満足度★★★
シビアなテーマ?
ネタばれ
ネタバレBOX
G2プロデュース【デキルカギリ】を観劇。
G2の作品は過去に何本か観たのだが、適度な商業性があって、可もなく不可もなくという作品が多いようだ。程ほどに面白いのだが、あまり刺激は与えてくれない。今作は解散公演という事だが、期待をしないのは勿論である。
詳しい内容に関しては割愛するが、原発問題を一家族の視点から描いた作品。
常に国家の味方と表向きでは唱えていた父親(学者)が、実は裏で原発廃止を長い期間に渡り取り組んでいた。その事を知らない子供達は、父親の国家の飼い犬、日和見主義的な生き方を憎み、家族が断絶してしまうほどだ。だがその父親が認知症にかかってしまい、原発廃止で行っていた秘密の内容が遺言書によって明かされるのである。そしてその内容を知った子供達は、そのとんでもない遺言書の中身の対応に迫られるのである。
平和なホームドラマ調で、笑いと上手い役者使い描いているのだが、テーマに関してはかなりシビアである。原発廃止は一個人のテロしかないという結論に達しているという事だ。国家の側で働いている人間が、その様な行動を起こしてしまうという事は、もう対策を打つ手がないのではないか?とも言える。3.11の直後、トラッシュマスターズが【背水の孤島】で描いた原発廃止問題も同じように個人のテロでしか解決作がないと訴えていたが、今作も全く同じだ。いち国民として正しい行動を起こす為に国家に近づいたけど、実は遠のいてしまっている?という事に気がつかされてしまうという事だろう。以前にも書いたが、映画【チャイナシンドローム】で原発職員がとった行動と全く同じだ。
今作はシビアなテーマを身近な視点で描くという事に関しては上手く出来ていて、観客が身にしみてテーマを身近に感じるだろう。だだ毎度の事ながら、クリエイティブ的な作品ではなく、観客の想像力を掻き立てられないので、観終わった瞬間に忘れてしまいそうなのだが・・・。
演劇をただ楽しみたい!という方にはお勧め。
いつどこで観ても吉本菜穂子は良い役者だ。
満足度★★★★
刺激的か?退屈か?
この劇団が一体何をやりたいか?何を表現したいか?
それを観客が、世間が、評論家が理解するかしないかは別として、独自の道を歩んでいるのが手に取るように分かる芝居だった。
今の演劇界の潮流は口語演劇と言っても過言ではないが、それにそろそろ退屈している観客がいるのは間違いない。その後に続く演劇界の新たなる道しるべが見えてきた様な気がした。
そう、だから今作は刺激的な一本である事は間違いない。
満足度★★★
ネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
【in her twenties 】を鑑賞。
劇団・競泳水着の別枠のユニットである。
ひとりの女性の20歳~29歳までの人生を、10人の女優が演じ分けて行く。
てっきり入れ替わり、立ち替わり演じると思っていたら、女優が舞台上に並んでいて、瞬時に変わって演じていくという面白い試みである。
夢の挫折、恋人との関係を綴っていくのだが、性別の差か?世代の差か?いまいち乗れずに終わってしまった。その原因は、人生の深さをあまり追求していないからだと思われる。10年間の出来事を軽いタッチで描いた作品です、と言われれば成るほどねぇ?と思うのだが、それでは満足しないのである。やはり心の闇、苦悩の部分を見たいのが本音である。
ただ表現方法が意表をついていただけに、あともう少し?という感じだった。
ちょっと残念な作品。
満足度★★★★
アングラ妙ージカル
ネタばれ
ネタバレBOX
FUKAIPRODUCE羽衣の【サロメVSヨカナーン】を観劇。
オリジナルミュージカルをする劇団である。それも妙ージカルと自ら言いきっている程、変わったミュージカルである。
ミュージカルにありがちな愛と希望の物語、美しい踊り、陶酔するのような歌声、美男美女などの定番な物が全く出てこない?俳優が演じているから出来ない?ミュージカルである。サロメとヨカナーンという名を借りて、男女7人カップルの切なく、悲しい物語である。それを一晩の愛の出来事として交互に描き分けていき、中年オヤジと少女、歌手とヒモ、不倫しているカップル、倦怠期の夫婦などなどだ。その男女の仲睦ましい瞬間を、音痴な歌声、奇妙な振付、足がまともに上がってない踊り、卑猥な愛の言葉などで、執拗なまでに観客に迫ってくる。それも始まって直ぐに打ちのめしてくれる。前作もそうであったが、下手な踊りや音痴な歌声だからこそ、何とも言えない悲しさと切なさが観る者を虜にしてしまう。それはまさしくアングラ的郷愁なのである。それに共感出来る観客はいとも簡単にこの世界に没入出来るのである。
ただ今作に関しては問題点があったのである。
それは後半の構成部分に違和感を感じたのである。明らかにこれで終わりだろう?と思えるミュージカルシーンの後にまた物語が始まってしまうのである。ミュージカルの展開の王道である、歌、踊りの派手なシーンで締めてこそ、最後にブラボー!と行きたくなるのだが、そこに行かないが為に、観客全員が取り残されてしまったのである。全く何を狙っているのかが分からず、観客はキョトン?としてしまったのだ。狙いなのかも全く分からないまま消化不良になってしまったのは残念でならない。
ただそれを置いといても、今作はかなりお勧めである。
多分?事故だと思われるのだが、タクシーの運転手役の人が舞台から突然落ちてしまったのだが、その後を洒落たアドリブで難を逃れた上手さと言ったら堪りませんでした。
満足度★★★
観客も苦悩する
劇団・砂地の【Disk】を観劇。
今作はシタラートラムのネクスト・ジェネレーションで選ばれた今後期待される劇団の公演である。
自分が失った恋人の亡霊と対話し続ける男、亡くなった父の顔を思い出せない妹、そしてそのふたりを囲む友人達。
苦悩する人達の物語である。
常に自分のおかれた過去と対峙しながら、今をどのようにして生きて行けば良いか?という事を演出家は、投げかけている芝居ではないのだが、観ている我々は心苦しさを感じてしまう。観る世代によっての捉え方がまちまちだと思われる内容だが、誰もが避けては通れない己の心の襞に触れてくる内容というのは間違いないようだ。物語らしい物語がないのが今作を鑑賞するには難しいと感じるが、己の捉え方次第では幾らでも入り込める芝居でもある。
満足度★★★
ややネタばれ
ネタばれ
ネタバレBOX
タカハ劇団の【世界を終えるための、会議】を観劇。
前作の【ブスサーカス】は【ゴド―を待ちながら】を上手く引用していたので、
今作も期待が膨らんでしまう。
現代人が自ら思考する事を止めてしまい、全ての決断を人口知能に頼って生きている社会を描いている。今作は、生身の人間が出てこない、人口知能の中で動いている機械部品のパーツを俳優が演じている。人口知能で動いている機械部品は、人間の悩みや問題を解決する事に喜びを感じて動いている。そんな折、新しいバージョンの登場に機械部品はお役御免になってしまう。それに対抗するが如く立ち向かうのだが、新しいバージョンの罠(ウイルス)にかかってしまい思考が停止してしまう。そして新しいバージョンの新しい所以である物は何か・・・?
人口知能の今後のあり方を問う作品なのだが、巷間で叫ばれている人間らしい人口知能とは何?を人口知能が自ら考え初めているのがユニークな点だ。その顛末であたふたする人口知能の機械部品のパーツを面白く描いているのだが、機械部品のパーツは常に議論しているのが興味深く、この作品のテーマは、決して人口知能は否定するものではなく、まだまだ議論の余地がありそうなので、使用するのはそれからでも良いではないか?と観客に投げかけているようだ。ただ観客に投げかけているのに対して、演出家の提案は無いに等しい終わり方だったのが残念ところだ。
しかし内容もそのように持って行っているので、正しい終わり方かもしれないが・・・・。
満足度★★★★★
ネタばれ
ネタばれを読んでも大して問題ないと思いますが・・・?
ネタバレBOX
マームとジプシーの【あ、ストレンジャー】を観劇。
とんでもない傑作に出逢ってしまった?というのが観劇後の感想である。
何時も通りの激しく動き続ける俳優人、同じ場面を視点を変えて、執拗に描いていく反復の技法、そしてある事が起きてしまった原因を前後何時間の時間軸で描いていく手法は健在だ。
何時もなら前半にある事が起きてから、その原因追究の様な形で、観客に上記の様な方法論で見せて行くのだが、今作は事そのものがラストに起き、それまでは、土曜日・午後二時の何気ない日常をただ反復しながら描いていくだけに終始していく。
そして通常ならこれから何が起こるのだろうか?と観客は期待と不安を感じるのだが、その反復の描き方が昔感じた懐かしい風景の羅列の様に捉えてしまうので、だんだん反復に見えてこない辺りが妙な処だ。そして最後にとんでもない事が起きてしまうので、全てそれが伏線だったのか?とも思ってしまう。それが果たして伏線なのかは観客の考え方次第なのだが、そこをどのように観客自身で捉えるか?でこの芝居の面白さが変わってくる。
観客が今作を観ながら、どれだけ自分自身が能動的になっているか?否か?で、今作の楽しみ方が変わってくるという仕掛けになっている。でも果たしてこの様に演出家が仕掛けているのかは甚だ疑問ではあるが、毎回この様に感じてしまうのが、マームとジプシーの人気と面白さだろう。そしてかなりレベルの高い演劇だ。
今作を観て退屈、理解出来ないという感想を持った人は、現代の若手演劇人がやろうとしている新しい表現を理解するのは永遠に来ないだろう。
今作は必見。
満足度★★★★
ネタばれなし
何時の時代も世代を超えて変わらないのは男女の性の問題だ!と言わんばかりに性というものを、丁寧かつ赤裸々に描いていくこの劇団のテーマは初見ながらあっぱれだ。
このテーマを終始追いかけて行くのかは分からないが、更にもっと踏み込んでいって欲しいと願うのは観客の性の興味に対するスケベ心である。
さぁ、次回作はどう出るか?そして私はこの劇団を見続けるのか?
その答えが出せる次回作には期待をしよう!
満足度★★
チラシのデザインは熱いねぇ
ネタばれ
ネタバレBOX
劇団・20歳の国の【花園】を観劇。
ラグビーの青春物語。
篠原涼子【恋しさとせつなさと心強さと】を流しながら、狭い劇場に所狭しと15人の選手の激しいラグビーシーンから始まっていく。これは蜷川演劇に負けず劣らずのオ―プニングだなと期待値高しと見ていたのだが・・・・。
そのラグビーシーンの後に、各選手の物語がエピソード事に進んで行く。それは進学、恋愛、精神の悩みと誰もが青春時代に陥る物語を描いていき、最後の試合へと話は進んでいく。そしてそのエピソードが試合のシーンに絡んでいくと思いきや、それを生かさず、オープニングと同じような激しいラグビーシーンをただ描いていくだけで終わってしまう。あまりにも腑に落ちない描き方に疑問の渦が巻いてしまう。エピソードと最後の試合を絡めるのが紋切り方の描き方であり、観客はそこにクライマックスとして期待しているのである。そしてそこに仕向ける様に描いているし、エピソードを丹念に描いているのに何故?と消化不良まま終わってしまった。
全く演出意図が不明の演劇であった。『これが狙いです』何て言ったら喝!だな。狙いも観客に伝わらなければ駄目だしな。俳優さんの熱量が多かっただけに残念。
今作は、大いなる失敗作である。
満足度★★★★★
ネタばれではないが・・・
兎に角、杉山圭一にはブラボーだな!
ネタバレBOX
北区アクトステージ(北区つかこうへい劇団)の【熱海殺人事件・モンテカルロイリュージョン】を観劇。
様々な熱海殺人事件のバージョンがある中、これが一番の傑作を言われている作品であり、俳優・阿部寛さんのモンテとも言われている作品でもある。僕もかなりのバージョンを観たが、やはりモンテカルロイリュージョンが一番の傑作だ。
警視庁・部長刑事・木村伝平衛が、愛人・水野刑事と山形から着任してきたばかりの速水刑事と共に、山口アイ子殺人事件の容疑者・大山金太郎を一流の殺人犯に塗り替えていくというのが原型の物語である。その大山金太郎を一流犯に仕立てて行く物語と並行して、木村伝平衛がバイセクシャルで、オリンピック代表の棒高跳びの選手時代に起こした殺人事件の真相と迫りくる時効時間、その木村伝平衛に殺された兄の復讐を誓って近づいてきた速水刑事、愛人・水野刑事との愛欲の日々、オリンピック選手の補欠だった大山金太郎と山口アイ子の長崎県・五島での恋愛関係が複雑に絡みあって、言葉の連射攻撃、派手な音響、マイクパフォーマンスと踊りで一瞬の隙も許さず進行していく。
物語を詳細に説明していくと膨大になってしまうので割愛するが、大山金太郎を一流犯に仕立てるという物語を背景に、オリンピック選手の光と影、都会と地方の貧困の差、人間の残酷性などが本作のテーマになっている。
物語を綿密な二重構造で展開していくので、演劇初心者は、物語を追っていくだけで精一杯かもしれないが、観て行くうちに誰もがすんなりこの世界に入り込ませてくれる楽しさが熱海シリーズの面白さであり、その中に一旦入ってしまった観客は、誰もが持っている己の愛と残酷性を認識し、実感し、体感しながらも、震えながら涙してしまうのだ。そしてつかこうへい演劇に熱狂して、他作も観てしまう?という処に落とし込まれるのである。
兎に角、口立てで作られた戯曲の完成度は高く、この戯曲は阿部寛さんとの共作?とも思えるほど、誰もが阿部寛さんの幻影が見えてしまうほどの舞台だ。だが、今作の杉山圭一も負けずとおとらず、己自身の木村伝平衛を演じていたのは立派だ。杉山圭一にはブラボーと言いたいくらいだ!
誰もが一度は見なければいけない舞台であり、読まなければいけない戯曲でもある。
満足度★★★
初見
ネタばれあり
ネタバレBOX
ぬいぐるみハンターの【ゴリラと最終バス】を観劇。
小学生の茜の履いていたパンツが盗まれた事から始まり、その茜の家族、その学校の生徒達、生徒の家族、隣人、ゴリラ、アパートの大家など生活圏内での付き合いのあるコミュニティー同士が、宇宙行きロケットを皆で追っかけるハメになるというハチャメチャな物語。
皆でロケットを追いかけるハメになるコンセプトは非常に面白いのだが、そこに行きつくまでの登場人物の物語に必然性が感じられず、唯の偶然性に落としているのが退屈な点だ。勿論、ロケットに乗っていた人物を家族が助けるのは当たり前なのだが、それ以外の人物達が何故追っかけるのか?という点が疑問だ。人助けと言ってしまえばそれまでだが、物語上では観客は納得出来ないのである。特に各人物を丁寧に描いているだけに、それなりの伏線を張っていけば更に面白くなっていたと思う。ただその点を除けば、人物を描く丁寧さ、皆でロケットを追っかける派手なスピーディーな展開は舞台としては目を見張るものがある。
これは明らかに初期の戯曲の展開のミスと言うしかない。
物語を重要視している劇団の様だし、それが惜しまれる作品でもあった。
見応えあり
【俺とあがさと彬と酒と】を観劇。
関東の劇団・DULL-COLORED POPと関西の劇団・悪い芝居の二本立て。それも同じ女優を使っての芝居。ほぼセットはなく、芝居、台詞のみで進行していき、片方が精神性の世界を描き、もう片方はマクベス夫妻を描いている。まだ若手の部類に入ると思われる劇団だが、内容が濃く、こんなに重い芝居を作れるなんてかなりの驚きだ。各一時間の芝居だが、見ごたえあり。
最近の若手の演劇界の潮流は、踊り、音楽、口語演劇が主流のように思われがちだが、先ずは戯曲ありの演劇本来の形に戻っているのだろうか?
そんな事を考えさせられる二本立てであった。
満足度★★★★
美しいに限る!
クリスマス・イブに観るからこそ、感動もひとしお。
このような物語こそ、日々の日常には必要だな。
満足度★★★★
ややネタばれかも?
ネタばれ
ネタバレBOX
劇団・座敷童子の【泳ぐ機関車】を観劇。
今年の紀伊国屋演劇賞を受賞。
炭鉱三部作の最終話。
炭鉱主である父とその家族、そして従業員達の物語。
それを息子の視点を通して描いていく。
一代で炭鉱主として成功した父親は、世間では炭鉱の神様と言われている。
それは金持ちになっても、決して奢らず、従業員を家族の様に扱っているからだ。
そんな神様と崇められている父親も、落盤事故による社員の多数の事故死、新しいエネルギー開発による波に追い詰められていく。
そして手の平を返すように従業員達が豹変して、父親は苦悩の末、自殺してしまう。
そして炭鉱も閉山に追い込まれ、残された家族はバラバラになっていき、そのボタ山を去っていく。
所謂、良くある炭鉱の話で目新しくないのだが、何故この事を題材に取り上げるのか?
3.11の震災による東電の企業責任、対応、それ以外も含めて企業のあり方が一番問われている今だからこそ
描く価値があったのだろう。題材はあくまでも昔の炭鉱の出来事ではあるが、描かれているテーマこそが、
失われつつある温かい人間社会をテーマしている処だ。特に物語上の父親が、社員を失った時の対応こそが、
本来一番大切な社会倫理であるべきだ!という事を明確に訴えている。物語上では父親は自殺をしてしまうのだが、
父親は事故を真摯に受け止め、行動している辺りが確実にものがっている。
一応、息子の視点を通して描いているだが、それが殆んど意味を成さないぐらい作家のメッセージ性が溢れた意欲作だ。
劇場の場所が錦糸町の倉庫、そして今ではなかなかお目にかかれない派手なセット。
誰が観ても感動するストレートな物語と、演劇の異空間を体感するには持って来いの芝居だ。
満足度★★★★
気田睦に注目だね
ネタばれ
ネタバレBOX
ノゾエ征爾が原作のみ参加で、複数の演出家による【マイサンシャイン】を観劇。
今作は小池博史(パパタラフマラ)と三浦祐介のふたりが演出。
小池博史の芝居は、ダンスを交えての芝居なので、全く理解出来ずに撃沈。
もうひとりの三浦祐介が台詞劇と演劇表現の上手さに圧倒される。
舞台セットが中央にあり、観客は前席、後席に分かれて座り、セットを前後に囲むように観る設計になっている。
何故か?穴の空いていた壁を潜ろうとして引っ掛かってしまっている女性。
壁を境に体の上半身と下半身で分かれている状態。片方の観客は上半身のみ、もう片方の観客は下半身のみしか見えないようになっている。その下半身側に男性が通りかかり、助けようと試みるのだが、それが上手くいかず、
そこから男性と女性の会話が始まる。何故、空いた穴を超えようとしたのか?穴の向こう側はどうなっているのか?お腹は好かないか?などの話題から互いの個々の話に及んでくる。
そして観客は、これはベルリンの壁の穴を潜ろうとして引っ掛かったに違いないな?と思い始める。
そして今度は上半身側に若い女性が表れて、食事の差し入れに冷麺を持ってくるのである。
ここで初めて北朝鮮、韓国の国境と分かってくるのである。彼女は穴の反対側の人達と会話をしてみて、引っ掛かった穴に戻るのではなく、突き進んで行く決心をするのである。それに男性も後に続いて行く~で終わるのである。
彼女はどちらから来て、どちらに行ったかは明確にはしてないが、隣国同士の無駄な争い、国境に線を引く無意味さを説いている事がはっきりと分かってくるラストでもあった。
注目していた唐組の気田隆があっての今回の芝居、売れてほしい役者だよなぁ!
満足度★★
次回作に期待かな?
早稲田演劇研究会、通称・劇研の企画公演【キ麗ナ破壊ショウ動】を観劇。
以前に在籍していた劇団・犬と串がプロになった為に、主だった劇団は存在していなく、今は新しく劇団を立ちあげてる最中?のようだ。
今作は世の中に不満がある少女が、自らの空想の世界に入り込んでしまい、そこを如何に抜け出すか?という物語。
大人が既に忘れてしまっている子供心を思い出せる瞬間に出合える芝居かも?と思いきや、そこまでもいかず、唯の子供の幼稚さを描いているだけのようだ。ただ演出家が描こうとしているテーマは少しだけだが見えるので、そこはまぁ良い。単に戯曲と演劇的表現が上手くないという感じ。それは根本的な問題なのでもあるのだが。
少女が「私は世界を拒絶する!」という台詞には痺れた。その一言があるだけでも、今作を観た価値はあったようだ。
ただ学生演劇とはいえ、劇研なのでもう少しどうにかしてほしいのだが・・・。
満足度★★★★
相変わらずレベル高い劇団。
ちょっとネタばれ
ネタバレBOX
キャラメルボックスの【キャロリング】を観劇。
言わずと知れた老舗の劇団。何度見ても外れなしのレベルの高い劇団。涙、笑い、感動、そして最も演劇らしい芝居を観たい方にはお勧め。
経営悪化の為に、クリスマスに会社をたたむ社員達の話。
その会社では児童を預かっていて、その児童の両親が離婚して、父親に会う事が出来ない為に、女性社員が母親に内緒でこっそりと児童を父親に合わせてあげるのだが、その事でとんでもない事件に巻き込まれてしまう・・・・。
簡単なあらすじはこのような感じで、起承転結に富んだ、誰が観ても分かりやすいドラマ展開で安心して見ていられる。
今作の面白い処は、主要な登場人物の殆んどの女性が自立していて、多大な借金を背負っている点だ。それは景気悪化の為に、父や夫が失業し、自堕落な生活の為に、借金を重ねた事が原因だ。現代の父権制度の崩壊を裏のテーマとして描いていて、その負の連鎖が原因で、とんでもない事件が起きてしまうのだ。ただ今作の見どころは、その事件が起きた原因は何か?という事を声高に描いてない事だ。あくまでもその事件によって登場人物達はどのような行動を取るか?という展開で、笑いや涙を誘っていく。あくまでも裏テーマを気が付くか?付かないか?は観客の視点次第だ。
もう流石としか言いようのない戯曲である。
演劇の本当の楽しみ方は、観客自身である!と作・演出の成井豊のメッセージを感じる。
満足度★★★★★
多少ネタばれだが
ネタばれが不可能な処が城山羊の会の面白さ。
ネタバレBOX
城山羊の会【あの山の稜線が崩れてゆく】を観劇。
タイトルとチラシのデザインからは、全く内容を想像出来ないのは毎度の事。
今作は家族の話。
父、母、娘のある平和な家庭に、ある日突然、娘の本当の父親が刑務所から出所してきて、娘と妻を連れ去ってしまう話。そして残された父親は・・・・?
話の筋を文章にしてしまうと妙に現実感溢れる芝居と感じてしまいそうなのだが、そのような訳ではないのが、この劇団の面白いところである。現代口語演劇の発展した形と言えば良いのか?平田オリザとはやや異なる演劇であるのは間違いない。
今作の家族内でのいざこざ、父親の苦悩を、社会的道徳で生きていく人達の、本音と建前を混ぜ合わせていく会話劇のサジ加減が絶妙で、そこに笑いを取っていく手法が、違う形の現代口語演劇の応用とも思える。ただ決して笑いを取ろうと作っているのではなく、真面目に生きている人達の姿に感動して、つい笑ってしまうのである。
兎に角、この劇団の面白さは、一度観るしかないと思われる。どうも文章で面白さを伝えるのが困難のようである。その理由は現代口語演劇だからともいえるのだが・・・・。
今作で4本目の観劇だが、全て大当たりの劇団。
かなりお勧め。
平田オリザ・・・青年団を主催している作・演出家で、現代口語演劇を提唱している。
満足度★★★★★
完全ネタばれ
大傑作!
ネタバレBOX
2006年の再演芝居。
今作は若者の虚無感を描いている。それもあえて無言劇で(R-18の芝居)。
幕が開くと、観客はベランダの外から芝居を観るという舞台装置になっている。ポツドールの18番・他人の世界の覗き見しているような錯覚を起こさせて、観客に一切感情移入させない演出方だ(セミドキュメントとも言われている)
舞台設定は、アパートの1Kで、8人の男女が共同生活している。ベランダの前は大通りの為か、車の騒音でうるさい。その部屋では、ガングロ女性、刺青男、茶髪、オタク、やくざなどの世間で言う処の全く駄目な若者達が住んでいる。そして室内は、腐敗する程のゾッとするようなゴミ為である。兎に角、汚い部屋なのである。若者たちは、各自で勝手にテレビゲームに興じている物、漫画だけを読んでいる物、セックスをしている物、オナニーをしている物、寝ている物、ある時は互いに殺し合いに近い暴力を振い合ったりと、他人の行っている事には全く無関心で、人間の同士の付き合いが全くないのである。ある意味、人間のゴミ為の世界と言うべきだろうか?それが行われているアパートの風景なのである。そんな中で、男女が入れ乱れたセックスシーンは圧倒的で、俳優は下半身を丸出しで演じているから驚いてしまう(但し、下半身の秘部はなるべく見せないように気を使っていた)。その部屋で行われている若者の生態を、時間経過と共に、ただ見せて行くだけで、物語は全くないのである。これこそがポツドールの他人の生活を覗き見している、セミドキュメンタリーの様な芝居なのである。
しかしそんな若者の生活風景を観ていて、ある時観客はふっと気が付くのである。それは朝になると若者たちは起きて、外に出て行き、夕方には帰ってきて、夜には夕食の用意を共同でして、その後は、セックスに興じて、深夜になったら眠るのある。まさしく人間らしい規則正しい生活を毎日行っているのである。若者の無関心、無気力を描いているように見せて行きながら、人間は生きる上での行う大切な営みには決して逆らえないと言う事を明確に感じさせてくれる瞬間でもあるのだ。今作は若者の虚無感を描くという事をテーマにしておきながら、人間が生きるとは?という根本的な事に言及しているのである。それは若者でなくとも、上記の生活の様な事は、誰もが毎日していると観客自身が気がついていくのである。そこに気が付くかどうかは、観客の鑑賞能力の高さが問われる処だろう。それが分からなければ、観客失格である。この芝居を観る意味はないのである。そうでない観客は、今の若者は駄目ね?という簡単な感想で、劇場を後にしてしまうのである。
まさしく作・演出の三浦大輔の観客に問いかけの芝居でなのである。
もう絶対観る事が出来ないと思われるポツドールの代表作であり、大傑作の芝居である。
必見!
満足度★★★★
箱庭?
劇団・箱庭円舞曲の【否定されたくてする質問】を観劇。
世間での評判がなかなか良い劇団。今回が初見である。
有名ではない漫画家達のアトリエでの物語。アトリエと言っても3LDKのマンションのリビングのみで展開する物語。そこでは描けない漫画家、打ち切り直前の漫画家、アシスタント、そこに出入りする編集者など、漫画界の切実な世界を描いている。それは現実な労働時間、ギャラ、創作的苦悩なども絡めて描いている。
決して変わった演出法をする事もなく、正攻法で見せている為か、何とも言えない生々しさを感じさせてくれる。役者の芝居もリアル感たっぷりという訳でもないのだが、映像では決して感じない、舞台の観劇の際に時として感じる、俳優が嘘を大げさに演じるという嫌悪感が、内容を切実に感じさせくれるのである。決して狙いで作っているとは思えないが、この劇団の特徴ではあるようだ。
好きなタイプの芝居ではないのだが、見応えはある演劇と言えるのは間違いなし。
劇団名が箱庭円舞曲という名前だから、毎回限られた空間(箱庭)のみの設定で作っているのだろうか?そこがやけに気になるのだが・・・・。