メナム河の日本人 公演情報 SPAC・静岡県舞台芸術センター「メナム河の日本人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     サスペンスドラマを観ているようなドキドキの展開。面白うございました。
     SPACの前2作は、少々、独特な演出味が強くって・・・それは、それで興味深いのだけれど・・・同じ役者さんで、これだけテイストの異なる世界が構築されるのだなぁ・・・としみじみ感じ入りました。

    ネタバレBOX

     陰謀渦巻く政争劇。己が内に抱くものは、野心なのか、大義なのか・・・メナム川に流れている水と同じように時の流れに翻弄されながら生きる人々の様相が描かれます。
     唯物論的な信条の元で生きる長政と、唯心論的な信条の元で生きる岐部とは、共に他者によって命を落とします。物語の中で語られるキリスト教の教義的なものとともに、同じところにとどまっていない水のように、物語の展開において、仏教的な無常観のようなものも感じ取れる内容になっていたように思います。
     そういう意味では、障害となる者を亡き者としながら体制作りをする宰相と、原罪的な行いに悔いつつ彷徨う元神父も対照的と観ることができ、興味深く思われました。
     長政が倒れる大団円の後のエピローグでは、生き残った女性によって、やがてアユタヤに残る日本人は赤子独りになるであろうことが語られます。たくさんの種を蒔いても流されてしまうというような逸話が劇中にあったことを想起すれば、この赤子も今後どうなるかは分からないという話なのかもしれません。ですが、王室で生き残ったのは姫であり、日本人街で残ったのも女性でした。戦等を越えて時代を継いでいく鍵となるのは女性というメッセージも込められていたのかもしれません。
     そういえば、姫は、いろいろ立ち位置が想定できる存在でしたのに、今ひとつどういう存在なのか分かりませんでした。長政に向けて「ありがとう」といったことも少々了解しがたく思いました。もう少しだけ生きていてもらう旨の宰相の台詞があり、後に宰相が最高権力者になった旨の台詞があったことから、姫が最終的な黒幕だったなどという筋は否定されるのですが、うーん、長政が姫のことを思っていたことに気づいていてのことだったのでしょうか・・・でも、長政に毒入りの杯を勧めたように見えたし・・・うーん、酌み取ることができなかったかなぁ・・・最後の言葉は声になっていたことから考えると、姫は失語症ではなく、消極的な抵抗をしていたのだろうと思います、王妃やその他の策謀などに対して。宰相によりもたらされるであろう死に向かっていく姿は、ある意味、岐部に通づるところがあるのかもしれません。
     シンプルな私には、誠実そうな登場をし、その実ダークだった宰相や、単純そうで聡明な長政がとても魅力的に見え、岐部や元神父、そして、日本人達が生き生きとしていて、良い世界と時間を味わうことができたなぁと思えました。 

     
     

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    2020/02/16 19:54

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