいるものなのかと感心してしまった。

カモメに飛ぶことを教えた猫
劇団四季
自由劇場(東京都)
2025/07/26 (土) ~ 2025/08/29 (金)公演終了

WAR BRIDE -アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン-
TBS/読売新聞社/TBSラジオ
よみうり大手町ホール(東京都)
2025/08/05 (火) ~ 2025/08/27 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
チョコレートケーキの商業演劇登場である。副題に「アメリカと日本の架け橋桂子・ハーン」とあるから、主宰のマスメディアらしい終戦・実録ものの夏興行である。チョコレートケーキの作・演出が大劇場興行でどう戦うかも見どころである。
題材はチョコッレートケーキでは手慣れた戦時国境ものである。既にこの劇団は初期に「その頬熱二焼かれ」という原爆被爆少女たちの米国での整形を扱った再演を重ねた注目作作品がある。大手町の読売新聞のホールでの公演は、いつもの下北沢の百人規模の作品とは違って当然である。もともとはTBSの実録番組だが、今回は国際協調・和解に絞っていて、話は学校公演にありがちのウンザリするお説教に終わりがちだが、さすが、チョコレートケーキ、その中で人間和解への道を見せようと大健闘である。内容は「次世代に届けたい、戦争を乗り越えた真実の姿」という1行の表向きのキャプションを出ることはないが、そのなかで、まず、いいところ。
こういう話では、責めても意味のない敵役が出てくるものだが、そういう安い敵役が1幕はじめに出る主人公の同僚兵士以外、出てこない。それなのに、類型的でない戦後の空気を今の時代に通じるように作っている。ことに主人公の擁護派の父母の置き方が、この時代にも確かにいた戦中良識派の実感をきちんと表現していて上手い。テレビの朝ドラになりかねないところを救っている。アメリカの地方の差別は、行ってみれば呆れるほどのものだが、そこは普遍化しにくいので、苦労している。ここは少しわかりにくいが、そこはやむを得ない。現実は姉妹都市などになってみても解決しない、問題の核心である。
ということで、大衆劇という条件はあるにせよ大劇場、ノーセット階段風裸舞台で場内泣かせる技はたいしたものである。(終戦直後に見せられたアメリカ映画の味がする。観客が安心して泣ける)。
チョコレートらしからぬと感じたのは。第1幕(75分)はいいとしても(それでも5分は長い)。後半の90分は長過ぎる。2幕後半は落とし所を探っているようでもあり、話が行きつ戻りつしている。枠の現代記者たちはもう少し使い方があった(現代の視点)のではないだろうかと思う。ここは、商業演劇なのだから、そういうのは諦めて菊田一夫ばりに直球泣かせで行ったほうが良かったかとも思う。そこで照れても仕方がない。俳優、好演。ほぼ満席。

七つ数えて
AOI Pro.
新宿シアタートップス(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
10年とちょっと先の歌舞伎町が舞台。現状より悪化した状態は、妙にリアルに感じます。あまり救いはないのですね。いろいろ考えさせられます。

32軍壕へ メンソーレ
沖縄俳優部
劇場MOMO(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/10 (日)公演終了

寺山修司生誕90年記念認定事業「盲人書簡◉上海篇」
PSYCHOSIS
ザムザ阿佐谷(東京都)
2025/07/24 (木) ~ 2025/07/30 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/28 (月) 14:00
寺山修司による江戸川乱歩「少年探偵団」の二次創作を軸とした奇妙なキャラ大行進な幻想譚。半世紀も前のクラシカルな作品をイマの演出でという温故知新的コンセプトは庵野秀明・樋口真嗣による一連の「シン・○○」に通じ「シン・アングラ」なのではあるまいか?(真顔)
で、改装前の Gallery LE DECO 4階を想起させるイントレの装置や、開演前の観客誘導などこの会場を知り尽くした使い方は特筆もの。
なお、天井桟敷による初演(1973年)は暗闇の中で演者が渡したマッチを観客が擦って観る演出だったそうだが、かつてサブテレニアンで観たアムリタ「死に至る眼、光る(2015年)」の「観客がペンライトで照らす」演出は本作を知ってのことだったのか?という疑問を抱いた。
あと、別役実「マッチ売りの少女(1966年)」との関係とか。

発表せよ!大本営!
アガリスクエンターテイメント
シアターサンモール(東京都)
2025/08/13 (水) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「大本営発表」の粉飾の始まりはどのようなものであったのか。戦果と発表内容は史実に基づき、そのギャップが生まれた過程をagarisk流に推理(?)したコメディである。快調なテンポでいつものドタバタが疾走して行く。
この芝居にはちょい役というものがない。いつものメンバーとゲストたち、誰もが精一杯自己主張をしている。カーテンコールで並んだ顔を見るとき全員の演技が目に浮かぶ。創る人も演じる人も本当にうまいものだと感心する。
ところで甘味処のエピソードは私の頭の中ではどうにも納まり具合が悪い。単なる刺身のツマなのかそれとも深い意味があるのか悩み中だ。
今回の劇場はいつもより大き目で集客に苦労している。まだまだ空席があるので皆さんどうぞとのこと。

帰還の虹
タカハ劇団
座・高円寺1(東京都)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
以前一度だけ観たタカハ劇団はやはり「戦争」に関わる題材を扱ったタイムリープ物であったが、リアルに難あり(タイムリープそれ自体よりも人間関係や行動の動機等に)。ストレスな観劇であったが、本作では人物の口から自然に出てくる台詞によりリアルが積み上がっていた。
舞台は都心から離れた田畑の広がる郊外に移り住んだ画家・藤澤の家屋。正に戦時中の「当局」を意識する画家たちの姿や、夫を召集された女とその弟ら地元の者たちを通して、時局の肌感覚にある程度迫れており、物語世界に入りドラマを堪能する事ができた。主役の藤澤はフランス帰りの著名画家で戦争画の製作に勤しみ、妻キヨ子のヒスにも悩まされている。藤田嗣治がモデルに違いないが、二人の画家仲間、その一人が連れて来る見込みのある弟子(乞われて書生として住まわせる事になる)、時折アトリエを訪れる軍人により、架空の物語が進行、兵役を逃れている高等遊民の階層特有の空気感がある一方、地元の女性が女中に雇われ(夫は出征中)、その弟も力仕事で出入りし庶民の空気も行き交っている。途中若者同士(女中の弟と書生)の会話がまるで現代日本の都会の一角で(否舞台の上で)聴けそうな会話で、笑わせ所を作っていたが、この部分はじっと過ぎ去るのを耐えた。
幾つかの軸がある。戦争協力をしてでも画家は絵を描くべきと主張する藤澤と、それに耐えられず離脱していく画家内山(吉田亮)、むしろ軍人に取り入るのに汲々とする画家熊本(津村知与支)、その狭間でもう一人の主人公である書生貞本(田中亨)は揺らぐ。彼を揺るがすもう一人が藤澤の妻キヨ子であるが、彼女は「自分だけを書いていたパリ時代の彼」を最も彼らしい姿とし、戦争画を憎んでいる。もう一つは弟孝則に赤紙が来た事で爆発する女中ちづの訴え・・彼は一度出征して手を負傷して銃の引き金も引けない。貴方がたは偉い方たちと懇意にされているのでしょう、そうやって兵役を逃れて自適に暮らしているのに、自分らは暮らしもままならず、召集も二度かけられる。どうか行かないで済むように頼んで下さい。ダメなら貴方が息子の代わりに徴兵されて下さい・・!
そして劇の山場を作る軸・・終盤になるにつれ藤澤が不審な挙動を示し、いつも出掛けてばかりいるが、何度かアトリエを訪れたあの軍人とつるんでいるらしいとの噂。彼が作製中の大判のキャンバスは開幕以来、ずっと布が掛けられたままアトリエの隅に置かれているが、ある夜藤澤は書生の貞本にこれを見せる。それは件の軍人がかつて味わった屈辱的で凄惨な敗北に終ったノモンハン事件で観た光景であり、藤澤は秘密裏にこれを描いていた。すなわち「本当の戦争とは何か・・」のテーマ。公式の歴史から排除されたその事実を刻み、残したい願望をその軍人は抑えられないと語る。これは画家が持つ「絵を描く」本質的な欲求に通じてもいる。
このことは現実には、真実を伏せ美談で釣って若者を戦場に駆り出している構図に連結するが、その罪深さについて語るのは軍人ではなく、「赤」との接触をしていた画家・内山。彼は憲兵からの暴行で腫れあがった顔で、熊本に連れられてアトリエへ逃れて来るが、程なく例の軍人が現われ、逃亡は不可能である事、仲間が全て検挙された事でお前を拷問にかける必要が無くなった事が告げられる。教え子(書生の貞本)に最後の言葉を掛けると、彼は炭鉱へと連れ去られる。
終章、赤紙が届いたことを知らせる母から手紙を書生は受け取り、最後の時を与えられる。ようやく彼は(物資不足で絵具がなく暫く描かなかった)油絵を、僅かに残されたその時に描こうとする。師匠藤澤が依頼され描いていた地獄絵図の大キャンバス(舞台上では額縁のみ。中は繰りぬかれている)に、絵ごてを当て、暗転となる。
ストーリー上回収され切れてないものは幾つかあるが、胸に迫る幾つかのシーンの欠片が残る。

りすん 2025 edition
ナビロフト
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
没後一年。KAATで初めて天野天街ワールドが開陳となる。2025年バージョン、と銘打っている事が希望。「劇的」を追求した天野天街と少年王者錧の仕事を、何らかの形で継承し今後も我々の目を喜ばせてくれるのでは・・と。
この舞台に関しては出演者3名と(少年王者錧を念頭に置くと)異色なので同列の比較は意味がないが、なぞった感はなく、「古さ」が組み込まれている世界ゆえか、ここ暫くの間(あと三十年位は?)古くなる事はないだろう「今」躍動する劇世界に魅入った。

帰還の虹
タカハ劇団
座・高円寺1(東京都)
2025/08/07 (木) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/12 (火) 19:00
戦争画を扱った秀作。重い題材で迫力ある舞台になっていた。(2分押し)113分。
2014年に下北沢駅前劇場で初演された作品の再演で、初演も観てるがよく覚えていなかった。1944年を舞台に藤田嗣治(劇中では藤澤元善・古河耕史)を取り巻く、戦争画に関わる人々のあれこれ。笑いを誘う熊本(津村知与支)という存在はあるものの、題材は重く特に終盤はシリアス。絵画(さらに芸術)と戦争の関わりについては、登場人物それぞれの正しさがあり、どれも頷けるものだし、どれが正しいと言えない面がある。役者陣も素晴らしかったという前提で、高羽の脚本がいい。

おーい、 救けてくれ!
鈴木製作所
雑遊(東京都)
2025/07/30 (水) ~ 2025/08/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
1時間弱の芝居。米国のとある州のとある留置所にぶち込まれた男が、「おーい、救けてくれ」と叫んでいる。夜の明り。彼は今なぜ自分がここにいるのか分からない、といった風にも見えるが、ただ人を呼びたい、あるいは逃げ出す契機を掴もうとしてる・・想定は自由な感じである。どうやら鍵をかけて警官(看守?)は帰宅。誰もいないかと思いきや、予想外にも女の声が、それに答える。壁の向こうにいるのか・・。見えない相手との会話が始まり、窓から漏れる月明かりの下、男は相手をきっと素敵な人だ、と言い、女は恥かしそうに応答する。君を一目見たい、と思いが高ぶる男。でも、と臆する女。その応答が暫く続いた後、通路から本当に女が姿を現わす。
この二人がメイン・キャストで、組み合わせが数組ある。この日は男が川口龍(この名を知っていたので観に行ったというのもある)。途中数人の不良連中が登場するが、配役名としては出ていない。
さて、実は世話係の女が残り仕事で帰りそびれていたのであったが、女の全身姿を見た男は一瞬固まり、言葉を失う。が、すぐさま「素敵だ」と言う。リップサービスなのか本心(実は小太りが好み)なのか不明。話をしようと男は持ちかける。女は次第に男に気を許し、先走って行く(リレー競争で追い抜いて行くあの感じね)。完全に台上に乗り切った女を見て男は一瞬目が淀む。利用してやろうという目だ。
だがその後、男は女に「ここを出て、サンフランシスコへ行こう」と言う。女は今の家庭の状況であれば、未練はない、と思い切る。サンフランシスコへ・・が、二人の合言葉となる。牢屋を出ない事にはどうにもならないのだが、なお男は女にそれを言い含める所にドラマの不思議がある。男は何を目論んでいるのか、あるいは男の中で何が生じているのか・・・。
出奔の準備のため女が一旦帰宅した後、静寂の中に車のタイヤ音が響く。どうやら男はある男の女房を寝取り、夫と悶着の末、相手を伸したため監獄に入れられたらしいと分かる。今日その日のことだ。
その夫婦と仲間らしい男二人がどやどやと、ケリをつけにやって来る。
実は男はその浮気女に迫られたのであり、状況が危ういと悟った女は現場を出て大声を出した、という顛末だったのだが、檻の格子を挟んだ険悪なやり取りの後、夫以外の者が外へ出て、一対一で話す事となる。相手は自分の妻が実はそうした事を悟っている。だが体面上許す事はできない、という。本心を明かす夫に、男は「少し勇気を持てばいい」と相手の良心に訴える。が、形成を変えるに至らず、再びどやどやと入って来た男たちの手で、男は殺される。
虫の息で床に腰かける男のもとへ、女が戻って来る。
男は女に告げる。先に行っててくれ。後から俺も行く。サンフランシスコだ・・。
その後の流れがどうだったか、女の目の前で男が息絶えたのか、女が疑う事なく牢屋を後にした後、また戻って来て気づくのか・・女はその場で佇み、小さく「おーーーい」と言う。
出会って数時間で別れが訪れた男女の物語。恋愛の本質を抉ってもおり、普遍性がある。胸に植え付けられた疼きを撫でつつ、帰路につく。

水星とレトログラード
劇団道学先生
ザ・スズナリ(東京都)
2025/08/02 (土) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
大人の風格?を見せた先般のOFFOFFでの4人芝居から、保坂萌女史の「らしい」着想が出たと思ったのが、「お婆さんとタイムリープ」。自分の口でこれを言ったら「認知症」が連想され、見事な親和性である。SFなのかリアリズムなのか、という二つのシーソーはリアリズムによる解明へと流れる所、不思議寄りの現象やダンスシーン等の舞台効果により五感に働きかけて左右に揺らし、中々の長丁場を乗り切ってフィナーレへ見事に着地させていた。
SFは設定が命、と幾度となく書いたが、本作の弱点は「一人がループしている」事であり、やがてそれは「一人だけループを自覚している」との説明で切り抜けるも、お婆さん(かんのひとみ)はリープのループ(水曜に始まって火曜の夜に終わる)を自覚するがゆえに自分は様々な対応をしており、一日に起きる幾つかの出来事さえ繰り返せばループしている事になっているというどこかいい加減な現象だ(だがいい加減だな、と思わせてもいけない)。そしてお婆さんがそろそろ抜け出したいと考え出す事から、身内のまず孫に「あたしはタイムリープしてる」と告げる。これをきっかけに母の面倒誰が見るか問題、息子家族や娘家族が抱える問題が炙り出され、一方お気楽なお向かいさん(田中真弓)夫婦と、孫の先輩、もう一人の孫娘の親友という存在が第三者として飄々と介入する。そして孫たち若者らがお婆さんをリープからの脱出を自らの使命とし、動き始める。つまり、何度も繰り返された時間(お婆さんは同じ一週間を51回繰り返して来たと言うが、後で分かった事にはその自覚以前から500回も繰り返していた)の、最後の一回となる一週間を描いたお話、という事になる。
(続く)

不可能の限りにおいて
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
Aチーム
世界中の紛争地帯、戦場、難民キャンプ···。ニュース映像で見るそこで医療に従事する人々。国連の難民支援機関のイメージが強かったがもっと民間のNGO団体が多いようだ。リアルタイムで働いている人間の生の声を真空パック。肌感覚でその体験が伝わる。作者はポルトガル人のティアゴ・ロドリゲス、父はジャーナリスト、母は医師。オリジナルでは黒澤明の『羅生門』を皆で鑑賞し、事実というものの多面性を確認した上、役者達と稽古に入ったという。
小林春世さんの挨拶からスタート。彼女と山本圭祐氏の印象が残るプロローグ。
(0)国際赤十字社と国境なき医師団の約30人の職員へのインタビューを再構成。舞台上に集められたメンバーはこれから制作される演劇作品の為に自分達の経験談を語る。「こんなエピソードはどうかしら?」「こういうのじゃ伝わらないわね。」「献身的な英雄なんかじゃあない。ただの仕事だ。」「私、演劇嫌いなのよね。退屈だから!」「録音を止めろ!もうここからは記録するな!」皆が望んでいるような話は出て来ない。出て来るものといえば···。
不可能=法制度(ルール)が機能せず無法状態にある紛争地帯。そこに正義とされるものはない。不条理な暴力への恐怖に怯えながら任務を遂行す。
可能=共有する法律やモラルがあり、安全に安心して生活が営める。論理が通用する。
アルコールを禁止されている地域も多い為、最高の気分転換、最高の娯楽はSEX。SEXをこんなに肯定的に謳歌している共同体だったとは。ウッドストックか!?
オリジナルでは4名の出演者を14名に変えていてそれがかなり功を奏している。話によって皆バラバラに立ち位置を移動し、椅子と譜面台を様々な場所にセットする。視覚的な演出で朗読劇の印象は薄い。『コーラスライン』のオーディション風景みたいに作品をメタ的重層的に見せる工夫。
客層は岡本圭人氏目当てが多かった印象。
破裂した水道管を時間稼ぎに手で押さえる作業。修理業者が来るまでの繋ぎだ。だが修理業者がやって来る保証は何一つない。何という虚しさ。何という無力感。だが目の前の水道管を押さえずにはいられない。
素晴らしい内容。こういう作品をこそもっと演るべき。出来ればニュース映像をたっぷり使用して、作品の抽象性を具象的にアジテートしたい。世界中に聳え立つリアルタイムの現実と私的共同体で鎖国した日本との対比。政治的な発言はスポンサー的にNGの“夢の国”、日本。公的機関がこんな状況だから皆ネットで騙されちまうんだ。ぬるいことやってないでもっとラディカルに演劇を活用してくれ。公安が隠しカメラで来場者の身元をチェックするぐらいに。思想犯演劇をこそ望む。昔はこういう情報だけで重信房子達はパレスチナに渡った。

『残響』
白狐舎、下北澤姉妹社、演劇実験室∴紅王国
シアター711(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/12 (火)公演終了
実演鑑賞
演劇実験室∴紅王国の野中友博が闘病中に温めていた企画を没後に白狐舎の三井快が引き継いでの公演。110分、8月12日までシアター711。
https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/08/post-f4ec6a.html

貴子はそれを愛と呼ぶ
株式会社テッコウショ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/13 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
48歳独身女性、堅実ながらどうにもパッとしない現状
どこにでも存在しそうな女性の日常を彼女自身の見識と併せて観進めるカタチになるのだけれど、これが滅茶苦茶面白い!
湧いて出たようなロマンスも大方の検討はついているのに、どうにもならない高揚感をもって見入ってしまう
やっぱり恋愛の威力って凄いね
自分だけでなく会場全体で固唾を飲んでいた様に思う
ヒロインというにはめっちゃ一般人、でもそれが肝になって立派なエンターテイメントになってしまうというのが本当に巧いと思う
イケてる風な元同級生との対比がさり気なく効いているし、職場仲間や家族関連の存在感も間違いなく貢献していて、振り返ればかなりの高等テクニックだったと思うのだけれど、そんな難しい事は抜きにして、ただただ味わい深く面白かったです