まんま、見ぃや!
カラスカ
新宿シアターモリエール(東京都)
2020/02/13 (木) ~ 2020/02/17 (月)公演終了
満足度★★★★
まんま、見いや。とのことですが、しっかりとした話の展開で、笑いもありました。
ネタバレBOX
役者の演技力がすばらしいと強く感じました。声がよくとおっていて、とても観やすいのです。ドタバタとした中盤は、質と量とともに頭の整理が追い付かなかったのですが、少し膨らませすぎかなと感じます。ラストの締めくくりは盛り上がりすっきりとした印象で、楽しく心躍るまとまりになり、興味深く心温まるように感じました。演題から、ミュージカル的な要素が満載となるのかなと期待しました。
タブーなき世界そのつくり方
アブラクサス
サンモールスタジオ(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
人間に備わっている無限の可能性について心打たれました。
ネタバレBOX
前半のヘレンとサリバンの体を張ってのやり取りが、熱気と気迫がこもって伝わってきました。本作品を通じて、考えます。重い想いが心にずしんと響きます。そして、ヘレンのとった行動力、サリバンの熱意に熱いものを感じずにはいられませんでした。苦悩の中を生きる姿、心の中の気持ちの揺れ動き、胸の内の葛藤などがうまく表現されていたと感じました。食べ物や飲み物が実物のものであれば、より臨場感が出てよかったと感じました。
KEISOU
ラゾーナ川崎プラザソル
ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川県)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/24 (月)公演終了
満足度★★★★
現在と戦時中の話が絡み合って進行するなかなか重厚なしっかりとした舞台でした。舞台上は非常にシンプルでしたが、音響や照明がしっかりとしていて2つの時代をきちんと描き出していました。
その場で全力疾走するシーンは、まるで本当に走っているようで臨場感がありました。
戦時中の話は正直分かりにくく実感できない部分もありますが、しっかりとした作りと演技で、2つの世界に引き込まれた2時間弱でした。
第3回HOTPOT 東アジア・ダンスプラットフォーム
公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
横浜赤レンガ倉庫1 号館 3F ホール、象の鼻テラス(神奈川県)
2020/02/11 (火) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
最終日を拝見。牧歌的に始まるコンセプチュアルアートと、肉体中心のストイックな舞踊という印象。ダンスって自由でいいなと改めて思った。
動く体に意識を集中させて鑑賞するのは、お芝居を観るのとは違う体験。特に小空間は一対一の出会いの感覚もあり贅沢。
『地面のうた』
振付:白神ももこ
出演:白神ももこ、西井夕紀子、長峰麻貴
『a body is a not body』
振付・出演:笠井瑞丈×鈴木ユキオ
メナム河の日本人
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2020/02/15 (土) ~ 2020/03/07 (土)公演終了
満足度★★★★
サスペンスドラマを観ているようなドキドキの展開。面白うございました。
SPACの前2作は、少々、独特な演出味が強くって・・・それは、それで興味深いのだけれど・・・同じ役者さんで、これだけテイストの異なる世界が構築されるのだなぁ・・・としみじみ感じ入りました。
ネタバレBOX
陰謀渦巻く政争劇。己が内に抱くものは、野心なのか、大義なのか・・・メナム川に流れている水と同じように時の流れに翻弄されながら生きる人々の様相が描かれます。
唯物論的な信条の元で生きる長政と、唯心論的な信条の元で生きる岐部とは、共に他者によって命を落とします。物語の中で語られるキリスト教の教義的なものとともに、同じところにとどまっていない水のように、物語の展開において、仏教的な無常観のようなものも感じ取れる内容になっていたように思います。
そういう意味では、障害となる者を亡き者としながら体制作りをする宰相と、原罪的な行いに悔いつつ彷徨う元神父も対照的と観ることができ、興味深く思われました。
長政が倒れる大団円の後のエピローグでは、生き残った女性によって、やがてアユタヤに残る日本人は赤子独りになるであろうことが語られます。たくさんの種を蒔いても流されてしまうというような逸話が劇中にあったことを想起すれば、この赤子も今後どうなるかは分からないという話なのかもしれません。ですが、王室で生き残ったのは姫であり、日本人街で残ったのも女性でした。戦等を越えて時代を継いでいく鍵となるのは女性というメッセージも込められていたのかもしれません。
そういえば、姫は、いろいろ立ち位置が想定できる存在でしたのに、今ひとつどういう存在なのか分かりませんでした。長政に向けて「ありがとう」といったことも少々了解しがたく思いました。もう少しだけ生きていてもらう旨の宰相の台詞があり、後に宰相が最高権力者になった旨の台詞があったことから、姫が最終的な黒幕だったなどという筋は否定されるのですが、うーん、長政が姫のことを思っていたことに気づいていてのことだったのでしょうか・・・でも、長政に毒入りの杯を勧めたように見えたし・・・うーん、酌み取ることができなかったかなぁ・・・最後の言葉は声になっていたことから考えると、姫は失語症ではなく、消極的な抵抗をしていたのだろうと思います、王妃やその他の策謀などに対して。宰相によりもたらされるであろう死に向かっていく姿は、ある意味、岐部に通づるところがあるのかもしれません。
シンプルな私には、誠実そうな登場をし、その実ダークだった宰相や、単純そうで聡明な長政がとても魅力的に見え、岐部や元神父、そして、日本人達が生き生きとしていて、良い世界と時間を味わうことができたなぁと思えました。
寒がる寒がり
あひるなんちゃら
OFF OFFシアター(東京都)
2020/02/13 (木) ~ 2020/02/19 (水)公演終了
満足度★★★★
駄弁芝居、なんて主催は卑下しておられますが、今回観た感じですと、なんだかテンポが良くなってきた気がしました。篠原さんはやはりツッコミのほうが好みという感じです。
厳寒期になぜか手をこすり合わせつつ、あひるなんちゃらというのが年中行事になりつつありますか...頑張っていってほしいです!
天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】
東宝
日生劇場(東京都)
2020/02/08 (土) ~ 2020/02/29 (土)公演終了
満足度★★★★
二幕、3時間35分(休憩20分込み)、豪華な舞台であった。役者バカ系がごっそり揃っており、主演の高橋一生氏(白土三平調)にはニヤニヤした。シェイクスピアのエッセンスを煮込みに煮込むと、人間の業の深さに気が滅入るジェノサイド演劇に。余りに陰鬱なストーリーなのだが、終わってみるとやたら爽快な気分なのが不思議。井上ひさし流の『それも含めて人間って面白いな』という達観した人間観なのか。
歌の歌詞など、左右に字幕が映し出されるので有難い。ヒロインの唯月ふうかさんを事故以来久し振りに観たが、凄まじく巨大なオーラを放つ女優になっていた。これからどうなることか益々目が離せない存在。オフィーリアの熊谷彩春(いろは)さんも可愛かったし、浦井健治氏のハムレットも流石にカッコイイ。一度観た方が良い。
ネタバレBOX
シェイクスピア全作品を無理矢理当て込む縛りがなかった方が良い作品になったのだろうなとも思った。『1917』のワンカット風縛りが作品を苦しめているのと同様に。ただ、この縛りがなければ独特な面白さも半減したのかも。創作の不思議。
正義について
殿様ランチ
駅前劇場(東京都)
2020/02/13 (木) ~ 2020/02/19 (水)公演終了
満足度★★★★
正義って難しくて、後になってみたら単なる横暴だったり、普通に暴力だったり...うまくいってそうで、実はそうではなかったり、相対的で矛盾に満ちている...
ちょっとした矛盾を突いてくる脚本は健在な感じですね。
(はてなさんは、以前もクリーニング店の人だった気がしますが...先に見たほうがスピンオフだったのかな?)
客席が、位置にもよるとは思いますが、ちょこっと暑い時間帯がありました...
次回も楽しみにしています。
ゴールドマックス、ハカナ町
桃尻犬
OFF OFFシアター(東京都)
2020/02/05 (水) ~ 2020/02/11 (火)公演終了
満足度★★★★★
ダメダメな登場人物がビビッドに描かれていて、ちょっとだけ退廃的なところが当団体の持ち味?人間頑張っているんだけど...思うに任せないことが多いですね。次作にも期待してしまいます!
成り果て
ラビット番長
紀伊國屋ホール(東京都)
2020/02/07 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
前回に引き続きまして再演を観劇。ストーリーがわかっていながら、やはり楽しめました。大盤解説をしていたのは、本格的な棋士の方と気づきました。主宰がちょこっといいところを取っている感じ。今後も頑張ってほしいです!
どさくさ
劇団あはひ
本多劇場(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
若手の才能を初吟味、とは言いじょう本拠地早稲田どらま館からいきなりの本多劇場、ここで賞味するのはどうかと懸念したが、ちょっと残念。懸念は半ば当った。
無論、彼らの才能の在り処は目の当たりにし、よくやったとは思うのだが、それを十全に味わえる環境とは言えなかった。ただし美術、照明の申し分ないスタッフワークとはこの劇場だからこそ協働できた由であるから何ともだが、作品そのものは恐らくどらま館が相応しく、我々は初演、ないし(確か賞を獲った)昨年の公演を観た上で、その彼らがどう健闘したかを見に行く、が正しい順序だった、多分。声量とか、舞台の雰囲気も小劇場、狭小空間向き。
しかし演出は切れ者、俳優は若々しく身体性高し。それが、もう一つ何かがと思わせるのは、小さめの空間が相応しいと思わせる事と繋がるのか判らないが、能や落語に対する造詣や、演劇的意味を読み解く能力が、何に使われるのか、どこに向けられて行くのか、「何かありそうだぞ」と強く思わせるに今回は至らず、私には。という事のようだ。
ポストトークでは本多劇場公演が決まる経緯からスタッフオファー(ゆうめいの制作請負も含め)にも話が及び、明け透けに喋る若い演出者にも興味を覚えたが、タイプは違えど中屋敷法仁の早熟さに通じるような。中屋敷舞台に私が何処となく感じる「手法を使える職人だが創造者としては思想がない」演出家像、が浮かぶ。新機軸を打ち出し認知されたい野心を持って悪い訳はなく、職人技を磨いて演劇界で仕事をしたい、も有りだ。ある種の「成功」を日本の演劇界で為そうという野心が行き場を失うだろう事や、革新的であることを包摂しない日本社会で演劇というものが芸術本来の役割をどう遂行できるのか、未来ある若者の今後を思うと考え込んでしまうが、余計な心配ではあり、単純に楽しみである。能や落語とツールとしてでなく愛着の対象として付き合える素地には、好感。
ネタバレBOX
舞台は能舞台を連想させる、正方形に近いエリアの隅に柱が立ち、正面から三つの区画、奥にもある。最奥は能舞台の橋渡しに寄せた感じ。柱は一本だけ天空へ伸びている。家屋の床の高さから、手前は一段下がっている。前作は能の隅田川を題材としたというが、この作品にも隅田川岸に佇む幽霊?が登場。一段下がった手前は川ないしは河岸を想起させる。その幽霊に「あなたは既に死んでいる」と言われる主人公は、落語の題材「粗忽長屋」の粗忽者が自分が死んだ事にさえ気づかずいるというブラックな笑い話から想を得た模様。「死」を取り上げ、死概念の揺らぎ、境界の揺らぎ等が表現されていく、この作品はこう纏めて良いだろうか。演出面では、先まで男が演じていた「死んだはずの男」が暗転後、同じ上着を着た女が演じるなど役を交換可能としたり、まあ良くあると言えば今や実験的とも言えない手法を、意図的にやったらしいのだが、含意を込め過ぎて頭でっかちに思われたのは疲労した自分の頭が追いつかなかっただけか。。二人の掛け合い台詞の途中でお笑いコンビ(ミルクボーイ)のやり取りになったりとオモロイ瞬間もあったが(前日はなかったが役者が相談してその回に披露したらしい)。
折しもその翌日に観たジエン社が、ある実験的な公演をやったのを観たが、やはり役を演じる役者を交換可能とする演出について、アフタートークでゲストの園田某氏が解説風に「初めてこういう形態を観る人には難解に思えたかも知れないが、」と断りを入れたのに対し、主宰・山本氏が勢作過程や理念について例の雄弁さで紐解いていた。
これを聴くに、経験値が大きく異なるとはいえ、手法を選択する背景、思索の深さに格段の差を感じてしまった(勿論山本氏が格上である)。それは実際の舞台にも表われていたと感じたが、またそれは別の機会に。
酔鯨云々
文化庁・日本劇団協議会
ザ・ポケット(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
16日14時開演回(千穐楽、2時間)を拝見。
よさこい鳴子踊りに、土佐弁に、登場人物の一人一人に脈打つ高知の気風…圧倒的な熱気で観客を席巻していった2時間。粗削りとはいえ、本作が「商業演劇」だったならば、上々の出来栄えかと。
だが、本作は、勿論、娯楽中心の「商業演劇」ではない。
舞台床面の「旭日旗」デザイン
大量殺人犯が身にまとう紅いジャージ上下が象徴するのは「日の丸」
劇中、特に「後藤梗子」との口論の端々から滲み出る「大浜六郎」の思想…
敵討ちなり・「お国のために」なりといった、古来から我が国に根付く、自己犠牲さえも厭わない「精神的伝統」を天皇陛下に具現化させた上での刺殺=「全否定」こそが、作者が本作に託したメッセージだと、私なりに理解させてもらった。
ただし、(特に最後の陛下降臨のシーンなどは)過大なテーマに脚本が位負けしていたように感じられた。
ネタバレBOX
なお、演じ手では
軽妙洒脱な土肥役を好演の
松田洋治さん
DULL-COLORED POPの福島3部作・第1部『1961年:夜に昇る太陽』での純情可憐な少女から一転、凛とした女将を演じた
倉橋愛実さん
そして、こんな凄い座組の中でもキチンと存在感を示した
相原佳花さん
のお三方が特に印象に残った。
【配役】
大浜六郎(会社経営。伝統保守的思想の持ち主で策士。一人息子を殺された)
…大滝寛さん
土肥慎二(法務省広報官…のフリをした、六郎経営の会社の社員)
…松田洋治さん
後藤梗子(リベラル思想の持ち主。殺されはしなかったものの、娘に精神的な傷を負わされた)
…小林あやさん
西村千花(梗子の娘の友人で知的障がい者。殺傷現場で受けた傷跡が今も残る。琢馬と相思相愛)
…相原佳花さん
山本琢馬(加害者の父親の会社から仕事をもらっていた左官。娘の死後、悲嘆に暮れる妻から心が離れ、離婚。亡くなった娘の友人である千花に惹かれている)
…鎌倉太郎さん
桜井守行(出馬予定の政治家の私設秘書。当人が剣道の有段者であることが知れると、雇い主である政治家の意図を六郎たちに推察され…)
…鍜治本大樹さん
中岡結美(琢馬の別れた妻。千花にあからさまに敵意を示す。職業は高齢者介護)
…坂井香奈美さん
高坂峯子(料亭「酔鯨」の女将。土佐の女らしく、肝が据わっている)
…倉橋愛実さん
渡辺隼人(加害者の父親が経営する建設会社の社員≒ヤクザ)
…石黒光さん
大石洋多(加害者の父親が経営する建設会社の社員。隼人の舎弟)
…鹿野宗健さん
廣井新助、天皇、他
…照井健仁さん(「影の主役」を熱演!)
傾斜
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
良く解らないけど目が離せない。役者さん全力投球の舞台。ほかの劇団さんでは味わうことのできない時間堪能しました。
少女仮面
トライストーン・エンタテイメント
シアタートラム(東京都)
2020/01/24 (金) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★
他の方の勧めや評判も耳にして腰を上げたのが正直な所だが公演半ば過ぎては当然ながら完売、当日券に並べる日もなく諦めていた所、ワンチャンスが成就し千秋楽を観劇した。ダメ元で劇場に開演ギリギリ(実際は2分過ぎ)駆け込んだ所がトラムシートをゲット、開演にも間に合った。
さて舞台。諸手の拍手とは行かなかった「理由」を考え始めるケースになった。
ネタバレBOX
トラムシートは最後列から劇場全体を見渡す位置。出来る事なら、ヒロイン春日野が身に纏おうとする虚構世界に自分も包まれるエリアに居たいのが願望である。
ところが舞台の方は開演前から備品類が収納されている奥まで見せ、敢えて虚構=作り物である事を強調している。床掃除等をしていたスタッフが去って少女と婆のやり取りのあと、視界を遮蔽する舞台幅に近い黒い壁(=バー春日野の店内を区切る)がゆっくりと降りてくる。スタイリッシュな演出だが、奥行が狭いのが淋しい(作り物性を強調するのだから良いのか..単に見る位置でそう感じるのか..はたまた工夫したが限界ありという事か)。いずれにせよこの遮蔽によって完全虚構世界が作り出された、とは行かず、透き間風がある。箱庭のように擬似世界を温かく包まない。そういった事が一つ。
いま一つは、序盤で飛ばすバーのマスターなど、名調子にも程がある程に名調子なのに何故か温まらない。一度台詞を噛んだが熱があれば気にならないのに気になる。私は千秋楽である事が役者に与える影響をあれこれ、これを見ながら想像を逞しくした。役者を気負わせてしまった、とすれば、これまでも正解が見えず模索中だったのではないか、とか。若村舞台の最後を最高に仕上げたいと役者達が力んだとか。。
あとは自分の記憶の問題でもあるが、大西女史の婆が、妙に存在感を発揮し、主役と相性が悪い。始めの登場からして婆でない「何者か」が婆に扮している、と錯覚させる風情(特に声)、私はうっかりこの婆が後で仮面を剥ぎ春日野になって現れるのかな、等と想像し、若村女史がこの声色を使っている、凄え、役者根性半端なかったんだな、等と思い込んだ。いや、そのくらい婆の作りが思わせぶりで、婆でない者が婆を騙っている風を醸していた。これは演技の質として問題だと思う。思うにこの役なら、水族館劇場の某女優(役者名忘れた)が風貌も声もピッタリである(そのまんまで行ける!)。一方少女役の方は役にピシャリであったが。
水道水を飲みに来る男は春日野に「女」を自覚させる男だがその接触の瞬間までは、「奇妙だけど居てもいい」程度の存在として背景色に馴染む案配でありたい、と願望する。何しろ奥行の無い舞台ではその雰囲気が出ない。焼け跡の時代を引き摺って登場し、そこにその時代を居座らせる水飲み男を周囲が扱い切れないのは、彼らも何処かにまだ戦争の記憶を止めているから。
しかしこれがどうにか少女仮面の舞台になっていたのは若村という女優のオーラの賜物だろうか。宝塚を極点とするスターシステムの花舞台を春日野は夢うつつに生きており、それがこの「少女仮面」という舞台を背負う若村女史の姿に重なる。その図がくっきりと表れるのはカーテンコール。演じた若村真由美がというより春日野が憑依した若村、が挨拶をする、これにより舞台が閉じたように思った。
作り物だと揶揄されれば作り物は作り物に居直り、睨み返すのみ、か。
傾斜
OM-2
日暮里サニーホール(東京都)
2020/02/14 (金) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
千秋楽を拝見しました。内容は観劇した人の感じるまま、どのように解釈するかみたいな感じでした。最後のダンスは身近で迫力のあるもので、よかったと思います。全体としてのパフォーマンスは革新的なのでしょうけど、私には少し難しく感じました。ただ、こう言う表現もあり、それに接することができて良い経験でした。また、本団体さん、前回に続き2回目ですが、機会があれば、また、経験してみたいと思います。
まほろばの景 2020【三重公演中止】
烏丸ストロークロック
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2020/02/16 (日) ~ 2020/02/23 (日)公演終了
初演よりストイックに、硬質になった印象。意識は内側へと向かい、舞って跳ねる肉体は重なり合わさって塊になっていくよう。動きも音楽も力強く激しくなっているが、派手さ、華やかさよりも、集中と凝縮を狙ったのかもと思った。
初演の感想→ http://shinobutakano.com/2018/03/02/8732/
ネタバレBOX
初演に登場した山伏役が再演ではいなくなっていた。
障害を持つ若者を置き去りにした主人公は、さまよい続ける。探すのか、踊るのか、登るのか。
ドリームガールズ
Bunkamura
東急シアターオーブ(東京都)
2020/01/29 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
華やかなステージで、視覚的にも楽しめますし、何よりもパワフルで素晴らしい歌唱力で、その歌声に圧倒されます。
中でもエフィー役のカディージャ・オネさんの歌唱力は抜群です。いい曲は沢山ありますが、「I Am Changing」「Listen」はとても心に沁みました。
タブーなき世界そのつくり方
アブラクサス
サンモールスタジオ(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
史実とフィクションを綯い交ぜにし、差別とは何か? それを克服することは可能か? などを提起した問題作!(華5つ☆ べしミル)
ネタバレBOX
歴史の現実を見る限り、数百年単位の月日を通して差別自体は緩和をみてきたと言えよう。然し時にはより陰険、陰湿に目立たぬように実行されるケースも多い。今作でもヘレンの実母、ケイトは障害児であっても自分の娘であるヘレンには夫と対立してでも現代流に言えば健常児に対すると同じように人間として基本的に接しようとしているが、接し方が合っているのかいないのかが良く分からないことで悩んでいる優しい母である。が、有名になったケラーの家に同居することになったヴィニーと同じ手洗いを使うことに対して殆どパニックに陥ったような差別感情を爆発させる。差別の根深さが良く出たシーンである。また腹違いの兄、シンプソンが今作の登場人物中で最も差別的であるように見えるのは、単に彼がKKKの頭巾を被ったりするからではない。寧ろそのような恰好を選ぶ原因にこそ、我らの視点は向けられねばなるまい。結論から言えば恐らくシンプソンにはアイデンティティーの危機感がある。そしてこのことが差別が根深いことのもう一つの大きな原因だと言えるであろう。腹違いではあっても妹、本来は可愛がるハズだ。南部の男のプライドにかけても。だが恐らく事実はそれほど単純に働かない。自分にとっては継母であっても、女の子に比べて遥かに甘ったれなのが男の子というものだ。母には余計甘ったれていたい。然し三重苦を背負ったヘレンに母は掛かりっきりになることが多かったであろう。甘えたいのにそれが実際にはできない。そのことが、ヘレンに必要以上に辛く当たるように観客には見える原因であろうが、恐らく本当の男の子の反応に近い。このような精神状況を抱えながらシンプソンが育っていたとしたら? 古い帽子が度々出てきてシンプソンは異様にその帽子を大切にしている様が描かれているが、帽子が彼にとって何を意味するか? 考えてみても面白かろう。またアイデンティティーの危機からくる差別は、現在のネトウヨ等とも共通する心理であろうなどということも考えさせる。
アブラクサスが、上演回数を増やす度に、更に多くのファンを獲得し、リピーターが増えるのは無論、作・演出・女優もこなす代表の実力もあるが、彼女の描く世界が持つ普遍的な世界観、その作品群が問い掛ける問題の解決必要性、問題が本質的であるが故に忌避されがちであることなど、実際に我々が生きている社会に対する鋭く、切実な問題意識がある。そういった大切なことが脚本に充分に練り込まれている為、演じる役者陣の役作りもインセンティブが高く、各々の役者が実に良い内面からの表出を舞台で出せている。ピーターの肌は白く白人と見分けはつかない。然しこれは隔世遺伝で肌が白いだけで父、母共に黒人奴隷であった。母系が白人にレイプされて肌が白いだけなのだ。その彼が、KKKに殺されそうになって南部を脱出、白人の振りをしながら北部でメディア関係の仕事をし、記者としても大きな影響力を持つに至っていたが、その彼が、肌が黒い同胞に対し「ここは黒人が来る所では無い」と言わざるを得ない。その彼の苦悩は、他の役者にスポットが当たり、自分のようにひねた観客が気を付けて観ていない限り、滅多に気付かれることのないような隅っこでも、キチンとその苦悩の深さ、辛さ、悲しさが本当に内面からのものとして表現されており感銘を受けた。ヴィニー役も良い。ヘレンの乳母だった彼女は、ヘレンが他の誰にも理解されていない時から、ヘレンが心を開いていた例外的な人間であった。そのことの意味する、雰囲気や人柄のようなアトモスフィヤをも見事に出していた。ヘレンを演じた羽杏さんや、アンを演じた紀保さんの演技の素晴らしさは誰しも褒めるだろうから、自分は余り書かない。分かり切ったことだが、中々実践されていないことに、細部までキチンと疎かにせず作った作品であるか否か、ということが大事だ。無論、今作はそういったことにも細かく配慮が行きとどいている。一例を挙げておくと中盤辺り、上手暖炉の上部辺りに南部連合旗がさりげなく壁に貼られている、流石である。
どさくさ
劇団あはひ
本多劇場(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★
4回目の公演で本田劇場出演という早稲田大学の学生さんの劇である。(華4つ☆)
ネタバレBOX
第1回目公演(初演)も矢張り「粗忽長屋」をベースにした作品だったそうだが、初演の際は、後半部を結構メタ化して作っており今作とはまるっきり異なる作品だったとのこと。今回は落語のオリジナルといい具合に交錯している。
舞台は能を意識したという。奥行きの2倍以上はある横幅の広い舞台がメインで逆凸型に客席側に中央部分が迫り出している。手前は5寸ばかり奥より低い。下と中央に沓脱石が一つずつ置かれ、更に客席側には丁度波打ち際に残る波跡のような塩梅に玉石が敷かれている。上手には生の三味線が入り、終始演奏者が舞台に居る。舞台下手手前は天地を逆にした箒が真っ直ぐ立てられその奥に柱、上手端は柱と箒の位置が下手と逆になっいる。この両端の合間に柱が各々3本、手前から奥へセンターを広く取った演技空間として2か所に並んでいる。これらの柱や箒によって区分された空間中央の天井からは、裸電球が吊り下げられている。このやや昏く侘しい照明の効果もグー。
落語オリジナルに近い部分もあるから、当然死んだ粗忽者の当人は長い間己の死に気付かず、喜劇的言動を繰り返しつつ物語は進行するが、彼の勘違いを正すべく妙齢の女幽霊が現れたり、幽霊の本人と生きていた頃そのままの本人が同時に併存するといナンセンスは如何にも落語ならではの人を食った発想を活かし虚数空間的、或は量子力学的に面白い。
タブーなき世界そのつくり方
アブラクサス
サンモールスタジオ(東京都)
2020/02/12 (水) ~ 2020/02/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
仙川と今回で2回目の観劇でした。
冒頭の女優さん二人の圧巻の演技は流石でした。
感動しました!!!