物理学者たち 公演情報 ワタナベエンターテインメント「物理学者たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    シリアスな劇かと思って見始めたら、冒頭からリビングに看護師の死体が転がり、警部が登場するという人を食った展開。自分を歴史上の偉大な物理学者だと思い込んでいる精神病患者たちが、なぜか看護師を殺してしまう、ブラックコメディが第一幕。殺しても、病気だからと逮捕されない。

    途中、メビウス(入江雅人=好演)という第3の患者に、妻と3人の息子が再婚した夫とミクロネシアへ宣教のため引っ越すからと、永の別れにくる。妻(川上友里)の、押し付けがましくて騒々しい、オーバーな演技がおかしい。ソロモン王が見えるというメビウスは、喚き散らして、せっかくの別れを台無しにして、家族を追っ払ってしまう。
    看護師のモニカ(瀬戸さおり)は、「狂ってないって知ってます」と。メビウスも「あれも演技。こんな狂った男にニ度と会いたいと思わないだろう」と。ここから、二人の関係は意外な展開をするのだが、そこもまだ序の口。第二幕になって、どんでん返しが続き、科学と権力、自由と責任、人類の不幸を防ぐための、厳しいがささやかな選択が描かれる。

    間違いなく傑作。とくに1962年に書かれたという戯曲がすごい。どんでん返しは井上ひさしも初期に愛用した。ほかに「スルース」という傑作もある。密室内の出来事で広い世界を語る、まさに演劇らしい演劇だった。
    21世紀の日本の現代劇でこんな芝居が出てこないものだろうか。

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    2021/09/20 20:17

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