
風吹く街の短篇集 第四章
グッドディスタンス
OFF OFFシアター(東京都)
2021/02/03 (水) ~ 2021/02/07 (日)公演終了
満足度★★★★
二作品を鑑賞(「人という、間」「自画像」)。残り一作は配信期間21日までに観るか否か迷い中。
先に観た「自画像」は、女優松岡洋子の個人史を辿る一人芝居であるが、実は多くを期待せず観たせいか期待以上の出来、というか説得力であった。特別に波乱万丈という訳ではない(女優人生という部分では多少特殊な要素はあるが)一人の現代人の人生が、文体・語りの妙で「本人との適度な距離感」で立ち上がり、愛おしく感じられて来る。生い立ち部分で紹介される時代の風俗に思わずにんまり、同世代ゆえの親近感もあったが、松岡女史が今のタイミングで自分史をこういう場で舞台化するという「生」へのある種の姿勢(達観? 勇気?..何だろう)が相俟って、ユニークな舞台になっていた。(語られた具体名のある演劇ユニットや演劇人の名は、ネットにも出て来ない貴重な証言・・Corichが大小あらゆる公演を網羅しているのはデータ的にも得難いがサービス開始は2000年代半ば(確か)、演劇博物館にも残らない演劇公演・作品は正に「時間の芸術」として人の記憶にのみ残り記録からは消えて行くものである事を思う。)
「人という、間」・・風の短編集第二章で上演の「隣のおっちゃん。と、」と同じ男女二人芝居。女の薩川(張ち切れパンダ)が今回も出演し、男は前回が有薗氏、今回は和田氏。戯曲のテイストが同じなので見ると同じ作演出者であった。
前作と今作いずれも、本来対話する必然性のない男女(知らない間柄ではないが)が「やむなく」向き合わされるシチュエーションで、言葉を交わす内に心の交わりが生まれ、何かを共有するが、結局はそれぞれ別の人生へと戻って行くという展開。前回は隣同士、今回は亡くなった女性の妹と、元夫。さらなる共通点は男の方が強引にわがままに話を進め、薩川演じる(多分実年齢の)女性は距離をとり、何なら反発さえ覚えるが、男のふとした言葉の中にある真情を感じ取り、少しだけ自分を開く。女の言う事を男は大概理解せず、男の事情も女にはよく判らず、結局「理解し合う関係」には到達しないが、それでも男女の交わり(必ずしも性行為を意味しない)がこの世界には生起しているノダ、というメッセージは受け取れる。
このお話は妻の死以来「勃たなくなった」事に悩む男が、デリヘル嬢をやってる元義理の妹に女子高の制服を着て来させる所から始まるが、男は恐らく、新たな人生を始めるため、妻以外の女性へ向かおうとする発想を変え、元義妹と対面する(妻の側に近づく)ことで「男」としての再生を目論んだ、が、暗転後「うまく行かなかった」事が判る。妹はそんな男に心を許して自分の話をするが、男はそこで本当の悩みが「勃たないこと」だと薩川に語る。自分は悲劇の主人公であり憐れみを受ける権利があると義妹に迫るクソな側面を見せて薩川に去られるが、彼が勃たない事実の中に、今も妻の事を引きずっている含意があって救いとなっている。
上記2作を並べて比べるも何だが、味気ない現実に小さなファンタジーを見せる(演劇の王道とも云へる)「人という、間」より、自身を語った「自画像」が充実した内容に思えたのは何故だろうと考える。真実味というものがそれほど枯渇した社会に生きている、その感覚ゆえだろうか。
本当の自分、を自ら定めるのは難しい。私など一生かかってもその境地には辿り着けそうにない。自ら選択し、決定し、行動した者が、自らの軌跡を(自分でない者を見るように)描写できるのだろう。ただし、恥部を持たずに送れた(それを描写せずに済む)人生とは、「自画像」のそれは異なり、ある意味で赤裸々な人生の開陳がある。
終着点の知れない人生の現地点で紡がれる言葉は、(少々大袈裟に言えば)存在を賭してこの世に真実味を投じ入れたに等しく、その分だけ世の空気は清涼になったに違いないのであり、濁った空気がこの社会の上層に垂れこめている事との対照など、語るも愚であるが一応言葉にしておく。

先の綻び
劇団水中ランナー
サンモールスタジオ(東京都)
2021/02/17 (水) ~ 2021/02/23 (火)公演終了

ロボット・イン・ザ・ガーデン
劇団四季
自由劇場(東京都)
2020/10/03 (土) ~ 2021/03/21 (日)公演終了

帰還不能点【3/13・14@AI・HALL】
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/02/19 (金) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

朗読劇「私立探偵 濱マイク」-我が人生最悪の時-
朗読劇「私立探偵 濱マイク」製作実行委員会
ヒューリックホール東京(東京都)
2021/02/17 (水) ~ 2021/02/23 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
もうコロナでもないだろうと久しぶりの観劇。
ざっと演目を検索しているとハードボイルドが目についたので深く考えずにポチってみた。
会場に着くと観客は若い女性ばかり。1席飛ばしでおよそ400人のうち男性は4-5人しかいない。ああそういう属性の俳優さん方だったのかとちょっと先行きが不安になった。
しかし舞台が始まってみると中身は正真正銘の私立探偵もので緊張感もあって飽かずに楽しむことができた。朗読劇なのでアクションシーンはないし、出演者は皆さん若いので陰影とか重みとかとは無縁である。そういうことはあるものの久しぶりの生身の演劇に私は概ね満足であった。しかしこれでは観客のほとんどを占める若い女性の方々は満足なのだろうか、歌とか踊りとかそういうサービスもあって良かったのではないかと余計な心配をしてしまった。
入場料が高いのでお得な券を探しましょう。

カミキレ
藤原たまえプロデュース
小劇場B1(東京都)
2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了

今日もしんでるあいしてる
悪い芝居
本多劇場(東京都)
2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
◼️約135分(カーテンコール込み)
死んでると生きてるの中間状態を、ああいう風に表現するって…。あれは「生きてる」っていうんじゃないの?? ただ、テーマもその取り扱いも、抽象的なものの見える化に熱くPOPに取り組み続ける悪い芝居ならではで、面白く観た。

先の綻び
劇団水中ランナー
サンモールスタジオ(東京都)
2021/02/17 (水) ~ 2021/02/23 (火)公演終了

カミキレ
藤原たまえプロデュース
小劇場B1(東京都)
2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
区役所窓口への「カミキレ」提出。
様々なドラマの中に、ユーモアと感動。
ミュージカルシーンもあり、多彩な要素が詰まった、素敵な舞台でした。

屋根の上のヴァイオリン弾き
東宝
日生劇場(東京都)
2021/02/06 (土) ~ 2021/03/01 (月)公演終了
満足度★★★★★
日生劇場「屋根の上のヴァイオリン弾き」めっちゃ良かった。
昔観た映画版は文芸作品って感じだったけど、こっちは日本のホームコメディ感が入ってて楽しかった。
その雰囲気を醸し出して全体を支えているのが、市村正親(72)、鳳蘭(75)のベテランコンビ。この安定感凄い。超オススメです🙂

カミキレ
藤原たまえプロデュース
小劇場B1(東京都)
2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
藤原たまえプロデュースは初見なのですが、感じたのはむしろ安定感ある面白さといった印象。
役所の窓口という同じ舞台での3本の短編からなるお話ですが、笑いどころあり、泣きどころもあり。

洞爺丸ものがたり【変更】青森無観客公演をライブ配信
渡辺源四郎商店
渡辺源四郎商店しんまち本店よりライブ配信(青森県)
2021/01/31 (日) ~ 2021/02/14 (日)公演終了

カミキレ
藤原たまえプロデュース
小劇場B1(東京都)
2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
1時間15分の舞台なのだが、3つの話それぞれがしっかりとしていて見ごたえのある舞台でした。
特にミュージカル!演者さん達がが楽しそうに踊っているので見ているこちらもついニコニコになっていました。

帰還不能点【3/13・14@AI・HALL】
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2021/02/19 (金) ~ 2021/02/28 (日)公演終了

舞台『菅生ゼミ休講のお知らせ』
【菅生ゼミ休講のお知らせ】製作委員会
新宿スターフィールド(東京都)
2019/11/01 (金) ~ 2019/11/05 (火)公演終了
満足度★★★★
持田千妃来さん出演。
A組を観劇。うみぐちうみ さんが掃除の人で、宇敷浩志さんが生徒役の回。
うみぐちさんは何度も拝見している方。いわゆるおばちゃん役が得意で、とても安定感があります。「BADASS PSY-KICKS!」という舞台で演じた緑の都知事役はお見事でした。
今回最も印象に残ったのは宇敷さん。帰り際に「いちばん良かったですよ」とお伝えできました。「ファントム・チューニング外伝」という舞台で鬼の役を拝見しましたが、メイクが濃くて素顔が分からずでした。今回ちゃんと見れて良かったです。
この公演は再演で、さらに再再演も控えています。そのことからも評判の良さが分かります。9人の生徒それぞれに特徴があって、それぞれのエピソードを交えて、楽しかったです。
持田さんは珍しく「不思議ちゃん」役で。ご自身も初めてだとおっしゃってました。新鮮でした。

鮮かな朝
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
青年劇場スタジオ結(YUI) (東京都)
2021/02/10 (水) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★
女性による女性の悲しみを描いた70分の中編。タイトルには「朝鮮」が隠されており、慰安婦問題、日本の在日差別がメインテーマである。小学校の校庭の砂場(4スミを吊り上げることの出来る朝鮮のつぎはぎの白い布=ポシャギ=でできている)だけのシンプルな装置。戦争中に同級生だった朝鮮人の少女二人が、アイコ(五嶋佑菜)は戦後帰国の船が沈んで亡霊になり、ノブコ(蒔田祐子)は日本に残って年を重ねていく。同じ砂場で戦後育った日本人の少女三人。この三人が大人になり、それぞれの女性としての苦しみを吐露するところから、がぜん引き込まれる。
幸せな結婚をしているように見えた孝子(武智香織)は、実は子供はまだかと姑にせっつかれたあげく、せっかく妊娠したと思ったら、病院の誤診で子宮切除され、子供が出来なくなていった。姑が、その病院へ行けと言ったのに、今は姑は医療事故に遭ったのは嫁が悪いとせめる。夫は知らん顔である。友人が「訴訟するんでしょ」といっても、「わざと贅沢な病院に行くから、と周りからどういう目で見られるか」と断る。
里子(岡本有紀)は高校生時代にレイプされたことを隠し、建設業の夫を持ち裕福な暮らしをしている。実は彼女は、朝鮮人の子。先述の二人の朝鮮人少女の同級生が産み落とし、日本人に拾われたのであるが、本人は知らない。
かつてレイプされた時に助けてくれた朝鮮人老婆・ノブコと再会するが、女は「再開発の邪魔だから、立ち退いて朝鮮に帰ってくれ」とひどいことをいう。老女は女の出自を知っていて、近くでずっと見守ってきたのだが、本当のことを言うことはできない。どんな苦しみ・修羅場を生むかわからないのだから。でも亡霊の少女いう「知らないことは罪だよ」と。
戯曲は93年に書かれた。91年に韓国の元慰安婦当事者が初めて名乗り出たことがモチーフにある。戯曲は後半の作りが非常に緊密で、多くの問題を考えさせる。そのシンプルさをストイックな舞台に仕上げて、男の「罪」(不作為の罪も含め)を突きつけられるような思いがした

オペラ『森は生きている』
オペラシアターこんにゃく座
世田谷パブリックシアター(東京都)
2021/02/19 (金) ~ 2021/02/24 (水)公演終了
満足度★★★★★
有名だが見たことはなかった「森は生きている」。しかも林光のオペラ版の新演出。期待にたがわぬいい舞台だった。前半・第一幕はスローテンポで話が進み、音楽も現代音楽風の響きと旋律で盛り上がりを抑え気味。薪拾いに生かされる継娘(鈴木裕加)、農夫出身の兵士(大石哲史)、12月の精たち、という森の人々が出る。からす(泉敦史)と、うさぎと、リスの追いかけっこも(子供が楽しめる場面)。宮廷に場面は移って、「シャクホウより短いから」と「シケイ」を言い渡す怖ーいわがままな女王(熊谷みさと)が、「大晦日に(春に咲く)マツユキ草をカゴいっぱい持ってきたら、カゴいっぱいの金貨を褒美にやる」という気まぐれなお触れ。それを知ったおっかさん(斎藤路都)と姉娘(沖まどか)が継娘を、厳寒の森にマツユキ草とりを言いつける。
後半は、物語が一気に加速し、音楽も一気に親しみやすく、盛り上がる場面が続く。音楽は、オペラ化以前の劇中曲がそのまま使ってあるそうだ。12の月の精たちが1月から2月の嵐へ(精たちの動きが秀逸)3月から、一気に4月になって、舞台一面にマツユキ草が咲き乱れる演出は華やかで驚きがあった。
場面変わって宮廷。舞踏会の場面も華やかさとコミカルさがあり、おっかさんと姉娘が女王に「どこでマツユキ草をとって来たか話しなさい」と詰められて、大雪の中を森の奥の不思議な湖で、とその場しのぎの出鱈目を真剣に映じるのもおかしかった。
女王一行の森へ行くそりのスピード、カーブ、勢い。継娘の「指環よ転がれ」の長めの呪文はハイライト、大変光った。第一幕では耳打ちだったので、言葉は分からず、オケだけで予告してあった。森の精たちが季節を変えてみせて女王を懲らしめるのがまた、盛り上がる場面。転じて、女王たち3人(博士と兵士)が森に迷子になり「三人乗った難破船」とよたよたさまよう歌も哀れでおかしい。こうしたローテンションが、人間の信頼と森の讃歌を歌い上げるフィナーレを際立たせる。「これまで取ってきた以上のものを森から取らない」という姿勢は、気候変動の危機に立つ現代に通じるメッセージだ。
12人で全ての役をとっかえひっかえ演じて、面白い。森の精の人数が場面場面で変わっても(しかも最初とラストをのぞけば、最大11人で一人足りないのだが)全然気にならない。
12の月の精たちが、色違いの裾長の衣装と冠で季節を示し、女王が金ピカの衣装で、娘がみすぼらしい服から最後は白銀の衣装にかわり新しい人生の門出を示す。動物たちの扮装も、その特徴を示しつつ、やりすぎず品があった。美術、衣装、演出、音楽、歌があいまってよかった。
就学前や小学生の子供連れの観客も多く、子供が集中してみていたのも感心した。大人も子供も楽しめる、とは言うは易く行うは難し。カーテンコール後、4歳くらいの女の子がピットに駆け寄って、桶メンバーに手を振ってた。ほほえましい。休憩15分込み2時間35分(前半60分、後半80分)

「その鱗 夜にこぼれて」
空宙空地
in→dependent theatre 1st(大阪府)
2021/02/18 (木) ~ 2021/02/21 (日)公演終了
満足度★★★★★
振り返ると飛ぶように過ぎていった日々 嬉しかったこと 悲しかったこと いろんな人が、そのようにしか生きられない 幸せって何 ふと自分を見ると、そこに居るのは、誰。 父 母 安売り ごつ盛りラーメン タイムセール そのようにしか生きる事ができないけど、言わないけれど大切な何かをもって生きている。 普通の人が、ふと気が付いた時 エールを送るような冬の花火が、上がる 皆が見た。 家族の背中にも映る花火、今の自分の背中にも花火が映ってほしい。

先の綻び
劇団水中ランナー
サンモールスタジオ(東京都)
2021/02/17 (水) ~ 2021/02/23 (火)公演終了
満足度★★★★★
久しぶりの小劇場。この空気と空間、やっぱ好きだな。観劇後の夜の街は真冬の冷たさだったけど、色んなものが綻ぶお芝居に自分の心が一番綻んだお芝居でした。ありがとうございました。また、会いましょう!

マニラ瑞穂記
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/02/19 (金) ~ 2021/02/24 (水)公演終了
満足度★★★★
戯曲には運・不運があるとつくづく思う。あまり上演されない、いい作品を見た。
秋元松代の「マニラ瑞穂記」は、64年の「ぶどうのの会」の初演。「村岡伊平次伝」の続編のような作品だが、ほとんど再演されていない。前の芸術監督の栗山民也演出でここで再演(2014)されたときも珍しいものをやると思った記憶があるが、結局見なかった。今回はこの劇場の研修生の卒業公演で、研修所長を務めた宮田慶子の演出である。
感想をいくつか。
改めて、秋元松代の戯曲のち密さにおそれいった。この作者の場合は、演出を兼ねる事がなかったために戯曲に全力投入されている、内容はもちろんだが、場割の構成から、登場人物のキャラ、セリフ、俳優の出ハケ、まで考え抜かれている。
日本帝国主義の拡大期を舞台にしているが、南方を舞台にした作品は珍しい。時は20世紀にはいる直前、アメリカの統治時代になろうとするころのマニラ日本領事館が舞台である。スペインからアメリカへ、その争いの中で独立運動や割って入ろうとする日本の思惑など、歴史的にもなじみのない背景が、あまり説明セリフがないのによくわかる。登場人物は日本領事館の領事や駐在武官と、内乱を畏れて逃げ込んできた南方進出の女衒と女たち。上部構造と下部構造。約二十人の登場人物が巧みにかき分けられて、研修のテキストにはもってこいの本である。だが、それだけではない、今見ると、南洋に売られた日本の女性たちが、男どもの小賢しい政治を乗り越えていく逞しさが心に残る。さすが、日本の女性劇作家の先陣を率いた作家である。向こう気の強い作家だったから、当時、ぶどうの会のみならず、日本演劇界の精神的支柱であった劇作家木下順二への対抗心が内心あったかもしれない(ただの個人的推測だが)。劇がしなやかで強い。
演出の宮田慶子にとっては自分の生徒たちの門出の公演なのだが、昔の宮田演出らしい、優しいタッチだ。生徒たちもそれぞれ持ち味を引き出されてのびのびとやっている。この研修所は全国から俊英集う演劇の東大みたいなところ、と聞いているが、なるほど、皆うまい。普通、こういう卒業公演だと、幾人かの力不足があからさまに出てしまうのは、やむを得ない、となるのだが、一人もいない。これも恐れ入ったところで、もう、どこでも使えそうだ。俳優は経験が大事で、研修所は囲い込む必要もないのだから、これから、積極的にいろいろな舞台で見てきたいものだ。
舞台は、卒業公演と言えないような本格的な舞台作りで、装置、音響、それぞれお金もかかっていて、観客もこの料金では贅沢に芝居を見物できた。