YUBOの観てきた!クチコミ一覧

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四番倉庫

四番倉庫

青年団リンク 二騎の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/06/04 (土) ~ 2011/06/15 (水)公演終了

満足度★★★★

負のレンサ…
『面倒くさい』『居場所がない』『妥協』『最悪』『寂しい』『打算』『場当たり的』『諦め』『沈黙』『無気力』『焦燥感』『孤独』『息苦しい』『不安』『死』
ネガティブな感情が渦巻く劇空間。でも、生きてるとこういう感情でどうしようもなくなることの積み重ねだよなって思う。元気もらうタイプの芝居じゃないけど、でも、共感する事で救われる思いもあるなと思いました。

どこへも行けない、負の連鎖は男特有のものなのだろうか?『あなたが生きているそれだけで素晴らしい』みたいな人生賛歌は、聞こえる人にしか届かないんだなって思う。でも、この芝居見て登場人物に共感したり心動かされて、生きる活力の得られる自分は幸せだと思う。それは見下して嘲笑する優越感ではなく、明日は我が身だと思う束の間の喜びだと思う。

ネタバレBOX

自堕落で場当たり的な、自分勝手な内田。
人生に面白みなんてないけどそれも悪くないと達観しているようで諦めてる磯崎。
日雇い仕事でホームレスで自分はどん底にいると諦めきってる速水。
そして、その3人が顔を合わせている倉庫に訪れる女、あやめ。あやめは自分の兄が、何もない殺風景な倉庫で一人で何をしていたんでしょうと3人に問いかける。そこに浮かび上がる、あやめの兄の絶望的な孤独。あやめの兄を含めて、男4人の気が狂いそうに退屈な日々を想像すると切なくなる。誰のせいでもない、社会のせい…とも言い切れない。時と場合とタイミングで、誰しもこうなる可能性があるんじゃないだろうか、だからこんなに切ないんだと思う。

沈黙や話の堂々巡りがイライラする前半、でも物語の終盤になってそれが効果的に作用しているなぁと思いました。
それゆけ安全マン!?~レントゲン・チェルノブイリ・フクシマ~

それゆけ安全マン!?~レントゲン・チェルノブイリ・フクシマ~

非戦を選ぶ演劇人の会

笹塚ファクトリー(東京都)

2011/06/03 (金) ~ 2011/06/03 (金)公演終了

満足度★★★★★

今、観るということ
日本の原子力政策の流れから、3.11を経て現在までの情勢を、しっかり調べてるな、という内容のギュッとつまった朗読劇でした。政府やテレビの言う事が信用出来なくても、今はネットでツイッターやユーストリームで自分の目で真偽を問える時代ですが。でも、不勉強ながら知らない事も劇中にたくさん出て来て勉強になりました。どうしてこんなに、原発で被爆した人や、被災地にいる人、識者の発言など、情報を調べ抜いて、当事者意識に立った作品に出来るのかなって感心してしまいます。

8月の公演も、テーマは原発じゃないかもですが、是非見たいです。

ネタバレBOX

我々は「命か経済か」の極端な2択では生きられないけれど、有事を生きてるんだって自覚を持って、世間的ではなく、社会的に「自分が何を出来るか」考えなきゃいけないと思いました。
劇の冒頭、広瀬隆の本を読んでて危機感を持った高校演劇部副部長が周囲の友人に、今の有事の深刻さを伝えたときの反応が本当にリアルだと思いました。「そんなに深刻なことなの?」「難しいことはよくわからない」。そういう反応が、本当に多かったなと思います。もしかしたら、今もかもしれませんが。でも、「原子力政策を転換していかないともっと多くの人が被害に合う」事について考えないといけないなと思いました。
物語終盤の、「調べていくと、環境エネルギーへの転換で希望ある社会は実現出来る」という前向きなメッセージは勇気づけられました。

やっぱり今も漏れ続ける放射性物質は怖いから、変な目で見られても、僕は今日もマスクをして出掛けようと思います。
IN HER TWENTIES

IN HER TWENTIES

TOKYO PLAYERS COLLECTION

王子小劇場(東京都)

2011/05/31 (火) ~ 2011/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

ずっと見てたいくらい
一人の20代の女性の10年間の機微を、過剰に力んでみせることなく、淡く愛しく表現する、居心地の良い空間でした。そうか、上野さんの作品はこの絶妙な感じが評価されてるんだなって確認出来て良かったです。
そうだよなーと思える共感があちこちに詰まっていて、物語の中に自分が溶け込んでいると、良いなと思うセリフが自然に出てくる。個性豊かな女優さんが揃い、巧みな演出で、普遍的な物語をここまで素敵に出来るのかと驚きました。

ネタバレBOX

10人一役という大胆な構成で、20~29才のそれぞれの年齢代表が登場する。20才と29才はインタビューを受けていて、他の年の自分達はそれを見ている。自分同士が会話してるのが見てて楽しい。それぞれの年齢の時の思い出が交錯する時に、まるで会話してる様に見える演出にはシビレた~、たまらない。物語の終盤、昔の携帯メールを見返すシーンで次々に思い出の詰まった言葉が飛び出すのに圧倒されました。
ホッパー

ホッパー

劇団森キリン

アトリエ春風舎(東京都)

2011/05/26 (木) ~ 2011/05/29 (日)公演終了

満足度★★

うぅ…
実験的な舞台だなって思いました。その試みはとても面白いと思いました。物語を疑い、時間を疑い、役者を疑い、観客には浮かんでは消える断片を提示する。でも、物語が見たくて、起承転結が理解しやすいお芝居を見たい人には向かない作品だと思います。

『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

『十二人の怒れる男』/『裁きの日』

劇団チョコレートケーキ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/05/25 (水) ~ 2011/06/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

わからなきゃいけない(裁きの日)
息づかいを感じれるほど役者さんと近くて、緊迫と臨場感を与えてくれる狭さならではの魅力。物理的な狭さもあるし、演出の見せ方もあるし。この空間が魅力的、そんな中で繰り広げられる濃密な法廷劇でした。そこには人が人を裁く事への葛藤があり、社会情勢で起こっている現実の重みがあって、賛否とか善悪ではなく、社会と自分の在り方でもがく人間性がじわじわ出るなって思いました。説明台詞的に感じる部分もありましたが、事実をきちんと調べて書いてるんだろうなって好感が持てますし、今一度『裁判員裁判制度』を見つめ直して受け止める必要があるなと感じる意欲作でした。スッと胸に落ちるセリフもたくさんあって、たくさんの人に見てもらいたいなと思いました。

ネタバレBOX

僕は舞台奥手側の席に座っていたので、劇中ほとんど顔が見えなかった役者さんもいましたが、あまり気になりませんでした。座ってるシーンがほとんどなので、この作品を演劇でやる必要性を気にされる人もいるかなって思いますが、僕はこの作品は演劇だからこそ魅力的だなって思いました。空間で魅せる、そして情勢に即した、今の時代を切り取る演劇。是非、再演を重ねて、更なる深化を遂げて欲しい作品です。

作品中、登場人物が「わからない」って言っていて、その通りですが、「わからなくても判断しなきゃいけない」この制度、どうしたらいいんだろう。難しい。やっぱ、わからないなぁ〜って思いました。
メガネ夫妻のイスタンブール旅行記

メガネ夫妻のイスタンブール旅行記

城山羊の会

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/05/21 (土) ~ 2011/05/31 (火)公演終了

満足度★★★★

メガネまつりっっ
一組の静かに話をする夫婦の会話を聞いていた筈が、気がつくと、不条理な笑いの中にいた。めまぐるしく動く展開、こう終わるかというラスト。でも後味は悪くなかったです。色々頭の中で想像を膨らませました。

ネタバレBOX

長年大事に飼っていた猫が弱って死んでいくのを見かねて、自ら食事に薬を混ぜて看取ることにした夫婦。でも奥さんは猫の死に耐えられず、とっさに隣の夫婦が殺したと嘘をつく。ついた筈の嘘を何故か夫は信じ、隣人や大家をも巻き込んで、いつしか嘘は転がり続け、冒頭とは違う事実が浮かび上がり、隣人は自ら猫を殺したのは我々だと言い始める。中盤に明らかになる猫を飼っていた夫婦のお互いの不貞行為。隣人の旦那の死。虚実の境目がぼんやりとしてくる。

物語のラスト、猫を飼っていた夫婦はお互いの不貞を理解しながら、32年生き続けた猫の墓を求めてイスタンブールへの旅行を計画する。何が真実かは関係なくて、夫婦をつなぎとめる信じたい事実が大事だと言わんばかりに、夫婦は淡々と会話し続けて終わる。
平田オリザ・演劇展vol.1

平田オリザ・演劇展vol.1

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/04/28 (木) ~ 2011/05/17 (火)公演終了

満足度★★★★★

7つで断念…
雰囲気の違う作品を一度に味わえる素敵な演劇展でした。舌切り雀のフランス語版以外は見る事が出来て大満足です。

4/29(金)『さようなら』
心は人間だけのものか?アンドロイド初体験。人間に仕えるロボットって手塚治虫のマンガのイメージだけど(…古い)見た目が本当に人みたい。アンドロイドを介して聞く詩(声)は純粋に濾過された、決して機械的でない不思議な感じ。

4/29(金)『ヤルタ会談』みんな人間だもの馬鹿馬鹿しくて、風刺的で、大笑い。でも、周りの観客が笑ってるのに僕は所々理解出来なくて残念。学生時代に歴史の授業、寝てなければな〜。

4/29(金)『走りながら眠れ』
その空間が夫婦の生きざまのように。大杉栄について全く知識はないけれど、ただただ平和な日常風景。その会話が明るく楽しい程、弾圧や虐殺の影が見えてくるように思えます。

5/8(日)『舌切り雀日本語版』
演劇は国境を越えるんだなぁ。同じ回に見に来ていた子供が一つ一つの呼び掛けに素直に反応するのが面白くて、小さい頃から楽しい演劇に触れる機会って大事だなぁと思いました。舌切り雀ってこんな話だったっけ、知ったかぶりでオチとか忘れてたけどこんなだったのか。

5/10(火)『ヤルタ会談英語版』
日本語よりも乾いた印象。会場の笑いも日本語版より少なかった気がする。日本語独特の曖昧な言い回しは、英語では出ないんだなぁ。

5/14(土)『銀河鉄道の夜』
一人で佇んでいても孤独じゃない感じ、物語が自分自身に共生していく感じ、本作品は原作の魅力をより高めていると思います。受付でもらった、上演にあたっての文章に『このリーディング公演を被災地でも上演できないか可能性を探ってる』とあって、実現すると良いなと思いました。きっと勇気づけられると思います。

5/14(土)『マッチ売りの少女たち』
忘れても知らなくてもそこにあるもの。物語を解釈しようとしてもしても、登場人物の夫婦と同様に困惑してしまう。僕は終盤でようやく肩の力が抜けて、不条理な笑いを楽しめた様に思います。「戦後の荒廃」について僕らは知らなかったとか、忘れたとか、見てみない事には出来ないんだなぁ。そこに確かに在ったのだから。

あしたはどっちだ

あしたはどっちだ

渡辺源四郎商店

ザ・スズナリ(東京都)

2011/05/04 (水) ~ 2011/05/08 (日)公演終了

満足度★★★★

生を実感っっ
テレビのニュース見てて。加害者も被害者も事件を振り返って口を揃えて後悔するのを見る度に『馬鹿だなぁ、もっと早い段階でやり直しきくだろう。僕ならあーするな。』って思うのは俯瞰で見れる観客だからで、日常で自分を省みたら馬鹿な事ばかりだし、自暴自棄な事ばかりだ。

今作品の主題の死刑は、殺人犯とはいえ、人を殺す刑である訳で。
ゼロか100かで考えてしまう危険性はとても大きい。人が人を裁く事で社会がなりたってるなら、息苦しいから逃げ出したい。人を殺したり、自殺するよりは、逃げ出してしまおうって考え人を許容してくれる世の中であったら、もっと楽になれるのになぁ。そんな事を考えさせられました。何が正しいとか、誰が正しいってわかんないです。

観劇後に、「被害者と加害者の両面の心理が観れて面白かったなぁ」と感じたと同時に、「あー、やっぱり生きていたいなぁ」と思ったし、だからこそ日常の息苦しさと上手く付き合わないとダメだよなと思わせる作品でした。生きるって難しいっっ。

ネタバレBOX

結末よりも、最後に明かされる獄中結婚を繰り返す女の歪んだ愛が興味深かったです。作品内に登場する、死刑執行委員制度は極論で『殺人事件の被害者が加害者を殺したいを実現したらどうなるか』への是非を突きつける。テーマも重いし、客席も年配の方が多いのが印象的でした。「目には目を」の発想で、加害者を殺したい気持ちもわかるし、でも端から見ると、殺しても多分家族を亡くした喪失感は癒えないだろうなと感じさせる場面もありました。事件を起こした人が更正する可能性は低いと思うけど、人生のどこかでつまづいた人が、やり直しのきく世の中でなきゃ、生きやすい世の中とはいえないと思うから、個人的には観劇後に死刑はよくないと思いました。でも1観客としては、最後金属バットを振りかぶり佇むシングルマザーの蒔苗さんが、舞台が暗転後に犯人の頭上に降り下ろした光景を想像してスカッとしたことも事実です。やっぱゼロか100かでは言えないですね。
ひとがた流し

ひとがた流し

ブルーノプロデュース

タイニイアリス(東京都)

2011/04/22 (金) ~ 2011/04/25 (月)公演終了

満足度★★★★

演劇と小説のカベ
敢えて原作の言葉を削らずにそのまま生かす表現を選択し、小説から演劇へと表現を昇華させた演出家と、長編小説の膨大な台詞を飲み込んで体現した役者達には敬意で頭が下がります。そして何より、小説をそのまま演劇にしても耐えうる原作の言葉の力強さにも驚かされました。演出・役者・原作の三位一体の魅力 で3時間を超える上演時間は決して長くありませんでした。

小説と演劇の違いは山ほどありますが、表現形態として文字のみで読者の心を動かすための推敲の結果が原作であります。完成された一つの表現である原作を解体して、解釈を加えて、再構築する。その際に、原作の文章をそのままさらえば、当然小説と演劇の壁が生じて冗長になりかねません。しかしどうでしょう、 この観劇後に感じた独特な魅力の数々は。四季の移り変わりや、風景の描写をも台詞で伝える事はまるで詩の朗読を楽しむ風情があります。非口語的な、要所で感情や心情の吐露までも台詞で伝える言葉の数々は洗練されておりまるでシェークスピア劇を見ている趣きがあります。そして演劇には光があり、音があり、言語化出来な い機微を表わす声や動きがあります。見事に小説と演劇の壁を乗り越えて新しい世界に降り立った作品だなと感じました。

日常の連続が人生であるという自明の事実を淡々と、しかし観客の共感をつかんで放さない、思い出で紡がれた物語でした。若手の役者が多く登場人物の年齢と見た目の乖離はありますが、思い出や記憶の風景を重ねて見せる作品だからこそ、むしろ自然に見えました。古くからの友人との間ではすんなり時間の流れが 昔に戻るように、そして死後も近しい人達の記憶に生きているように。

過去に他の劇団公演で見た事のある役者さんもチラホラいて、新しい魅力を発見出来たのも収穫です。

ネタバレBOX

劇中の台詞、「のんきな人ね、生きていたくなるわ」が忘れられません。非日常的だけど、こんな台詞言ってみたいなって言葉に溢れており、幸せな観劇空間でした。
右手にテニスボール 4月15日(金)19:30開演*当日券若干枚数あり!

右手にテニスボール 4月15日(金)19:30開演*当日券若干枚数あり!

田上パル

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/04/15 (金) ~ 2011/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★

ぜつみょーなレキシ
まさにグータンヌーボ、独特な設定に、間と空気が合わさって、クスクス笑いっぱなし。この空気、たまらない。この空間中にいるのは居心地悪いよなぁっていうシチュエーション。脚本も演出も文句無し。

アンダー・ザ・ロウズ

アンダー・ザ・ロウズ

虚構の劇団

座・高円寺1(東京都)

2011/04/08 (金) ~ 2011/04/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

物語の力っっ
初虚構の劇団・初座高円寺。笑って泣けて、素直に面白かったです。きちんと各役者さんに見せ場があって、起承転結もしっかりして、物語自体はわかりやすい。でも、登場人物の葛藤やメッセージが胸に響く。登場人物や出演されてる役者さんとおそらく同世代の自分には、まるで自分の事を描かれてるような共感がありましたが、僕より上や下の世代の方はどんな風に見たのだろうと気になります。
青臭いと思われるのか、空想的で現実離れしてると思われるのか。世代を超えて共感できるのかなって思いました。

ネタバレBOX

パラレルワールドなんて手垢のついた設定で大丈夫かな、、、って思って序盤は見てました。でもすっかり「空振同盟」の世界に強く心惹かれる自分がいました。

自分の孤独を認めて、自分自身で生き直しを図る。それはまるで、学生運動の時代のような暴力的な変革だけど、とても理想的な「空気と世間」への対処方法に見える。大事な事は、今いる共同体での自分の立ち位置や宗教や政治ではなくて、自分自身なんですよと突き付けられてるように感じる。宗教には神と教典があって、政治には理想的な事を口にする政治家がいて、そこに盲目的に身を委ねれば自分は何も変わらなくても救われるような錯覚を覚える。でも、動かないと何も変わらないんですよ、と突きつけられる。

実際は、一之瀬に背中を押された者の生き直しはうまくはいかないし、世間の風に一蹴されて「空振同盟」は崩壊していくようにみえるけれど、正しさや道徳的な価値感にそぐわないものは、とことん叩いてかまわないんだって風潮は息苦しいよなって思う。もがいて、もがいて、でもパラレルワールドから戻ってきた一之瀬のように、舞台を見終わった観客のように、現実に戻った自分達は現実的な形で自己実現していくしかない訳で。

でもそうは言っても「この息苦しさを感じてるのは自分だけじゃない」ってわかるだけでも安心です。だから僕は、生き直しを図るためにバットを持たなくてすみそうだし。観劇後、自分の背中も押してもらってげんきもらえた気がします。見れて良かったっっ!!
ピラカタ・ノート

ピラカタ・ノート

ニットキャップシアター

ザ・スズナリ(東京都)

2011/04/09 (土) ~ 2011/04/11 (月)公演終了

満足度★★★

夢中な空間
クルクルと変わり続けるシーンと、独特な舞台空間で頭が痺れて心地よい。おもちゃ箱をひっくり返したような感じ。てか、おもちゃ箱そのもの。繰り広げられる物語も夢見てるみたいに自由で、奇抜で、でも暗示的で。そうか、だから夢中っていうのか、なんてどうでもいいことを考えてみたり。

目の前の空間を楽しんだって感じで、あんまり物語にうまくダイブ出来なかった。僕は浅瀬で終わっちゃった感じです。潜っていくと、より楽しいと思います、、、悔しいなぁ。

東京の空に

東京の空に

オーストラ・マコンドー

王子小劇場(東京都)

2011/04/02 (土) ~ 2011/04/10 (日)公演終了

満足度★★

イマジンっっ
お客さんの想像力を最大限に発揮させようとしている様な空間になっているのかなと思いました。物語は、まるで行間の多い現代恋愛小説を読んでる感じでした。舞台上の空気や雰囲気を楽しんで欲しいというイメージ。その行間(空気)には、登場人物同士の葛藤や駆け引きがあるんだと思いますが、僕はうまく想像出来ませんでした。共感出来る部分もありましたが、あまり心に残りませんでした。

ネタバレBOX

映画「ドッグウィル」を想起させるような、舞台の床に白線が引かれ、間取りが描かれた空間。想像で部屋を見せる無機質な空間でした。一人暮らしの女性3名が1つのアパートの隣同士に住んでいて、3人の人との交流が描かれていました。劇中歌の『東京の空に』を効果的に聞かせるためにか、客入れの時から無音が続きます。舞台装置も音響も役者の声量も、脚本演出で簡素で想像を促す作りになっているせいか、起承転結が淡い展開が続いて集中力が切れてしまいました。

現代の若者はみんな孤独なのかなと思いました。幾つかの男女の恋の駆け引きが描かれますが、どれも共依存的で、それはとてもリアルなのかもしれないけれど、まるで人生は「春が来る(恋人がいる)」のが一番の幸福だ、と迫られてるようで、一般的な東京の空の下がこれだと寂しいなと思いました。生きるってそれだけじゃないだろうって思ってしまいました。

物語のテーマの「部屋」は、日々生活する自分の空間であって、自分自身なんだとすると、登場人物の部屋への思いはあんまり見えなかったなと思いました。登場人物のバックグラウンドもほとんど語られませんでしたが、個々の人物の葛藤や、生活が、もっと見えれば良いなと思いました。
男亡者の泣きぬるところ【当日券予約受付中!!】

男亡者の泣きぬるところ【当日券予約受付中!!】

赤星マサノリ×坂口修一

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/03/31 (木) ~ 2011/04/03 (日)公演終了

満足度★★★★

ドトーの演劇パワー
バカバカしいほど転がり続ける物語の展開と、暴れ続ける役者二人のエネルギー、この全力で汗かく感じ(特に坂口さん)、久しぶりに腹から笑いました。設定がエレベーターの中って狭くないの??って思って見てたら、二人芝居でこんなに物語の世界が広がるのか〜と嬉しい驚きです。それも、こだわって一人芝居をやり続けてきた二人だから出来る公演なんだろうなと思いました。こういう情勢の時こそ、お芝居見て元気を出すって大事だと思います。頭空っぽで笑える舞台でした。

ネタバレBOX

物語を見るというより、役者二人を見るという感じ。感情の起伏や役の演じ分けなど、ハイテンポの畳み掛けな中、丁寧に物語を魅せる役者の力で安心して楽しめました。

『同生年月日で同じ名前で、もしかしたら親は自分達を取り違えてるかもしれなくて、小さい頃からニアミスですれ違い、どちらかが幸せだとどちらかが不幸で、今は同じ女を取り合ってる。』荒唐無稽な設定は見ている観客を裏切り続けて、でも次々演じられるキャラクターがどれも個性的で笑える。二人一役がたまらず、寝たきりDJのくだりは爽快。プロレスや淡路島に人を詰め込むシーンは爆笑。

アフタートークも20分以上あって、じっくり話聞けました。トークゲストがどの回も豪華だし、もう一回見たかったけど日程が合わず残念。果たして、赤星さんのプロレスパンツは改善されるのかっっ。
母アンナの子連れ従軍記

母アンナの子連れ従軍記

サラダボール

アトリエ春風舎(東京都)

2011/03/19 (土) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★

でも、生きる
すげーポップ。学生時代から本当に歴史とかダメだったから、当時の時代背景とか全くわからないんだけど。不勉強だから、ブレヒトとか読んだ事も見た事もなかったけど。でも、楽しかったです。

ネタバレBOX

レディガガやKARAの音楽の中で描かれるのは、戦況をとにかく生き抜く母親の姿。そこには何が正しいとか間違ってるとか、意味があるとかないとかではなく、ただその日その日を生き抜く姿で。その力強さは人間の本性はやっぱり単純でいいんだなって思わせる。世俗や階級に囚われすぎず、単純に自分らしく生きる事の大事だなって。勿論、今の情勢の地震からの復興にもどうしても重ねて見てしまうけど。原作の言葉の魅力を信じながら、でもあくまで演出は現代的に、わかりやすく演出されてて飽きなかったです。
バルカン動物園

バルカン動物園

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/03/18 (金) ~ 2011/03/28 (月)公演終了

満足度★★★★★

今、見るということ
情勢が不測の大惨事で混乱する中ですが、出会えて良かったと思える心動かされる舞台でした。舞台のテーマの科学と、情勢の原発とを無理やり重ねて見てしまう自分もいましたが、生きる事の当たり前の喜びを感じさせてくれる内容だなぁと思いました。目の前で自分の人生とは別の日常がリアルに、でも淡々と描かれる、青年団の舞台では日常が何でこんなにドキドキするんだろう。そして幸運にも、劇場に足を運んで芝居を見れる自分の日常をとても喜ばしく思います。

ネタバレBOX

当たり前のように信じている進化の果てのホモサピエンスという、心を持った存在を、観劇後は何だか不確かなものに感じてしまうフワフワした気持ちです。手塚治虫の漫画の様に、100%機械でも感情を持ち、人が脳だけでも生きられるようになった時に、それでもまだ未知な世界を探求し続けるんだろうなと思うと人間ってすげーです。その歴史の大きさ、過去と未来にクラクラします。
ネズミ狩り

ネズミ狩り

劇団チャリT企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/03/03 (木) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

どっしり
チャリT体験は3回目なのですが。前2回は、割と物語があってないような内容だったので、起承転結がはっきりしててびっくりしました。でも、何か観劇後いろいろ考えてしまいます。他の方の感想読んで、なるほどな〜って、すごい共感したりしました。

ネタバレBOX

「いつあんたも加害者になるかもしれないんだよ」とか、「サカキバラです。今まで黙っててごめんなさい」とか、「知る権利や義務があるって言うけどもっと他に調べることあるだろう」とか、印象的な台詞が多くて、日本の独特な社会性を如実に表現されてるなぁと思いました。

タイトルの「ネズミ狩り」には、「足音や存在が気味が悪いネズミ」と「犯罪者」を同一視させるようなイメージで、でも実際にねずみ取りで殺した(死刑にした)後の存在を、自身の目で見るのには抵抗がある。みたいなイメージなのかなって想像してみました。

個人的な好みとしては、もう少し訴えている諸問題に踏み込んだ、深みのある物語だったら良かったな、と思います。
シングルマザーズ

シングルマザーズ

ニ兎社

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2011/02/20 (日) ~ 2011/03/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

飛び込んで大正解っっ
当日券で飛び込んだのに、幸運にも前列の方のとても良い席で見れてラッキーでした。タイトルからどストレートな内容なのに、すごくリアルな世界で時にゾクゾク緊張して、時にゲラゲラ笑える、すごく良質な演劇を体験できました。決して頭でっかちに難しく考えこまずに見れる舞台。でも観劇後には、僕らの生活は社会や政治の動きと密接につながってるんだなって思える、何だか色々考えさせられる舞台でした。本当に見れてラッキーでした。

とか書いていますが、正直に告白します。実は当初は「南へ」の当日券目当てで芸術劇場に行きました。でも、すごい当日券目当ての長蛇の列を見て諦めて。帰ろうとしたら、「シングルマザーズ」発見。あ、これ見たかったやつだって思って飛び込んだんです(公演日程が頭から抜けてました)。でも、結果的に大正解でした。

ネタバレBOX

吉田栄作さんの演じる「被害者のような加害者」なDV男が、前半ラストで「どうしてわざわざ責められに来たんですか」って問われて終わるシーンはその後の展開がどうなろのっっってゾクゾクとしたし、ラスト間際に沢口靖子さん演じるシングルマザー支援団体の女性が、離婚して養育費を払わない元夫と電話で泣きながら対決するシーンはドキドキした。寄り添うシングルマザーズも皆泣きながら応援していて、感動でした。

良いなぁと思うのは真剣な台詞の応酬が続く緊迫したシーンが多い中でも、笑える箇所も多く盛り込まれてる事。そして一人一人の役が魅力的に人間らしく生きていて、共感出来る事。ラストシーンで「もう来ない」って言って出て行った吉田栄作が再び飛び込んでくるのは、とても人間らしいなって思います。

観客の年配の女性が数人、劇中何度も役者の台詞に大きくうなずいてるのを傍から見えて、それが何かすごいなって思いました。

テーマにまっすぐ迫る物語なのに、こんなに笑って泣けるのは、作りこまれた作品だからだなって感じました。30周年を迎えた劇団を今年初観劇ですが、今後も応援したいです。
青ひげ先生の聴診器

青ひげ先生の聴診器

秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2011/03/04 (金) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★

まっすぐすぎだけど
今の医療情勢を如実に現している、心温まる人間ドラマ。もっと多くの人に見てもらいたいな、って思いが詰まってる。ただ、観劇前に懸念していた通り、観客を信頼していない舞台だなって思いました。製作者が伝えたい思いが全部台詞で説明されてしまうと、観客は何も考えないでお芝居を見に来てると思われてるのかなって不信に思ってしまいます。

演出には、個人的な好みとしてはうーーんと思ってしまいますが、テーマや内容の良さを踏まえて★をつけます。

ネタバレBOX

劇中に出てくる「エキスパートよりプロフェッショナル」という台詞が示されるように、患者さんと共に地域の医療を支える医療の実践はすごく良いなと思いました。一流の技術があっても、その技術が患者さんの思いに沿った形で日々の治療や接遇に反映されないと意味がないですもんね。医療という枠を超えて、人としてどう社会と向き合って生きるかと問いかえられてる舞台のように感じました。NHKの「笑って死ねる病院」というドキュメント番組も引用されていて、そのエピソードは本当感動です。

「医師不足」「過疎地医療」「ターミナルケア」「医療訴訟」「患者さんのたらい回し」「診療報酬の削減で日本全体の医療崩壊が起こっている事」など、伝えたい事が多いのはわかるんですが、詰め込まれすぎてて、何だか慌しい物語だなぁと思いました。もっと登場人物が葛藤して問題解決に至る過程が見たかったです。
ホテルロンドン

ホテルロンドン

国分寺大人倶楽部

王子小劇場(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★

でも、やっぱ愛だよ
会場に入った瞬間、おーって思う。きっとお客さんみんなテンション上がる舞台美術だと思う。使われる台詞がリアルで耳に馴染むせいか、役者さんが皆魅力的に見える、それは脚本演出と役者両方の力ですよね。チラシ見て抱いた観劇前の作品の印象は過激で直接的に人間の本性を描くのかなというもの。でも観劇後は、そーいうんじゃなくて良い意味でも悪い意味でもマトモだなと思いました。説明は難しいから、見に行っちゃえば良いと思いますっっ!

ネタバレBOX

舞台には3つの部屋(ベッド)。客席はそれを周りから眺めるような構図になる。これ、見る場所で全然印象変わる気がする。僕は会場入ってすぐのカスミとシゲルがよく見える席で見ました。

場末のラブホという生々しい場所にいわくつきの登場人物という設定の割には『永遠の愛なんてこの世には無いよね』っていう普遍的なテーマで、共感は大きかったけど感動は少なめでした。

ジンノさんという、何かヤバい男を殺したカスミとその彼氏のシゲルは3日以上もラブホに隠れ、だらだらし続けている。

元教え子の女子大生ハルカと高校教師セジマも別室でイチャイチャしてる。セジマは彼女を自分だけのものにするためにジンノさん達に頼んで、彼女を襲わせる。

ラブホの管理してる女、ピンクは、ロンドンから6年ぶりに婚約者の男、東が帰って来ると、10年来の友人のモリタに聞かされテンションがあがる。

『結婚』って言葉がどの部屋からも飛び出すが、その言葉とは裏腹にどの愛も破綻している事を見せて終わる。

美大生のシゲルは物語の終盤、部屋を去ろうとする(おそらく自首する)カスミに永遠の愛を誓うが、シーンが変わり数年後、別の女とベッドにいる。

ピンクは東にプロポーズされ歓喜するが、後半金目当てで色々な女を渡り歩いているのが判明し、『愛なんて面倒だ』と言って去る。

セジマは見知らぬ男に襲わせて恐怖で自分だけを見るよう仕向けた事がバレて、許しを乞う。その場はありのままのセジマが受け入れられ、一見許された様に見えるが、劇中流れていた留守電メッセージが、二人の破局を物語っている。

不思議なもので、冒頭は女優さんの下着姿やベッドシーンに下世話な興奮してたけど慣れてきて、後半は服着てる方がセクシーに感じるという逆転現象が起こりました〜。

もっと既存の価値観を揺さぶるような作品かと期待した部分は不完全燃焼だけど、見せ方はとても洗練されていて心地よい空間でした。おまけのクルム伊達直人が馬鹿馬鹿しくて、また良かったです。

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