実演鑑賞
満足度★★★★
最初は冗談のように始まり、次第に非日常が当たり前になり、最後はあっけない悲劇でおわる。一人暮らしの男の部屋に、突然「友達」を名乗る9人!家族がやってきて、部屋を占拠して出ていかない。男の悲劇を見ながら、ヨーロッパ人に土地を奪われたアメリカ先住民のことが思い浮かんだ。あるいは満蒙開拓団によって追い出された中国の農民たちとも重なる。
男の最後は、尼崎監禁致死事件や北九州の事件のような、モンスター同居人の家族支配虐待事件と重なる。実際、警察に訴えても家族内のことは関与しないというスタ薄手、救われないことは多々ある。警察も忙しいから。
これだけ広い世界の出来事を想像喚起させる安部公房の戯曲に脱帽。それをスピーディーでコンパクトな現代の芝居にアダプテーションした加藤拓也も恐るべし。
哀れな被害者の鈴木浩介、家族の父山崎一、次女有村架純、長男林遣都、三男大久保一衛がめだった。一方、これだけ人数がいると、いい役者が綺羅星のごとく配役されているのに、各々の見せ場は少ないのがもったいない。